ep.9 研究の冬
やっと完成した。とうとう完成したのだ。冬になりやることがないためずっと研究に研究を重ねることができた。地球時代の頃の醤油と味噌がほぼ完璧に再現できた。
「うっうっうっ・・・長かった。やっとできた・・・。それっぽいのはすぐにできたが、これに比べたら足元にも及ばないものだった」
実は雪が降る前に父の手を借りて研究用の小屋を作っていたのだが、そこで色々と試行錯誤した結果だ。それなりの量を作れたので売ろうと思えば売れるが、これは売ったらさすがにマズいか・・・。作るのめんどいし、これは我が家で独占させてもらおう。フハハハハハ。
マヨネーズも作ろうかと思ったが、混ぜるのだるいし俺はマヨラーじゃないので作るのは見送っている、まぁ、焦る必要はないだろう。
早速だが、醤油と味噌を駆使してご飯を作ろう。やはりここは味噌汁は外せないし、醤油はやはり照り焼きだろう。いつか餅も作ってみたらし団子も作らなきゃ・・・。くぅ〜!!やはり日本の調味料はたまらん!!
ジーーーーーーーー
はっ!?!?この獲物を狙うかのような視線!我が愛しの母上だ!視線の方向は北北東北北東!
「アウルちゃん、なに1人で美味しそうなもの食べようとしてるの?みんなで食べましょう?」
「も、もちろんです母上!」
「そう、ならいいのよ。アウルちゃんの作る料理は全部美味しいから楽しみだわ」
ということで、当初の予定通り味噌汁と少し手間暇をかけて森イノシシの角煮を作ることにした。結果からいえばめちゃくちゃ美味かった。
味噌汁を飲んだ瞬間は本当に心のそこから感動したもんだ。あとは出汁があればもっと美味いだろう。
角煮も時間をかけて作った甲斐あって味が染み込んでいるし、口に入れればほろっとほどける肉の柔らかさ。我ながら完璧だ。
両親も一心不乱に食べている。大量に作ったのであとでミレイちゃん家にお裾分けしに行かねば。べ、別にほっぺにキスして欲しいからじゃないし!勘違いしないでよね!?
何はともあれ調味料類はおおよそ充実してきた。胡椒などの香辛料はまだ見つけられていないので引き続き森の中で探さないと。レブラントさんがもしかしたら知っているかもしれない。
でも、金と同等の価値があった場合はどうしよう。この話は地球時代に聞いたことがある話だが、もしそうだったら仕方がないが胡椒は諦めて森で代用品を探そう。
探そう。
あとはそろそろお菓子類もたくさん手を出したいなぁ。我が家というか俺が勝手に飼っている鶏が産んでくれる卵もなかなかいい数が揃ってきてるし、牛乳があればプリンなんかも作れる。
そのためには牛を飼わないといけないが、どうしようかな。牛は農耕にも使おうと思えば使えるが、乳牛にやらせるわけにもいかないし。これもいずれはレブラントさんに聞いてみよう。
んんん、あっ!!忘れてた!
「ガラスとポーション作るんだった!」
というのもこの世界にも一応ガラスはすでにあるらしい。ただ、地球時代のような透明な綺麗なガラスはまだ作られていない。まぁ、窓とかに使いたいわけではなく、以前採取した薬草を使って色々と調合してみたいからだ。目標としては回復ポーションの作成だ。回復ポーションのサンプルはレブラントさんから買ってあるし、必要そうな材料も森ですでにたくさん採取してある。
他にも、石鹸だけではなく髪の汚れを取るためのシャンプー作りたいんだよなぁ。まぁ、これはちょっとずつ研究できればいいかなぁ。
さて、オリーブに似た木の実は森で見つけて油を採取してあるし、はちみつはクインから最高品質なものをもらってる。薬草も採取してすぐにアイテムボックスに収納してあるから、鮮度は抜群。
鍵ともなる水は魔法で魔力のこもった最高の水を生み出せるし、それをさらに聖魔法で清めると水は格段によくなることをすでに発見している。伊達に小屋にこもっているわけではないのだ!
「でもポーションってどうやって作るんだ・・・?錬金スキルなんて持ってないしなぁ」
とりあえず薬草をすりつぶして水で煮る。そこにオリーブオイルもどきとはちみつを混ぜ加える。更に煮る。
・・・・・うむ、全くわからん。どうしろってんだよ!分かんねぇよ!こんな時はもう魔法に全任せっすよね!
「錬金!」
・・・・・なんでだよ!発動してくれよ!
ここにきてわかった。俺に錬金の才能は全くと言っていいほどないらしい。やめだやめだ。
・・・ちらっ
まぁ、せっかくなのでこの煮た奴に、魔力を込めてみたらどうなるのかと不意に思ったので試すことにする。
あーえっと、結果から言うとポーションもシャンプーもできなかった。できなかったんだが、実は化粧水っぽいのができた。
試しに自分の肌に試してみたが、地球時代の奴より効果が高い気がする。・・・・これは母には言わないほうがいいな。こんなものを母に出してしまったら確実に奪われる気がする。
ばっばっ。
ふぅ。怖くなって周りをみてみたが母にはみられていなかったようだ。
とりあえず今回はポーションとシャンプーは諦める他ないらしい。だが、この調子でちょっとずつ試行錯誤をしていこう。
「じゃあ、ガラスだけでも作るか」
土魔法「メイクガラス」土の中の硅砂などガラスに必要なものを勝手に抽出してガラスの元を作る魔法だ。昔ガラス細工を趣味でやってたおかげもあってイメージは簡単にできた。あとはこれを更に魔法で成型するだけで完成だ。
「ガラスはこんなに簡単に作れるのになぁ・・・」
ポーション用の瓶を100本作ったところで、醤油入れを数本作ってガラス作成は終わらせた。
急にやることがなくなったので雪がたくさんあるが、温度調整魔法で体の周囲の温度を快適に保ちつつ釣りをして時間を潰すことにした。
さすが異世界と言うべきか冬でも当たり前のように魚が釣れる。しかも、この辺では釣りをする人がいないのか魚の警戒心が薄い。そのおかげで、魚に困ることはないので助かってはいるのだが、スローライフを楽しみたい俺としてはじゃんじゃん釣れる状況はあまり面白いものじゃないな。
贅沢な悩みだと言うのはわかるが、もっとのんべんだらりとしたいんだよなぁ。
2時間近くで30匹も釣ってしまった。食べるぶん以外は干して長持ちさせるようにしよう。これは母がやってくれるのでいいのだが、さすがに釣りすぎと呆れられてしまった。だが、こんな日常も案外悪くないと思えてしまう。
雪が溶け、春の新芽が一斉に飛び出して春の訪れを知らせる頃、レブラントさんがまた行商に訪れてきた。
「やぁ、アウル君久しぶり。ちょっと身長伸びたようだね」
「お久しぶりですレブラントさん。まだ6歳なのでまだまだこれからですよ」
「それで早速だけど、何か凄いものとやらはできたのかい?」
「ええっとですね・・・。できたにはできたんですが、これを売り出してしまうと、なんとなく波乱が起きそうなきがするので、ちょっと売るのにためらいがあると言うかなんと言うか・・・一応、これです」
「うおっ、綺麗な瓶だね。もはやこれだけでもかなり凄いと思うんだが、重要なのはこの中身だね?なんなんだい?」
「えっとですね、化粧水と言う肌を保湿し、整え、滑らかにする機能を持つ化粧品です。要はこれを使っていれば肌にハリが出る上にプルンとして来るんですよ」
「それは・・・なるほど。世の女性、特に貴族のご婦人方は黙っていないだろうね・・・。本当にとんでもないものを作ったねアウル君。・・・売るかい?」
「どうしたらいいと思います・・・?」
ひとときの静寂がこの場を支配した。
「正直なところ、僕個人としてはとても売ってみたい、かな。商人としては目の前の商機を見逃すようなことはしたくないからね。あとはアウル君次第だよ。極力君には迷惑をかけないように動くけど、これを発売したら何かしらの反響は間違いないだろうから、少しは覚悟しておいて欲しいかな」
「んー、そうですね・・・本当は売る気はなかったんですが、100瓶限定で売ります。当面の間これ以上は売るつもりはありません。面倒ごとは嫌いなので」
「ははは、そいつは手厳しいな。けどまぁ、とりあえず今日はそれでいいよ。・・・きっと迷惑をかけることになるだろうけどね」
結局売ってしまった。1瓶あたり金貨10枚で買うと言うのでかなり驚いてしまったが、これでも下手をしたら安いらしい。全部で金貨1000枚の利益、基本的に素材は全部自分で採取しているものばかりなので利益がそのまま純利益となるのだ。
レブラントさんがホクホク顔で王都へと帰っていったが、本当に売ってしまってよかったのかと不安は消えなかった。
・・・が、悩むのが面倒臭くなったのでとりあえず追加で100瓶作っておいた。これだけあれば追加を言われてもなんとかなるだろう。
このあと、アウルは自分の安易な判断を後悔することとなる。そしてこれを機にレブラント商会が一気に大きくなるきっかけになったのだった。
ちょっとずつ更新します。
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