ep.32 動き出す陰謀
少し長いです。
SIDE:赫き翼
俺の名前はクライン。赫き翼のリーダーだ。
ベーコンについて調べ始めて数日、ベーコンを売っている商会については直ぐに判明した。
その名は『レブラント商会』と言って、ここ数年で急成長した商会らしい。
主力商品はたくさんあり、他の商会にはないような商品がたくさんあるらしい。
実際には、ベーコンやいい匂いのする石鹸、はちみつ、白砂糖、クッキーなどだ。一時期、化粧水とかいうのも発売されたらしいが、なぜか直ぐに販売を止めたらしい。そして、最近またちょっとずつではあるが販売しているそうだ。
どの商品も人気過ぎてすぐに売り切れるほど流行っているという。ちょっと信じられないような商会だ。
なんて言ってるが俺も、王都ではよくベーコンを食べている。なんというか、あの旨味が凝縮された肉の感じが堪らなく美味いのだ。
ついつい黒猫の尻尾亭に通っている。
話が逸れたが、調べて分かったのはそこまでで、そのベーコンがどこから来ているかは知っている人は限られているらしい。
というわけで、俺はアウルという人物を突き止めるべく、レブラント商会に来ている。
「すみませーん」
「はい、いらっしゃいませ。おや、あなたは確か『赫き翼』のリーダーのクライン殿ではありませんか?」
「あ、そうです。俺のこと知ってるんですか?」
「もちろんですとも。我々商人は情報が命ですから。最年少でAランクに上り詰めた鬼才だと伺っております。おっと失礼、自己紹介が遅れました。私はこの商会の商会長をしております、レブラントと申します」
まさかいきなり商会長に出会えるなんて、俺はツイてるな!この人なら絶対知ってるだろう!
「聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」
「ええ、どうぞ?答えられることならなんでも答えますよ」
「この商会の主力商品のベーコンについて、どこから調達しているか教えていただけないだろうか?」
そう聞いた途端、一瞬だが商会長の顔が変わった気がする。まるで、獲物を狩る前の狩人のような。・・・気のせいか?
「すみません、商売上それはお教えできません」
「では聞き方を変えるが、『アウル』という少年に聞き覚えはないだろうか?」
「・・・どこでその名前を?」
「ちょっと俺たちも訳ありでな。ここで大っぴらに喋るわけにもいかないんだ。場所を移さないか?」
「いいでしょう。付いてきてください」
通されたのは応接室のようだが、微かに視線を感じる。・・・気配はないか。かなりの手練れだな。ここまでの手練れを従えているとなると、この人もただものじゃないのかもな。
「改めて聞きますが、先ほどの名前をどこで?」
「俺たちは依頼でシクススから王都に来たんだが、依頼主の勧めもあって腕試しも兼ねて迷宮番号4に挑むことにしたんだ。なぜか滞在費までたっぷりくれたしな。それで、いざ挑戦してみると最初は問題なく行けたんだが、10階層を超えた辺りから急に敵が強くなってな。噂には聞いてたが、それ以上だった。それでも、せめて15階層のボスを倒してから帰ろうってことになって、なんとか倒したんだ。でもさすがにやばいと思って帰ろうとしたんだけど、また挑戦するつもりだったからポーションを飲んで少し休憩してから16階層の様子見をして帰ろうとしたんだ。16階層を探索してたら、仲間3人が急に不調を訴え始めたんで帰ろうとしたら、そこにレッドオーガが襲ってきて、さすがに死を覚悟したよ。でもそのとき狐のお面を被った有り得ないくらい強い少年が現れて、俺たちを助けてくれたんだ。その少年は見たことのない魔法で敵を一瞬で殲滅して、さらに回復魔法で治療までしてくれたんだ。んで、その少年に名前を聞いたらアウルだったってわけだ」
「なるほど・・・。気になることはいくつかありますが、なぜその少年とベーコンが結び付くんです?」
まぁ、そうなるよな。
「実はうちのメンバーに少々鼻がいいやつがいてな、その少年からベーコンの匂いがしたからって理由だ」
「はぁ、なるほど。理解しました。その話は誰かにしましたか?」
「いや、してないが・・・」
「なら、その話はここだけの話にしてください。私も知っていることを少しだけお教えしますので。要はあなたたちはアウル君に恩返しがしたいということですよね?」
「その通りだ!俺たちは冒険者だ。命を助けられたままにしておくのは流儀に反する!」
「わかりました。とりあえず今日のところはお帰りください。アウル君には私のほうから話を聞いておきますから、3日後にまたここへ来てください。あと、絶対にその話は他言無用ですよ」
「すまない!恩に着る!」
よし、これであの少年に会える!会ってお礼を言った後はどうやって恩返しするかを考えないとな!みんなに早く報告しなくちゃ!
SIDE:レブラント
はぁ、参りました。今まで散々ひた隠しにしてきたというのに、こんな所でバレるとは。
まぁ、彼の性格を考えると見捨てることなどできなかったのでしょうが。偽名でも使えばよかったものを。
アウル君の名前が世に出るのはまだ早すぎる。せめてあの子が成人するまでもうひと頑張りしなければ。
・・・それにしてもさっきの話は少し妙な所が多いですね。少々、こちらでも調べてみましょうか。
「ミウ、いるかい?」
シュタッ「はい、旦那様」
「彼らの依頼主についてと、その依頼内容について調べてください」
「かしこまりました」シュッ
「ふむ、私の杞憂であればいいのだが、万が一ということもあるからね。とりあえず、アウル君のことだから奴隷を買った報告をしに来るだろう。その時に少し話をしてみようかな」
いつになっても悩みの尽きないレブラントであった。
SIDE:???
「・・・以上が、報告になります」
「なに?赫き翼の連中が生きているだと?・・・そうか、わかった。こちらも忙しいが、不安の種は早めに潰すに限る。準備に数日はかかるから、それまでやつらを見張っておけ。感づかれるなよ」
「かしこまりました」
「それと、魔香粉を大量に用意しておけ」
「3日以内に用意いたします」
くそっ、あいつら余計な手間を取らせよって。まぁ、いい。予定が少し遅くなるだけだ。何年もかかった計画なのだ。
ただでさえ4年前のせいで遅れたというのに、もう遅れることはできんぞ。
SIDE:アリスラート
朝日が昇り始めた頃。
「アルバス、今日はアウルのところへ行くわよ」
「かしこまりました。ただいま準備を致しますので少々お待ちください」
やっとアウルのところへ行けるわ!ルイーナ魔術学院に入るためとはいえ、勉強時間や稽古が多すぎなのよ!
早くアウルに王族が目を付けたことを早く教えねば!
まぁ、私が行く理由なんてほんとは無いんだけど、アウルのことだから?新しいお菓子を作っているかもしれないじゃない?
それに、私になんの挨拶も無くいなくなったことの文句も言わないといけないもの!
「お嬢様、馬車の用意ができました」
「今行くわ!」
「お嬢様、着きましてございます」
何て文句を言ってやろうか考えていたら、いつの間にかアウルの家についたらしい。
「??ここはどこなの?」
「・・・お嬢様、誰かは分かりませんが、こちらを監視しているものがいるようです。それもかなり手練れです。私もついさっきやっと気づけたくらいの腕です。なので念には念を入れて、違うところで降りたのです」
「なんですって!?」
「お嬢様、声を小さくしてくださいませ。ここからは監視を撒きながら行かせていただきます」
「わ、わかったわ」
そこからアルバスの魔法によって、なんとか監視を撒いたらしいが、一体誰が私を監視していたのだろう?
「ここでございます」
アルバスが案内したのはそれなりに大きい家だ。
アルバスがノックをすると、返事があった。久しぶりに会うアウルに少し緊張しているのか、じんわりと頬が熱いのがわかる。
何て言ってやろうかしら?
しかし、扉を開けた人を見て私の中の上昇した体温は何故かスッと冷めた。
「だ、誰よあの女は!」
SIDE:アウル
今日も今日とていい天気だ。冬だから朝はかなり冷え込むはずだけど、我が家は俺の魔法もあるし、薪ストーブもあるのでかなり暖かい。
ルナとヨミはまだ寝ているみたいだな。無理もないか。さすがに疲れが溜まってるだろうし朝ご飯は俺が作ろう。
朝ご飯が完成して、ついでにデザート用に新作としてプリンを作ってみた。バニラについてはまだ見つけてないので完成とはいかなくてもそれなりの味になった。
プリンができるころにはさすがに2人が起きてきたので朝ご飯にしようと思ったのだが、いきなり2人して土下座された。
「すみませんご主人様!奴隷の身分にも関わらず、ご主人様よりも遅くに起きてしまいました!」
「なんなりと罰をお与えください!」
ルナとヨミの順で謝罪してきたが、そんなことか。
「きっと疲れてたんだよ。別に俺は気にしないし、ご飯作るのも嫌いじゃないからね。じゃあ、罰として今日は買い物が終わったら家の片づけを頼むよ」
「罰ではなくても片づけはさせていただきます!」
「では、今日もお背中を流させてください」
「わ、私も!お背中流します!」
真っ赤になりながらヨミに対抗するルナは見ていてグッとくる可愛さがあるな。ヨミもお色気お姉さんといった感じで堪らない。まったくけしからん二人だ。
「ふふ、じゃあ今日も一緒にお風呂だね。それで罰としよう。ほら、ご飯食べるよ!」
「「かしこまりましたご主様」」
今日の朝ご飯はパンケーキとスクランブルエッグ、ベーコンとサラダと野菜スープだ。
パンケーキはデザートと思われがちだが、個人的にはこういう食べ方のほうが好きだ。
「「「いただきます」」」
「!!ご主人様、どれも全部美味しいです!作り方を教えてください!」
「うふふ、本当に美味しいです。できれば私にも教えてくださいね?」
「うん、いいよ。というか今度からは一緒に作ろうか。そうすれば作り方も覚えられるし一石二鳥でしょ?」
「はい!よろしくお願いしますご主人様!」
「ご主人様との共同作業。うふふ、楽しそうです」
2人とも昨日よりも元気になったみたいだな。さて、そろそろデザートにと思ったけど2人は俺のお菓子初めてか。どんなリアクションをとるか楽しみだな。これ食べたらいよいよルナの手と目を治してあげよう。
コンコン
「ん、誰か来たみたいだ。ヨミ、出てもらってもいいかな?」
「お任せください」
「どちらさまでしょうか?」
「公爵家で執事をしております、アルバスと申します。アウル殿はご在宅ですかな?」
「少々、お待ちください」
「ご主人様、公爵家の執事のアルバス様がお見えですが、いかがいたしましょう?」
「え、アルバスさん?俺も迎えに行くよ」
「アルバスさん、お久しぶりです。とりあえず中へどうぞ!」
「失礼いたします。それと、本日はお嬢様もご同行いただいております」
「え、アリスが?どうしたの?」
「それは私から説明するわ!とりあえず中に入るわね」
とりあえず中へ入ってもらったけど、なんだかアリスの機嫌がすこぶる悪いように思えるのは気のせいかな?
「えっと、今日はどうしたの?」
「・・・・奴隷を買ったのね。それもとびきり美人を二人も」
「え、なんて?」
「なんでもないわよ!!」
「え、うん?」
やっぱりなんでか怒ってる。さっきも小声すぎて聞こえなかったし。
「今日ここへ来た理由だけどね、とうとう王族にアウルの存在が知られたわ。そして、私がアウルのことを知っていることもね」
「そうか・・・。あ、今日はそれを伝えにきてくれたの?」
「そ、そうよ!それと、勝手に居なくなるなんて驚くじゃない!せめて一言言ってからにしなさいよね!」
「あはは、ごめんごめん。その日アリスは疲れてたみたいだったからさ。それに、ルイーナ魔術学院に入れればいつでも会えると思ってね」
「そ、それもそうね・・・。アウル、さっきからそこにあるのは新作のお菓子かしら?」
「あ、これはプリンと言ってね。さっき作ったんだ。よかったらアリスも食べる?」
「いただくわ!・・・おいひいはねほれも。もっほいっはいはべはいわ!」
「まだまだあるから飲み込んでから喋りなよ。それにまた作ればいいだけだから、これは持って帰ってもいいよ?」
ガラス製の容器に入れたプリン10個をお土産に渡すと、満足したのか嬉しそうに帰っていった。
・・・どうやら本当にさっきのを伝えるだけだったようだ。アルバスさんにでも頼めば良かったのにな。
「・・・ねぇヨミ。あのお嬢様絶対そういうことよね」
「・・・間違いないわよルナ。これは大変な人がライバルになりそうよ」
「「はぁ・・・」」
ルナとヨミも何か喋っているが、さすがに公爵家ともなると緊張でもしたのかな?
「ルナ、ヨミ。さっきのお菓子だけどまた作ってあげるから今回はクッキーで我慢してもらっていいかな」
「「クッキーですか!」」
おや、クッキーは知ってるみたいだ。って、物凄い勢いで食べるな。さっきも朝ご飯たらふく食べてたよね?2回もおかわりしたよね?
・・・お菓子は別腹ってことかな。
ご飯も食べたし、とりあえずルナを治療しないと。
「ルナ、こっちに来てちょっと横になってもらってもいいかな?」
「?はい、こうですか?」
「じゃあ、目瞑っててね」
腕を生やしたり、目を治すのははじめてだけど、できる気がする。ついでじゃないけどヨミも対象にしておこう。
「パーフェクトヒール!」
おおっ、さすがに魔力けっこう使うな。3割くらい持ってかれたか。けど、どうやら上手くいったようだ。
物凄い光が落ち着くと、そこには真っ白な左手があった。
「「え・・・?」」
ヨミもルナもポカンとしている。そりゃそうか。腕が生えたらそりゃびっくりするか。
「ルナ、具合はどうだい?手も目もちゃんと治ってるかい?」
「・・左手があります!それに目が見える!はっきりと見えます!」
「そうか、それはよかった」
「ふ、ふぇ~~~~~ん!!腕がある~~~!!」
このあと1時間くらい泣き続けてようやく落ち着いた。
「すみませんご主人様、取り乱してしまいました。しかし、ご主人様は回復魔法がお使いになれるのですね!それも教皇様クラスの!」
「嗜む程度だよ。それにきっと教皇様ならもっとすごいんじゃないかな?」
教皇というのは帝国と王国に隣接している宗教国家ワイゼラスのトップである。なんでも奇跡の力を持つと言われているらしい。
「それでも凄いです!この御恩は一生かけて返させていただきます!」
「あぁ、楽しみにしているよ。それじゃ、買い物に行こうか!」
買い物は1日がかりになってしまった。
ベッドやキャビネット等の家具を購入し、生活雑貨など必要なものも買い足した。
・・・というか女性を舐めていた。服屋での出来事だ。
「1人10着上下と下着込みで選んでいいよ~」
「ご主人様、私たちは奴隷です。こんなに上等な服を着てよろしいのですか?」
「ルナは真面目だなぁ。ヨミなんてすでに選んでるよ?それに俺自身君たちには可愛い服着てほしいしね」
「わ、わかりました!」
「うんうん、じゃあ、時間もまだあるからゆっくり選んでおいで」
さてと、こっちはこっちで欲しいものがあるからな。お、これこれ!やはりメイドと言えばメイド服だよね!1人3着もあればいいかな?
「すみません、あの子たちの採寸したらメイド服を3着ずつ作ってもらってもいいですか?」
「かしこまりました。生地はどうなさいますか?ランクとしてはA~Dまでありますが」
「どう違うの?」
「Aが魔物から取れた糸のみで作るため、下手な防具より防御力が高いです。もちろん機能性にも優れます。Bは魔物から取れた糸を30%と綿や絹を配合して作られます。Cは綿と絹を配合して作られます。Dは綿のみとなります」
「じゃあ、すべてAでお願いします」
「すべてAでございますか!?」
「うん、いくらになりそう?」
「メイド服でとなりますと1着あたり白金貨3枚ですので、全部で白金貨18枚となります」
「わかった。白金貨20枚渡しておくから、今彼女たちが買う服分も纏めて払っとくね。お釣りはいらないから、なるべく早く作ってほしいな」
「か、かしこまりました!!特急で作成いたしますので、そうですね・・・。6日後に来ていただければお渡しができるかと思います!」
「わかった、じゃあよろしく!」
あとは彼女たちが服を選ぶだけだな。
・・・え、もう2時間は経ったんだけど、まだ決まらないのか?
嬉しそうに2人で選んでる。楽しそうだし、邪魔するのもなぁ。
・・・だめだ、さらに1時間経ったが、決まる気配がない。仕方ないか。
「あと30秒以内に持ってこなかったら買わないからな~!」
言った途端に来た。しかもちゃんと上下10着と下着も込みだ。こんだけ楽しそうならお小遣い上げて、休暇でも設けてあげれば勝手に買いに来るかな。
「お待たせしましたご主人様!遅くなってしまい申し訳ありません!」
「うふふ、可愛い服とちょっとエッチな下着を選びましたので楽しみにしててくださいね」
・・・うむ、疲れがどっかに行ってしまった。
ヨミは大分俺に順応した来た感じがあるな。まだ2日目なのに凄い。対してルナはまだ少し真面目が抜けないか。まぁ、時間の問題かな。
「あ、そうだ。レブラントさんのとこに行ってルナとヨミを紹介しなくちゃ」
「おや、アウル君。来ると思ってたよ」
「レブラントさんこんにちは。あはは、バレてましたか。無事にこの子たちを買えたので、その報告に来ました。レブラントさんのお陰でいい子たちに会えました。本当にありがとうございます」
「ふふふ、本当にいい子たちを買えたみたいだね。それに二人ともかなり美人のようだ。アウル君をよろしく頼むよ」
「「はい、お任せください」」
「さて、アウル君。私も少し君に話したいことがあったんだ。この後少し時間いいかい?」
「はい、大丈夫ですけどどうしたんですか?」
「ここでは言えないから、場所を移そうか」
レブラントさんに連れられてきたのは高そうな調度品が品よく置かれた応接室だ。小さい女の子がお茶を持ってきてくれる。
ちなみにルナとヨミは俺の後ろに立って待機している。さすがにソファーには座れないと言うので後ろで待機してもらっている。
「それで、話というのは?」
「アウル君は『赫き翼』というグループを知っているかい?」
赫き翼?すごい中二病感溢れる名前だな。
「いえ、知りませんが」
「だよね。じゃあ、聞き方を変えよう。最近迷宮で4人組の冒険者を助けなかったかい?」
確かに助けた。あ、もしかしてあの人たちが赫き翼だったのかな。
「心当たりがあるようだね。その4人組が赫き翼だよ。最年少でAランク冒険者になったグループさ」
「えっと、確かに助けましたけど、その人たちがどうかしたんですか?」
「その人たちがね、アウル君に恩返しがしたいと私のところに来たんだ」
なんでレブラントさんのところに来たんだろう。俺は名前しか教えてないはずなのに。
「なんで私のところに?って顔してるね。実はメンバーに鼻のいい人がいたらしく、君からベーコンの匂いがしたそうだよ。それでベーコンについて調べたら私に行き着いたというわけさ」
そうか、匂いか。たしかにそこまでは気が回らなかった。
「君に会いたいと言っているから会ってあげてくれないかい?ここでAランク冒険者と縁を作っておくのも悪くないと思うよ?」
ふむ、確かに。いずれ俺も冒険者になるつもりだったし、ここでAランク冒険者と仲良くなるのもいいかもしれないな。
「わかりました。よく考えると悪くないかもしれませんね」
「そうか、良かった。じゃあアウル君の都合がいい時に会えるよう予定を立てるけど、いつが大丈夫だい?」
やりたいことはたくさんある。勉強もしたいし、ルナとヨミのレベリングもしたい。・・・メイド服が6日後に出来上がるし、受け取ったあとででいいかな。
「そうですね、予定がちょっと立て込んでますので、6日後の昼過ぎでもいいですか?」
「わかった。・・・私もその日は大丈夫だ。相手側には私から伝えておくよ」
「あと一つ確認したいことがあるんだが、最近迷宮で変わったことはないかい?」
「変わったことですか?・・・そう言えば、迷宮の16階でレッドオーガが出たんですけど、あの階に出るんですか?」
「レッドオーガだって?!確かそいつは25階層以降に出る魔物のはずだ!」
やっぱりか。あいつだけ強いなとは思ったけど、それだけ下の階層なら強いのも頷けるな。
「とりあえず何かが起こっているかもしれないというのは分かった。私はこのことを赫き翼を通じて冒険者ギルドに報告しておくよ。あ、あと今月分の羽毛代白金貨80枚用意できたから渡しとくね」
「分かりました。それじゃあ、今日のところは俺たちも帰ります。また6日後に来ますね」
お金は数えないで仕舞っちゃったけど、大丈夫だよね
うーん、それにしても何か嫌な予感がする。食料はサギーシ商会から買ったのがまだまだたくさんあるけど、念のためにまた買い込んでおくかな。
夜ご飯は3人で仲良く作っていろいろな料理を教えてあげた。
初めて見る調理方法などに驚きつつも、すごいスピードで習得していく2人は天才なのだろうと思った。
お風呂では昨日以上にサービスされてしまったせいで、危うくのぼせるところだった。
新たに買った家具を部屋に設置してあげて、今日は寝ることにした。
・・・なんとなく不安なので、扉に鍵をかけておいたら案の定夜中にガチャガチャと扉から音が聞こえてくる。
「あれ?おかしいな・・・。昨日は開いてたのに。ご主人様!ヨミです開けてください!」
何か聞こえた気がするが、さすがにまだ早いよね。
俺まだ10歳だよ?じゃあおやすみなさい。
「ご主人様~~!!」
ヨミの声が静かに家の中に響いたのだった。
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