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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第4章 帝国お家騒動編
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ep.93 虎児を得ず・・・

SIDE:闇ギルド


「対象の暗殺依頼を見て"あの者"が動きました」


「・・・あの者っていうと、まさかあいつか?」


「はい、ボスのご想像通りのあいつでございます」


「・・・まぁ、攻め口は悪くない。アウルとやらは能力値は高いようだが所詮は子供。情に訴えかけて油断させれば暗殺も容易かろう。ただなぁ、あいつでは少々難ありじゃないか?」


「暗殺の実績は確かかと。・・・多少、いえ、かなりクセのある性格ではありますが」


「性格だけじゃ無いだろう?だってあいつは――」




SIDE:アウル


俺の目の前には帝都の建物の中でも、豪華な作りの建物がある。ぱっと見はただの商館なのだが、実態は高級の休憩宿だ。


一度入ってみたいと思っていたし、俺の横で嬉しそうに腕に抱きついている偽ヨミの正体を暴くという重要なミッションがあるのだ。


決してやましい考えや下心があったわけではない。ここだけは譲れないポイントなのだ。・・・まぁ、たまたま色んなところが見えてしまうのは、不可抗力だよね!?


「なんか、初めて来たからドキドキするね」


「ふふ、私も初めてでドキドキしています」


俺の手を握ってそっと胸へと誘導する偽ヨミは、本来のヨミには劣るもののかなりの色気だと思う。俺がヨミに見慣れていなかったら、今ので骨抜きにされていた自信があるぞ。


偽物と分かっていても多少ドキドキしてしまうのは、見た目がヨミだからだろうか?とりあえずカウンターで受付を済ませたので、目的の部屋へと移動しよう。


「部屋は409号室らしいね」


「一番高い階ですね!景色が綺麗そうです!」



偽ヨミの言うとおり、部屋について外を見ると帝都をぐるっと見えるくらいには景色が良い。それにしても、こいつはなんでヨミの事をここまで把握しているんだ?


ある程度は調べて成り済ましているんだろうけど、それにしては完成度が高い気がしてならない。まさかそういう恩恵があるってことか?それとも諜報能力がずば抜けて高いのか。


どっちにしろ油断はしないが、偽ヨミから感じる魔力はそこまで大きくない。良くて中堅冒険者くらいしかないから、実力はそこそこだろう。


もしかしたら"それ以外が凄い"可能性もあるから、最大限警戒する必要があるな!


「わぁ~!とっても綺麗です!想像以上ですね!」


「そうだね。えっと先に湯浴みをする?」


「ふふふっ、一緒に入っても良いのですがお楽しみということで!先に入らせてもらいますね!」



普段のヨミだったら間違いなく一緒入るところだけど、流石に一緒は無いか。まぁ、偽ヨミがどこで仕掛けてくるか分からないが、予想は俺がシャワーから上がったタイミングかな。


安易に考えると行為の前に何か飲みましょう、とかあり得そうだ。



「ふんふんふ~ん♪」


・・・エラい楽しそうだな。本当は偽物じゃないとか?今から暗殺しようってのに、こんなに楽しそうに鼻歌を歌うだろうか?いや、相手はヨミにあそこまで化けるプロだ。殺しに慣れていればあの程度の演技は余裕な可能性もある。


さて、ただ待っているのも馬鹿馬鹿しいしやれることはやっておくとしよう。


(アルフ、聞こえてる?今少し時間良いかな?)


『おや、これは主様。どうしましたか?』


俺が連絡したのはアルフだ。アルフに伝声の魔導具は渡していないが、俺が召喚したからかアルフが凄いからなのかは不明だけど魔力を込めて念じるとアルフと連絡が取れるのだ。


(――という状況なんだけど、もし近くにヨミがいたら今指示した場所に来るように頼んでもいいかい?)


『ははぁ、なるほど。なかなか面白そうな状況ですな。わかりました、ヨミ様には伝えておきましょう。保護した彼女たちは一時的に私が面倒を見ておきます』


(忙しいところ申し訳ないけど、よろしく頼むよ)


『いえ、なにも問題ありません。ヨミ様もすぐに向かうと言っていますので、1時間もあれば目的地に着くと思われます』



ふふふ、これでよし。一時間後に来るって事は俺が風呂から上がって良い感じになった位に来ると言うことだ。ちょうどちょっと楽しんだ辺りくらいだろう。


いや、他意は無い!あくまで暗殺者の持つ技術テクニックとやらを体験しておくためなのだ。何事も経験だからな!



「お待たせしました。次どうぞ!ふふふ、私は準備がありますので・・・!」


風呂場から出て来た偽ヨミは、髪を縛ってお団子を作っている。・・・偽物と分かっていても、あの上気した頬とうっすら濡れたうなじが色っぽく感じてしまう。なにより一番色っぽいのはタオル一枚で出てきたことだろう。


湯上がりのタオル姿というのはある種、男のロマンの完成形であると言っても過言ではない気がする。かくいう俺も、こうして目の当たりにしてみるとグッと心を鷲づかみにされてしまった。


これが暗殺者でないならば、浮気だとしても一夜の過ちをしてしまった可能性も否定できない。


・・・落ち着け俺!どうしたと言うんだ?なんかいつもの俺の思考ではない気がする。少し頭を冷やすついでに風呂に入ろう。悩んでいても仕方ないしな。


「じゃあ、少し待っててね」


特に何かあるわけではないけどいつもより念入りに洗っておくとしよう。そう、念入りにね。ついでに

香油なんてつけてみようかな。やっぱり俺が疑っていると悟られるのは拙いからな。これも全て作戦のためだ。


戦う男の正装はやはり腰タオル一枚なのだ。香油もつけたし髪もオールバックで決めた。体は念入りに洗ったし、これで偽物に疑われる事は無いだろう!


いざ出陣。


「お待たせ!」


風呂を出た先にいたのは薄手のネグリジェを着た偽物のヨミだった。ベッドに腰掛けており、手前にあるサイドテーブルに何かが注がれたワイングラスが2つ置いてある。少しくらいだし、お酒飲んでも大丈夫だよね!


よしきた、ぐいっと飲んでかましてやるぜ!


「「乾杯!」」


うーん、王城で飲んだワインの方が美味しかったな。良くも悪くもありふれたワインの味だ。ふふふふ、俺が当たり前のようにワインを飲んだからか、凄い俺のことを見ているな。


しかし、俺に毒は通用しないのだよ!ここで俺を毒殺する魂胆だったんだろうけど、詰めが甘いぜ暗殺者さんよ。ここからはお楽しみタイムだ。本物のヨミが来るまでまだ時間はあるしな!


「じゃあベッド、いこうか」

「えっ?!あっ、はい?」


ふーむ、いまいち理解できていないようだな。暗殺者でその判断の遅さは致命的だぞ?しかし、ここからは俺のターンだ。


まずは丹念に胸を・・・・・・ん?んん?


いま、股間になにかがあった・・・?いやいや、まさかこんなに再現度が高くて可愛いヨミが・・・










「お前!!!!男じゃねえか!!!!!」






嘘だろ嘘だろ嘘だろ?!いつの間に男になったんだ?!いや、違うか!最初から男って事か?!


「アウル様!ただいま参り・・・ました・・・・・・?!」


げっ、ヨミ!?来るの早いよ!・・・いや、今となってはナイスタイミングか!?


「貴様、アウル様に何をしているのかしら?それも私に成り済まして、ましてやこんな催淫のお香まで焚くなんて。・・・しかもかなり強いお香のようですね。これがアウル様だからこの程度で済んでいるものの、普通の人間なら獣のように発情していたでしょうね」


あん?・・・・・・お香?


言われてみれば確かになんとなくいい匂いがする。なんで気づかなかったんだ俺。


ヨミが窓から侵入してきてからは、お香が外に漏れて薄れたからか、頭がすっきりしてきた。なんで窓から入ってきたのかも気になるけど、それ以上にさっきまでの自分に嫌気がさす。


なんだよ『いざ出陣』って。完全に黒歴史だよ・・・。穴があったら入りたい・・・。


乱入してきたヨミに対して咄嗟に反撃を試みていた偽物だったが、ヨミの水牢によって一瞬で捕縛されていた。いつ見ても見事な手際です


「・・・アウル様、いろいろとお話ししたいことがありますが、とりあえずこの者は私に任せて下さい。よろしいですね?」


俺に一応決定権をくれているんだろうけど、それはもう半ば強制的な同意ですよね?だって背後にかつて見たこと無いほどの鬼が見えるんだもん。


「・・・うん、悪いけど頼むよ。そいつはおそらく闇ギルドの依頼を受けたやつだろうから、何か情報をしっているかもしれない」


「問題ありません。私の方で情報を聞き出しておきます」



こういうときのヨミは本当に頼りになる。俺ももっと精進せねば・・・。最初は大丈夫だったのに、いつの間にか催淫のお香にやられていたとは思わなかったなぁ。



「闇ギルドもなかなかやるものだな。俺ももっと頑張るよ。じゃ、じゃあ俺はこの辺で・・・」


「アウル様。今日のことは貸し1つ、ですよ?」



・・・これは大きい貸しになったもんだな。このことがルナやミレイちゃんに知られたら、面倒なことになる。あ、そうだ!!


「ヨミ、忘れてたけどこれ。伝声の魔導具を俺のと調整して連絡を取れるようにしておいたから、つけていてくれ」


指輪を取り出すと、目に見えて嬉しそうな顔になったのが分かる。本当は結婚指輪を作った時に薬指にはめてあげようと思ったけど、予約って意味でも今のうちにしてしまおう。ルナもそれで喜んでいたしね。


「ふふふっ、嬉しいですアウル様。一生大事にしますね!・・・今回のことは一旦忘れてあげます」


よし!これでなんとか誤魔化せたか。あとは俺のこの心の傷を癒やすだけだ・・・。


「苦労かけるねヨミ。俺ももっと注意するよ」



それにしても、この偽物はヨミの情報をどこで集めたんだ・・・?





SIDE:闇ギルド


「諜報によると、途中まで上手くいっていたようですが、水艶の乱入があり失敗に終わったそうです」


「そうか・・・。まぁ、そもそもあいつは"男"だからな・・・。しかし、正攻法ではなく搦め手のほうが成功率は高いのかもしれないということは分かった。お前は下がっていい」


「ははっ、かしこまりました」



いくら強いと言っても所詮は子供。チートを持った転生者の可能性も否めないが、であれば尚のこと搦め手は有効だろうな。


「さて、次はどんな手を使おうか」


色々と忙しい状況ですが、なんとか更新できたらと考えています。

評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。


他の受賞されている作者さんって結構Twitterとかやられているんですね・・・。質問が来ていたのでここで回答いたしますが、Twitter等で宣伝する予定は無いです。すみません。


皆様のおかげで【ネット小説大賞】受賞しました。双葉社様にて書籍化させて頂きます。



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― 新着の感想 ―
[一言] お香のせいなんだろうけど、頭がチンパンジーだった。 二人に手を出さないようにとミレイと約束したのに、こんな暗殺者相手に童貞捨てるつもりだったみたいだし。
[一言] あれ?転生者を知ってるって事は転生者?
[気になる点] アウルちょっと頭弱すぎひん? どこからみてもただのアホにしか見えない
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