ep.40 新たな武器
ステータスについてわかったことがある。5日目に試して見たらまた使うことができた。インターバルとしては3日空ければ再使用が可能なようだ。3回使って3日開けると再使用が可能なようなので、5日目には1回だけステータスを見て、放置してある。これでどうなるかは一旦様子見だ。
ちなみに俺のステータスはこんな感じだった。
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人族/♂/アウル/10歳/Lv.132
体力:8800
魔力:36500
筋力:370
敏捷:300
精神:600
幸運:88
恩恵:器用貧乏
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ほとんど成長はしてないけど、魔力の上がりだけ高いな。魔力の鍛錬は欠かさずやってるのがいいのかもしれない。
5日目は40階層までいく予定だったのだが、念願のゴーレムに会えてしまったが故に急遽予定を変更して素材集めに専念してしまった。しかもこのゴーレムは特殊なのか、倒しても魔石を残して消えるようなことが無かったのだ。丸々素材が全部残るという親切設計のため、余計に乱獲が進んでしまった。
ふふふふふふ、これでゴーレムの研究が進められるぜ。ステータスオーブに魔力は随時貯めていたが、未だに満タンにはならないし行き詰まっていたので、今回の敵は渡りに船だったのである。
「急に予定を変更してごめんな。でもこれでゴーレム研究が捗るぞ!!」
「ご主人様が凄いのは知っていましたが、まさかご主人様がゴーレムについて研究していたなんて」
「うふふ、ご主人様はなんでもお出来になるのですね」
「なんでもは出来ないよ。出来ることだけだ」
「「???」」
「ンンン!とにかく、今回の特訓はこれで終わりだ。下層については今後もちょっとずつ攻略予定だから、続きはまた今度な」
「かしこまりました。早くお風呂に入りたいです!」
「クイン様をお迎えに行きましょうご主人様!」
「そうだね、クインを迎えに行ってお家に帰ろうか。お風呂も沸かそうね」
転移結晶で15階層から16階層まではすぐなので、クインをすぐに連れて帰れると思っていたのだが・・・。
「あれ?クインがいないな。クイ〜ン?どこだ〜」
「「クイン様〜?」」
・・・・・・いない。気配察知にも空間把握にも反応がない。まさか下層に移動してるのか?でも5日後までには16階層に戻って来るように伝えたはずだけどな・・・。
「もしかしたらクインがまだ下の階層から戻ってないかもしれないから迎え行くけど、2人は先帰るか?」
「いえ、私たちも一緒に探します。みんなで一緒に帰りましょう!」
「うふふ、特訓の成果をここでお見せします」
17階層に移ると愕然とした。少し歩くだけで蜂の巣がたくさんあるのだ。それも全部が全長3mを超えるような巨大サイズ。え、軽く数えただけですでに20個はあるよ?!
クインいろんな意味で恐ろしい子!
キラービーたちはせっせと花の蜜を集めているのか、たくさん巣と花を行ったり来たりしているように見える。なぜだか全く俺たちに襲いかかって来る気配はない。
・・・何がどうなってるんだ?
そんなこと考えていると、1匹の綺麗な蜂がこちらへと飛んで来る。即座に戦闘態勢を整えるが戦意が感じられない。むしろ親愛のような感情が感じられる。
ふるふる〜♪
・・・え?もしかしてクインなの?嘘でしょ?見た目が全然違うけど、周りを嬉しそうに飛んでるし間違いないだろう。それにさっきからなんとなく頭の中に嬉しそうなイメージが伝わって来るしね。
うーん、ステータスは使いたくないけど仕方ないか。
ステータスオープン!
◇◆◇◆◇◆◇◆
阿修羅蜂/♀/クイン/Lv.18(→100)
体力:7600
魔力:8500
主人:アウル
◇◆◇◆◇◆◇◆
うん?なんか種族変わってない?前はジェノサイドビーだったよね。もしかしなくても進化したのか。大きさは変わらず30cmくらいだが、羽がめちゃくちゃ綺麗になっている。首回りにある白いもふもふは絹のように綺麗だし、放つオーラは強者のそれだ。・・・それにしても名前かっこいいな!
「クイン!強くなったな!しかもこんなに可愛く綺麗になっちゃって!」
抱きしめて見るがやはり最高の抱き心地。癒しとしても戦力としても頼れる相棒だ。
「ご、ご主人様!私にもクイン様を抱かせてください!!」
鼻息を荒くしているヨミに抱かせるのはやや不安が残るが、クインは気にしていないようなので渡してやる。
「あぁぁ〜〜!!!クイン様最高です!それにほのかに香る蜂蜜の匂いがまたたまりません!!」
何はともあれ、みんな何かしら手応えがあった5日間になったようだ。
・・・それに対して俺はどうだ?多少レベルは上がっているがそれだけだ。魔法もそれなりには使えるが、極めたとは言い難い。なんにしても中途半端な気がしてならない。
もしかして、これが器用貧乏の効果なのか?
なんでもある程度はこなせるけど極めることができない。確かそんな意味だった気がするけど、もしそうなら今の俺はまさにそれだな。これ以上の強さが手に入らないとすると、レベルは今後も上げるとしてもいずれ行き詰まるな。このままではきっと最下層まで行くのは厳しいだろう。
これ以上手札が強くならないなら、手札を増やす方法を考えるしかないか!とりあえずの目標はゴーレムの研究かな。新たな武器はガルさんに頼んでもいいけど、俺が作りたいんだよなぁ。これも研究かな。
あとはルイーナ魔術学院で何か見つけられればいいけど・・・。
「ご主人様。そろそろ帰りましょう?」
「うふふ、お背中お流ししますよ」
ふるふる!!
とりあえず今は帰るか!
家にはすぐ帰れるけどまだやることがある。5日後に来いと言われていたので今はガルさんのとこに来ているのだ。
「ガルさん来たよ〜」
「おお、お前たちか。待っておったぞ。・・・ふん、確かに強くなっているようだな。一体どんな修行したら数日でそんなに強くなれるんだよ全く」
「迷宮でちょこっと死ぬ気で頑張ればね」
「そういうもんか。・・・後ろの嬢ちゃんたちは、なんか遠い目しているけど大丈夫か?」
「「ちょこっとじゃないですよご主人様・・・」」
うわ言のように喋っているが、修行の日々を思い出しているのだろうか?
「大丈夫ですよ。それで頼んでいたものはできましたか?」
「もちろんだ。かなりの自信作だぜ?まずはそっちの銀髪の嬢ちゃんからだ。剣というよりは大剣の一歩手前の代物だ。アダマンタイトを主軸に作ってあるので硬さは折り紙つきだ。それに神銀とミスリルを使って2つ能力をつけることができた。能力は『重量変化』と『属性付与』だ。名前の通り、重量を変更する能力とこの剣に自分の使える属性を付与できる。我ながら最高の出来上がりだろう。名前はまだないから自分で考えるといい。防具はホーンキマイラをふんだんに使わせてもらった。革の加工に苦労したが、柔軟性があるのに防御力もきちんとある。要所要所はエンペラーダイナソーの鱗を使ってある。見た目にも性能にも拘った一品だ。もちろん、通気性を確保してあるから蒸れる心配も少ないぞ。革が余ったからブーツも作っておいた。撥水性もあるし何より硬いから、蹴るだけでも相当なダメージを与えられるぞ」
最高じゃないか。・・・買ったらいくらするのか気になるけど、怖いしルナが気にしそうだからヤメておこう。
「次はそっちの色気の嬢ちゃんだな。頼まれていたのは風と水の属性短剣だったな。これはミスリルを主軸にアダマンタイトと神銀を合わせた一品だ。ミスリルと神銀を多く使ったおかげで魔力が通しやすい作りになっている。切れ味も抜群だ。これも能力を2つつけてある。能力は『属性付与』と『斬撃強化』だ。魔力を通すと切れ味のレベルがグンっと上がるようになっているから、使うときは周囲に気をつけろ。こっちも名前はつけてないから自分でつけてやりな。防具はさっきの嬢ちゃんと同じような感じだ。見た目も似せてある」
どちらも満足のいく装備だ。これがあれば2人の強さはまた1つランクが上がるだろうな。
「それと外套だが、予想以上に綺麗な上に素材が新鮮でな。最高品質の外套ができた。これがあれば気配を消すのが楽にできるだろう。これは3人分だな」
「ありがとうガルさん。こんなにいいものを作ってくれて。それで鉱石は余った?」
「いや、余ったといえば余ったがな。大した量ではないな。まぁ、でも俺もこんなにいい作品が作れて満足している。お前さんには逆に感謝しているよ、こんなに上質な素材や鉱石を本当にありがとう」
ガルさん・・・。ここで帰ったらさすがに男が廃るよな。
収納から各鉱石を5kgずつ取り出してテーブルへと置く。
「お、おい。これは・・・?」
「ガルさん、本当にいい装備をありがとう。これは少ないけど御礼として受け取ってほしい。それに今後もガルさんにはお世話になる予定だしね!だから受け取ってよ!あと、お金も少しは払うよ」
白金貨を10枚取り出して渡す。恐らくこんなんじゃ足りないんだろうけど、鉱石も渡したしこんなもんだよね。
「ふん、防具が傷んだり切れ味が悪くなったときは持ってこい。メンテナンスしてやる。ふぅー・・・。もう疲れたから今日は店仕舞いだ。じゃあまた来いよ」
「うん、ありがとうございました!」
「「ありがとうございました」」
さて、これで2人の装備は完璧だな。
「ただいま我が家!!」
久しぶりに帰ってくる家は最高だな!迷宮の中では障壁張って寝てるから別に心配はないけど、安全だと分かっているのとは全く違う。
久しぶりに入る風呂は盛り上がった。なんか迷宮から帰るたびにみんなで入る流れができている気がするが、これはこれで悪くないな。
うむ、実に素晴らしい。
「・・・ご主人様、今ならいいですよ?」と近寄ってきたヨミが耳元で語りかけてくる。
何が?!いや、ナニか!しかし、ここで焦ってはヨミのペースだ。ここまで挑発されて逃げては男の恥だ。
「では、遠慮なく」
「えっ…?!・・あ、やっぱり、ちょっと待ってくだひゃん!!」
ここからの描写は割愛させてもらうが、敢えて言おう。最高であると!!!
って俺何やってんだ。ミレイちゃんにバレたら怒られるんだろうな………。でも仕方ないじゃん!いくら俺でも若いリビドーが限界だよ!!
そんな事をしてるとルナが負けじとにじり寄ってきた。顔を真っ赤にさせながらも頑張るルナは本当にそそる。もしこれを狙ってやっているなら女優顔負けの演技力である。
大事な事なのでもう一度言おう。最高であると!
今日実は夜ご飯は俺が作ることになっている。理由は簡単だ。実は炭を修行中に作ってしまったのだ。3日目に湖畔エリアで2人が苦戦している間に作成したのだ。魔法で作ることも可能だろうが、それだと味気ない。
まぁ、炭作りのせいで幻影魔樹に2人が襲われているのに気づくのが遅れたのだが・・・。
炭を作る方法は伏せ焼きを使った。簡単に言えば浅めの穴を掘ってそこに木を置き、空気の入口と出口作ってあげて木を隙間なく詰める。その上に草や枝などをたくさんかけて鉄板と土で蓋をする。あとは中の木に火をつけて8時間くらい燃やすと炭化が完了するのだ。
細かいところで空気穴を小さくしたりとかはあるが、経験があるので問題なくできた。
炭というのは極端にいうと空気にほとんど触れないように燃焼させると出来上がるらしい。詳しくは知らないが、確かそんなだった気がする。
そんなわけで炭が200kgくらい作成できたのだ。
「今日は炭火を使った料理を何品か作ろうと思う。2人にはスープと麦粥を頼むよ。それ以外は俺が作るから」
「「かしこまりましたご主人様」」
ルナがスープでヨミが麦粥を作るようだ。
今日作るのは、サンダーイーグルの炭火焼き、ハイオークの炭火焼き串、キノコの炭火焼バター醤油味、の3品だ。
キノコは松茸にそっくりなのが森エリアに生えていたのを採取済みだ。もちろん食用。王都では高級品とされているとレブラントさんが言っていたので間違いないだろう。
「あ、七輪が無ぇ・・」
土魔法!!創造!!・・・魔法って本当に便利だな。最近魔法に頼りすぎな気がする。もっとゆったり楽しまないと損かもな。
とりあえず即席で作った七輪に鉄網を乗せて、肉とキノコを焼いていく。やはり炭火は香りが最高にいい。ルナとヨミが興味深そうにこっちを見ているので、こっちの世界の人もこの匂いは嫌いではないようだ。
いい感じに焼けたサンダーイーグルの肉には塩胡椒、ハイオークの串にはタレを、キノコには醤油とバターを垂らして軽く炙って皿に移す。
鉄板の皿とかあったらもっと美味いかもしれない。
「じゃあ、食べようか!いただきます!」
「「いただきます!!」」
「!?お、美味しいですご主人様!!香ばしさが半端ないです!それに肉の旨味と炭の香りが口と鼻を蹂躙するかの如く美味しいです!」
「このキノコもとんでもなく美味しいです。バターと醤油?という調味料だけでも美味しいのにさらにこの香ばしさ。キノコの香りが余計に引き立てられて、美味しさのランクが一段も二段も上がっています!」
2人には好評のようだ。にしても、2人の食レポ能力の高さには驚きだよ。聞いただけでよだれが出たわ。
さて、あとは王城からの遣いとやらを待つだけだしゴーレム研究とかができるな。ルナとヨミには家の掃除をお願いするとして、それでも時間が余るようなら休暇を与えてもいいかな。
あとは俺用のアクセサリーと武器の開発か。あ、2人の指輪もアップデートしなきゃか。
本当はもっとのんびりしたいんだけどなぁ・・・。
よし決めた。今回の事件が終わったら絶対にのんびり過ごしてやるぞ!!
フラグが立った瞬間だった。
ちょっとずつ更新します。
評価・ブクマしてもらえたら嬉しいです。




