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1話 疑わない坊やが悪いのさ

よろしくお願いします

どうしてこうなったのか・・・


いいねぇ、可愛いよ!その格好もいいよ!とカメラマンの声が聞こえる。


「お疲れ様、那月(なつき)()()。」

「お疲れ様です・・・」


秘書の東雲(しののめ)さんが労いの言葉を掛けてくれるがボクとしてはそれなら最初から撮影なんてしたくなかった。


だってそれは『女性服』の撮影なのだから。


ボクこと相田 那月(あいだ なつき)は一卵性双生児であった。昔から妹の相田 卯月(あいだ うづき)と外見はよく似ていて周りからは()()と呼ばれていた。


ただそれは誤解でボクはれっきとした男でありアソコもついてる。

まぁそれでも妹よりは女の子だねと呼ばれる程には家事は得意だったりするため、買い物に行けばお嬢ちゃんにはオマケだよとくれたりもする。


15歳、中学3年生の冬頃に卯月はアイドルになった。

受験も私立だった為に早く終わっており町で買い物をしていたらスカウトされたらしい。

もともと元気な子であり容姿も綺麗な黒髪を腰辺りまで伸ばしクリっとした瞳に艶めいた唇の女の子であったため納得だった。


そんな中事件は起こったのだった。

そう、今思えば明らかに罠であると分かっていたのだがその時は疑わずにいたのだった。



『もしもしお兄ちゃん?今大丈夫?』

「卯月?今大丈夫だけどどうした?」

『お弁当を家に忘れちゃったんだけど、仕事場まで持ってきてもらえない?』

「いいけど外で食べればいいじゃん。」

『だって折角作ってくれたのに勿体ないじゃん。それに那月の作ってくれたお弁当食べれないの嫌だし。』


そう言われたら持っていかざるをえないじゃないか。


「分かったよ。場所はどこ?」

『お母さんの会社だよ。女性服のモデル撮影だから。』

「了解、今から向かうね。」


時刻を見ると10時30なので急いで準備をした。

といっても母の会社は自宅から1時間程の場所なのでそこまで急ぐ必要は無いのだが。

そうして()()()()()()をして母の職場に向かった。



ちょうど1時間後、母の会社に着いた。

Pearl BOX、10階建ての母が経営している会社だ。経営内容は女性関連を手広くってやつでファッションや流行の食べ物、結婚式の手配など女性の為になるものはある程度やっている会社だ。


自動ドアをくぐりエントランスにある受付に向かう。その時何故かボクにエントランスの人達の視線が集まったが外を歩いているといつもの事なので気にしないでいた。


「すいません、ここって受付ですよね?」

「は、はい!そそそうです!」


どうしたのだろう?

受付の女性が何故かしどろもどろになっていた。


相田 月夜(あいだ つくよ)の子供の那月っていうのですが、今日来てる相田 卯月に届け物持ってきていて会いたいのですがどうすればいいですかね?」

「あぁ相田社長の・・・それでしたら今、相田社長呼びますね。」

「ありがとうございます。」


何故か母の名前を出したら納得されたのだがどうしてなのか。

そうして待っていると母と卯月の2人が来た。


「待たせたわね那月。」

「ありがとうね那月。」

「いや、どうって事ないよ。どうせ春休みでやること無かったし。」


実際やること無くて昼寝しようか迷っていたし。


「そうなのね。なら一緒にご飯食べましょ。」

「え、ボク弁当もなんにもないけど。」

「それならあまりの仕出し弁当があるからそれ食べればいいわ。」


そう言って母に連れられて10階の母が使う休憩所に向かった。

10階は社長室と会議室、社長や一部の社員しか使えない休憩所があるフロアだ。


「あら、紗夜(さよ)じゃない。珍しいわねここでお昼なんて。」

「あぁ、社長お疲れ様です。那月くんも久しぶりね。」

「お久しぶりです、東雲さん。」


東雲 紗夜(しののめ さよ)さん。母の秘書でありプライベートでもよく家に飯を食べに来たり紗夜さんの家族と旅行に行ったりする程仲のいい人だ。


「それでなんでここで?」

「あぁ、今日は久しぶりに娘が弁当を作ってくれたのでここで食べようとしたんですよ。」

「そうだったのね。なら私たちも一緒にさせてもらうわね。」


そう言って母が一度別のフロアに行き仕出し弁当を持ってきてくれたので4人で一緒にお昼をとったのだった。

とても和気あいあいとして久しぶりに東雲さんとも会い、楽しいお昼時だったために疑問にも思わなかったが卯月がどうしてあそこまで弁当を持ってくるように頼んだのか。


そう、いつもなら忘れても外で食べたり仕出し弁当を食べたりする卯月がどうして今日に限って弁当を持ってくるように頼んだのか。


「あぁ那月、この後撮影あるからよろしくね?」


そうしれっと母は言ったが聞き間違いだろうと思いボクは聞き直した。


「お母さんなんて言ったの?」

「だからこの後撮影よって。」


おかしいだろう。

何故、卯月も東雲さんも普通にお昼ご飯を食べている。疑問にも思ってないのか?


「撮影ってもしかして女性服の!?」

「当たり前に決まっているでしょう。」


そう言って母は箸を動かす。

この時になってようやくボクは理解したのだった、嵌められたのだと。

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