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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第4章 帝国お家騒動編
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ep.85 食卓上の心理戦①

ほんのちょっとだけ長くなります。

爺さん、所謂上皇とのファーストコンタクトは概ね平和的に終わった。


久しぶりの地元トークに華が咲いてしまい、いろいろ聞くべきことを聞きそびれてしまったな。


でも地元が一緒だったんだし仕方ないだろう。久しぶりにラッキーピ〇ロのハンバーガーとかポテトが食べたくなってしまった。


王都に戻ったら試しに作ってみようかな。


あと久しぶりに北見の話になったけど、北見と言えば焼き肉で有名だ。


久しく焼肉もしていないし、みんなを誘ってBBQとかするのも面白そうだ。


そのときには大麦ご飯と卵を使って『目丼』を作ると決めた。



「ご主人様、今日のところはもうお休みになられますか?」


「そうだね、ちょっと早いけど疲れたし、明日も大変だろうからもう休もうかな」


「うふふ、寂しくなったらいつでも私たちの部屋に来てくださいね。部屋はすぐ隣ですから」


ヨミの誘い方が男を悩殺するそれな件について。俺がもっと大人な男だったら、コロッとやられていた自信がある。


「あははは、ミレイちゃんに怒られそうだからやめておくよ」


ちょっと行ってみたい気もするけど、今行ったら流石にね。ここ自分の家じゃないし。


いや、ちょっとというより物凄く行きたいけども。なんというか、背徳感やスリルっていうのか?


うーん、悪くない。


「じゃあ2人ともお休み」


2人は自分の部屋へと戻っていった。一応鍵が掛けられるみたいなので、ばっちり掛けておいた。


何となくだけど、ヨミが侵入してきそうな気がしたからね。


正直なところ、ヨミとだけキスをしていないから、除け者にされたとか思ってないといいけど・・・。


ルナとしたのはほとんど記憶にないとはいえ、結果的に見たらしているし、ミレイちゃんともしている。


ただなぁ、ヨミとキスしてしまったらそれで終わらない気がしてならない。


・・・いや、それはそれでいいのか?いや、でも流石にそれは早いか。


「やばい、変なこと考えてたら目が冴えてきた」


明日は大事な晩餐会だというのに・・・。


「仕方ない、部屋から出ても怪しいし、ここから情報収集でもしてみるか」



空間把握!感覚強化《聴覚》!


まずはっと・・・お!聞こえる聞こえる。


この声は男の声だな。空間把握から分かるの範囲だと、背はそこまで高くないか。


皇女のお兄さんかな?兄は2人いるって言っていたし、きっとどちらかだろう。



『…リリネッタめ、わざわざこんな時期に帰って来やがって。せっかくあの糞ジジイがくたばるかもしれないってときに…』


おいおいおい、かなり物騒なこと言ってんな。でもこの言い草だと、あまり策を弄するタイプじゃないかもしれないな。


『イルワマター様、あの作戦で本当に皇帝になれるのでしょうか?』


これは女の声だな。イルワマターの婚約者か?


しまった!事前に皇女から家族の名前や各婚約者の名前を聞いておくんだった。


そうすればこいつが誰かすぐに分かったというのに。


『もちろんだ。この作戦は完璧だ。明日の晩餐会でリリネッタが死に、計画通りいけば長男であるジーニウスが疑われるだろう。あとはそれを俺が上手く処理してやれば、皇帝の座は間違いなしだ!』


『さすがです!これで私も皇帝の妻になれるのですね!』


『俺とお前で綿密に練った計画だ。間違いなく成功するだろう。明日に備えて今日は英気を養うとするか!』


『きゃっ!もう!イルワマター様のえっち!』



おっと、ここから先は18禁だな。きっと有用な話もしないだろうし、もういいだろう。


・・・それにしても。イルワマターってなんか頭悪そうな名前だな。いや、失礼か。


「ふーむ、しかしイルワマターはどうにかして皇女を殺し、それを長男に擦り付けようとしているのか」


方法は分からないが、何をしようとしているか分かっただけでも良かったな。


さて、お次はっと。・・・こっちも聞こえそうだな。




『ふふふふふ、馬鹿兄はまんまと私の部下に踊らされているようね。今頃は私の部下に全て情報を抜かれているとも知らないで、浮かれているのでしょう。本当に馬鹿な兄だわ。おかげでこっちはその作戦を逆に利用してやるだけだわ』


おっとー?今度は女性だな。馬鹿兄って言っているということは、次男よりも下で第三皇女よりも上か。


おそらくこいつが次女だろう。しかし、これはこれは・・・


さっきイルワマターが話していた女性は、次女の部下だったってことか?


婚約者がいるにもかかわらず、他の女と遊んで浮かれているとは。本当に頭悪いな。


『しかし、油断はできませんよ。ほかの兄姉が何をしてくるかは分かりません。気を引き締めて明日に臨みましょう』



お、これは男の声だ。きっと婚約者の男だろうな。


次女は次男より頭が切れるって感じだな。ただ、部下が次男に抱かれているけど、なんとも思わないのか?人として好きになれそうにないな。


『あの馬鹿が図に乗ってジーニウスを疑ったところで、私が横槍を入れるわ。そうすればきっとジーニウスもイルワマターも失脚、リリーも死んで私が皇帝よ!』


『アリスティアならきっと大丈夫だよ。これを無事終わらせて僕たちの国をよくしていこう』


『ジルコン…。んっあっあっ』


おっとっとー?!人の情事を盗み聞きする趣味はない!


にしても、明日が晩餐会だというのに、どこもお盛んなことだな。


とにかく次へいこう。



これは・・・男だな。かなり背が高いようだ。


『リリネッタが帰ってきたか。まぁ、想定内だ。おそらくイルワもティアも晩餐会の時に仕掛けてくるだろうが、問題ない』


『ジーニウス様…。私は貴方がいれば皇帝でなくても構いません。どうか、生きてくださいまし』


『いや、俺は皇族だ。そんな逃げるような生き方はしたくない。それに、俺もそう簡単にやられるつもりもない。手は打ってあるからな』


『私はジーニウス様が皇帝になるのが帝国の、ひいてはこの世界のためになると思います。それに私はもう貴方無しでは…』


『俺は皇帝になるよ。…本当は妹弟たちにも帝国をより良くするためにも手伝ってほしいところだがな』


『そんな日が来るのでしょうか…』


おお、長男は案外まともだ。というか一番の常識人な気がする。


言っていることもまともだし、考え方にも共感できる。


『…第三夫人であるあの人が来てから、みんなちょっとずつ変わってしまった。俺はお前がいたから問題ないが、あれは人を魅了して唆すタイプの、ある種の化け物だ。お前も気を付けることだ』


『分かっております。それに私にもジーニウス様がおりますので』


『ナターシャ…』


『あっ…』



ねぇぇぇ!なんなのこの一族!ラブラブとはいえちょっと緊張感無くない?!


けど、一番まともだったな。是非皇帝になっていただきたいものだ。


「にしても第三夫人か。帝国に来る時の盗賊たちもおそらく第三夫人の差し金と考えると、要注意だな」


にしても魅了か…。魅了耐性のある魔道具なんて持ってないし、俺拙くないか?


両目の泣きボクロに長髪巨乳のお姉さんだぞ?


「・・・気合いだな。うむ、それしかあるまい」


さて、お次は残忍と噂の長女だけど・・・この人かな?


『あぁぁぁぁあ・・・・いい!この机の角最高!あぁぁぁぁぁぁ!!』



「って、なんで机の角で自分を慰めているんだよ!!」



・・・・聞かなかったことにしよう。うん、それがいい。



「しっかし、これで一応全員分だな」


とりあえず分かったのは、皇族全員スケベということくらいか。


あ、第三皇女はどうかわからないけど。



「ふわぁ~、俺もそろそろ寝ようかなぁ」


いや、最後に第三夫人を探してみよう。


長髪巨乳の女性で、この城の重要そうなところにいる人だろ?


・・・この人かな?ちょうど本を読んでいるみたいだな。


『・・・あら?ふふふ。おませさんね』


ん?独り言かな?どんな本を読んでいるか気になるところだ。



そのあと15分くらい待ってみたけど、特に変なところはなさそうだし、長男が気にしすぎなだけなのか?


「よし、寝よう」


こうして晩餐会当日を迎えた。




「おはようございますご主人様」

「おはようございますアウル様。昨晩は来ていただけなくて寂しかったです」


「おはよう2人とも。いや、ヨミが寂しかったんなら逆に俺のベッドに来ればよかったのに」


まぁ、鍵はかけておくんだけどさ。これはさすがに酷いか?いや、俺をいつもからかっている罰だな。


「行ったのに鍵が掛けられていて入れませんでした・・・」


いや、来たんかい!


「でも今来てもいいと仰ったので、今日は行かせてもらいますね!」

「私も止めたんですけど・・・あははは」


ルナに至っては苦笑いだ。


もちろん今晩も鍵は掛けておくけどね!


「おはようございます皆様。朝食の準備が出来ましたので、お部屋に運んじゃいますね」


3人でふざけている間に皇女が部屋に来ていたようだ。


皇女が気を利かせて朝食を部屋で食べられるようにしてくれたらしい。


皇女含めて4人で食事をしたのだが、昨夜のことを話すか迷っている。


伝えてもいいけど、城内を盗聴しましたってのも外聞が悪い。下手すれば不敬罪になってしまう。


やはりここは伝えずに、俺が何とかするしかないか。


皇女と朝食を終えた後は、しばしの自由時間があったが、晩餐会に出るための準備ということで、ルナとヨミは出て行ってしまった。


どうやら俺の背後に立って、給仕をしてくれるらしい。2人に頼めるのなら俺としても安心だ。


朝食の時に兄姉の名前等は確認したけど、昨日の予想通りだったから、特に勘違いとかはせずに済みそうだな。


今はちょうど一人だし、昨日の状況を整理しておこう。



《長男:ジーニウス》

・次男と次女に狙われている。

・何かしらの手を打っている

・皇帝になるつもり

・一番まとも


《次男:イルワマター》

・第三皇女をなんらかの方法で殺し、それを長男になすりつける予定

・女癖が悪い

・頭が悪そう


《長女:カミーユ》

・変態

・机の角が好き


《次女:アリスティア》

・次男の作戦を利用して、次男と長男を失脚させる予定

・部下を使って次男にハニートラップを仕掛けている



「こう考えるとなかなか凄いクセのある人ばかりだな・・・」



さて、どうなることやら。


※※※



部屋でぼうっとしていると、帝国のメイドさんたちが部屋に来て俺を着替えさせてくれた。


服も貸してもらえたので、恥をかくことは無いだろう。


そしてもう晩餐会の会場へと向かっている最中である。


「アウル様、このペンダント似合っていますか・・・?」


上目遣い気味に聞いてくる皇女は本当にあざといな。


「似合っているよリリー」


「うふふ、良かったです!」


ギリィッ


後ろのほうから何か変な音がしたけど、気のせいだよね。


今の俺と皇女は婚約者という設定なので、リリーと呼ぶようにしており、腕も組んで歩いている。


当然、ルナとヨミは面白くないわけで。あとはまぁ、ご想像にお任せします。


「では入りますよアウル様」


「あぁ、問題ない」


「よろしくお願いしますね、では行きます」



晩餐会の会場である部屋に入ると、既に兄姉らしき人たちは席に着いていた。


おそらく兄姉たちの隣にいる人がそれぞれの婚約者だろう。


気のせいかもしれないけど、一人だけ隣が空席の女性がいる。


皇女にこっそり聞いておくか。


「・・・リリー、あの人は誰?」


「・・・一番上のお姉さまです。婚約したと聞いたのですが、もしかしたら破棄したのかもしれません」


もしくは破棄された、と付け加える皇女。


まぁ、そんなことがあったから昨日あんなに荒れていたのかな?もしくはアレのせいで破棄されたかのどっちかだろうか。


いずれにしろ、冷酷な長女という印象は無かったけどなぁ。


とりあえずリリーに促されて席へと着いた。ちなみにルナとヨミはすでに俺の背後の壁際に立っていた。


「・・・ん?」


明らかに兄姉やその婚約者たちが俺とリリーを見ている。


なんというか気まずいな。自己紹介とかいつすればいいんだろう。


しかし、然程悩むこと間もなく3人の大人が現れた。


「・・・あれが私の父と母です。その隣にいる泣きボクロのある女性が第三夫人です。・・・第二夫人は欠席のようですね」


あの人が第三夫人か。あれは相当やばいな。長男が化け物と言うだけある。


おそらく『H』か『I』はあるんじゃないだろうか。


「・・あれは、やばいな」


「・・・どこみているんですかアウル様」


いててて。皇女に思いっきり足を踏まれてしまった。しかしそのおかげで我に返れたぞ。


危うく魅了されるところだった。きっと魔法か呪いの類だろうな。




リリーの両親たちが席に着くと、皇帝がしゃべり始めた。


「みな息災でなにより。今日はよく集まってくれた。リリネッタも学院が忙しい中、よく帰ってきたくれたな。父上も喜んでおられたぞ」


皇帝と言うだけあって、かなり威厳のある人だな。一国を束ねている人ともなると、雰囲気が凄いな。


「今日は無礼講だ。みな好きに歓談して親睦を深めようではないか」


皇帝はああ言っているけど、これからこの食卓で醜い争いが繰り広げられるとは思っていないんだろうな。


「ではお父様。リリーが婚約者候補を連れてきているようですし、改めて自己紹介をしたほうがいいかと思います」


「おお、そうだったな。ジーニウスの言うとおりだ。ではまずは私からだな。私が現皇帝のミゼラル・フォン・ペルニクスだ」


「私が第一夫人のマリナよ」

「第三夫人のルクレツィアです」


2人ともとんでもない美人だ。そして確かに第三夫人には両目に泣きボクロがある。・・・聞いていたよりも美人だな。


「俺が長男のジーニウスだ。そして隣の彼女が婚約者のナターシャだ」


「俺は次男のイルワマター、隣が婚約者のメルミルだ」


「長女のカミーユよ」


「もう、姉さんったら不愛想なんだから。私が次女のアリスティアよ。隣が私の婚約者のジルコン。よろしくね」


聞いていた通りだったな。昨日声を聴いていたのもあって、すぐに理解できた。


「私はライヤード王国のアウルと言います。平民の身分ではございますが、リリネッタ皇女殿下には大変良くしていただいております」


俺が平民と言ったあたりで少しざわついたが、それほど拒否反応が出ることなく受け入れられた。


事前に皇女が言っていた通りだな。王国よりも身分による差別は無さそうだ。


「うむっ!では乾杯としよう!」


皇帝が手を挙げたと同時にメイドたちが動き出した。


「今日はジーニウスが珍しいワインを見つけてきたと言うのでな!それを乾杯に使うとしよう。未成年もいるが、今日は無礼講だ!ただし、飲み過ぎはいかんぞ?」


へぇ、珍しいワインか。ちょっとだけ気になるな。それにしても皇帝が未成年の飲酒を認めるとは。


思ったよりも大胆な皇帝だな。って、何気にこの世界で飲む酒ってこれが初めてじゃないか?


というかグラスはガラス製なんだな。あの爺さんがガラス製のグラスを広めたに違いない。帝都にもたくさんガラスが使われていたしな。


後ろにいたルナとヨミが俺とリリーのグラスにワインを注いでくれる。


・・・見た目は普通のワインだけど、油断はできない。


何かを仕掛けてくるとしたらここしかないはずだ。料理ともなれば、疑うことも難しくなる。


次男が長男の用意したワインに細工して毒を盛っていることが考えられる。


しかし、毒に対しては完全無効のペンダントを付けている。リリーには内緒にしているけど、ペンダントには自動障壁も付与してある。


イヤリングではなく、全てに集約したのだ。そのほうがずっと身に着けていやすいだろうしね。


「うむ、全員にワインが行き渡ったな。積もる話や聞きたいこともたくさんあるだろうが、存分に食べてからとしよう。では乾杯!」



皇帝の掛け声とともにそれぞれがグラスを掲げて、ワインを口にした。


本来ならワインを味わうところだが、俺は瞬時に自分とリリーのグラスに聖魔法の「キュアポイズン」をかけた。


毒無効があるとはいえ、念には念をってやつだ。


全員がワインを飲みほし、席に着いたと同時に次男の顔が嫌らしく笑っているのが見えた。


予想通り、このワインに毒でも仕込んでいたのだろう。


だが、残念だったな。


「自分はまだ未成年でしたので、初めてのワインですがとても美味しかったです。ありがとうございますジーニウス様」


「いやなに、アウル君も今後私たちの家族になるんだ。そんなに堅苦しい言葉はいらないよ。気軽にジーニーとでも呼んでくれ。でも、口に合ってよかったよ」


俺と長男の和やかなやり取りとは裏腹に、心底驚いているような顔をしている次男。


目論見が外れたって感じの顔をしているな。


それに次いで驚いているのは次女だ。きっとリリーと俺が毒でのた打ち回ってやっと条件が揃うような作戦だったのだろう。


「ではジーニー様と、さすがに私はまだ平民ですので。それにしても、ジーニー様は凄いですね。こんなに『美味しいワイン』を見つけるなんて。ジーニー様には色々教わりたいです」


「!! あぁ、とても苦労して手に入れたからね。初めてだというのに味が分かるアウル君もなかなかだと思うよ。本当にリリネッタは良い男を見つけたらしいね」


一見言葉だけ見ればただの会話だが・・・


『毒のワインは僕たちには効きませんよ。これくらいならば美味しく飲むことが出来ます』

『そのようだね。貴族のゴタゴタをその歳で躱すとは恐れ入ったよ。リリーが気に入るわけだ』


という裏の意味を、俺は今の会話に込めている。


長男もそれを悟ったのだろう。本当に聡い人だ。こういう人が皇帝になったほうが、世のため人のためになるのだろうな。


しかし、長男が言っていた手は打ったというのはなんのことなんだろう?


その時、事件は起こった。


「うぐぅ?!」

「かはっ・・・!」


皇帝と第一夫人が喉を抑えて苦しみ始めたのだ!!


毒か?!まずい!


俺は瞬時にキュアポイズンとパーフェクトヒールを発動したが、即効性の毒だったようだ。


一命は取り留めたものの、かなり重大なダメージを負ってしまったらしい。


俺の回復魔法は外的損傷や病を治すことには特化している。それもパーフェクトと言うだけあって、その精度は完璧だと自負している。


ただし例外はある。死んだ人は生き返らせることはできないし、寿命を戻すことはできない。


上皇がいい例だろう。パーフェクトヒールを3回かけてやっと少し元気になった。


あれは体の悪い部分を少し治したり、体力しか回復できていないからだ。


今回の皇帝と第一夫人が摂取したのはほぼ即死するはずの毒だろう。


それを強制的に回復させたものだから、その反動で極度の疲労と不調を起こしているはずだ。


それでも死ぬよりはよっぽどいい結果だろうけどな。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!あなた!あなた!」


「父上?!父上!?」


それぞれが驚いている中、次男と次女は青い顔をしていた。


俺とリリーに飲ませるはずだった毒を、皇帝と第一夫人が飲んだと思っているのだろう。


「動かないでください!今動けば犯人が誰か分からなくなります!」


「何を言っているんだ貴様は!平民の言うことなど聞かんぞ!」


「そうよそうよ!」


次男と次女が何としてでも動こうとしているが、それは悪手だ。


「今動けばあなた方が犯人と言わざるを得ませんがよろしいですね?」


「「!!」」


よし、これくらいは理解する頭があってよかった。


しかし、なぜ皇帝と第一夫人が毒を飲んだんだ?


容疑者は8人だと思う。


①長男:ジーニウス

②長男婚約者:ナターシャ

③次男:イルワマター

④次男婚約者:メルミル

⑤長女:カミーユ

⑥次女:アリスティア

⑦次女婚約者:ジルコン

⑧第三夫人:ルクレツィア


この中に犯人がいる可能性が高い。


となると全員に証言をしてもらうしかないな。


「すみません、皇帝と第一夫人は一命を取り留めていますので心配はありません」



「アウル君の言うとおりだ。誰かが毒を盛ったのは間違いないよ」


証拠に・・・と銀食器であるスプーンを、皇帝のグラスに残っていたワインに浸けると、色が変色した。


「「「「「!!!!」」」」」


ジーニウスが銀食器をみんなに見せると疑惑が確信に変わった。


「アウル君は頭もキレるみたいだし、とりあえずみんなの証言をまとめてもらっていいかな?」


「わかりました」


長男ジーニウスの指示のもと、みんなから証言を聞くことになった。


「この際だから言ってしまうけど、イルワマターやアリスティアが俺の用意したワインに、使用人を使って何か細工をしようとしていたのは知っていた」


「なに?!」「えっ?!うそっ!!」


おおう、そこでそんな反応したら認めているのと同義だぞ・・・。


「そして上皇様に気に入られているリリーと、その婚約者のアウル君を亡き者にしようとしているのもね。そこで俺は逆に使用人を買収しなおして、毒を盛らないように指示した。これで問題なく晩餐会は終わるはずだったんだ。…しかし結果は違った」


やっぱりこの人は人間ができているな。俺だったらもう少し痛い目に合わせるような気もするけど。


「だから、第三者のアウル君に証言をしていって、犯人を見つけようと思う。犯人なら必ず嘘をつくはずだからね」



というわけで、俺が容疑者たちに質問していくことになったのだが・・・


「おいおいおい!疑うのは勝手だがよ、こっちとしては腹が立つぜ!だから質問していいのは一回だけだ!」

「そうね。私たちも一回は暗殺を企んだけど、失敗しているし。一回までなら答えてあげるわ」

「お前が間違っていた場合、リリネッタと一緒に皇帝を毒殺しようとした犯人として追放してやる!」



などと次女と次男が言い始めたせいで、ほかの婚約者たちも乗っかり、一回で犯人を見つけないといけないことになった。


「・・・すまないアウル君、こんなはずではなかったんだが」


「いえ、何とかして見せます」




しかし一回か・・・。でもみんな言ってないだけで、何かしら思うところがあるに違いない。


なんせあれだけ各々の情報を集めていたんだからな。


無難に『犯人は誰だと思いますか?』と聞いてみるとしよう。


嘘つきが浮き彫りになるはずだ。



①ジーニウス

「憶測でしか無いが、

犯人はおそらくイルワマターだと思う」


②ナターシャ

「すみません、犯人は分かりませんがメルミルちゃんは本当のことを言うと思います」


③イルワマター

「おそらくアリスティアが犯人だぜ」


④メルミル

「犯人は分かりません。ただ、ジーニウス様かイルワマター様のどちらかは本当のことを言っていますが・・・、どちらかは嘘をついていると思います」


⑤カミーユ

「正直誰が犯人なのか分からないが、私は犯人じゃ無いぞ」


⑥アリスティア

「きっとジーニウスかイルワマターのどちらかが犯人よ」


⑦ジルコン

「正直なところ、カミーユ様とナターシャさんは本当のことを言っていると思う。すまないが、あとは詳しいことは分からない」


⑧ルクレツィア

「うふふふ、私は犯人じゃないですよ。・・・おませさん?」


一通り証言が出揃ったわけだけど。


第三夫人のおませさんって昨夜も言っていたよな。まさか昨日の夜の空間把握がバレてたのか・・・?いや、そんな風にはみえないけど・・・。


いやでも、俺たちを襲撃させた可能性がある人だ。油断は出来ないか。


しかし、みんなの意見を考えようにも、なにかとっかかりがないと・・・。


「う、・・・ううっ」


「?!大丈夫ですか!皇帝陛下!無理をなさらないで下さい!」


「いまの証言は・・・私にも聞こえていた。・・・私の恩恵のおかげで、分かったことがある。・・・信じたくは無いが、『嘘をついている者が一人いる』・・・ぐっ・・・誰かまでは、今の状態では判断できないが・・・」


「いまはゆっくり休んでください。犯人をきっと見つけてみせますので」


奇しくも、皇帝のおかげでとっかかりが出来たな。ジーニウスが言っていたとおり、嘘をついている奴が一人いるようだ。おそらくそいつが怪しいだろう。


みんなの証言を一度疑ってみるしかないか。


さて、誰が犯人だ?

今後もひっそりと更新します。評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。


ちなみに、嘘付きが犯人の可能性もありますし、嘘付きとは別に犯人がいる可能性もあります。


暖かい目で見てやってください。


皆様のおかげで【ネット小説大賞】受賞しました。双葉社様にて書籍化させて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 二人を提示してどちらかが本当のこと、どちらかが嘘を言ってるって言いきるのって現実だと違和感あるんだね 恩恵ってチートが無いと信じられない証言だよなぁ
[気になる点] ペンダントの説明の部分ですが、 >>イヤリングではなく、全てに集約したのだ。そのほうがずっと身に着けていやすいだろうしね。 イヤリングではなく、ペンダントに全てを集約したのだ。 かな…
[一言] 素直すぎたなぞなぞでしたが、あれです。 証言だけではひとつに絞りきれないけれど、その前の伏線で絞り込める形にした方がよかったのではないかなと。。。
感想一覧
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