ep.89 帝国の闇
短めですみません・・・。
ヨミとのデートは色々あったものの、大満足の結果となった。ヨミの今までに無い少女な一面にドキドキさせられっぱなしだった。人気が無いとはいえ路地裏でしたキスのため、人に見られるかもしれないという状況に余計緊張したな。
結局あのあと大通りをぶらぶらしながら服屋さんをみて終わった。・・・ヨミが選ぶ服はどれも大人っぽくて、色っぽいものばかりだった。それでもヨミのためにあるのではないかと思える程に似合っているから、驚きだ。
これも恩恵によるものなのだろうか?・・・いや、ヨミ自身の力による気がするな。
「うふふ、楽しかったですねアウル様。また、今度デートしましょうね!」
名前の呼び方が戻っている。やっぱりあの雰囲気はデートのとき限定なのかも知れない。少し寂しい気もするけど、それはそれで楽しみが増えたと思おう。
「そうだね。次は邪魔が入らないといいけど」
「ふふ、あれはあれで守って貰えた感じがするので嫌では無いですよ?」
ヨミが小悪魔的な笑みをしているが、ずっと見ていると引き込まれそうになるので注意が必要だな。なんだか溺れてしまいそうで・・・いや、溺れてみたい気もするな。
デートを無事終えた俺たちは城へと帰還した。ルナとディンに話を聞いてみても特に変わったことは無かったそうだ。リリーは忙しく走り回っていたそうだが、基本的には近くにいたそうなので襲撃等はなかったようだ。
ひと安心とはいえ、油断は出来ないからな。
「あれ、ご主人様今からお出掛けですか?もう夜ですが・・・」
「あぁ、ちょっと野暮用でね。皇女のことは頼んだよ」
「「いってらっしゃいませ」」
俺は今からお出掛けである。行き先は夕方出会ったあの男のところだ。あのとき捕まえて尋問等しても良かったのだが、折角なら根源から絶とうと思ったわけだ。
逃げたあいつも俺が遠くからでも追えるとは思わないだろう。こいつの依頼主が誰なのかはまだ分からないが、売られた喧嘩は買ってやる。
さてと。
『魔力サーチ』
さてさて、あの男はっと・・・。いた。
「さて、行くとするか!」
身体強化!
あと、ついでに隠密熊の外套を着用すれば完璧だ。これはガルさん謹製だし、効果は折り紙付きだろう。
人目に付くのも面倒なので、なるべく屋根の上を走るようすにしているけど、もはや屋根走りもお手の物だ。あまり自慢できるような話じゃないけど・・・。
「って、あれ?なんか、街並みの雰囲気が変わってきたな・・・。なんというか、『スラム街』?」
家もボロっちいのが多いし、もう夜遅くだというのに通路に座り込んでいる人や、ふらふらと歩いている人がいる。目をこらすと、狭い路地で身売りをしている女性や、立ちんぼなんかも見える。
目を凝らしてよく見ると、俺よりも小さい子供もいるのがわかる。それも全員ガリガリに痩せてて、見るのも忍びない雰囲気だ。この状況を変えたいと思うほど俺は偽善的な人じゃ無いが、やはり思うところはある。
ここは帝国だし、俺がずっといてやれるわけでもない。
歯がゆいな。
にしても、これはまたダークなところに来てしまったな。しかし、反応があるのはここよりもさらに奥の場所だ。ここはまだスラムでも比較的浅いところなのだろう。
「子供の俺にはちょっと刺激が強すぎるな・・・。でも、こんなに栄えている帝国でも、スラムってのはあるのか。なんか、意外ってほどでもないけど、どうにもならないもんなのかな」
まぁ、俺が考えることでは無いか。そういえば王都にもスラムってあるのか?個人的には無いことを祈るのみだな。
「っと、あそこか。見た目はただの廃屋だけど・・・」
空間把握!
地下がかなり改造されているみたいだな。ちょっとした豪邸くらいの広さがありそうだ。こんな隠れ家にいる奴は、碌でもない奴だろう。
でも、ある意味ロマンだな。地下に秘密の隠れ家があるとか、ちょっと憧れる。俺も実家帰ったら地下に秘密の実験場でも作ってみようかな。
・・・人数は、げっ、30人以上いるじゃん。これはだるいな。でも、殆どのやつが酒盛りしているのか、なにか飲んでいるっぽいな。
さっきの奴は、一番奥にいるのか。これはちょうどいい。ついでにこいつらを成敗するとしよう。でも、こいつらがいるおかげでスラムの治安が守られている可能性もあり得るし、ひとまず生かしておくとしよう。
問題はどうやって突入するかだ。地上の廃屋部分にも見張りはいるみたいだし、安牌なのはこのままバレずに侵入することだろう。
・・・これはスニーキングミッションってやつだな?よし。
某メタルギア○リッドを彷彿とさせるような、華麗なスニーキングを披露してやる。あのゲームはやり込んだゲームの内の1つだからな。
と言っても、入り口に立っている男2人をどうやって誤魔化すかだけど・・・・。全く良い案が思いつかない。俺が女だったら言い寄ってなんとか出来たんだろうけど。
・・・・。
『サンダーレイ×2』
パチンっ!!
よし!見張りの排除完了!ひとまずこいつらをバレない位置に移動させて、と。
ふぅ。
結局はこうやって力技になってしまうんだよなぁ。でもとりあえず気絶させることは成功したし、よしとしよう。本当のスニーキングはここからだぜ!・・・周囲に人はいないし、ぶっちゃけ隠れる必要ないけど。
扉を開けると、建物の外見通り中もかなりボロボロだった。しかし、なぜか生活感があるというか違和感を覚える。きっといつも大量に人が出入りしているからだろう。
その証拠に蜘蛛の巣がどこにも無いし、埃がたまっていない箇所があるからね。
そして、その埃のない箇所に行き止まりがある。一見ただの本棚にしか見えないが、一冊だけ一際汚れている本がある。
ありきたりな展開で行くと、この本を押したら本棚が動いて通路が現れるとかだろうけど、そのそうなギミックがあるものなのか?
「・・・これ以外にヒントもないし、押してみるしか無いか」
スッ カタン カチャリ
うわ、本当に開いた!!すげー!!この隠れ家を潰せたらこのギミック絶対パクろう!!
「人がいるのはまだ奥みたいだな」
開いた通路を慎重に進むと、すぐに下へと降りる階段があり、その先にかなり大きめの広間があるみたいだ。そこで30人以上の人間が酒盛りしているのが、空間把握で分かっている。
元からこんな建物だったのだろうか?それともせっせと掘削して作ったのだろうか?どちらにしろ、気合いが入っているのは間違いない。
これだけしっかりした作りなら、外面の建物を綺麗にして改装すれば使い道はたくさんありそうだ。
しかも男だけかと思ったら意外と女性もいるらしい。・・・と、思ったらこれ完全に仲間の女性とかじゃない。確実に誘拐されたか奴隷かのどちらかだろう。
悪は死すべし慈悲は無い。
スニーキングから殲滅に変更だ。
この目の前の扉の先には悪い人たちがたくさんいる。その女性達がどんな人なのか分かっていないけど、俺に喧嘩を売ってきたやつの仲間なのは間違いない。
よし、口実は完璧だ。
身体強化した体で力任せに扉を蹴破った。
「何事だ?!」
「敵は誰だ!?」
「敵襲!?」
「ガキ一人だけだ!」
「殺っちまえ!!」
女性達は奴隷では無く、見るからに村娘という感じの娘達。中には冒険者風の娘もいる。ってことはこいつらは、ギルドで討伐対象になっている可能性があるな。
泣いている娘もいれば、精神が崩壊しているのか、動く気配の無い娘もいる。しかも20歳くらいの女性から10歳そこらの子供までがいるとは思わなかった。
・・・反吐が出る。同じ男としてここまで腐っているとは思いたくなかった。けど、これが現実なのか。ひとまず捕まえてからどうするか考えるとしよう。
『あー、ルナ、ヨミ、急に連絡してすまない。聞こえていたら今すぐ俺のいるところまで来てくれ。場所は城から少し離れたスラム街のあたりだ。できるだけ早めで頼む』
よし、これであと10分もすれば二人が来てくれるだろう。あの子達の保護は任せるとして、俺はこいつらを捕縛するとしよう。
「お前らの罪を数えろ!!」
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