ep.79 皇女の願い
皆様のおかげで【ネット小説大賞】受賞しました。双葉社様にて書籍化させて頂きます。詳しくは活動報(略
今あの皇女様はなんて言った?もしかしなくても婚約者として帝国について来いっていったよな。・・・気になることがたくさんあるんだが。まず何故俺なのか。・・・いや、考えるのも面倒だな。聞けばいいだけか。
「えっと、それはどういう・・・?」
「もちろん、本当に私の婚約者になって欲しいというわけではありません。とりあえず私が帰省する2ヶ月間だけで良いのです」
えぇ・・・?なにそれ。余計意味分からないんだけど。
しかし、俺がその真意に答えてくれたのは全くの別人だった。
「アウル、その皇女様の言うことを聞いては駄目よ。その皇女様はアウルを体の良い護衛にしようとしているだけなんだから」
「・・・アリス?」
俺の真意に答えてくれたのはアリスだ。でもなんでこんなところにいるんだろう。最近邪神教関連で家が忙しかったって聞いていたけど。アリス自身はそこまで忙しくはないのかな?
「久しぶりアウル、エリーも会いたがっていたけどあの子も忙しくってね。私だけ来たの」
エリーが会いたがっているってのもなんとなく怖いけど、まぁ友達だから普通か?
「あなたは、アダムズ公爵家の娘ね。あまり変なことは言わないで欲しいのだけれど」
「間違ってはいないですよね?・・・あなたのお祖父様の死期が近いのでしょう?」
どういうことだろう。お祖父様ってことは皇帝の父、つまりは上皇ってことか?ってその死期が近いのと、俺が帝国に行くことになんの関係があるんだ?
「・・・・王国の諜報も、あながち侮れないようですね」
「えっと、全然よく分かんないんだけど、結局どういうこと?」
「・・・はぁ、仕方ありません。こうなっては全て説明せざるを得ないようですね。折角なので、もうご存じかも知れませんが貴女も聞いていってください、アリスラート」
そこからは諦めたのか色々と話してくれた。要約するとこんな感じだった。
・上皇の死期が近づいており、この際に皇帝がそろそろ代替わりして新たな皇帝が誕生するかもしれない
・上皇はリリネッタ第三皇女が大のお気に入りで、死ぬ前に婚約者の顔が見てみたいということ
・上皇が死ぬ前に、将来の夫がいること教えて安心して欲しいということ
・上皇に気に入られている第三皇女は、他の兄姉達によく思われていないということ
・今回の帰省を機に暗殺されるかもしれないということ
・護衛兼婚約者役をしてほしいということ
おおまかにはこういうことだろうか。・・・要は殺されるかも知れないけど、上皇が死ぬ前に嘘でも安心させてあげたいということなのだろう。
『優しい嘘』ってやつかな。人によって賛否両論かもしれないけど、俺は嫌いじゃない。この皇女様がどこまで本当のことを言ってるのかは分からないけど、今言ったことは嘘じゃないはずだ。それにアリスも特に言い返していないところを見ると、信憑性はありそうだ。
「優しい嘘、ですね。・・・なんとなく分かる気がします」
ルナは思うところがあるのか、皇女の気持ちが分かるようだ。まぁ、嘘も方便とも言うしね。・・・しかし、分からないことがまだある。
「でもなんでアウル様なんですか?」
そうなのだ。俺である必要が無いと思うのが正直なところだ。もっと隠密のような護衛や直接的な護衛を雇って、もっと地位のある人に将来の夫役を頼むという手も考えられる。
「・・・本当に思い当たる節はありませんか?」
皇女が俺の目をジッと見て聞いてくるけど、全く思い当たる節がない。
「いや、ありませんが・・・」
「・・・そうですか。・・・その顔から察するに、直接的な護衛を雇ってもいいのでは?とお思いでしょうが、実際に考えてみてください。実家に護衛を連れた私がいたとして、私の兄姉達はどう思いますか?」
・・・確かに。言われてみるとそうだ。護衛を連れて帰ってきたとしたら、「私は貴方たちを信用していません」と暗に言っているのと同義だ。逆に余計な争いの火種を生む可能性すらあるか。
「そういうことですか。・・・だから護衛も出来る婚約者役が必要なのですね?」
「分かって頂けたようで何よりです。それに、貴方は11歳とは思えないほどに強いですから」
自慢ではないが俺は11歳にしては成長が早いほうだし、落ち着いていると思う。それに魔法も武術も困らない程度には使える。疑われない婚約者にするには最善ではないにしても、最良ではあるという訳か。
「ただ、それでもまだ問題がありますよね?」
「・・・身分、ですか?」
「その通りです」
俺は平民でしかない。一応、国王からフィレル伯爵の後釜じゃないだろうけど、伯爵位が貰えるとアリスから聞いている。ただ、あくまでそういった話があると言うだけで、実際に貴族というわけではないし貴族になるつもりもない。
「・・・良くも悪くも帝国は実力主義な一面があります。最初は受け入れられるまでに時間が掛かるかも知れませんが、貴方の、アウルの実力なら問題ないでしょう。・・・かく言う私のお祖父様も元は平民らしいですし」
そうだったのか・・・。知らなかったとはいえ、帝国は思ったより自由な国だったんだな。平民でも皇族になれるかもって考えると、夢のある国だな。
「そうですか・・・」
・・・あれ、なんかこの流れ拙くないか?このまま行くと俺帝国行くことになりそうじゃない?ぶっちゃけアリスも止めろって言ってたし。
「アウル、その皇女様のご兄姉はかなり好戦的なことで有名よ?・・・長女に至っては特に残忍という噂ね」
なにそれ?!なんでそんな情報後出ししてくるんだよ。でもそんなんだからこの皇女様も焦ってるのかもしれないな。いや、今のところ行くつもりはないんだけどもね。
「無理を言っているのは分かっています・・・。もしこの依頼を受けてくれるのであれば、貴方には如何様にもお礼をしようと考えていますから・・・どうか・・・。時間もあまりないんです・・・」
くっ・・・縋るような目がまるで、捨てられた仔犬のような・・・。
「アウル、最後に決めるのは貴方よ。それにさっきからあなたの女の子達も黙っているでしょう?つまりはそういうことよ」
・・・確かに言われてみれば。さっきからみんなが黙って聞いている気がする。正直助ける義理もないし、悩む必要も無いんだけど。
けど、この皇女様の目は昔、商館にいた頃のルナの目に似ているんだよなぁ・・・。なんつうか、見捨てたら悔いが残るっつうか。我ながら甘いというか頭悪いというか。
「・・・お礼は何を貰えるんですか?」
「!!なんでも!貴方が望むならなんでも!・・・我が一族にのみ代々伝わる『ちょこれーと』という食べ物のこともお教えします!」
・・・いまチョコレートと言ったか?チョコレートと言ったらあのチョコレートのことか?
「リリネッタ第三皇女様、貴方を助けましょう。婚約者役兼護衛を私に任せてください」
「「「「?!」」」」
3人とアリスが驚いている気がするけど、この際関係ない。まさかこの世界にもチョコレートがあるとは思わなかったぞ。・・・もしかしたら、この世界に昔地球人が転生したのかもしれないな。そのことももしかしたら分かるかもだし、俺にとっても完全にマイナスというわけでもないか。
「よ、よろしいのですか?!ありがとうございます!!」
!!・・・この皇女様、着痩せするタイプだったのか。しかし、急に抱きついてくるとはなかなか大胆な皇女様だな。もちろん嫌いではないが。
はっ!殺気?!それも、ホーンキマイラ級?!
「ご主人様?」
「アウル様?」
「アウル?」
おっとっと~?まぁそうなるよね。ごめんなさい。
「・・・はぁ、こうなると分かってたから私がこうして止めに来たのに。わかってる?その人は他国の皇女様なのよ?・・・あなたに助ける義理なんて全くないの」
アリスの言う通りなんだけどね・・・。この王女はきっとまだ俺たちに言ってないこともあるだろうし、性格にも難はある。それに、俺を騙そうとすらしていた。ここでついて行ったらきっと大変なんだろうし、面倒になるとは分かっているんだけど・・・。
それ以上に『チョコレート』への渇望はとんでもないのだ!!!考えてみて欲しい。今回無事に終わればチョコレートが手に入るかも知れない。いずれ自分の畑を持ったとき、農作業の合間のおやつタイムにチョコレートケーキが出てきてみろ。
「控えめに言っても最高じゃないか?」
「?なにがよ」
「ンンッ!とにかくだ。このまま見捨てるのも忍びない。・・・それに、帝国の第三皇女様を助けたとあったら、それはとんでもない貸しになるだろう?王国的にも悪いばかりの話ではないはずだ」
「・・・それは、そうだけど。・・・死ぬかもしれないのよ?」
「まぁ、なんとかなるさ。事前に準備はさせてもらうけどな」
「ふーん・・・。ずいぶんその皇女様には優しいのね?」
なんだろう。なんとなくアリスの言葉に棘があるような気がするんだけど、気のせいかな?
「みんなには悪いけど、皇女様の依頼を受けようと思う」
「ご主人様が決められたのなら、文句はありません」
「うふふ、もちろん私たちも着いていきますけどね」
「・・・・・」
・・・ミレイちゃんはあまり納得していないみたいだけど、どうしたもんかな。本当は危ないからミレイちゃんには王国で待っていて欲しいというのが本音なんだけど。
「ミレイちゃん、えっと」
「・・・アウル、私は村に帰るわ。じゃないと、みんなに上手く言い訳できないでしょ?それに、私じゃ足手まといになるかも知れないし。ただし!みんなに手を出しちゃ駄目よ?あと、お土産をたくさん買ってくること。・・・あと、帰ってきたら一番に私に会いに来て」
これが天使ってやつか?可愛すぎだろう。
「分かった。ありがとう、ミレイ」
「わ、分かれば良いのよ・・・!」
本当にいい女性だ。ミレイちゃんにはチョコレートが手に入ったら一番に御馳走するとしよう。
「というわけで皇女様、その依頼受けるよ。ルナとヨミは俺のメイドか何かで連れてきた体にしようと思う」
「えぇ、それで構いません。・・・本当に、ありがとうございます。詳細な報酬やお礼については後日ゆっくりお話ししましょう。出発は1ヶ月後なので用意しておいてください。また、遣いをやりますので」
そう言い残して皇女様は去って行った。
「ほんと、アウルはお人好しね。このことはエリーにも伝えておくわ」
アリスも言い残して帰ってしまった。
「一時はどうなるかと思ったけど、婚約者のフリをしろってことだったんだね。ちょっと安心した」
「ご主人様、あまり信用しすぎない方がよろしいかと・・・」
まぁ、そうか。あの子は皇族だし、腹芸はお手の物かも知れないしな。元々手紙1つで俺を騙そうとしたり、若い騎士を敢えて焚き付けて俺の実力を確認したり。色々問題はあった。
「あぁ、わかってるよ」
それでもチョコレートは魅力的だ。ずっと欲しいと思っていたのだ。この機会を逃す理由はない。それに、あの縋るような目は嘘ではない気がするのだ。
誰かに真に助けを求めているようなあの目は。
「我が儘言ってごめんみんな。今回もよろしく頼む」
「もちろんですよご主人様!」
「ふふ、いくらでも頼ってくださいね」
「私も出来ることはするわよ!」
「主様、いくつか問題が」
うおっ。そう言えばアルフがいたんだったな。完全に忘れてたよ。というか途中から気配消してなかったか?
「問題って?」
「はい、まずは所作等の稽古、皇族と会っても恥ずかしくない服装の準備、あとは毒殺等に対する用意、でしょうか」
確かに・・・。最低限の所作は覚えないといけないかな。服は適当に買うとして毒殺に対するなにかはちょっと考えよう。手土産なんかも用意した方が良いだろうし。
「やることはたくさん有るってわけね」
「そういうことでございます。幸い、ルナ様は元王女という話ですし私も所作はお教えできるのでなんとかなるでしょう」
面倒だけどやるしかないか。両親とシアには申し訳ないけど帰省は我慢してもらおう。ミレイちゃんにお土産とかいろいろお願いして持って行ってもらおう。
さて、あと1ヶ月の間で頑張って準備しますか。
細々と更新します。
評価・ブクマして貰えたら嬉しいです。
次章より【帝国お家騒動編】が始まります。
(81話からになります・・・もしかしたら章の名前やこの話を後日変更及び改稿する可能性がありますが、ご容赦ください)
作者の個人的な意見として、最善がbestで最良betterだと思います。




