ep.39 迷宮攻略③
今は迷宮番号4の16階層に来ている。ここの階層はクインがキラービーを支配下に置いているところなので、このまま数日放置してみようと思っている。
そういえば、クインのステータスって見られるのかな?もし見られるなら見てみたいけど、結局ステータスオーブって使い方の詳細が不明だから、イマイチなんだよなぁ。まぁ、ものは試しってことで。
「ステータスオープン」
◇◆◇◆◇◆◇◆
ジェノサイドビー/♀/クイン/Lv.67(→80)
体力:4600
魔力:3500
主人:アウル
◇◆◇◆◇◆◇◆
あ、見られた。数日置けば見られるみたいだ。これからは毎日試してインターバルが何日か見極めなきゃ。
というかクインかなり強くね?・・・ん?レベルの隣にある矢印と80ってのはなんだろう。成長限界的なやつかな?
というか魔物も一応ステータスを見ることが出来るみたいだけど、人より見られる項目が少ないな・・・。でもこれって、もし敵にも使えたら鑑定魔法みたいに使うことも出来るんじゃね?実用まではまだ程遠いから、検証が必要だけど使いこなせたら一気に便利になるじゃん。
「そういえば今の2人のレベルってどうなんだろうね?スタンピードでかなり魔物倒したでしょ?もしかしたら結構上がってるんじゃないかな」
「私も気になります」
「うふふ、もし良かったら見てもらえませんか?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
人族/♀/ルナ/15歳/Lv.67
体力:3500
魔力:5100
筋力:150
敏捷:160
精神:230
幸運:20
恩恵:真面目
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇◆◇◆◇◆◇◆
人族/♀/ヨミ/16歳/Lv.72
体力:3700
魔力:4300
筋力:150
敏捷:230
精神:240
幸運:45
恩恵:色気
◇◆◇◆◇◆◇◆
2人ともそこそこ上がってるな。さすがにあれだけ倒せば弱いモンスターでもレベル上がるか。これなら20階層までは普通にいけそうだ。
さて、次は俺だ。ホーンキマイラ一体でどんだけ上がってるんだろう?
「ステータスオープン」
・・・・・・
あれ?出ないな。
「ステータスオープン!」
・・・・・・
どうやら3回が限度みたいだ。そういえばあの時もちょうど3人分しか見てないんだっけ。次はいつ見られるか忘れないように実験しなきゃ!
「どうやらステータスは1日に3回しか見られないみたいだ。そして1回見たら数日は見られない可能性がある。これについては今後実験して行くので、2人も忘れないようにね」
「「かしこまりましたご主人様」」
「じゃあクイン、俺たちはちょっと下層まで行ってくるからここで待っててくれ。19階層までは森エリアだから好きに移動していいけど、無理して怪我とかはやめてくれよ?あと、5日後には迎えにくるから16階層にいてくれ。わかった?」
ふるふる!!
うん、さすがクインだ。そこらの魔物とは一味違うな。可愛さも賢さも次元が違うぜ。さて、クインはここでまたキラービーを支配下に置いたりハチミツ集めをしてくれるだろうから、あとで回収しなきゃな。なんて頼れる従魔なんだ。
「じゃあ俺たちは下の階へ行こうか。どうせだから2人に魔物の相手は任せるよ。俺は採取とか木の確保させてもらうね」
「任せてくださいご主人様!」
「敵は殲滅いたしますのでご安心を」
スタンピードを経て一段と頼もしくなったように感じるのは気のせいか・・・?うん、気のせいだよね。気のせい気のせい。
森エリアはすでに慣れたもので、サクサク進むことができる。以前伐採した木の痕など感じさせないように森が再生している。さすが迷宮、わずか数日で木が生えるとは。これは迷宮がなくならない限り半永久的に迷宮産の質のいい木が取れるってことじゃないか!・・・一儲けできそうな気配がするが、手を出しすぎると後が辛い。なのでここはグッと我慢だ。
「そういえばご主人様。採取は分かるのですが、なぜ木を大量に確保しているのですか?」
「私もそれは気になっていました。うふふ、私たちの家でも建てるのですか?」
家の作成か。それもありだな〜!収納の限界がわからないけど、もし家を収納できたら最高じゃないか?旅をしながらでも家で寝泊まりできるし、贅沢の極みだ。ログハウスなら木だけでもそれなりに作れるし、なんなら大工に木を提供して作ってもらうのでもありか。
「家を作るのもいいね。けど今木を確保しているのは木炭を作りたいからなんだ」
「もくたん、ですか?」
「"もくたん"とはなんなのですか?」
まじか・・・。でも確かに言われてみるとこの世界で炭見てないな。鍛治には火の魔道具を使うのが一般的らしいし、石炭や木炭ってのは案外需要がないのか。
でも炭火で焼いた肉はまた違った美味しさがあるんだよな〜。串焼きのおっちゃんも、串焼きには魔道具使ってたし、炭火の良さを布教してみようかな。迷宮出たらおっちゃんに会いに行こっと。
「ご主人様?」
「あぁ、ごめんごめん。木炭ってのは、火の魔道具の代わりになるようなものかな?それに炭火焼きって言って、普通に焼くより香ばしくて美味しくなるんだよ」
「「普通より美味しい・・・」」
うちの子達は食い気もすごいな。よく食べる人ってのは見ていて気持ちがいいから、俺も嬉しい。にしても2人はかなり大食いな方だと思うんだけど、なぜ太らないんだろう・・・。
ちらっ
間違いない。全部あるところに栄養が持ってかれてるんだ。
そんなこと考えていると不意にヨミが耳元に顔を寄せて小声で話しかけてくる。
「うふふ、ご主人様。揉みますか?」
バ、バレてたーーーーーー!!しかもバレた上で優しくそんなこと言われたら危うく揉みしだくところだよ!
危ない危ない。俺のアダマンタイト級に強固な精神力が無かったら一線を超えていただろう。
「うふふ、冗談ですご主人様。今は迷宮なのでダメですよ?」
くっ・・・。ヨミに遊ばれている気がする。いつもは自分からグイグイ来る癖に。
はっ!?これが噂で聞く押してダメなら引いてみろってやつか!
実にけしからん。いつの間にこんな高等テクニックを・・・。覚えてろよヨミめ。この仕返しは必ずしてやるぞ!
「ンンン!と、とにかく炭火で焼くと美味いんだ。そんなわけで木を確保してるんだよ」
「さすがご主人様です!私も美味しいお肉のために、お手伝いできることがあれば言ってください!」
・・・ルナは色気より完全に食い気だな。
「時間もそれなりにかかるから、とりあえず先に迷宮攻略を進めようか」
「「かしこまりましたご主人様」」
移動進めること20階層。ついでなのでサンダーイーグルから羽と肉を剥ぎ取る練習でもさせよう。
「サンダーイーグルを倒すときはまず土属性の魔法で捕まえる。気絶させてから羽を全部剥いて、回復魔法をかけながら肉を確保。これが一通りの流れだけど、できそう?回復魔法は俺がやるからそれ以外を頼むよ」
「問題ありませんご主人様!」
「うふふ、骨の髄まで剥ぎ取ってみせます」
ヨミの言い方は些か猟奇的な気がするが、仲間ならこれ以上ないくらい頼もしいな。
「よし、では行くぞ」
「「はい!」」
結果から言おう。2人とも頼もし過ぎる。え?なんなのあの2人の連携の良さは。生かさず殺さずって言葉の真髄をみせられた気がしたわ。もはや途中から魔物が可哀想だったよ・・・。南無。
「ご主人様ほど上手くはできてないですが、こんな感じでどうでしょうか?」
「ギリギリを攻めるというのは、悪くないですね。何かに目覚めてしまいそうでした」
いや、俺より上手だったよ。なんなら手際もかかった時間も俺よりすごいよ。というかヨミ、君は落ち着きなさい。ダークサイドに走っちゃらめぇーーーー!!!
いかんいかん、落ち着かねば。キャラでもない言葉を口走ってしまった。
「じゃあ、次の階行くぞ〜」
ちなみに今分かっている範囲で迷宮のエリアを分けるとこんな感じだ。
1〜5階:洞窟エリア
6〜10階:草原エリア
11〜15階:湿地エリア
16〜20階:森エリア
21〜25階:砂漠エリア
26〜30階:湖畔エリア
31〜35階:火山エリア
砂漠エリアの厄介なところは、暑い上に出現する魔物の大半が砂の中に隠れて攻撃して来ることだろう。気配察知や不意打ちに対応する練習にはもってこいの場所である。
「じゃあ、また俺は後ろで見てるので2人でなんとかしてみて〜。前回ここは通ったから道は覚えてるだろうけど、今回は俺無しだからな〜」
「問題ありませんご主人様!如何なる敵も殲滅です!」
「こんな乾燥した場所はお肌に悪いからさっさと突破するわよルナ!」
「もちろん!!」
そんな理由かい!まぁ、でも確かにお肌が綺麗なのに越したことはないし、今度化粧水渡してみよう。
こうしてルナとヨミの特訓は始まった。
●1日目●
21〜24階の砂漠エリアを死に物狂いで突破。迫り来るサンドワームや砂漠狼、蟻地獄、砂蠍等を鬼気迫る勢いで駆逐。気配察知では見つけられない魔物も指輪の空間察知を使いこなし始めて対応していたし、戦いに慣れたのか魔法の使い方も上手くなってきた。こればっかりは実戦でしか養われない感覚だろうし、スタンピードでかなり慣れたっぽいな。
25階層のボスはサンドアントという蟻の魔物で、配下のレッサーアントを無数に扱う厄介な敵である。サンドアント自体は大きく全長3mくらいあるが、レッサーアントは大きさがまちまちという特徴があり、小さいのは本物の蟻くらいしかないという気配察知の訓練にはもってこいの敵なのだ。
事前に空間把握と気配察知を訓練していたおかげで、なんとかサンドアントを撃破。
ヨミ曰く、「砂と日照りは乙女の敵です!」だそうだ。
・・・最後の最後までブレないところにはもはや感心するね!
●2日目〜3日目●
26〜29階層の湖畔エリアは魔物の数が比較的少ないエリアだ。しかし、その分魔物一体一体の厄介さが段違いとなる。隠密熊、ナイトヴァイパー、インビジブルカメレオン、幻影魔樹、一癖も二癖もある魔物ばかりだ。
隠密熊は言わずもがな気配察知を掻い潜る魔物だし、ナイトヴァイパーは狡猾で残忍、インビジブルカメレオンは気配も姿も消すことができる。幻影魔樹は見た目は完全にただの木だが、相手に幻影を見せて惑わせ、養分とする魔物だった。
1日目の成果が出たのか、空間把握と気配察知を使いこなすことでなんとか魔物を撃破。魔法も追加でどんどん教えているが、そろそろ轟雷や水龍招来も教えてもいいかもしれんな。
・・・ルナとヨミが幻影魔樹に危うく養分にされかけていたが、これはまた別日に語るとして。2人は一体どんな幻影を見せられたんだろう?
「ご、ご主人様には言えません!!」
「うふふ、うふふふふふ」
気になる。すごい気になるけど、聞いたらいけないと俺の第六感が働いている。・・・いい仕事してるぞ俺の第六感!!
30階層のボスは湖の中にいる竜と見まごうほどの魔物。電気を自在に扱う雷鯰だ。水の中にいる上に電気を使うので中々に倒しにくい魔物で、以前俺が戦った時はかなり手こずったものだ。結局は収納で水を全部収納して身動きの自由を奪ってから倒すという力技だった。・・・そのせいで未だに大量の水があるというね。
それに対しルナとヨミ。
「アイスコフィン!」
湖はものの数秒全体が凍ってしまった。・・・これが戦略の勝利ってやつですかね。ルナが褒めて欲しそうにこっちをチラチラ見て来る。
よしよし。
こらヨミ!ハンカチできーってしない!
ちなみに、ステータスは3日目でもダメだったな。
●4日目●
4日目にしてやっと火山エリアに突入した。ここは魔物も強いがエリアとしての難易度も高い。水属性か氷属性の魔力を纏わないと突破できない環境なのだが、これで魔力を纏う練習となる。以前と同じでレッサーリザード、イビルイール、レッドサイクロプスが出てきた。ここに来る頃には2人とも大幅に強くなっていたので一緒に戦い始めることにした。
34階層には案の定グランツァールのせいで魔物の気配がなかった。本来ここにはきっとなんかの魔物がいたんだろうけど、どんな魔物がいたんだろう?
35階層のボスの火蜥蜴は前回瞬殺してしまったが、本当はどれくらい強いんだ?
火蜥蜴の最大の攻撃はファイアブレス、触れたところが融解するレベルの温度にはさすがに焦ったが、そこまでと言えばそこまでだった。
「水龍招来!」
え!?ヨミさんヨミさん!!いつの間に覚えたの?!教えてないよまだ!まだ1匹しか水龍出せないようだけど、技としては一応完成しているじゃん!
「うふふ、たくさん練習しました!褒めてください」
よしよ〜し!
・・・なんていい顔してるんだヨミ。思わずドキッとしてしまった。
ってルナさん、そんな親の仇を見るような目で仲間を見るのはやめなさい!
●5日目●
一応今日が訓練最終日の予定だが、40階層までいけるかな?
初めて入る36階層は環境エリアというよりは、古代都市というのがしっくり来る見た目の外観だった。気配察知には反応がないのに空間把握には反応がある。
『侵入者ヲ発見。直チニ排除スル』
襲ってきたのは今まで俺が散々研究にしているが未だに成功していない"ゴーレム"そのもの。それもフルメタル製の機械タイプのゴーレムだ。
「やっと見つけたぞ・・・。ゴーレムだ。ルナ、ヨミ!捕まえろー!!」
「「かしこまりましたご主人様」」
この後ゴーレム素材のために迷宮中のゴーレムが乱獲された。
ちょっとずつ更新します。
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