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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第4章 帝国お家騒動編
83/177

ep.83 First impression

少し短めです。

結局、野盗のような集団に襲われることもなく無事に国境を越えることが出来た。


もう一度くらい襲撃があると思ったけど考えすぎだったようだ。そして今は3日目の野営をしている最中である。


「アウル様、この辺りは私も昔見たことがあります。おそらく明日の昼には帝都に着くでしょう」


ヨミが言うにはあと一日も掛からずに帝都へとつくらしい。ということは今日が最後の夜ご飯ということだ。


「ご主人様、夜ご飯は何を作りますか?」


「そうだな…」


皇女やヒルナードのキラッキラした目を見る限り、かなり期待してくれているのは分かる。


折角だしちょっと色々と作ってみようかな!


「決めた!」


今日の献立は、『玉ねぎたっぷりチーズグラタン』『ピリ辛ザンギ』『麦飯』『野菜スープ』の4品だ。


どれも一気にたくさん作れるし、手間もそこまでないのに美味しいものばっかりだ。


グラタンに入れる玉ねぎは薄切りにしたものと、摺り下ろしたものの2種類を使ってある。


トマトソースに2種類を入れて炒めることで、普通よりも甘みが際立つのだ。


さらにお肉はオークの豚バラを少し大きめにカットして焼き、容器にペンネと併せていれる。


その上にトマトソースをたっぷりかけてチーズとパン粉をちりばめる。


あとは土魔法で簡易的に作った窯でじっくり焼けば完成だ。


醤油と果実のペースト、胡椒や料理の実の辛味にした粉を入れて漬け込んだサンダーイーグルの肉を、衣を薄めにしてカラッと揚げれば、異世界版ザンギの完成である。


麦飯とスープはルナとヨミが手伝ってくれたので料理時間はあまりかかっていない。


「で、殿下!毒見「いりません!」…はい」


皇女様もあまり食い気味に断ってやるなよ…。ロイエンが可哀そうになってきたよ。


恒例になりつつあるけど、ロイエンは俺のことを睨むの止めなさい。



「んん!この『ぐらたん』という食べ物は凄いです!甘いソースとチーズが絡まって絶妙なお味です!それに存在感のあるお肉も胡椒が効いていて、とっても食欲をそそりますね!」


「殿下!こっちの『ざんぎ』という食べ物も美味いですぞ!少し辛いですがそれがまたいい!肉に味がついております故、麦飯がまたたまりません!……にしても、こんなに香辛料を使った料理など初めて食べましたな。さぞ高かったろうに」


「くそぅ……騎士ではなく料理人になれば殿下の心も射止められたのか…?……悔しいが美味い…」


どれもみんなに好評のようで安心した。皇女はグラタン、ヒルナードはザンギがお気に召したようだ。


それにしてもロイエンは皇女に恋をしていたのか…。それで俺にあんなに突っかかってきていたのか。


なんだか悪いことをしたな。あいつは根はいい奴だろうし、騎士としての仕事もしっかりやっている。


…少々私情を挟みすぎな気もするけど、好きな女のためと考えるなら俺は嫌いではない。


人によっては賛否が分かれるだろうけど、俺はああいう真っ直ぐな奴は応援したいタイプだ。


あと、香辛料というか料理の実で辛味を再現しただけだので、正確には香辛料ではない。けど、希少性は香辛料よりも上だろうな。



最後の晩ご飯も好評だった。片付けは騎士達が率先してやりたがったので、なぜかと思って見ていたら、皿のタレを舐めていたのを見てしまった。


気持ちは分かるが、騎士としてそれはどうなんだろうかと思ってしまうな。



夜番はしなくていいと言われているので、ありがたく休ませてもらった。



朝目覚めると、既にお決まりになっているので朝食を作る。調理が面倒なので、ストックしてあるピタパンに焼いたチーズやベーコン、葉野菜を挟んだもので我慢してもらうとしよう。


「では出発だ!今日の昼過ぎにはつくだろうが、油断せず行くぞ!」


『『おおー!』』


ヒルナードの掛け声に応えるように騎士達が叫んでいる。なんというか、ちょっと暑苦しいけど羨ましい気持ちもあるのは、不思議な感じだな。


油断せずと言ってもここはもう帝国内だし、帝都まであと数時間というところだ。気配察知にも空間把握にも異常は無い。・・・・フラグじゃないぞ?


※※※


墓穴を掘るように立てたフラグだったけど、特に回収することもなく無事に帝都へと到着した。


「これが帝都か・・・。なんか想像の倍以上大きいな。いったい何人が住んでるんだ?」


「アウルでもそんな風に驚くことがあるのですね。帝都にはおよそ30~40万人が住んでいると言われています。正直、細かい数字までは覚えていませんでした」


舌をペロっと出して誤魔化す皇女に思わずドキッとしながらも、それを少しもおくびにも出さない俺は、少しはポーカーフェイスが上手くなったかもしれない。


「ご主人様!」ペロっ

「うふふ、アウル様」ペロリ


・・・うちの子達もなかなか可愛いじゃないか。ただ、俺のポーカーフェイスは見破られていたようだな。もっと精進しなければ。


「観光などもしたいでしょうが、最初は帝城へと来て頂いてもよろしいでしょうか?お祖父様、上皇へと帰ってきた報告をしたいのです。出来れば、兄姉に邪魔される前に紹介も済ませてしまいたいのですけど、駄目ですか・・・?」


うっ!ウルウル上目遣い攻撃だと?しかもさりげなく胸を寄せているせいか、あと少しでいろいろ見えてしまいそうだ。


「もちろん引き受けるよ」


・・・あぁ!?くそっ!気づけば承諾していただと!この皇女なかなかやりおるな。こいつの前だと一瞬も気が抜けないみたいだぜ。



「・・・ご主人様、楽しそうですね?」

「うふふ、この状況を楽しむことにしたみたいね。でもまぁ、折角帝国へ来たのだし、楽しんだ方が得ね」

「それもそうですね」



ルナとヨミが何か言っているが、聞かなかったことにしよう。あいつらは読心力があるみたいだから、下手に反応するとどつぼにはまる。


「ありがとうございます。では急ぎ参りましょう!」


にしても皇女は本当に上皇のことが好きなんだな。挨拶と報告をしに行くのは普通だとしても、その顔が滅茶苦茶嬉しそうだ。お爺ちゃん子なのかな?


帝都の道は王国の石畳よりも綺麗で、道幅も広いように思える。さらには区画整理もしっかりされている気がする。なんというか、どことなく日本の町並みに似ているように感じてしまう。


建っている建物は完全に日本式ではないし、気のせいかも知れないのだが、なぜかそう感じてしまうのだ。


「この町並みは皇女殿下のご先祖様が考えられたものですか?」


「いえ、確かお祖父様がまだ若い頃ですから、たしか今から80年前に大幅に帝都を改造したと聞いていますよ」


「ちょっと待って・・・。上皇様は今何歳なんです?」


「たしか、今年で99歳を迎えるはずです!長生きですよね~」


日本の医療があったとしても99歳はそう簡単に実現する数字じゃないと思うのだが、異世界でそれとはもの凄いな。なにかの恩恵を持っているとかか?


「そういう恩恵の持ち主ってことですか?」


「いえ、お祖父様の恩恵は誰も知らないのです。ただ、火魔法が得意という事が有名ですね。その昔は炎を操る皇帝で、炎帝と呼ばれていたそうです」


炎帝・・・。こりゃまたクセのありそうな御仁だな。98歳の炎帝様とは、焼かれないことを祈るだけだ。



話しているうちにいつの間にか帝城へと着いてしまっていた。


ん・・・?これは、居場所を探られている?


・・・俺の空間把握に似たような魔法か。とりあえずレジストさせてもらおう。誰が発動しているか分からんが、皇女のことを知られるのもつまらん。幸い練度も低いし、周囲に魔力の壁を作っておけば誤魔化せるだろう。


「どうかしましたか?こちらです」


「いや、なんでもないです。あっ、服を着替えた方が良いですか?一応、それなりのを着ているつもりなんですけど」


「そうですね・・・。良くも悪くもお祖父様は少々豪快なので。それにその服装もよく似合っていますよ?」


この皇女、さっきからあざといんだよなぁ。さりげなくウインクしながら服装を褒めてくるとは。分かっていても悪い気はしないから不思議だ。やはり、可愛いは正義なのかもしれない。


ただ、ルナとヨミは自前のメイド服へと着替えることになった。さすがに冒険者の服を着ている2人を連れ歩いていたら、変に思われても仕方ないもんな。


ということで、俺は特に着替えることも無く上皇がいるところへと通されることとなった。明らかにメイドや衛兵が俺のことを見ている気がする。あとルナとヨミにも視線が注がれている。


まぁ、久しぶりに帰ってきた皇女が男を連れてきたらそりゃ気になるか。それに帝城内は跡継ぎ問題でギクシャクしてるって言うし、皇女が婚約者を連れてきたとなれば注目の的だろう。


皇女に案内されて着いたのは、帝城内でも一際大きく綺麗に装飾された扉のある部屋だった。


コンコン

「お祖父様、リリーが学院から帰って参りました。今日はその挨拶に来ました!」


「おや、リリーだって?入りなさい入りなさい!」


中から聞こえてきたのは、少ししわがれたダンディーな声だった。


皇女が扉を開けるのでその後ろに付き添うように中に入る。というか入って良いんだよな?


「お祖父様、今日は紹介したい人がいるの。私の婚約者のアウル様です」


皇女に紹介されたので挨拶をしようと前に出ると、俺の目の前には半身を起こしてベッドにいる老人がいた。ただし普通の老人ではない。


服の上からでも分かるほどの筋肉に、綺麗な白髪。そして決定的だったのはその目。その瞳の色は、前世でよく見た黒目だったのだ。


「ご紹介に与りました、アウルと申します。平民という身分ではございますが、皇女殿下にはよくして頂いております。お見知り置きを」


「お・・・」


「お?」


「お前の血は何色だぁぁぁぁぁあ!!」


ファーストコンタクトの第一声は、老人とは思えないほど力強い叫びだった。

今後もひっそりと更新します。評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。


私の小説を読んで頂いて、少人数でもこのご飯食べたい!」とか「今日のご飯これにしよ!」とか思ってもらえたらいいなって、最近思います。飯テロ最高です。

※ただし一旦ここで飯テロ回は終わりです(予定)※


皆様のおかげで【ネット小説大賞】受賞しました。双葉社様にて書籍化させて頂きます。


<呟き>

お陰様でもう少しで1000万PV達成することが出来そうです!(現在990万PVくらい)とてもありがたいです。これからもちょっとずつではありますが、更新頑張っていこうと思います!

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― 新着の感想 ―
[一言] ザンギ!? 作者さんは道産子説
[気になる点] 「あとミレイとヨミにも視線が注がれている。」 これ、ルナとヨミの間違いでは?
[一言] >その描写もありですねぇ〜!参考にしていいですか?笑 感想の返信有るか見に来てみたらナニ言ってやがるかなあw ???「汝の為したい様に為すが良い、それ故に理性的に生きよ」 ●▼■「でもそれ…
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