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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第3章 ルイーナ魔術学院編
80/177

ep.80 10cm

皆様のおかげで【ネット小説大賞】受賞しました。双葉社様にて書籍化させて頂きます。

久しぶりに夢を見た。


チョコレートや砂糖が身近にあって、チョコレートケーキやプリンが当たり前にあった。


夢の中の俺は少し大人びていて、周りにはルナやヨミ、ミレイちゃんの姿があった。そして彼女たちは小さい子供を抱きつつお菓子を食べて、楽しそうに談笑していた気がする。


微笑ましい光景に思わず頬が緩んだのを、朧気ながらに覚えている。


「この依頼が終わって、一息つけるといいけどなぁ」


元宰相を暗殺した犯人は分かっていないとは言え、俺は必要以上に頑張りすぎな気がする。これが終わったら俺、絶対のんびりするんだ。


これは決してフラグじゃないからな。


とは言え、昨日から俺はルナやフランゼンさん、アルフから厳しい所作指導を受けている。普通ここまでやらなくてもいいような気がするが、念には念を入れておいて損はない。


これから疑心暗鬼なドロドロの世界で皇女を守らないといけないのだから、最低限は身につけるつもりだ。比較的に食事関連の所作は簡単に身についた。


前世の経験も活かせるとあって、難易度はそこまで高くなかった。マナーがほとんど同じだったのが救いだな。


「主様、食事作法はほぼ問題ありませんが、もっと美味しそうにお食べください」


いや、こんな堅苦しい食事なんて全然味がわからないよ。というか、アルフがかなり厳しいんだけど、なんでこんなに作法に詳しいんだろう。執事だから当たり前と言えば当たり前なんだけど、人間の作法にも精通しているとか何者なんだろう。


「ご主人様、歩くときはもっと背筋を伸ばすとなお良いかと思います」


・・・意外とルナも厳しい。婚約者という立場になってからルナ含め、みんなとの距離感がグッと縮まったのはいいことなんだけど、一気に尻に敷かれてしまった気がしてならない。


その方がうまく行くような気はするんだけど、いざってときに男の威厳がないのは嫌だなぁ。そういう時に男を立ててくれるような女性だったら最高なんだけど。


・・・想像つかないな。俺が何かする前にこの3人が解決してしまいそうな気がする。皇女と話した時も割って入って来ちゃったし。今後の課題かな。


所作や作法、マナーといった貴族と接する上での最低限のことは覚えられたと思う。あとはその場その場で対応するとしよう。念のためにお菓子を多めに作っておいて、困ったらそれで解決しよう。


あとはウォーターベッドと羽毛布団、ロッキングチェアを複数用意した。これは個数限定での発売だったはずだから、交渉材料にできるだろう。



「あとは暗殺対策だな。悪意感知である程度は防げそうだけど、プロの暗殺者だったら効果が薄いし難しいな…」


みんなに渡しているような魔道具があれば障壁が張れるし、他に毒無効とか付与できれば最高なんだけど、あれは国宝級らしいからそう簡単に渡すわけにもいかない。


「毒無効のペンダントくらいなら大丈夫か?あとは1重の障壁が自動展開されるイヤリングとか」


これくらいならいいかな?障壁は魔結晶を使って作るとして、毒無効はレティアに相談してみよう。さすがに俺1人の手に余る。


レティアを探すと、ソファーでムーランに魔法の基礎を教えていた。邪魔するのは忍びないけど、色々試行錯誤したいからな。


「レティア、悪いんだけど今ちょっといいかな?」


「構いませんよ。ムーラン、今から少し休憩です」


ムーランもちょうど疲れていたのか、ソファーでぐったりとしてすぐに寝息を立て始めてしまった。どうやらレティアは少々スパルタなのかもしれない。


「・・・というわけで、毒無効のペンダントを作りたいんだけどどうしたらいいかな?」


「どういうわけかよく分かりませんが、毒無効ですか。無理ではありませんが、必要な材料を揃えるのが難しいかもしれません。付与自体は私ができるので問題ないですが、高純度の魔結晶とミスリルが必要になりますよ?」


ミスリルはグラさんから貰ったのがまだ残ってるはずだ。魔結晶も自家製のならあるけど、これでいいのかな?もしダメだったらSランク以上の魔物を狩に行かないといけないかもしれないぞ。


「魔結晶はこれじゃダメかな?」


「む、問題なさそうですね。しかしこれほどの魔結晶ともなると、そう簡単には入手ができなかったでしょう?」


…言えない。魔石から魔結晶を作り出せるなんて言えない。


「これは使っても問題ないやつだから気にしないで!」


「そうですか?では魔結晶には私の方で付与をしますので、先にミスリルで彫金と鎖部分をお願いしますね」


簡単に言ってくれるけど、本当だったらめちゃくちゃ大変なんだぞ?龍と人間を一緒にしないで欲しいところだな。まぁ、俺は魔力にものを言わせるから出来るんだけどさ。


1時間かけて彫金など諸々を終わらせて、レティアに毒無効の付与をしてもらった。付与自体は一瞬で、深緑色だった魔結晶が綺麗な紫色へと変化した。雰囲気的にはアメジストだろうか。とにかくめちゃくちゃ綺麗だ。


こんなんなら3人の分もいつか作ってみようかな。


「ありがとうレティア」


「いえいえ、この程度でしたらいつでも言ってください」


レティアはこんなにも優しくて完璧なのに、ことグラさんが絡むと情けなくなるんだよなぁ。2人とも自分のことには疎いうというか、なんというか。とりあえず今後もちょっとずつ見守って行こうと思う。



とにかくレティアのおかげで『毒無効のペンダント』が完成した。我ながらかなりいい出来映えだと思う。


これも下手したら国宝級かもしれない。この依頼が終わったら国王にでも売りつけようかな?きっとかなり高価なはずだ。


レブラントさんに頼んでオークションに出すってのもありか。・・・いずれにしろ夢が広かるね!





「あとは服の用意か〜。いつもの服屋に行けばなんとかなるかな?」


「ご主人様!私に任せてください!完璧に服をお選び致します!」

「うふふ、私にお任せください。アウル様の魅力を最大限引き出す服をお選びしますよ」

「アウル、私よね?」


おっとっと〜?みんなのバトルが急に始まってしまったぞ。しかも3人ともなぜか俺じゃなく3人で睨み合いっこしてるし。


「みんなで行くってのは…?」


「ないですね」

「ふふ、ありません」

「ないわね」


3人ともなぜか体から魔力が漏れ出している気がするんだけど、気のせいだろうか?いや、気のせいじゃないな。これが覇気ってやつなのか?


今にもバトルになりそうだし、ここはジャンケンで決めてもらおう。ということでジャンケンについて説明したところ、3人とも納得したのか真剣そのものだ。


おそらくこの魔力の流れは、3人とも身体強化と視力強化を発動している気がする。・・・そこまでする理由はなんなんだ?ただ俺の服を買いに行くだけなのに。



あっ!もしかしてこれはデートになるってことか?



だとしたら誰が俺とデートするか争っているってことだよな。理由がめちゃくちゃ可愛いんだけど。今回服を買いに行くのとは別に、今度それぞれとデートしよう。


「「「ジャンケンぽんっ! あいこでしょっ! あいこでしょっ! あいこでしょっ! あいこで〜〜〜・・」」」


そこからどれだけの時間が経っただろうか。…いや10分もかかってないけど、ジャンケンで10分は長いよな?


長い死闘の末、勝ったのはミレイちゃんだった。恩恵の賜物か、はたまた運のなせる技なのか。いずれにしろ、帝国にミレイちゃんは行かないし、ある意味ではちょうどいいかもしれない。


「じゃあ今日はよろしくね」

「うん!着替えてくるからまってて!」


待つこと30分でミレイちゃんが降りてきた。髪型も少し変わっていて、服装もいつもより一段と可愛く見える。


元々美少女ではあったけど、ゆるふわなスカートやブラウスだけでこんなにも可愛くなるとは。俺の幼馴染は最高ですか。


「お待たせ!はやく行こうアウルっ!」

「うん!じゃあ、行ってきま〜す!」



ほぼ初めてとも言えるデートに、俺もミレイちゃんもドキドキで、最初は少しドギマギしたけどそれも服屋に着くまでだった。


もともと、どんな服を買わないといけないかはルナやアルフに言われているから悩むことはない。あとは細かいところや色合いなどを調整するだけだ。


正直俺はセンスがないと思うので、女の子に選んでもらえるのはかなり助かる。ミレイちゃんも王都に来てセンスが磨かれたのか、元々よかったのか分からないが、普段着ている私服は可愛いものが多い。


俺も何回か買ってあげたけど、いつもは迷宮での素材を売ったりして稼いでいるらしい。ルナとヨミも全面的に協力していると言っていた。本当はお小遣いとかあげようかとも思ったんだけど、いらないと固辞されてしまったからな。


食べ物とかのお裾分けなら貰ってくれていたのに、お金については小さい頃からしっかりしていた気がする。これはある意味、貧乏農家の特性なのかな?



しかし、俺は甘く見ていたかもしれない。今日は俺の服の買い物なので遅くならないと思っていた。実際には俺の服の仕立てや小物の選択など、さほど時間がかからずに終わった。


ご飯でも食べて帰ろうと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。そのあと色々な雑貨屋を見て回ったり、露店を物色してみたり、ミレイちゃんの買い物に付き合ったりであっという間に夜になっていた。


さっき露店で買った少し酸っぱいけど甘いフルーツは絶品だったな。また買いに行こうと思う。こう考えると、意外と王都の店でも見たことないのがチラホラあって楽しいものだ。



今回のデートで思ったことは、早々にみんなとの時間を作った方が良さそうだ!ということかな。もっとみんなと向き合う時間を作っていこう。



ミレイちゃんと歩いてるうちに王都の中でも少し小高いところに着いた。そこからは王都が見渡せて、ぼんやりと明るい綺麗な景色だった。


ベンチがいくつか置かれていて、休むには最高の場所かもしれない。


座っても綺麗な景色が一望できるから、ここは俺もお気に入りの場所になりそうだ。




「凄い…。王都にこんな場所があったなんて知らなかった」


「でしょ〜?クラスの友達に教えてもらったの。アウルと来てみたかったんだ〜」


「俺と?」


「そう。アウル、私はずーっと前からアウルのこと、好きだったんだよ」





ミレイちゃんの方に顔を向けると、すぐ目の前にミレイちゃんの顔があった。10cmも離れていない。



「えっと…俺も多分、好きだったと思います」



思わず敬語になっちゃったよ。



「多分ってなによ〜!…まったくもう、アウルは女心はまだまだね〜、ふふふ」



ち、近い…!もう少し近づけば鼻がぶつかりそうなほどに近い!


心なしかミレイちゃんの顔が赤く見えるけど、きっと俺の顔はそれ以上に赤いはずだ。



「あはは、めんぼくない」


「まぁ、それを含めてアウルなんだけどね」








「「・・・・」」







い、いいんだよな?目、閉じてるし。ここで行かなきゃ男じゃないはずだ。


勇気を出してゆっくりと顔を近づけて、不慣れながらも俺とミレイちゃんの唇が触れた。




「んっ…!」




ふぉおおおお!なんて可愛い声出すんですか?!というか、柔らけぇ!しかも、心なしか甘酸っぱい?




時間にしてどれくらいしていただろうか。緊張しすぎてよくわからなくなってしまった。




「……ぷはっ!長いわよ!」


「ご、ごめん!なんか止めたくなくて…」



思ったより長い時間してしまったらしい。でも、やめたくなかったのだから仕方ない。




「そ、それは私もそうだけど…」


「あはは、なら鼻で息すればよかったのに」


「……鼻息荒いみたいで、可愛くないじゃない」



ふぁっ!?いや、今の照れてるミレイちゃんの方が可愛いんですけど!!思わずキュン死するところでしたよ?!


堪らずもう一度キスをしてしまった。今度は一瞬触れるだけのバードキスだ。



「ごめん、可愛くて我慢できなかった」


「~~っ!!」


身悶えてはいるけど、嫌そうじゃないから安心した。初キスはレモン味っていうけど、どっちかというとさっき食べたフルーツの味だったかな?


あ、初キスはルナだっけ?でも俺からしたのはこれが初めてなはずだ。



「じゃあ、みんな待っているだろうし帰ろうか」



家に帰ると、俺たちの雰囲気の変化を目ざとく察知したのか、ルナとヨミにミレイちゃんが連れていかれた。


ドナドナ~ってか。


夜ご飯はアルフが作ってくれていたのでそれを食べた。


アルフにハンバーグを教えたら、ものすごい勢いで吸収して今では色々な種類のハンバーグが食卓に上がるようになった。


ポテトサラダが入ったものやチーズが入ったものなど、アルフのアレンジ力は地球人並みだと思う。


・・・ただ毎度毎度ハンバーグってのも飽きそうだから、そろそろ違う料理も作ってほしいところだ。



結局、準備期間としてもらっていた一か月の間は学校に通いつつも作法の練習や、レブラントさんに頼んで情報収集をしていた。


あとはお菓子を作ったり、お土産を用意したりした。


家の管理はマリアーナさんとレティア、グラさん、ティアラにお願いしてあるから、万が一もないだろう。


にしてもレティアとグラさんはいつまでこっちにいるんだろう?


何かあった時のための連絡手段は用意したから問題ないはずだ。



皇女から手紙で追って連絡がきていたので、指定通りの場所に今回は早めに到着するようにした。


するとなぜか皇女がすでにおり、またもや若い騎士が暴走するといった面もあったが、同じ方法で黙らせておいた。


もちろん手加減はしたけどね。



「お久しぶりですね。では早速出発いたしましょう。詳しいことは馬車の中で話します」


皇女が用意したという馬車はかなり普通に見える。というか皇女が乗るような馬車にみえないというのが印象だな。


しかし、馬は普通じゃない。魔物図鑑で見たけど、おそらくCランクのラピッドホースだ。


御者が魔物をテイムしているってことなのかな?


「おお!」


中に入ってみると、印象ががらりと変わった。中は外から見るよりも広く、いわゆる空間拡張が行われていた。


「凄いでしょう?これは迷宮で取れた魔道具を使っているのですよ」


帝国にある迷宮にはずいぶん凄い魔道具があるんだな。これは帝国にいる間に一度は潜ってみたい。


「改めて、今回の依頼を受けていただきありがとうございます。これから約4日かけて帝国へと移動します」


本来なら10日以上かかるらしいが、魔物にひかせることでかなり短縮できるそうだ。


しかも、その速さに耐え得る強度と耐震性をこの馬車は持っているらしい。


王国とは技術力が違うのかもしれない。もしかしたらバネやサスペンションでも仕込んであるのか?


馬車の中では思ったより寛げる作りとなっていた。ソファーが普通についているし、小さいながらもテーブルもある。


皇女と雑談を交えながら詳細を話したり、各々休憩したりして、ゆったりとした時間を過ごしていた。



「何事もなく帝国に着けばいいですね!」


・・・ルナさん、それは完全にフラグです。

本話で第3章終了です!本当にありがとうございます。


次話から【第4章:帝国お家騒動編】がスタートします。


今後もひっそりと更新します。

評価・ブクマして貰えたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] チーズハンバーグは解るけど、ポテトサラダのハンバーグはイメージできなかったです_| ̄|○ 付け合わせとしてのポテトサラダなのか?ハンバーグにポテトサラダが入っているのか気になります(*´ω`…
[気になる点] 「男を立ててくれるような」 こういう考え方はちょっと… まあ、チーレムものだからある程度は仕方ないのかな。
[気になる点] ペンダント3人分って言うけど主人公そもそも毒無効ですよね 後2つなはず
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