ep.42 登城
すこし短めです。
SIDE:???
「準備も一通り終わった。とうとうこのオーブを使う時が来たぞ。セラス、俺は今から一段階進化する」
「念願が果たされますね」
「その通りだ。いくぞっ!!」
手に持ったオーブに魔力を注ぎ始めると、すぐにオーブから反応がある。
【恩恵を強制進化させますか?】
もちろんだ!!
【恩恵が強制進化しました。制約は残り7日です】
「なに?!文献と違うではないか!」
「どうされたのですか?」
「恩恵が進化したのはいい。しかし、制約があるというのだ!」
「どのような制約なので?」
「7日間しか、恩恵の進化は維持できないらしい」
「なっ?!それでは、計画が間に合いません!」
「・・・仕方ない。5日後に王城にたくさんの貴族が集まる。もちろんあのアウルとかいう少年もな。その時に計画を実施する」
「かしこまりました。フィレル伯爵はどうされますか?」
「そうだな…。この力の実験台になってもらおうか。完全に使いこなせるようにならないといけないからな」
想定外ではあったが、計画は修正できる範囲だ。もうすぐ念願が叶う。
もうすぐ・・・。
SIDE:アウル
騎士団の2人が来てからもう4日が経った。明日は王城へ行く日である。
この4日間はなにも無駄に過ごしていたわけではない。
炭を大量に作ったり新しいお菓子の開発もした。ゴーレム研究もしたが、未だに完成には至ってない。が、迷宮で確保した素材は有用で、もう少しで完成すると思われる。他にも家族に向けて手紙も書いた。
ちなみに今日は2人の指輪をもう少し良いものにしようと思っている。
「2人とも、指輪なんだけどもう少し能力とか形を調整したいから貸してもらえるかな?」
「「・・・」」
「えっと、どうしたの?」
「いえ、ご主人様が初めて創ってくださった物でしたので、愛着と言いますか…」
「私も、これはこのままがいいのです」
なるほど…。そこまで大事にしてくれてるとなると無理に調整するのは不味いか。
うーん…。
2人に視線を向けると片耳のみにピアスをしている。伝声の魔道具の対となるものだ。
そうか、何も指輪に拘る必要はないじゃん!
「わかった。じゃあ魔法だけ込めるから手を出して。ちなみにどんな魔法がいい?」
「私は出来るならパーフェクトヒールがいいです」
「私もパーフェクトヒールだと嬉しいです」
確かにルナとヨミは独自での回復方法を持ち合わせていない。
ポーションとかを買えばいいんだろうけど、なかなか手に入るものでもないしな。
「分かった、2人の指輪にはそれを込めておくよ」
「「ありがとうございますご主人様」」
じゃあ新たにピアスでも作ろうかね。どうせなら宝石でも付けたら奇麗かもしれないな。
どうせだし2人の得意な属性の魔物が落とした魔石を使ってあげよう。
ルナは雷鯰の魔石でいいとしても、水属性か。そこまで強い敵と戦ったことがないからなぁ。
・・・取りに行くか。湖畔エリアならなんかいるかもだし。
結論から言うとそこそこなのがいた。魔物図鑑にも載ってたアクアタイガーと呼ばれる魔物だ。体が水で出来ており、物理攻撃が殆ど効かないというチート魔物だ。
その反面氷魔法にめっぽう弱かったので倒すのは一瞬だったが。
ピアスと言っても形は様々だ。伝声の魔道具のピアスは丸い金属に留め具が付いてるだけのシンプルな作り。
どうせだから可愛いのがいいけど・・・。良く分からんから直感で作ろう。
悩んだ結果、リング型のピアスにした。作るのが簡単そうだし金属の量もそれなりに使える。
魔石には予め俺の魔力を注ぎ込んである。もちろん各属性の魔力だ。
大きい魔石から豆粒くらいに切り出すのは勿体ない気もしたが、仕方ない。
魔石を切り終えた後は、アダマンタイトを軸に神銀でピアスの形を象る。最後にミスリルでコーティングすれば完成だが、ここでひと手間を加えてみる。
ミスリルコーティングのあとにもう一層ずつ神銀とミスリルをコーティング。これで容量が増えればいいんだけど・・・。
ついでに自分用とクインにも2人と同じ指輪を作成する。
これでお揃いだ。クイン用のは指輪と言うより腕輪になってしまったけどね。
「2人ともお待たせ、これをもう片方の耳に着けてほしいんだ」
「これはピアスですか?」
「とっても奇麗ですね」
「そうだよ。これで色々便利になると思う」
ピアスにつけた能力は以下の3つだ。
・自動多重障壁展開(5層)
・状態異常耐性
・属性攻撃強化 1.5倍
ルナなら雷、ヨミなら水属性の攻撃が1.5倍になる優れものだ。指輪と合わせれば全部で10層の障壁が展開される。それにこれを身に着けていれば、ある程度の状態異常なら無効化してくれるから、毒をくらっても少しは安全だ。
「ありがとうございますご主人様!一生大事にします!」
「ふふふ、ご主人様の奴隷になれて幸せです」
「クインにもあるんだ。おいで」
ふるふる!
嬉しそうに抱き着いてくるクインを抱きとめて、腕輪をしてあげる。
「クインのについているのは2人にあげた指輪と同じ能力が付いてるからね」
ふるふる!
ブンブンと腕をふって喜んでいるようだ。こんなに喜んでくれるなら創った甲斐があったな。
「じゃあそろそろ夜ご飯にしようか」
「「かしこまりました!」」
今日の夜ご飯は英気を養う意味も込めてちょっと豪華にしようかな。
夜ご飯の献立は、サンダーイーグルの炭火焼き肉と小ネギを入れて卵でとじた麦粥、なすのから揚げ、野菜スープ、ベーコングリルとスモークソーセージグリルの盛り合わせだ。
ちょっと作りすぎたかな?と思ったけど、2人の食べっぷりが凄くて全部なくなってしまった。
・・・未だ2人は成長期らしい。どこがとは言わないが。
王城に行く日の朝は特に冷え込んでいた。
朝ご飯を食べて準備をしたら出発だ。
王城に向かう道中、おっちゃんの屋台で肉串を買うついでに肉を卸す。
炭火を使い始めてから忙しいのか家族総出でやっているようだ。
この調子ならいずれ屋台じゃなくて、店舗を持つことも可能かもしれない。
・・・というか俺が出資すればいいのか?
少し雑談をしていると、疲れているのかおっちゃん含めて家族全員の体調が少し悪そうだ。内緒でヒールをかけてあげたが効果がでた気配がない。
ヒールで治らないとはどんだけ疲れてるんだよおっちゃん。
エクスヒール!
「おっちゃん、体調はどう?」
「あれ、さっきまで怠かった体が軽いや!もしかしてボウズが治してくれたのか?ありがとうな!」
おっちゃんの良い所は深く詮索してこないことだ。目の前でアイテムボックスを使っても何も言ってこないし、回復魔法を使っても感謝だけ。
一緒にいて楽なタイプの人だ。
おっちゃんの奥さんと娘さんにも回復魔法をかけてあげると凄く感謝された。
本当に気持ちのいい人たちだとつくづく思う。
やっぱり薪ストーブをレブラントさんに売ってもらうのがいいかな??
それにオーネン村でも流行ればみんな助かるしね。
そのまま歩いていき、城門の衛兵らしき人に招待状を渡した。
「これは本物のようだな。話は聞いている。付いてきてくれ」
来たのが子供とメイド2人だというのに丁寧な対応。流石は王城の衛兵といった所か。
ちょっと横柄な態度でも取られたらどうしようかと思ってたけど、杞憂だったな。
「ここの部屋で待っていてくれ。あとでこの後の流れについて宰相様が教えに来てくれるはずだ」
誰が所作とか教えてくれるのか不思議だったけど、どうやら宰相が教えてくれるようだ。
かなり上の人なのに、意外と雑務もやったりするんだな。
いや、宰相を使って俺に探りを入れようとでもしてるのかな?騎士団の人たちもそんな感じだったし。
案外国王は食えない人かもしれないな…。上手く利用されないように注意しなきゃ。
案内された部屋は40畳はありそうな立派な応接室だった。ただの応接室だというのにここまで立派にする意味ってあるのか?と思ってしまう。
はてさて、宰相様はどんな人なのかな?
ちょっとずつ更新します。
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