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「ここに居たのね」
神社の裏側でボーッとしていた僕を一番早く見つけたのはクマだった。
案外僕の事を一番好きなのかもしれん
「クマちゃん僕の事愛してる?」
「愛してる愛してる。ほら、だから早く表に来なさいよ。主役が遅れて登場とかそーいうのいいから」
手を引っ張られてグイグイ引き摺られる僕。
表に近付くにつれて縁日特有のソースの香りだったり火薬の香りだったりが鮮明になってくる。
ああそうだ。
今日は五色神社の例祭だった。
「うん、そう。見つけたわ。フエにも伝えといて(ピッ)」
「誰に電話してたん?」
「あんたが面接で通しちゃった同級生によ」
雨心の事か。
あん野郎、記憶消したってのに五色神社のお祭りスタッフ募集面接に来やがった。
表に出ない裏情報なのにどうやって嗅ぎつけたんだか。
「にしても。今日はいい天気だねぇ。昨日まで雨が続いてたとは思えない日照りだ」
「雨心のパパさんが今日の為に天候弄ったって言うじゃない。いつかバチ当たるわよあの人」
「本人はそれでも構わないって言いそうだし。腹違いの娘二人とも会えてもういつ死んでもいいだろうさ。そういやあの姉妹は?」
「客の案内なり売店なりで忙しそうに走り回ってるわよ。暇なあんたと違ってね」
「偉いねぇ。あとで出張桃源楼イン五色神社で休んでもらおう」
表の鳥居が見えて来る。
あと少し歩けば皆が僕に注目するだろう。
「あとは頼むわよ、神様」
トンっと。
背中を押された。