表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第3章 ルイーナ魔術学院編
53/177

ep.53 入学試験②


試験会場へと移動すると思っていたよりも会場が広い。会場は全部で5箇所に分かれていて、一つの会場に100〜200人くらいいそうだ。


ってことは受験者は800人近くいるってことか?!子供がそんなに集まるってのはなかなか面白いもんだな。


『ではこれより入学試験を始めます! 最初の試験は国語です! 試験問題が配られたものから試験始めてください!』




入学試験は午前が筆記試験で午後からが実技試験となっている。日本のテストと違って試験問題は数種類あり、ランダムに配られるのでカンニングの心配はないらしい。さらに国語の試験問題が終わったら、職員に手を挙げて伝えると算数の問題が配られる。それも終わったら、昼休憩に入っていいのだ。



渡された問題に一通り目を通して見たが・・・こんなもんなのか?完全に小学生高学年レベルだ。こんなの20分もあれば終わってしまうぞ?


・・・いや、受験生は皆10歳ってことを考えたらそこまで変ではないか。


結局念入りに解いて、何回も見直ししても30分で終わってしまった。ということで次の算数の試験問題に移ったが、これも30分で完璧に終えてしまった。



終わったということでさっさと筆記試験の試験会場を抜け出した。


「っはぁ〜・・・。簡単すぎて逆に気疲れした。腹も減ったしどうすっかな。そういや学食があるってルナが言ってたっけ。試しに行ってみよ!」



入学試験が行われている時は学院が休みなために、他の生徒はいないようだ。ただ受験者のために学食は利用できるとルナが言っていた。そこまで期待はしてないけど物は試しだし、経験しておこう。



学食に着くとほとんど人がいない。そう、ほとんど。


「へぇ・・。ゆっくり念入りに解いたとはいえ俺より早い奴がいるのか。って、アリスと王女様もここで飯食ってるんかい」


「あ!アウル〜!こっちこっち!」


人はそこまでいないみたいだし今はいいか。


「随分早いんだな2人とも」


「ううん、そんなことないわよ。私もアリスもついさっき来たばかりだから」


「私たちは子供の頃から家庭教師に勉強をみっちり教えられているからね。それにもう少しすれば他の貴族の子息たちもくると思うよ」


「うへぇ・・・。じゃあさっさと飯食って午後の部に備えるとするか」




ちなみにお昼ご飯は焼きたてパンと野菜スープ、オークのステーキだった。味はまあまあだが凄いのは量だ。銀貨1枚で物凄いボリューミーなご飯だった。1000円でこれだけ食えれば食べ盛りな子供達は満足だろう。貴族の子息がこれで満足するのかは疑問だが、金を出せば美味いものも食べられるのだろう。さっきメニューに金貨1枚ってのもあったしな。


「そう言えば聞いた?今年は受験者が多すぎて実技の試験官が足りないから、一般の冒険者を採用しているらしいわよ」


「え、そうなの?というかアリスがなんでそんなこと知ってるの?」


「そうよ。アルバスにも声がかかったしくて、それで聞いたの。一応Aランク以上の冒険者のみを対象にしているらしいわ」


「ふーん、Aランク以上ねぇ・・・」


その後も他愛のない話をしながら時間を潰した。




っと、ゆっくり食ってたつもりはないがそろそろ筆記試験を終えた奴が来始めたな。さてと、場所変えるか。


「じゃあ俺は行くわ!」


「あら、私とアリスと一緒に行動すればいいのに」


「いや、それは遠慮しとく。試験会場も違うみたいだし、それにまだ目をつけられたくないからね」


それに王女様やアリスに気付き始めた貴族の子息たちの声がちらほらと聞こえるしね。


にしても冒険者に頼らないといけないほど子供が集まるとはな。でもいい機会だ、これでAランク以上の冒険者がどれだけ強いか知ることができる。




実技の試験会場にはアリーナ席のように座る場所がたくさんあったので、そこで適当に座って時間を潰した。



『では今から30分後に武術の実技を始めます!各自準備をしてください!』


それじゃあ俺も適度に頑張ってみようかな。




試験官はたくさんいるが、冒険者風の男や女も何人もいる。おそらくこの冒険者風の人たちが依頼されたっていう冒険者だろう。装備をよく見ると確かに高そうなものが多いし、動きが独特で面白い。


特に凄いのはあそこの2人だ。動きに無駄が少なく魔力も半端ない。試験用の大剣と双剣を自在に使いこなし、さらに服装がメイド服な上に綺麗な銀髪と茶髪。そうまるで・・・



「ってルナとヨミじゃねえか!!!!」



なんでなんでなんで?!?!まさか依頼ってそういうことか!!内緒にしてたのか?!うわ、しかもなんか人だかりできてる。なんでだ?





モブA「おい!あっちに試験官として水艶さんと銀雷さんが来てるらしいぞ!行こうぜ!」

モブB「まじか?!最近急激に力をつけて来ているっていうあの2人か!超絶美人なんだろ!!行く行く!」

モブC「華麗に戦場を舞うというあの2人か!高ランク冒険者のパーティーの誘いを悉く断るので有名なあの2人がどうして!」



なんて説明ゼリフの似合うモブ3人なんだ。でもここにいるってことはあの2人ってAランク以上の冒険者になってたのか。言ってくれたらお祝いしたのにな。


というかかなり人気あるみたいだけど、今2人に近づいたらまた違った意味で目立ちそうだしあっちには行けないな。


・・・ついでに気配も消しとくか。




簡単にウォーミングアップを済ませていると職員から声がかかった。どうやら武術試験が始まるらしい。説明を聞いていたが、魔法の使用は禁止で純粋な武術のみでの試験のようだ。



魔力を使ってはいけないというのはやや不安だけど、まぁなんとかなるだろう。



自分の番が来るまで目の前で貴族の子供達が試験官に挑んで行くのを見ていると、明らかに他とは太刀筋のレベルが違う男がいる。……凄い、太刀筋が速すぎて全部は見切れないかもしれん。まさに正統派剣術って感じか?あれを見切ろうと思ったら感覚強化しないと厳しいだろうな。魔法も使わずにあの動きとは恐れ入る。


とは言っても学生レベルか、それにちゃんと対応するあの冒険者も大概だがさすがは上級冒険者だ。




お、あっちは正統派というよりは実践的な剣術を使う奴か。剣に加え蹴りや殴打といった体術も駆使した戦闘スタイルだな。普通に戦うとこういうやつの方が厄介なんだよなぁ。もしこいつが魔法も使えるんだったらなかなかに厄介かもしれん。



『次、123番!』


どうやら呼ばれたみたいだ。


「はい」


『お前の武器は、その杖でいいのか?』


「はい、大丈夫です」


武器は本来、試験用の武器を選んで使うらしいのだが俺の杖は木製。だから特に何も言われなかったのだろう。


『でははじめ!』


さすがに試験官はルナとヨミでは無かったようだ。あの2人が試験官だったら八百長を疑われかねないしな。それに、あの2人が変に気を利かせて手加減とかしないとも限らない。・・・いや、それはないか?本気でやられても困るけど。



俺の試験官はこの学校の職員じゃないらしい。立ち姿から判断するに明らかに只者じゃない。というか絶対Aランクですらないだろ?!はっ?!ルナとヨミの視線!


2人の方に視線をやると何かを期待している目だ。その後アリスたちにも視線をやるとなんかニヤニヤしてやがる!!まさか謀られた?!


あたりからは憐れむようなヒソヒソ話が聞こえて来る。その中にはさっきの説明ゼリフが似合う3人もいた。


モブA「あいつを担当している試験官ってまさか、Sランク冒険者の千剣のヨルナードじゃないか?!」

モブB「ヨルナードだって?!冒険者としてだけじゃなく、ヨルナードがいる戦争は勝利の女神が微笑むとも言われるほど傭兵としても有名なあの男か!?」

モブC「いや間違いないぞ!あの隻眼で長い髪を三つ編み込んでいるのはヨルナードに間違いない!」

モブA「かわいそうに・・・。あの男はその昔、試験官をした時に次々と受験者を病院送りにしたことがあるらしいぞ」

モブB「あいつ終わったな」

モブC「冥福を祈ろうぜ」



やばいやつやん!ていうかあいつらやっぱり説明うまいな!なんて助かる存在なんだ!





「ほう、俺を前に余所見とは余裕だな小僧」


首筋にぞくりと悪寒が走る。



迫り来る千剣のヨルナードの剣を杖で受けようと思ったが、嫌な予感がして思いっきり背後へ跳ぶ。さっきまで俺が立っていたところに斬撃の跡が見えるんだけど?!え、木剣だったよね?!


魔法無しなのに木剣で斬撃出せるとかもはや人やめてるよね?


「いい判断だ。だが、躱すだけでは俺には勝てんぞ?」



ちょっと待て。勝つ必要があるのか?!違うよね?試験官が認めればいいんじゃないのかよ!


「おらおらおらぁ!どうしたそんなもんかぁ?!」


くそ!仕方ない、このままだと本当に病院送りにされちまう!・・・俺の杖術がどこまで通じるかわからんが、やってやる!



「ふん、やっとやる気になったみたいだな。かかってこい!」


「いえ、どこからでもどうぞ?」


「あぁ?俺も舐められたもんだな。オラァ!」



《杖術 太刀の型 紫電》


「おっと、なかなかやるな。だがまだまだだ!」


簡単に受けるとはやっぱり普通じゃないな。魔力を使ってないとはいえ、本気の抜刀術だぞ!?


ふぅ。攻めてこないってことは挑発してるんだよな?そしたら次はホーンキマイラすら殺した技だ。



《杖術 太刀の型 獅子王閃》


「お前、俺を舐めてるのか?・・・獣や魔物には通用するかもしれないが、百戦錬磨の強者にそんな技は通用せんぞ!」


「ごふっ・・・!」


・・・思い切り殴られたせいか脳が揺れて、視界がやばい。こいつマジでつえぇ・・・。太刀の型が通用しないとはさすがSランクってわけか。


「まぁ、10歳の小僧にしてはまぁまぁだったんじゃないか?仕方ないからオマケして合格にしてやろう」


「オマケだと・・・?」


ルナやヨミが見てるといのにこれ以上無様は晒せないな。やれるところまでやらせてもらうぞ!



《杖術 薙の型 真袖返し》


この技は下段に斬撃を放って二撃目を中段に放つ技だ。元々は太刀の技であったのを薙刀の技に昇華させたのものだ。足元を崩したところに切り込む技であり、対人特化した技である。



「おっと?!くっ・・・!ちょっとはやるようだな!だがまだまだここからだぞ!」


『123番、試験は終了だ!次の試験会場に移動しなさい!』



これからという所で無情にも職員から試験終了を告げられてしまった。



「……ちっ、いけ。終わりだとよ」


「ふぅ、ありがとうございました!」



なんとか無事に試験は終わったみたいだけど、放った技を全部受けられてしまったな・・・。魔力を使えばもっといい戦いができたかもしれないけど、そしたらあの人も魔力を使うだろうし。


・・・世界は広いなぁ。



闘技場を降りるとそこにはさっきまで観戦していた受験者がたくさんおり、品定めするような視線や畏怖を宿した目、興味深そうに見る目や好奇心に満ちた目をした者など様々だ。


ちょっとやりすぎたか・・・?でもあのままやられっ放しはちょっとな。




魔法の試験会場に移動すると、受験者たちが人型の的に魔法を打ち込んでいるのが見える。それも長い詠唱とともに・・・。


みんなそんな長い詠唱言ってる割には発動してる魔法はショボくない…?的までの距離はおよそ30mくらいか。そこに当てると上にある水晶に威力が数値化されるらしい。


そのまま順番が来るまでいろんな人を見ていたが、1人3回のチャンスが与えられるようで、3回の中で1番大きい数値が採用されているみたいだ。


数値はおよそ300〜400くらいか。まぁ、500くらいを目指して魔法を放てば合格できそうだな。



『次、123番!』


「はい!」


まぁ適当に使い勝手のいい魔法でいいか。レールガンだとやり過ぎだろうし、とりあえず小手調べだ。


サンダーランス!


一筋の雷が的目掛けて駆け抜ける。無詠唱な上に綺麗な魔法に試験官のみならずその場にいた受験者たちがアウルの魔法に見惚れていた。


バチバチッ!!


『あ、えっと・・123番の1回目の記録、670点!』


まぁまぁかな?


『2回目もやるか?』


2回目か。なかなかいい点数が出たし、これでやめていいかもしれない。


「いや。もう・・・?!」


視線を感じたのでそちらを見るとヨミが悔しそうに俺を見ていたみたいだ。隣ではルナがどこか自慢気な気がするけど・・・。ああ!属性か?


なるほど、だからヨミが悔しそうなのか。・・・仕方ないな。というか2人は試験官の仕事終わったのか。



「ではもう1度お願いします」


単発のアクアランスだけだったらサンダーランスほどの威力は出ない、か。じゃあ単純に量を増やせばいいな。


アクアランス×3!



空中に浮かんだ3本の水の槍が一点に集中して的を穿つ。かなり硬いであろう的に穴が空いているように見える。えっとあれって壊れるんだ?


『・・・123番の2回目の記録、900点です』



やばい。やりすぎた・・・いろんな人の視線がすごい・・・。受験者も試験官も凄いけど、1番凄いのはルナの視線だろう。


・・・そんな恨みがましい顔で見ないでよ〜


結局、その場にいるのがいたたまれなくなったので、そそくさと会場を後にした。





何はともあれ試験は終了した。その後2人は冒険者ギルドで報告があると言って先に行ってしまったので、家でご飯を作りながら待っていると1時間くらいで帰ってきた。


「ご主人様!お疲れ様です!」

「うふふ、ご主人様お疲れ様です」


「えっとありがとう。一応聞くけど、なんでルナは怒ってるの・・?」


「だってご主人様が水魔法で大きい数値を出したから・・・なんか悔しくて」

「ふふ、ヤキモチ妬いたのよねルナ。本当に可愛いんだから」


「まぁまぁ、2人が冒険者ランクA以上を祝うために晩御飯は豪華にしたから!冷める前に食べようよ」



「はい!是非いただきます!」

「ふふ、ご主人様の合格がわかったら私たちがお祝いいたしますね」



今日の夜ご飯は、特大ハンバーグ、白菜とハイオーク肉のミルフィーユ鍋、ナスの唐揚げ、溶き卵と味噌の麦粥だ。


「ご主人様、このクズ肉の塊を焼いたものはなんですか?凄いいい匂いではあるんですが、元はクズ肉ですよね?」

「私はシクススにいた頃によく食べましたけど、こんな美味しそうなクズ肉は食べたことがないわ」


クズ肉・・・?あぁ、ミンチだからか!


「違う違う、これは骨の間とかにある肉を集めたものじゃなくて普通のお肉をミンチ状にしたものなんだ。まぁ食べて見てよ」



「!!肉汁が凄いです!しかもとっても柔らかい!これは素晴らしいものですよ!」

「ふふ、私もこれは好きです。普通のお肉と違って口の中で弾けるような食感がたまらないです」


ミルフィーユ鍋もめちゃくちゃ美味しい!白菜とオーク肉が絶妙に噛み合ってるし、やっぱりナスの唐揚げはいつ食べても美味い。


そういや今度マヨネーズでも作ろうかな?タルタルフィッシュフライも食べたいから今度酢を探さないと・・・。酢さえあればピクルスも作れるし、もっと料理の幅が広がりそうだ。




にしても、色々あったけどなんとか試験は終わった。


・・・受かってるといいなぁ。


細々と更新します。

評価・ブクマしてもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 流石に身体強化系一切使えないんじゃ、鍛えてる子供程度の身体能力しか無いもんねぇ。 勝てるわきゃあ無い。 逆にもしこれで良い勝負してたらSランク(笑)になるとこだった。
[一言] 目立ちたくないと言いつつ、やられそうになったり、試験なんかで負けかけると自重しなくなる所は子供だなーと思ったけど、主人公は十歳児だった。っと思うもそんなもんなんだろうなー。納得した。
[気になる点] ミンチ肉って挽き肉の事ですよね? ミルフィーユ鍋は、バラ肉等の薄切り肉のイメージがありましたが、挽き肉でも美味しそうですね。つなぎは、やっぱり卵かな?とろろ芋でも良さげです。 ルナ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ