ep.98 魔人
内容分割等の都合により、短めです。
申し訳ありません。
「まぁ仲が悪いと言っても、私は詳しいことは知らないんだけどね。私が聞いたのは、『闇ギルドは我らとは相容れない。性質は似ているが相反する組織だ』ということ。あとは闇ギルドの悪口とかかしら。詳細を知っているのは幹部連中くらいかな」
相容れないとはどういうことだろう。組織は違えど、裏の組織であることは間違いないはずだ。裏は繋がりが深いと思っていたがそうでもないのか?
というか、闇ギルドに依頼したのが第三夫人じゃないとなると、一体誰が・・・。だめだ、情報が足りていない気がする。
「他になにか知っていることはないですか?」
これではお手上げ状態になってしまうぞ・・・。
「そうねぇ・・・。あ、そう言えば情報と言うよりは組織の中でまことしやかに噂されてた話だけど、闇ギルドは――――」
◇◇◇
第三夫人から闇ギルドについて聞けた情報は大して無かった。ある1つを除いて。
「魔王の部下が指揮している組織・・・か」
もうやめてくれよ・・・。もうこれ以上厄介ごとに首を突っ込むのはゴメンだ。もし仮に闇ギルドのトップが魔王の部下で、人間界の情報収集や掌握を目的に動いているのだとしたら、かなり大規模なことになる。
そういえば、闇ギルドトップの部下がベリアスとか言ったっけ・・・。となると、だ。これは魔王説もあながち間違ってない・・・?
そう言えば、アルフは魔人だったな。もしかしたら魔王についても知っていることがあるかな?忙しいかも知れないけど、ちょっと来てもらって話を聞いてみよう。
『アルフ、今ちょっと時間いい?』
『おや、主様。どうなさいましたかな?』
『少し話したいことがあるから、大丈夫であれば来て欲しいんだけど。俺の場所わかる?』
『なるほど、問題ありません。もう――――着きましたので」
「うおっ?!」
有能なのは分かっていたけど、流石に早すぎない?というかどうやって来たのか全く分からないんだけど・・・。神出鬼没とはまさにこのことだな。心臓に悪いからやめてほしいが。
「それで、お話とはなんでしょう?」
魔王についても聞きたいけど、まずはベリアスという魔人がいるかどうかだな。
「アルフは『ベリアス』という魔人を知ってる?」
「『ベリアス』ですか・・・。これはまた懐かしいですな。はい、勿論存じております」
まじかよ・・・。というかこの人なんでも知っていそうで怖いな。闇ギルドについても知ってるんじゃないか?
「どんなやつなんだ?」
「ふむ・・・。主様は少々勘違いされているようですな。まず、魔人というのがどういった生態なのかご存じですか?」
・・・言われてみれば魔人というのがどういうものなのか分かっていなかったな。
「今更だけど知らないや・・・。教えてくれる?」
「もちろんでございます。そもそも今の魔人というのは、魔王の眷属というのが適当な表現です。魔王を頂点として、その下に各階級ごとに名前がつけられているのですが、ベリアスは第三階級――所謂、下っ端に当たります。とは言っても、第三階級でも人間で考えるとAランク冒険者相当の実力を持っていますが」
なるほど。じゃあベリアスといっても階級名で、個体名ではないということなのか。
「階級名ということなら、個体名はあるの?アルフみたいに」
「いや、基本的に魔人に個体名はありません。なにか功績を残したり、実績がある場合に魔王から個体名を与えられるのです。あとは自ら名乗ることが出来るほど強大な存在であるかのどれかでしょうか」
ということはベリアスと名乗った闇ギルドの人間は魔人というのが濃厚そうだな。ヨミがベリアスという名前は不思議な名前だと言っていたし、あまりない名前なのは間違いないだろう。
トップの右腕が第三階級ということは、おそらくトップは第二階級あたりか?魔王が闇ギルドのトップなんぞやるとは思えないし、部下がやっている可能性が高いな。
・・・ん?じゃあ、アルフは魔人なのに個体名があるからかなり強大ってこと?
「じゃあ、アルフって?」
「いえ、私は古い魔人ですので。また状況が違ったのですよ。昔は魔人も少なく、自由に名乗ることが出来ましたので」
そうなのか。まぁ、言いたくないことがあるのかも知れないし、自分から話してくれるのを待つとしよう。
いずれにしろ、魔人というのがどういうものかは分かった。
「アルフって他の魔人がどの辺にいるかって把握できたりするの?」
「他の魔人ですか・・・。基本的には自分の眷属である魔人しか認識できないのですが、念のために探してみましょうか」
試しに言っただけなのに、アルフって何でも出来るし何でも知ってるな。
「・・・どう?わかりそう?」
「・・・・・・・・・・・・おそらくですが、第二階級が二体と第三階級が二体いるようです。第二階級のうち一体の居場所が何故か特定できませんが、他三体の居場所は分かりましたよ」
「えっ?!」
それって絶対闇ギルドの奴らじゃん。そこ潰せば・・・・・・いや、待てよ。闇ギルドはかなり巨大な組織と聞く。それにちょっかいを出そうものなら、下手をすれば魔王が出てきてもおかしくない。俺はこれ以上厄介ごとに首を突っ込むのはゴメンだからなぁ・・・。
「どうされますか?」
「・・・これ以上狙われるのは本意じゃないけど、だからといって下手に刺激して余計面倒になるのはもっと本意じゃない。でも闇ギルドのトップが魔人かもしれないというのはわかっただけでも進歩かな」
まぁ、どうすればいいかは未だに思いつかないけど・・・。
「それでしたら私の方でなんとかしておきましょうか?・・・決して主様に悪いようにはしません。それに、どうやら同胞がご迷惑をかけているご様子。是非とも私めにお命じください」
アルフに闇ギルドを任せる、か。・・・うん、悪くないかもしれない。保護した彼女たちはルナかヨミのどちらかが面倒見ているみたいだし、無理しないように言っておけばいいかな。
そしたら俺もリリーの護衛も出来るし、情報の整理も出来る。うん、いいな。
「アルフレッド、闇ギルドの件をお願いしてもいいかな?」
「お任せ下さい、主様」
そう言い残してアルフはいなくなってしまった。アルフは有能だし、きっとやり過ぎるようなことはないだろう。
俺は俺で依頼者を探らなきゃいけないしやることは多いぞ・・・。当初想定していた第三夫人は白っぽいし、なにかを見落としている気がしてならないのだ。
「俺は何を見落としているんだ・・・?」
ゆっくりと更新していきます。
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次話から一気に話が進んでいく予定です。
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