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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
最終章 のんべんだらりな転生者
173/177

ep.173 vsアセナ

「若様、ご無礼を承知で言わせていただきます。この勝負、勝たせていただきます」

「凄い自信だな。でも、まだ負けてやるわけにはいかないんだ」


 アセナの顔には自信が満ち溢れている。アセナが強いのは俺も理解している。すでにアセナからはとてつもない闘気が迸っているが、今まで相対した強敵に引けを取らないくらいの覇気も感じる。服装はいつもの執事服ではなく道着を着ており、その道着も特別な素材を使って作られているのか異様な気配を感じる。靴は履かずに裸足であり、今のアセナにとっては靴などないほうが有利なのだろう。


 アセナには1mmの油断も隙もない。これは苦戦しそうだな。しかも俺の刀は折れてしまったので、仕方ない。真打の登場だな。今回は厳しい戦いになるだろうし、悟空の力を借りるほかない。ハイドラが張った結界のおかげで全力を出しても周囲への影響を気にする必要がない。こう考えてみれば、俺が周囲への影響を考えずに戦ったことなど、本当に数えるくらいしかないかもしれない。本当にありがたいことだ。ふふ、アセナよ。早々に壊れてくれるなよ。


「では、アウルvsアセナ、はじめ!」

「若様、よろしくお願いいたします」

「あぁ、頼むな」


 無詠唱で全身強化の魔法を発動。さらに、卑怯ではあるがとある魔法(・・・・・)を発動した。さて、今の俺でどこまで食い下がれるか。


「若様、私はアルフレッド様に鍛えて頂き、獣人の極みに到達しました。それを――お見せします!!」


 空間把握はすでに発動していた。魔力制御を鍛え上げた俺の把握能力から逃れる術はない。そう、本当ならば術はないのだ。だが、驚いたことにアセナが4人に増えた(・・・)


「さすがにそれは反則じゃない……?」


 正確にはアセナの一人一人の密度が薄く感じられるから、増えたわけではないのだろう。多分だが、俺が認識できないほどの速さで動いているのだろう。それこそ、あり得ないほどの速度を可能とする歩法で。衝撃波が発生していないことにも驚きだが、さすがはファンタジーと言うべきか。


「挟連四撃!!」

「白眉の盾!」


 4人のアセナが同時に攻撃してきた。さっきは超高速で移動して分身を作っていると思っていたが、違った。本当に同時に4人のアセナが攻撃してきたのだ。分身というには圧倒的なまでの存在感がある。これはどうやっているのだろうか?


「これを受け切るとはさすがは若様です!」

「いや、アセナのほうがおかしい。白眉の盾に罅が入ったぞ?!」


 どんな攻撃力だよ。俺の覚醒した恩恵をもってしても何度も受け切れないほどの攻撃力だ。これが獣人として覚醒したというアセナの実力か。確かに今までの俺だとあるいは勝てなかったかもしれないが、前の俺と今の俺では決定的に違う点がある。それは、極限にまで研ぎ澄まされた魔力制御と魔力感応能力だ。おかげでギリギリこの超高速攻撃をいなすことができている。だが、やられっぱなしではルルに怒られてしまうぞ。


 杖に魔力を纏わせて周囲を一蹴させ、それと同時に如意金箍杖の能力を発現させて瞬時に長さを伸ばす。俺の周囲を取り囲むように構えていたアセナ全てにクリーンヒットさせることに成功した。が――


「手応えがない……残像?」

「歩法之極意・林~徐かなること林の如く」

「上か!!」


 これは、アルフの歩法の極意!! わかっていはいたけど、まさかアルフにも劣らない練度で習得しているとは!! さきほどまでの4体すらも囮で、いつの間にか上に移動していたとは。戦闘センスもさることながら、相手の虚をつくその戦術は獣人のもつ特殊なそれだな。


「若様、ご覚悟!! ――獣拳・星崩し!!」


 禍々しいまでの拳圧。あれは白眉の盾ですら怪しいほどの威力を感じる。アセナめ、早々に決めに来たか!

 瞬時に杖を仕舞い、恩恵の覚醒にて習得した俺の新たな技術を見せてやる。


雷体纏装らいたいてんそう――崩雷拳!」


 纏雷をさらに昇華させたある種の奥義。己を自由自在に雷化させるため、纏雷の極地とも言える。覚醒した恩恵と極限まで研ぎ澄ました魔力制御能力を使って初めて可能となるのだ。雷体纏装ができるようになったときはさすがのルルやハイドラも驚いていたっけ。ある意味、人間としての弱点を補ったわけだから。


 俺の拳とアセナの拳がぶつかりあい、まぶしいほどの爆発が起こった。吹き飛ばされまいと身を引くくして


「ぐっ……、さすがは若様。まさか、受け切られるとは思いませんでしたよ」

「アセナこそ。まさか俺の奥の手と同等の威力とは恐れ入ったよ」


 同等といったが、正確には俺の攻撃の方がやや強かったみたいで、アセナはかなりボロボロだ。正直、殺す一歩手前くらいの気持ちで放ったというのに、アセナの着ている道着がほとんどの威力を吸収してしまったらしい。あんな凄い道着はどこで手に入れたんだが。


 アセナの闘志は未だ折れていないが、そこまでして俺に勝ちたい理由があるというのはなんでなんだろうか。


「アセナ、どうしてそこまで勝ちたいんだ?」

「好きな人のため、でしょうか」

「…………へっ?」

「~~~~っ!!!! さぁ、若様! 再開です!」


 すぐさまアセナが消えた。それと同時に気配も消えた。恐らく、歩法・林を使ったのだろう。しかし、この技術は本当に凄いな。出来るなら俺も覚えたいところだが、アルフに師事するのは大変そうだし、ルル以外に師匠を作ったらルルがヤキモチを妬くかもしれないから、諦めておくか。


「アセナよ、そろそろ時間切れだよ」

「? なにを言って――――!? い、息が……!?」


 やっと効いてきたか。俺は最初にある魔法を発動しておいたが、それがやっとアセナに効いたのだ。俺はこの空間内の酸素濃度を少しずつ上げていったのだ。俺は濃い酸素濃度でも順応できるように五苦行山で特訓してある。普通は酸素濃度など大きく変わることなどないせいで、そういった訓練というのはすぐさま出来るものではない。濃い酸素は毒になるため、今のアセナは激しい戦闘行動で多量の空気を吸い込んでいるはず。おそらく、もう体内酸素濃度が致死量一歩手前だろう。


「そこまで!! 勝者、アウル!」


 危ないところだった。これ以上戦っていれば怪我では済まなかったかもしれないところだ。ここが閉鎖空間であったおかげでわりとすぐに空気を調整することが出来た。アセナの回復はルルがしてくれたようで、顔色はすでによくなっていた。ありがたいことだが、酸素濃度をいじる魔法はあまり使わないほうがいいかもしれないな。なんというか、普通に死人が出る可能性があって危ないや。アセナが獣人で特別に体が丈夫だったからこの程度で済んでいるが、相手が普通の人だったら危険すぎる。この魔法はお蔵入りだな。


「さすがですね、若様。まさかあのような魔法を使えるとは……」

「俺も、負けられない理由があるんでね。でも、アセナに好きな人がねぇ~」

「あっ、あの……、まだ内緒にしてもらえると……」

「了解だよ」


 アセナの話は追々聞くとして、今はあの3人との勝負に集中すべきだろうね。


 俺とルナ、ヨミ、ミレイちゃんの視線が交差した。

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[一言] うーむ( ¯ᒡ̱¯ ) 話を忘れた( ̄▽ ̄;)
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