ep.33 レベリング
SIDE:第3王女殿下
「殿下、ご報告にございます。アリスラート様についていた監視ですが、執事長のアルバスによって撒かれたため、奇跡の料理人は発見出来なかった模様です」
「なんですって!くっ・・・流石は公爵家執事長アルバスね。年を取ってもなお現役だなんて」
「この話とは別ですが、少々興味深い話を聞きましたのでご報告します」
「どんな話?」
「はい、実は赫き翼という冒険者グループがベーコンについて熱心に調べているそうなのです」
「赫き翼って言うと確か最年少Aランク冒険者よね?」
「その通りです。ベーコンを独占販売しているのはレブラント商会です。また、クッキーを独占販売しているのもレブラント商会なのです。赫き翼がなぜベーコンについて調べているかは分かりませんが、昨日から急に調べるのを止めたそうです。このことから、もしかしたらベーコンの制作者を見つけたのではないかと。そしてこれは推測ですが、もしかしたらクッキーとベーコンの制作者は同じなのではないか?というのが我々の見解です」
確かにありえなくない話だ。クッキーが品薄になったタイミングでベーコンや他の商品も品薄になったと聞く。・・・待てよ?ということは他の商品についても制作者が同じ可能性があるということか?!
「今すぐに赫き翼に監視をつけなさい!目立った行動をしたらすぐに教えるように!ほかにも有力な情報がわかったら知らせるのよ!」
思いがけないところにヒントがあったようね。ふふふふ、待ってなさい奇跡の料理人!私が必ず見つけ出してあげるわ!
ひょんな所から奇跡の料理人に行き着くエリザベスであった。
王族がアウルという存在を認識するのは目前にまで迫っていた。
SIDE:アウル
今日は3人で昼から迷宮へと来ている。何故そうなったかというと、時間は今日の朝まで遡る。
本当はルイーナ魔術学院用の勉強をしようと思ったのだが、なんと筆記は簡単な国語と算数、あとは武術と魔法の4教科のみらしい。
武術はなんでもいいとのことなので、身体強化した状態で杖術を使えば楽勝だろう。
国語も簡単な読み書きだし、算数は小学生レベルだった。
魔法に関してはもはや悩む必要すらない気がする。
ということで勉強は直前に少しだけやることにして、早々にルナとヨミのレベリングをしようということになったのだ。
「ルナとヨミは武器は剣と短剣で良かったの?」
「剣術ならば多少なりとも鍛えておりましたので、私はお許しいただけるなら剣がいいです」
「私もずっと短剣だったので、できれば短剣がいいですね」
なるほど。まぁ、最初の自己紹介でも特技でそうだと言っていたしな。
とりあえずは冒険者登録でもしてしまうか。
「2人にはまず冒険者登録をしてもらおうと思うんだけど、2人とも可愛いから絡まれる可能性があるのでこの外套を着てもらっていいかな?これで顔を隠しながら登録してほしい。一応入り口らへんで待機してるけど、何かあったら叫んでくれれば助けるから」
「「?かしこまりました」」
「じゃ、待ってるね。あ、お金かかるかもだから渡しておくね」
金貨10枚もあれば足りるかな?足りなかったら呼ぶだろうし大丈夫だよね。
冒険者ギルドの周りには冒険者をターゲットにしたいろんな屋台がでているみたいで、時間を潰すのには事欠かなそうだ。
「おっちゃん!肉串20本ちょうだい!」
「お、ボウズ。お使いかい?えらいなぁ!1本銅貨3枚だから、えっと・・・」
「銅貨60枚だよおっちゃん!」
「ボウズは算術ができるのか!まだ子供なのにすごいなぁ!1本おまけしてやろう!」
「ありがとおっちゃん!はい銅貨60枚!」
「ちょうどだね、はいよ!肉串21本!落とすなよ~!」
気のいいおっちゃんだったな。どれどれ、なんやかんや初めて王都の屋台でご飯買ったけど、どうかな?
・・・うまっ!?なんだこれ!タレが滅茶苦茶うまいぞ!ボリュームも凄いし、これで銅貨3枚は安すぎだろ!ただ残念なのは肉がなぁ。ただのオークじゃ、こんなもんだよね。
肉持ち込んだら焼いてくれるかな?
「おっちゃんおっちゃん」
「さっきのボウズじゃねぇか。どうした?」
「肉を持ち込んだら焼いてくれたりしない?焼いてほしい肉があるんだけど」
「まぁ、別に焼いてやってもいいが。なんの肉なんだ?」
「ハイオークの肉」
「ハイオークだって?馬鹿言うなよ。あんな高いもん・・・え、持ってるのか?」
「ほら」
あ、また虚空から肉出しちゃった。・・・やっぱりおどろくよねぇ~。こんな子供がアイテムボックス持ちとか流石に変か?
「・・・ボウズ、その肉はどれくらいあるんだ?」
「えっと、数えてないからわからないけど数百kgはあるんじゃないかな?」
セーフ!おっちゃんは肉にしか目がいかなかったみたいだ。
「今後ちょっとずつでいいから俺に卸してくれないか?!報酬は・・・全部は払えないかもしれねぇ。けど、俺はその肉串を売ってみたい!ボウズが買いに来たら毎回タダで焼いてやるから!頼む!」
うーん、別にまだまだ肉はあるしなぁ。それにここの肉串がもっと美味しくなるなら是非食べてみたい。
「うんいいよ。そのかわり、とびっきり美味い肉串を頼むね!」
「あ、あぁ!任せてくれ!恩に着る!これで妻と娘に少しは楽させてやれるぜ!」
おいおい。俺はそういう話には弱いんだよ。こうなればついでだ。
「じゃあ、とりあえずハイオーク肉100kgとサンダーイーグルの肉20kg置いてくね。サンダーイーグルはサービスだよ!」
「サンダーイーグル?鳥の魔物か?良く分からんがこの肉も最高に美味そうなのは分かる!これについても研究しておくから、また是非来てくれ!」
うんうん。いい出会いだったな。王都にもあんなに気のいいおっちゃんがいるとは思わなかった。
おっちゃんがサンダーイーグルについて調べて、その価値に驚愕するのはまた別の話。
「ご主人様、お待たせしました」
「うふふ、これで晴れて私も冒険者です!あ、お金は余りましたのでお返ししますね」
「お、ちょうど良かった。じゃあ次は武器と防具を買いに行こうか。実は行きつけの店があるんだ!お金は2人のお小遣いにしといていいよ」
屋台を見ながら移動すると、あっという間に目的地に着いた。
「ガルさーん!いますか~?」
「なんだ、アウルか。今日はどうしたんだ?」
「実はこの2人に防具と武器が欲しくてね」
「ほう。ずいぶん上等な奴隷を買ったんだな。得物はなんだ?」
「私は剣をお願いします」
「私は短剣を2本お願いします」
「ふむ、ちょっとまっとれ」
待つこと10分くらいでガルさんが出てきた。防具と武器は任せておけば大丈夫だろう。
俺もなにかいいものあれば買おうかな~っと。
お?これは・・・?
「ガルさん!これっ!」
「あん?あぁ、そいつは刀だ。最近武器商人が珍しい武器を売りに来てな。試しに買ってみたんだが、まったく売れないんだ。売れ残りだからそいつは金貨80枚でいいぞ」
安い!見たところ作りはかなりよさそうだし、うっすらだけど魔力も帯びているように見える。・・・この魔力は氷かな?
この刀が金貨80枚だなんて破格だぞ?!
「買った!!」
「こっちの2人も防具はもう大丈夫だぞ。使い手としてはまだまだのようだから、安全を鑑みても中級者用の軽鎧で十分だろう。どちらも金貨20枚だ。武器はどうする?」
「一番いいものをお願いします!」
「そうするとこれかの。剣はグランツ鉱石とミスリルの合金で白金貨2枚だ。短剣は2振りということなので、兄弟剣にしてある。片方は水、もう片方は火の属性を持っておる。こちらも白金貨2枚。全部含めて白金貨6枚にしといてやる。ついでにベルトと剣帯もつけてやろう」
「嬉しいけど、そんなにサービスして大丈夫なの?」
「・・・実は、お主に頼まれて作った薪ストーブを自分用にも作ってみたんだが、あれは素晴らしいな!だからその礼だと思ってくれ」
なるほどね。そういうことなら素直にサービスしてもらっておこうかな。
「じゃあ、遠慮なく!また来るね~!」
「ご主人様・・・私たちのためにこんなに高価な装備を買って頂きありがとうございます!迷宮で精いっぱい頑張らせていただきます!」
「私も精いっぱい頑張ります。だから、しっかり見ていてくださいね?」
というわけで迷宮へとやってきたのである。ナンバーズの迷宮は10階までであれば初心者の冒険者でも入れるため、ギルドカードさえあれば入ることができる。
「ご主人様、どうやって入ってきたのですか・・・?」
「ん?あぁ、気配消して全力で走っただけだよ」
「・・・ねぇヨミ、薄々思ってたんだけどご主人様ってかなり凄い?」
「・・・料理もできてお金もあってイケメンなのに、もしかしたらかなり強いかもしれないわね」
2人ともなにを喋っているのだろう?ともかく下へ行こうかな!俺が一度20階層まで行ってるし、15階層くらいからでいいかな?
・・・いや、念には念をってことで少しずつ行ったほうがいいか。安全第一だな。
「じゃあ、とりあえず目標は10階にしようか。俺は後ろから見てるから、2人で進んでみて!危なそうだったら助けに入るから」
「「かしこまりました」」
ルナとヨミは思ったよりも凄かった。ルナは前衛でヨミは遊撃兼斥候。さらにルナは魔法もかなり使えるようだ。伊達に学院は卒業してないということかな。
ヨミも気配察知の範囲がかなり広い。それに暗殺じみた攻撃方法なためか、敵に気付かれる前に殺ることも少なくない。
半日かけてなんとか5階層に辿り着くことができた。勿論、他の冒険者に会わないように俺が調整はしているが。
「ここのボスはキングゴブリンだよ。気を抜かないように」
「もちろんです!」
「瞬殺してみせます」
有言実行というかなんというか、ボス部屋に入ったとたんにヨミの気配が希薄になった。同時にルナが水魔法で牽制してヘイトを稼ぐ。
そこからは一瞬だった。キングゴブリンは気付くことも出来なかったんじゃないかな・・。南無。
ヨミの暗殺術はかなりのもののようだ。
しかし、欠点もある。
「ルナは魔法使うときに足が止まってる。それじゃあ、これより下の階層では太刀打ちできないだろう。ヨミは気配の消し方がまだまだ雑だ。あと、もっと大きな敵を倒す用の必殺技を持っていたほうがいい。2人には俺が魔法を教えてあげるからちょっとずつ覚えていこう」
「「かしこまりましたご主人様」」
「じゃあ、ここから10階層までは俺が戦うから後ろを警戒しながら付いてきて!そして戦い方を覚えてほしい」
この日、ルナとヨミの中でアウルへの認識が変わったのだった。『優しくて世間知らずなご主人様』から『優しくて世間知らずで化け物級に強くてカッコいいご主人様』へと。
「さて、これで10階層まで完了だけど、どう?できそう?」
「「できるか!!」」
迷宮の中に2人の叫びが木霊した。
この日から、ルナとヨミにとって地獄の特訓が始まったのは言うまでもない。
SIDE:ルナ
迷宮に泊まり込むこと数日。もはや今日が迷宮に潜ってから何日目かはわからない。ただ分かることは、ご主人様は優しいだけじゃなかったということだ・・・。
ご主人様が最初6〜10階層を1人で踏破なさった。無詠唱で展開される魔法に見たことのない武術、多重展開は当たり前のようにするし、自分の目がおかしくなったのかと錯覚するほど現実離れしていた。
気づけば20階層に達しており、流れ作業のように進んでいた。私は夢でも見ているのだろうか?
しかも絶対1回は私たちに攻撃させてから倒すというのを続けている。なんでも『れべりんぐ』というのをしているらしい。
・・・心なしか20階層についた頃、いつもより体が軽く感じだけど何か関係があるのかな?
その後もものすごいスピードで迷宮を踏破して行くご主人様。30階層に着く頃にはなぜか自分の体が自分の物でない気がするほど、力に満ちていた。
ご主人様はいったいなにをなさったのだろうか?不思議でならないが、ご主人様が凄いというのだけは嫌というほどわかった。
30階層で一旦進むのはやめて10階層へと戻ってくると、私たちに魔法を教えてくれた。
私はこれでもルイーナ魔術学院を卒業した身だ。それなりに魔法に対しての知識を持っていたと思ったのだが、連日あの魔法を見せられてはその自信はすっかり何処かへと消え去った。
ご主人様から教わったのは至極簡単なものだった。
「いいかい?魔法はイメージが全てだ。俺のイメージを教えるのは難しいけど、見せることはできる。だから、俺の使う魔法をしっかり見て覚えるんだ。粗方覚えたら全部解説して行くからね」
そこからまた10階から30階へと降りて行くという。その間私とヨミはしっかりと魔法を頭に焼き付けた。そのお陰で30階層へ着く頃にはイメージは完璧だ。
解説を聞いてどんどんそのイメージは強くなっていったと思う。
ヨミも同じ感じのようだ。
ただ、属性には向き不向きがある。私は水属性しか練習していなかったけど、他になにが使えるのかな?
適性属性もご主人様が簡単に教えてくれた。ご主人様は全属性使えるらしく、私たちの体内の魔力を操って各属性魔法を試してくれたのだ。
・・・簡単に言ってるけど、半端じゃないほどの魔力操作技術が必要なのをご主人様は分かっているのかな?ほんとに世間知らずなご主人様だ。
私は水属性、氷属性、雷属性、無属性の4種類に適性があるらしい。一応風と土も使えることは使えるらしいが、不向きらしく無理する必要は無いと言われてしまった。
風属性と土属性はこっそりと練習しようと思う。
本来魔法は発動体になるものを身につけて使うのだが、ご主人様は特に必要としていない。杖を持っているのでそれが発動体だと思ってたら、普通に武器として使っていたので違うみたい。
なので私たちも発動体は使わないで訓練している。
練習の甲斐あって、地上へ帰る頃には無詠唱で魔法を発動できるようになった。というか、そうしないと生きていけないような場所だったと言うべきか・・・。それに2つまでなら同時展開できるようになったのには本当に感動した!
そのお陰で私とヨミだけで難なく15階層を突破出来るまでに強くなったし、万全なら20階層もギリギリ突破できる。
ご主人様には本当に褒められた。頭をよしよしされてしまった。
・・・これからももっともっと頑張ろう!!
SIDE:ヨミ
地獄の特訓が終わった。本当に地獄だったけど、ご主人様の凄さに気づけた4日間でもあった。
ご主人様の気配の消し方ははっきり言って常軌を逸している。消えたと錯覚する程なのだ。
コツを教えてもらい、練習して行く内になんとなくやり方が分かった気がする。褒められてしまった。
頭よしよしってこんなに気持ちいいんだな・・・。我ながら単純だが、もっと頑張ろう!!
30階層なんて行けてしまうご主人様は本当にカッコいい。胸も秘部もキュンキュンしてしまったので、どうにか責任を取ってほしいものである。
そんなことに気づかないご主人様は、私に魔法を教えてくれた。
私は水属性、土属性、風属性、無属性が使えるらしい。他には適性がないとの事なので、この4つを徹底的に覚えることにしよう。一応雷と氷も使えるらしいが、著しく向かないらしい。
・・・うふふ、こっそり練習して驚かせようっと!
ご主人様のおかげで私達だけでも20階層までならなんとか行けるようになった。たった4日でだ。これは異常を通り越して有り得ない。
これがご主人様の言っていた『れべりんぐ』という奴の成果なのだろう。私も無詠唱で魔法が使えるようになってしまった。まだ多重展開はできないけどね。
もっと褒められたいなぁ。
SIDE:アウル
とりあえず、最低限自分の身を守れるくらいには強化できたかな?あと1日あるけどどうしようかな。帰ってゆっくり休んでも良いけど・・・。
鉄は熱いうちに打てっていうし、35階層まで行ってみようかな?たぶん3人がかりならいけるだろうし。
「ということで、35階層を目指そうと思うけどいいかな?」
「なんの問題もありません!」
「うふふ、上手く出来たら褒めてくださいね?」
「あ、ずるいよヨミ!ご主人様、私も褒めてください!」
本当にいい子達だ。絶対に守らなきゃ。
「よし、じゃあ行こうか」
31階層からは火山エリアだった。出てくる魔物も火耐性持ちばかりだったので、水属性か氷属性で攻撃すれば大ダメージが入るという意外と美味しいエリアだ。
ただ、めちゃくちゃ熱い。溶岩も近くにあるので下手すれば靴が溶けるくらいに熱い。なのでどうにかしたいと思って氷属性の魔力で全身を覆うイメージで魔法を使ったら、上手くいってしまった。それも寒いくらいに。
ルナとヨミには呆れられてしまったが、出来たんだもん仕方ない。
31階層〜33階層はレッサーリザード、イビルイール、レッドサイクロプスが出てきた。どれも耐久値が異常に高かったが、倒せないほどではない。
3人総出で水魔法やら氷魔法でゴリ押しした。近寄ったら火でも吐かれそうだし、レッドサイクロプスは図体がめちゃくちゃ大きかった。推定でも6mはあったんじゃないか?
問題は34階層にいた魔物だ。本来ならすぐに魔物が襲ってくるはずなのに、1匹も見当たらない。それに、気配察知にも空間把握にも引っかからない。
不審に思いながら進んでいると、1匹の魔物が座っていた。
いや、1匹というよりは1頭と言った方が正確かもしれない。
「レッドドラゴン・・・!?」
34階層にいたのはレッドドラゴン。苦しそうに息をしているように見えるが、どうしたのだろうか?
ドラゴンは高度な知能を持っていることで有名である。年を経たドラゴンは喋ることもできると言う。
見た目は10mはありそうな巨体。おそらく成体だろうが、やはり調子が悪そうだ。
「えっと、大丈夫か?」
『なに、用だ。我は、もう、長くない。何者か、によって、呪いを、かけられて、しまった。あと少し、で、意識を、失って、ただの暴れる、だけの、魔物に、成り果てて、しまう。今の、うちに逃げろ』
呪いだって?ドラゴンにかけれるくらい強い呪いってなんだよそれ。このまま見逃したらいけない気がするけど、どうやって解除したらいいんだ?
「ご主人様、どうにかしてあげられませんか?!」
「ルナ…。と言っても、さすがに呪いなんてどうしたらいいかわからんぞ?」
「呪いは本当に辛いのです…。ドラゴンを呪えるほど強い呪いとなると、おそらく体の何処かに呪印があるはずです。それに対して聖魔力を注ぎ込めばなんとかなるかもしれません!」
・・・やけに詳しいな。ひょっとするとルナの出自に関係してるのかもしれないな。まぁ、今はどうでもいいが。
「レッドドラゴンよ!体の何処かに呪印があるはずだ!探させてくれ!」
『うぐっ、我は、もう、、』
時間は無いみたいだな。魔力探知!
・・・・!あった!
「ドラゴンよ!俺を信じろ!」
呪印があったのは翼の付け根部分。そこまで大きく無いため、パッと見ではぜんぜんわからなかった。
「ふぅ。いくぞ!!『セイクリッドヒール』!!」
Gruoooooooooooooooo!!
「えっと、間に合ったのか?ついでにヒールもしとくか」
エクストラヒール!
・・・・・返事がない。
エクストラヒール!
・・・・・返事がない。
エクストラヒール!
『・・人の子よ、もう大丈夫だ。恩に着るぞ。ギリギリの所で自我を保つことができた。感謝する』
「いや、いいんだ。しっかし、あんたほどの存在がなんで呪いなんか?」
『我にもよくわからん。もともと我はグランツ火山に住んでおったのだ。永き眠りについていたはずなのだが、ある時体に違和感を覚えた。その時は何なのかよく分からなかったのだが、その違和感は日に日に強くなっていった。そして、とうとう抗い難くなってきたため地上に迷惑をかけるのも嫌だったので、仕方なく迷宮内に移動してきたのだ。ここなら、魔力も豊富だし回復出来ると思ったのだが、最近になってこれが呪いだと気付いた。しかし、気付いた時には遅かったのだ。そんな時にお主がきたという訳だ。本当に感謝する』
ってことは間一髪だったってわけか。ん?グランツ火山って言ったら確かグランツ鉱石が取れる所だよな。
・・・何か関係ありそうな気がするな。調べてみる価値はあるかもしれない。
「というか、どうやって迷宮内に移動したんだ?」
『そんなの、人化したにきまっているだろう』
そんなことできるのに、呪いは自分で解除できないのか。ドラゴンも万能じゃないんだな。
「ご主人様、おそらくこの呪いは触媒を用いたものだと思われます。きっと、このドラゴンさんの鱗を触媒に呪いをかけたのでしょう。生え変わった鱗がちょうど付け根部分にあった鱗だったから呪印がそこにあったんだと思います」
なるほど、そう言われるとしっくりくる。しかし、そうなると犯人の特定はかなり難しそうだな。
「犯人の特定は難しいか?」
「かなり前だとすると、特定は難しいでしょう…。すみません」
「いや、ルナは悪くない。ちなみに、ドラゴンさんよ。違和感があったのはいつからなんだ?」
『あまりよくは覚えてないが確か4、5年前くらいだったと記憶している』
「わかった。俺たちも少し調べてみるよ。体調が戻ればグランツ火山に戻るのか?」
『そうだな、魔力が回復次第戻るとしよう。絶対に礼をするので、いつかグランツ火山に来てくれ』
「お、それは期待させてもらうよ。俺はアウルだ。こっちはルナとヨミ。よろしくな」
『かっかっか、まこと面白い人の子よ。我の名はグランツァールだ。また会おう人の子よ』
レッドドラゴンことグランツァールは溶岩の中へと潜って行った。
「なんか疲れちまったから、さっさとボス倒して地上帰ろうか」
「「はやく、お風呂に入りたいですご主人様」」
ハモるほどですか。それじゃあ、久しぶりに本気出そうかな!
鉄貨を用意して魔力を込めると、雷が体の周りを迸る。
ボス部屋を開けるとそこには体長8mはありそうな大きな火蜥蜴。俗に言うサラマンダーってやつだろう。しかし、今の俺は誰にも止められないぜ!
"超電磁砲!"
レールガンが通り過ぎたそこには、いつも通り大きな魔石と宝箱が残っており、サラマンダーなど跡形もなかった。
宝箱の中身はどうせ種だろうと思って開けてみたら、そこには光り輝くオーブが鎮座していた。
ちょっとずつ更新します。
評価・ブクマしてもらえたら嬉しいです。




