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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第6章 農家と勇者と邪神ノ欠片 後編
146/177

ep.146 水


スリード支部のギルドマスター室に入ると、いかにもといった風貌の男性が豪奢な椅子に座っていた。その座っている前のテーブルには大量の書類が置かれており、厳つめのギルドマスターの目元にはかなり濃い隈が見て取れる。もう長い間ゆっくり寝ていないのだろう。


話が逸れるけど、ギルドマスターって厳つい男性しかなれない職業なのだろうか。王都のギルドマスターも厳つかったし。厳ついからギルドマスターなのか、ギルドマスターだから厳ついのか。うーん。これは一生の謎だな。



「殿下、お忙しいところ申し訳ありません。私が冒険者ギルドスリード支部のギルドマスターをしております、コロンです。今日は殿下というか王家に相談があってお時間を頂きました」


名前は顔に似合わず可愛い感じなんだな。これがギャップか。


「構いません。それで何が起こっているのですか? 街の雰囲気が少し暗い感じでしたが……」


そうなのだ。エリーが言っていたように、街の住人が一様に元気がないように見えた。最初は見間違いかとも思ったけど、エリーも同じことを考えていたようだ。


「この街が砂漠に囲まれているのはご存じかと思いますが、ここら一帯では水の確保が他所にくらべて難しいのです。それでも地下深くの水源まで井戸を掘ってはいるのでなんとかなっているのですが、ここ最近、井戸の水が急激に減り始めたのです」


エリーがいくら王族とはいえ、まだ成人もしていない王女に頼み込むあたり、かなり切羽詰まった状況なのかもしれない。にしても、水位の急激な低下か。


今まで問題なく使えていたというのに、急に水が減るというのは少々考えにくい。となると何かしらの問題があると考えるのが普通だ。水魔法が使える人は問題ないだろうけど、この街の人で水魔法が使えない人は多いはず。



「水の急激な減少ですか……」


「はい……。住人たちに元気がないのも、水の減少による不安からくるものでしょう。このまま水が無くなれば、この街を諦めなければならなくなる可能性もありますので……」


確かに、水がないとなると生活そのものが立ち行かなくなるだろう。



「たまたま大量に水を持っていた商人が水を用立ててくれているので生活が出来ていますが、その商人もそれなりに高い金額を要求しているので、住人たちは経済的にかなり厳しい状況です。商人にも生活があるので仕方ないとは思うのですが……」


「それはまた……」




…………ん? 何か引っかかるな。水が減り始めたのはここ最近と言っていたはずだ。それなのに、商人が街中に行きわたらせることが可能な水を用意した?


「すみません、ここ最近っていうのはどれくらいの日数ですか?」


「あー、正確な日数は~……おほん、7日前だ」


ギルドマスターが言いあぐねていると、受付嬢がギルドマスターへと耳打ちしていた。あの受付嬢は秘書的な役割もこなしているのかな。


「7日ですか……」


例えば、王都からスリードの街までは馬車で急いでも4日はかかる。一番近くの村や町がどれくらいの距離あるか知らないが、1日そこらで来れるところで、大量の飲み水を用意するのは簡単なことではないと思うのだが。


水魔法を使える人がいたとしても、街中に配れるほどの水を用意できるだろうか。うちのメイド部隊や婚約者たちならいざ知らず、普通の魔法使いにそれが可能とは考えにくい。


お抱えの水魔法使いが何人もいた……? いや、そんなことは考えにくい。となると、最初から水を大量に用意していたということになるけど……なんでその商人は水が無くなることを知っていたんだ? まさか本当にたまたま大量の水を売ろうとしていたというのか?


そもそも何か災害等がない限りか、海などの飲み水が用意できないところ以外で大量の水を買うことなどなかなかあることではないはず。それにも関わらず、大量の水をこのスリードに持ってきているというのはなんだかきな臭い。



「エリー、ちょっといい?」


「……アウルも気づいたのね。ギルドマスター、少し席を外します」


「あ、あぁ。わかりました」



ギルドマスターが俺を怪訝そうな目で見ているのが分かる。まぁ、確かに服装は貴族然としたものではないのに、エリーと対等のやり取りをしていることに違和感を感じるのは無理もない。



「エリー、この件はおそらく裏がある」


「えぇ、わかってる。おそらくその商人とやらがなにかしているのでしょうね。ただ……その商人というのが厄介ね。住人からすれば、高い金額を要求してくるとは言え、ライフラインを賄っている商人には文句を表立っていうことが出来ないのが肝ね」


「下手に騒いで商人が水を売らなくなったらそれこそ街を放棄しなくてはいけなくなる、か」



歯痒いな。商売とは需要と供給が全てと言ってもいい。需要があるところで売れば間違いなく儲けることが出来るのだから。しかし、すでに1週間が経つということは、水を売りたがる商人がそろそろ集まってきてもいいはずなのに、その気配がないというのは変だ。


商人とは理に聡いもの。それなのに競合相手が出ないということは、この商人の裏にはかなり大きい組織か貴族がついている可能性があるとも考えられる。


「……ねぇアウル。勇者を倒してしまったことであなたへの護衛依頼は完了したと言ってもいい。だから、この問題に関わる必要なんてないわ。けれど、無理を承知で聞いてほしい。この件を解決するのに力を貸してほしいの。この通り!」



王族たるエリーが深々と頭を下げている。別に今更改まるような関係ではないけれど、こうも真摯にお願いされては断るのは少々心苦しい。


「……はぁ、わかっててやってるだろ。それ」


「あら、バレた? 私が頭を下げることで民が助かるのならばいくらでも下げるわ」


エリーは本当に王族なのだと改めて実感した。その根っこにはちゃんと民を思う気持ちがあるのだから。こんな人が王位についたら国は安泰なのだろうな。


「めちゃくちゃ面倒だけど、手伝うよ。……乗りかかった船だしね」


「ありがとうアウル! もちろん報酬も弾むから――」


「いや、報酬はいいよ。今回の件はエリー……もとい、エリザベス王女殿下への貸しにしとく」


「ふふふっ、わかったわ! でも、これでアウルへの借りは2つになったわね。平民が王族に貸しを2つも作るなんて前代未聞よ?」


まぁ、他の貴族や国王への貸しも考えたらもっとたくさんあるんだけどね。それは言わなくてもいいことだ。



「じゃあ、ひとまずギルドマスターのところに戻って話を聞こうか」


「そうね」



勇者は未だに起きてこないし、さっさと終わらせて村に帰りたかったけどこればかりはしょうがない。みんなの協力を得てこの件をはやく解決してしまおう。



「……あぁ、俺はなんでこんなに忙しい星のもとに生まれたんだ」


「ん? アウル何か言った?」


「いや、なんでもない」




願わくばすぐに解決できる内容でありますように。

年末の12/28……3年使ったデスクPCが急に死去したせいで、更新が滞っておりました。(携帯で頑張ってます)

誠に申し訳ないです。未だに買えていないので、なるべく高くなくてcorei7以上のおすすめあれば教えて…………。

あ、そういえば3巻目も出せることが決まったらしいです。わーい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 適当に中古のノートPC手を出せばいいんじゃ?
[良い点] 携帯での更新お疲れ様です! [一言] ガレリアさんがいい感じのPC売ってるので是非......
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