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ep.49 ゴーレムと帰省準備


迷宮3日目は海の中の探索となった。水の中での呼吸をどうしようかと思ったけど、水魔法で周囲に円形の膜を作ってやると問題なく行動ができた。


アクアカーテンと命名した。


2人にもイメージを伝えたが、15分程度で習得したので2人は本当に凄い。


海中の魔物はかなり強く、はっきり言ってしんどい闘いになった。


さらに水中のせいか、下位の火魔法や風魔法、土魔法だとうまく発動しないうえに、発動しても威力はほぼゼロである。


水魔法ならうまく発動するのだが、耐性があるのかあまり効かない。


強力な魔法を使うと、魔物が寄ってくるのでキリが無いし、魔力を使いすぎるとすぐに探索が出来なくなる。


そしてなによりも一番厄介なのは魔物自体がとてつもなく大きいことだ。大きさ故にタフなのか強力な魔法を何発も発動しないといけないという状況である。


ヨミがアクアカーテンを広範囲に展開してルナが雷魔法で敵を攻撃、俺は刀で物理的に攻撃するというチームプレーでなんとか敵を倒すことができるが、2人の魔力にも限界がある。



しかし良い発見もあった。クラゲのような魔物からぷよぷよとした質感の素材が採れたのだ。


クラゲ自体は魔物図鑑にも載っていないような種類だったので万が一の事態に備えて慎重に戦ったので大丈夫だったが、もしかしたら普通のクラゲ同様毒を持っていたかもしれない。


それでも全長5mくらいあるクラゲから最高にプルプルなゼリーが採れる。


俺は思いついてしまった。


「疑似ウォーターベッドをつくろう」


「ウォーターベッドですか?」

「初めて聞きました」



ウォーターベッドとは従来のマットレスと違って水の浮力で体を支える構造だ。


単純に言えば、重力に対し“浮力”を利用して、より人の体を柔らかく、しっかりと支え、快眠を作り出すことができる頭のいいベッドということだ。


そしてこのクラゲから採れる素材は、それを可能にするほどの可能性を秘めている。


諸説あるが、クラゲの体は95%程度が水で出来ているらしい。これはほぼ水と言っても過言ではないだろう。


これを耐水性のある革で隙間なく包めれば最高に気持ちのいいベッドが完成する!・・・気がする。


「ルナ、ヨミ。今日は海でレベル上げだ!クラゲ以外にも良さそうな素材を持つ魔物がいたらどんどん確保だ!」


「「かしこまりました」」


ちなみに便宜上、くらげにはウォータークラゲと名付けた。



その後みんなで力を合わせて少しずつであるが海の魔物を倒していく。


一番の強敵はやはりシーサーペントだった。全長はおそらく20mを超えているだろう。もはや大きすぎて分からなかった。


亜竜とも呼ばれるシーサーペントはやはりとても強く、倒すのに30分以上かかっただろう。


その甲斐あってシーサーペントの素材は手に入った。鱗や牙などまずまずな量だ。


しかし、迷宮の魔物は外界の魔物とは違うせいで完全な素材の確保には至らないので、なんだか損した気分である。



なんやかんやで海でレベル上げや素材確保をすること3日で今回の迷宮探索を終えることにした。



海に飽きたということと、そろそろ村に帰りたいという理由だ。


迷宮の海には普通の魚も泳いでおり、たくさん捕獲することができたので、村人たちに少しずつではあるが配ろうと思う。


マグロに似た魚やカツオに似た魚がいたのには感動してしまった。


魔物は倒すと魔石になるが普通の魚は普通に捕れるので本当に便利である。どうせなら魔物も素材が残ればいいのにな。



そう言えばなぜか昆布やワカメがなかったのは不思議な感じだ。もしかしたらもっと遠洋を探せばあるのかもしれないが。



ちなみに夜はログハウスで寝泊まりしていたのだが、夜はゴーレムの研究をしてみた。


魔力をため続けたオーブに神銀で緻密な魔法陣を作っていく。


この魔法陣は古代都市で拾った設計図に載っていた魔法陣と、ゴーレムから確保した核にある魔法陣が一緒だったから試している。


核の魔法陣にはミスリルが使われていたが、どうせなので神銀を使ってみた。


核はおそらくオーブだと思われるが、古代人の技術なのか今の俺には核が何でできているのか正確には理解できていない。


ただ、用意したオーブで行ける気がするので作っているという感じだ。



確保したゴーレムから色々なパーツを継ぎ接ぎして体を作ってみた。イメージは安易だが騎士を想定してある。


確保したゴーレムにはいろいろな種類がいたが、その中でも騎士タイプの奴を軸にパーツをくみ上げた。


ぶっちゃけゴーレムの素材は何で出来ているかはわからない。


見たことのない金属で出来ており、とにかく硬くて丈夫だということだけ分かる。


時間経過に伴い関節部分が弱くなっていたおかげか、核部分の頭部を簡単に取り外せたので確保には困らなかったが、万全の状態だと考えるとかなり厄介な敵だっただろう。


そう考えるとあの機械ドラゴンは状態が他に比べてかなり良かったから、戦ったらかなり厄介な奴かもしれないな。



何はともあれゴーレムの体はできた。あとは核となるこれを頭部に組み込んで魔力を込めれば完成する気がする。


設計図にもそんなことが書いてあったしね。



「じゃあ、魔力込めるけどいい?」


「問題ありません」

「上手くいくといいですね」


魔力を込めると機械的な音声が聞こえてくる。


『起動シークエンスを確認しました。魔力の登録を実行。マスターの名前を教えてください』


「アウル」


『マスター"アウル"の登録を実行。次に個体名の登録をお願いします』


ゴーレムの名前か。なにがいいかな?



「名前を付けないといけないみたいだけど、なにかいい案はある?」


「・・・ゴーちゃんなんてのはどうでしょうか」

「うふふ、聖騎士パラディンにちなんでディンなんてどうでしょう」


とりあえずルナの命名センスが皆無というのはわかった。


ヨミのは悪くないんじゃないか?見た目騎士だし。


今度武器にランスを買ってやろう。


「お前の名前は"ディン"だ」


『個体名"ディン"を登録。・・・起動シークエンスを終了します。よろしくお願いしますマスター』



そう言えばディンの声はすごい女性っぽいんだけどなんでだろう。見た目は厳つい騎士なのに声は可愛らしい。


なんか凄いギャップを感じるな。


普段は俺の収納に仕舞っておくことにした。生き物じゃないから収納できるのがゴーレムのいい点だね。




ウォータークラゲを入れる魔物の革が手持ちの素材に無かったのでウォーターベッドは完成しなかった。


できれば耐水性のある素材がいいよね。


温室に使えそうな素材も見つからなかった。これはちょっとレブラントさんに聞いたりして調べたほうがいいかもしれない。



「じゃあ、今回はここまでにしようか。今度来るまでにどうやって攻略するか考えないとね」


「次こそは攻略して見せます」

「私ももっと頑張ります」


ちなみにステータスはこんな感じだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆

人族/♂/アウル/10歳/Lv.148

体力:9800

魔力:41300

筋力:410

敏捷:370

精神:670

幸運:88

恩恵:器用貧乏

◇◆◇◆◇◆◇◆



◇◆◇◆◇◆◇◆

人族/♀/ルナ/15歳/Lv.88

体力:4800

魔力:7300

筋力:190

敏捷:210

精神:280

幸運:20

恩恵:真面目

◇◆◇◆◇◆◇◆



◇◆◇◆◇◆◇◆

人族/♀/ヨミ/16歳/Lv.91

体力:5100

魔力:6800

筋力:190

敏捷:280

精神:290

幸運:45

恩恵:色気

◇◆◇◆◇◆◇◆



なかなか強くなってきているみたいで安心した。


けど、こんだけ強くてもテンドには恐らく遠く及ばない。あれはある種の化け物だ。


もっと力をつけないとな・・。


結局数日かけても37階層は突破できなかったが、レベリングはある程度できたので次回に持ち越しとなった。


どうやら36階層に本来休憩エリアとなる階層があったのは、37階層から急激に難易度があがるからのようだ。


帰り際に16階層に寄ってクインを放してあげる。


クインが他の蜂たちの様子を見に行っている隙に20階層でサンダーイーグルから羽毛と肉を回収。


これを5周して、クインの支配下にある巣からハチミツを分けてもらって帰路に就く。






「ただいま我が家~」


「やはり家はいいですね」

「うふふ、ログハウスも悪くなかったけどやっぱりこっちが落ち着きますね」


「じゃあ、俺はレブラントさんの所に顔を出してくるから、家の大掃除を頼んでいいかな?」


「「かしこまりましたご主人様」」



レブラントさんにはレシピ関係を売るつもりだ。あとは耐水性の高い魔物の革なんかがあれば買うつもりだ。



「レブラントさんいますか~?」


「おや、アウル君。ちょうど良かった。今帰ってきたところだよ。どうかしたかい?」


どうやらちょうど行商から帰って来たところのようだ。


「来年からルイーナ魔術学院に通う予定なんですが、そうすると今より忙しくなってしまうので、お菓子や燻製のレシピなどをレブラントさんに買ってもらえないかと思いまして」


「なるほど。そういうことなら是非力になるよ!」



そこから詳細について話し合い、ピタパン同様に純利益の5%を今後継続的に報酬として貰うという契約になった。



「いやぁ、今回もいい商売ができてありがたいよ。アウル君には足を向けて寝られないよ!ははははは」


「いえ、俺もお世話になっているので。あ、そうだ。耐水性の高い魔物の革なんて扱ってないですか?」


「ちょうどいいのがあるよ!王国内にセベン湿地というところがあるんだけど、そこで討伐されたアクアパンサーという魔物の革だ」


アクアパンサーという魔物の革は耐水性が高く、なにより伸縮性が高く柔らかいらしい。ブーツやレインコートなんかにも使えるそうだ。


そこそこ大きい魔物らしいので4枚もあれば足りるだろう。予備を込みでも5枚かな。


「じゃあそれを5枚ください」


「わかった。ちなみにこの革を何に使うか聞いてもいいかな?」


あーなんとなく儲けの匂いでも嗅ぎつけたのかな?


「あはは、レブラントさんには敵いませんね」



結局、ウォーターベッドを作ろうとしている旨を伝えると、どんどん目がぎらぎらしていくレブラントさん。


「アウル君、君はやはり天才だ。これは貴族たちがこぞって買うだろう。うん、いけるよアウル君!どうかな、うちで試験的にでも販売させてほしい!」



お世話になっているということもあり、ダブルベッド2つ分のウォータークラゲの素材を売ってあげた。


37階層の魔物の素材だと伝えると、表情が固まるレブラントさんだったが1つ白金貨3枚で買ってくれた。


37階層の素材ともなるとやはりかなり希少な素材のようだ。


レブラントさんの方も色々と試行錯誤してみるとのことなので、もしかしたら俺より早くウォーターベッドを完成させてしまうかもしれない。




まだやることはあるけど、とりあえずは完了だ。


今日は帰る準備を済ませて明日出発予定である。馬車を使ってもいいけど、走ったほうが早いので走って帰る予定だ。


ログハウスは持ってきているし、野営に困ることも無いだろう。



実家に帰る前ということもあり、夕飯は豪勢にしてしまった。


迷宮の海で魚介類がたくさん手に入っているので海鮮尽くしだ。


海鮮パスタ、カツオのたたき、白身魚のアクアパッツァ、潮汁。野菜が少ないがたまにはいいよね?


「~~~!!おいひいでふ!」

「これはまた・・・癖になりそうなほど美味しいです」



初めて食べる新鮮な海の幸は2人とも気に入ったようだ。


食べると確かに美味い。迷宮産のためか分からないが、雑味がほとんど感じられないのだ。


魚本来の美味さに加え、新鮮な魚の脂が口いっぱいに広がるのだ。


「これは美味しいな」


「是非ともまた行きましょう!」


特にルナはアクアパッツァを気に入ったようだ。


俺としてはカツオのたたきが良い感じだと思う。ちゃんと藁で焼いたので本格的なのだ。



・・・というかカツオ節つくれないかな?



培乾までを手作業でやって、最後のカビ付けの代わりに魔法で水分を抜いてやればそれっぽいのが出来るかもしれない。


実家には燻製小屋があるしそれを少し改造すればすぐに出来るんじゃないか?


またやりたいことが増えたけど、今のうちだよね。学院に行ったら忙しいだろうし。





本気で移動すれば2日もあれば実家に着くだろうが、どうせなので4日くらいかけて帰るつもりだ。






朝起きると雲1つない晴天で、外に出るにはうってつけの天気だった。


ただ気温は低いのでコートは必須であるが。


ちなみに移動用のコートは四つ腕熊(クワトロアームベア)の毛皮を加工してガルさんに作ってもらってある。ランクBの魔物だけあってかなり質がいいコートに仕上がっている。


2人は別に自分でおしゃれなコートを買っていたが、今回は性能重視でこっちを使ってもらうとしよう。



「さて、準備は良いかな?」


「はい!問題ありません!戸締りも完璧です!」

「うふふ、ご主人様のご両親へのご挨拶は緊張してしまいますね」



ヨミがなんか言っているが、とにかく出発だ!



ちょっとずつ更新します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界転生物で中だるみの無い展開で飽き辛い構成に好感を感じます。 [一言] 鰹節はカビを使った一種の発酵食品なので、干物や燻製とは味と香りに違いがかなりでます。
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