ep.20 名探偵アウルの事件簿~解決編~
では、謎解きをしていこう。
まず嘘の証言をしていたのが誰かと言うことだが、これは村人AとBが嘘をついている。
聞き取りの際、『何か変なものや不審なものは見なかったか?』と村人A~Cに聞いたのに、夜はずっと酒を飲んでいて覚えていないと言った。
フィレル伯爵家次男のガルスが死んだのは知られているが、いつ死んだかは公表していない。
それなのに『夜は~』と言ったことから、ガルスが夜に死んだと知っているということだ。
次になぜ嘘の証言を言ったかだが、オーネン村の人々の性格を考慮すると犯人は村の人間ということになる。
そして尚且つ村人が守りたい人間で、貴族と話す機会を作り出せる人間というのはおよそ1人しかいない。
「村長、なぜフィレル家の次男を殺したの?」
「そうか、アウル君に隠し事はできないか。はははは、さすがアウル君だ」
「村長殿、この領の夫人である私にもその理由を聞かせてもらおう」
「理由は、あの貴族様がアウル君を殺してミレイさんを無理矢理連れて行こうとしていたからです。・・・私は本当にアウル君には感謝しているのです。そして、この村が大好きなのです。それ故に許せなかった!!自分の身分を笠に着てあの小汚いガキが、アウル君を殺すことなど!・・・どうしても、許せなかったんです」
「しかし、凶器はどうしたのだ?」
「あぁ、それは・・・」
「岩塩、だよね?村長」
「ははは、アウル君には敵わないな。その通りだよ。あれだと四つ目暴れ牛の串焼き用に用意していたし、なにより使ってしまえば証拠が残らないからね」
ことの真相が明らかとなり、沈黙が場を支配した時、ミュール夫人の口から言葉が漏れた。
「時にこの村の近くでは、ホーンラビットはでるかね?」
この言葉を一瞬で理解できたのは、アルバスとアウルだけであった。
「そりゃあ、でますが?」
村長は全くわかっていないようだ。
「そうか、この村で凶器は見つからず、証言者もいなかった。そして、一突きされた心臓はホーンラビットの角による怪我に酷似している。そうだよな、アルバス?」
「ほっほっほ・・・。そうですな。これだけでは魔物の仕業と言う外ありませんな」
「な、なにを・・・?」
「アルバスよ、そなたの方からも報告を頼むぞ。おおよその処理は私のほうからするが、助力を頼む」
「貸し1つ、ですぞ?」
「あぁ、構わない。なんだったら期間を決めてならアウルを連れて行ってもよいぞ?それで貸し借り無しでどうだ?」
「魅力的な提案ですな。ではそうさせていてだきましょうか。これでお嬢様にも顔向けできますな。ほっほっほ」
「そんな!儂1人の首でなんとかなりませんか!」
村長は1人で責任を取るというが、実際は貴族の子息が殺されたとなると、村長の首1つで何とかなるはずがない。
しかも、死んだのは嫌われ者のガルス。ここで面倒なことにするくらいなら、魔物に殺されて死んだことにしてしまった方がいい。
「アウル、そういうことだが、いいか?」
「はぁ~、わかりました。俺も村長は好きですし、ミュール夫人にはお世話になってますからね」
「儂が余計なことをしたばっかりに・・・。本当に申し訳ない!」
アウルは10歳の子供だというのに土下座をして謝る村長は、ちゃんとアウルを1人の人間として見ている表われでもあった。
「村長、頭を上げてください。それに俺は嬉しかったですよ。俺やこの村、ミレイちゃんのことを考えてくれたんですよね?だから、良いんです。でも次からはちゃんと相談してください。そうすればもっと良い案が浮かぶかもしれません。それでも、ありがとうございました」
そこには普段優しくもしっかりしている村長の泣きじゃくる嗚咽だけが聞こえていた。
いろいろあったが、今回の事件はホーンラビットによるものだと公表した。事実を知っている者は極力少ない方がいいし、知っているものにも厳しく口止めをした。
事件はあったものの、その後もつつがなく収穫祭が続き、無事にとは言えないものの、収穫祭は終わりを迎えた。
ちなみに投票結果は俺の出店の優勝だったので牛2頭は無事に獲得した。
ミュール夫人は一足先に領都へと帰っている。なんでも一刻でも早くこの事件についてまとめて、ボロがでないように根回しをしてくれるらしい。
一応、自分の領で他領の貴族が死んだとあっては一大事らしく、それの対応をするということだ。
あとで、大量の甘味を送るのでそれで勘弁してもらうとしよう。
「ほっほっほ、アウル殿。準備には3日くらいでよろしいかな?親御さんには私のほうから説明させていただきましょう」
「はい、それはお願いします。ちなみに行くのはいいとして、どれくらいの期間なんです?」
「そうですな、客人として招くことになりますし、これからの季節は冬ということになりますと、来年の春までではどうですかな?」
「えぇ!?そんなに長くですか?!」
「私も何とも言えないですが、おそらく我が家の料理人がアウル殿の甘味を作れるようになるまではいてほしいですな。無論、報酬はだしますし、レシピを口外することはありません。これについては契約をしていただいても構いませんよ」
「・・・細かいところは親と相談してからですが、内容はわかりました。ですが、俺の甘味は少々値が張りますよ?」
「ほっほ、そこはお手柔らかにお願い致します。では親御さんを説得させていただきましょうか」
アルバスさんと共に、我が家へと帰ると父がかなり驚いていた。明らかに高そうな服を着た人を伴って帰ってきたらそうなるのも仕方ないのかもしれない。
逆に母は平然としており、不思議な感じだ。
アルバスさんに視線を移すと、母を見た途端一瞬だが驚いた顔をした後、何故か納得したような顔になり、ぺこりとお辞儀して挨拶している。
・・・やはりこんな脳筋ゴリラの妻とは思えない程度に母は綺麗なのだろうか。
両親の説得も無事に終わり、やはり俺は来年の春まで王都へと行くことになった。一応春までと言うのは予定であって確定ではないとアルバスさんにも両親にも言われてしまった。
そして、王都へ行く準備をしつつ、ミレイちゃんにも事の次第を伝えた。
最初は落ち込んでいたが、母が何か言った途端に元気になり「魔法もっともっと練習しておくから!それに、シアちゃんの魔法教育も任せてちょうだい!あと、は、花嫁修業も頑張るから!」と言われてしまった。
・・・いろいろと突っ込みたいところはあるが、来年の春には帰ってくるんだぞ?まぁ、努力するのはいいことなので敢えてそこには触れないとしよう。
「アウル、王都に行ってもちゃんとご飯食べるのよ?体調には気をつけてね。あと、この手紙を王都に着いたら読みなさい。いいわね?王都に着いてからよ」
「?わかったよ母さん。なにかお土産買ってくるね!」
「あら、それはいいわね!アウルの良いと思ったものを買ってきて頂戴?あと、クッキーをたくさん作り置きしてから出発してね?」
ということで、クッキーを大量に作りどうせならと公爵家のご令嬢用にも少々手の込んだ物を作った。
そして、準備とクッキー製作を終えて王都へと出発する日が来た。
村の出入り口には両親とシア、ミレイちゃん、それに村長がいた。朝早いというのに見送りに来てくれたのだろう。
そんな中村長が前に出てきた。
「アウル君、王都は厳しいところだと聞いている。それでも、君ならやっていけるだろう。君には本当に感謝している。君は我が村の誇りだ、いってらっしゃい」
村長から激励の言葉をもらい、さっさと終わらせて我が家に帰ろうと改めて強く思った。
「じゃあ、ちょっと王都に行ってきます!」
王都に向かう馬車の道中では、御者のやり方や王都での基礎知識、野営の仕方などをアルバスさんに教えて貰いながらの旅となった。
最初は不安もあったが、アルバスさんの教え方はすごい上手だったのですぐに覚えることができた。
弱い魔物の襲撃もあったが難なく2人で撃退し、夜番の仕方もある程度覚えた。
盗賊なども出たが、詳しい話はまたいずれ語るとしよう。
そして、王都の巨大な城壁と門が目の前と言うところで母の手紙を思い出したので少し早いが読むことにした。
なになに…?
「ええええええええーーーー?!?!?!」
俺の絶叫が響いた。
ちょっとずつ更新していきます。
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