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カレンさん

渋々帰っていったプロデューサー達を見送り居間に戻ってきた。

居間にはカレンさんと卯月がソファに座ってテレビを見ていたがボクが戻ってきたのに気づいたらしい。


「那月ごめんね。」

「那月さんごめんなさい。」

「卯月やカレンさんのせいじゃないよ。」


あのプロデューサー達が悪いだけで卯月やカレンさんが悪いわけじゃないしね。


「とりあえず昼ご飯用意するね。カレンさんも一緒にどうぞ。」

「ありがとうございます。」


そう言ってはにかむカレンさんはさすがアイドルと言うくらい輝いていた。


「那月もしかして見惚れた?」

「まぁね、さすがアイドルだと思ったよ。」

「実際現役アイドルの中で今人気上昇中だからね。」

「卯月はどうなの?」

「私?私も人気上昇中だよ。というかカレンとユニット組んでるし。」


卯月に手伝ってもらいテーブルに並べていき座る。


「改めて初めましてカレンさん、卯月の双子の相田 那月です。一応ツキナってモデルってことになってます。」

「初めまして那月さん、卯月と同じユニット組んでるカレンといいます。本名はカレン・マーガレットです。」

「よろしくねカレンさん。そう言えば好き嫌いとかある?なんなら違うの出すけど。」

「いえ、特に嫌いなものはないので大丈夫ですよ。」

「そっか、それじゃあ好きなだけ食べてね。」


そうして始まった昼食は賑やかだった。カレンさんは豚の角煮も大根の煮付けも美味しいと言ってくれておかわりもしていた。卯月に至っては3杯も食べていたが大丈夫なのだろうか。


「ふぅ、ごちそうさまでした那月さん。」

「お粗末様でした。」

「凄いでしょ那月は!料理は特に凄いのよ。」

「えぇ、卯月が自慢していたのも頷けるわ。」

「そう言えばカレンさんって日本語上手だけどもしかしてハーフ?」

「そうですよ。誤解されがちですが日本生まれ、日本育ちです。まぁ両親のおかげで英語も大丈夫ですよ。」


カレンさんっていい所のお嬢さんかもしれない。まぁボクには関係ないことだが。


「カレンは何か那月に聞きたいことある?」

「私ですか?」

「そうそう。」


卯月がカレンさんに聞くがボクと初めてあったし、何より一般人のボクに興味などあるはずがないだろう。

そう思っていたのだがカレンさんは聞きたいことがあるのかチラチラとこっちを見ていた。


「どうしたのカレン?」

「いえ、聞きたいことはあるのですが失礼ではないかなと。」

「とりあえず言ってみなよ。那月はそこまで短気じゃないし、むしろクラスのみんなは天使だって言ってたよ。」

「そんなの聞いたことないけど、怒らないから大丈夫だよ。」


そう伝えるとカレンさんは意を決したように手を胸の前で握りしめた。腕によって育ちのいい胸が形をかえたので少し目線を逸らす。ボクだって男だ。


「那月さんって男ですよね?」

「そうだね。」

「ツキナって女性モデルしかいない会社のモデルですよね?」

「そうだね。」

「そう言う趣味の人なんですか?」


完全な風評被害であった。ボクだって好きでモデルをやった訳では無いのだ。


「あれはねそこにいる馬鹿な()とお母さんに騙されたんだよ。」

「騙されたんですか?」


そうして語られるあの日の出来事。ボクの知らない所で広まった芸名。

そして何より女性だと言われるので疑われるボクの性別。いいことがほとんどない。

ちなみに双子だがボクが兄で卯月が妹である。まぁ卯月は兄と呼ばないので知っている人は少ないが。


「そうだったんですね。それはなんというか・・・苦労されたんですね。」

「卯月はカレンさんに迷惑かけてない?」

「そこまでは・・・」

「卯月?」

「ひゃい!」

「おやつ抜きね。」

「ごめんなさいぃぃぃぃぃ。」


家族に迷惑をかけるのはいいが他の人に迷惑を掛けてはいけないと言っただろうに。

卯月はおやつ抜きが嫌なのかものすごく謝ってきたので許した。


「那月さんってお菓子も得意なんですか?」

「幼馴染みの家で少しね。」

「すごいですね。」

「そりゃ那月はあの「鉄華」のオーナーに認められた腕だからね。」

「あの「鉄華」のですか!?」


そんなにあそこは有名なのだろうか。確かに時々発注の電話があるが基本断っていたからそんなに有名だと思えなかったのだが。


「そんなに有名なの?」

「有名ですよ!取材も取り置きもほとんどNGで買うにしても並ばないといけないんですよ!」


そう言えば拓馬が千夏にパシリにされていたな。いつもの事だと思っていたけどそういう事だったのか。


「そんなオーナーが認めたのならすごい腕前じゃないですか。楽しです!」

「そ、そっか、あははは・・・」


前のめりでカレンさんが力説するが彼女は甘いものが好きなのだろう。なら喜んでもらえるかな?


「そういや今日は何作ったの?」

「今日はサクランボのタルトだよ。ちょっと早いけどね。」


そう言って冷蔵庫から取り出した。クッキー生地の上に真っ赤なサクランボのソースが乗っているタルトを2人の前に取り出す。

カレンさんは目を輝かせ卯月はニコニコしていてこの時ほど作り手冥利に尽きることは無いなと思った。

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