ep.123 『第2の封印』①
最近バタバタしているせいで更新が思うようにできていません。
ごめんなさい。。。
おかげさまで、第8回ネット小説大賞で【金賞】を受賞することができました。本当にありがとうございます。活動報告にて表紙を載せておりますので、見ていただけたら嬉しいです。
海の中は迷宮の海とはまた違った雰囲気がある。海の中とは思えないほどに透き通っており、まるで水族館のドームに来たのかと錯覚するほどだ。水がほぼ透明のため、太陽の光も海底まで届いてきているから暗くもない。近くを魚が泳いでいるからパン屑を海に投げると魚が集まってきてとても幻想的だ。
空間把握をしてみて分かったが、かなり先が見えるこの海はおよそ透明度50m近くある。これは地球でも屈指の透明度だが、こんな海が普通にあるのだからやはり異世界というのは面白い。……いや、人間が海にまだ影響を出せるほどの存在じゃなければ本来はこれくらい綺麗なのが普通なのかもしれないけどね。
さっきまでは魔物がたくさんいたのに、アルフとアセナのおかげで見る影もない。本当は他にもたくさん魔物の種類がいたのだろうが、そのほとんどをハングリーシャークが食べてしまったのだろう。そのおかげと言ってはなんだが楽が出来ている。
そのあとも海底を歩いて行くと、いくら海水が透き通っているとは言えだいぶ暗くなってきている。深さ的にも海面から50mはある。ここらで光源でもつけておくか。
俺が光源をつけようと思ったら、みんなが一気に光源をつけた。
「まさか、トゥーン海岸の沖にあんな神殿があったなんて……」
カミーユが驚くのも無理はない。光源で照らされたのは、想像よりもかなり大きい海中神殿だったからだ。罠など無いか確認しながら海中神殿へと近寄るが、特に迎撃用の罠などは無かった。海中神殿の巨大な扉は開いており、来る物を拒もうとはしていないように思える。
「この神殿……。石灰岩で出来ているのか」
真偽はわからないが、石灰岩でできたこの巨大な神殿がここら一体の浄化作用を持っている可能性も考えられる。しかし、なかなか頭の良い仕組みだな。確か地球にも石灰岩でできた島では綺麗な海があったはず。ロタ島なんかが良い例だったかな?
俺が神殿の構造に感心していると、いつの間にかみんなが神殿内部へと侵入していた。なんというか、仲間はずれにされている感じがしないでもない。それほどまでにみんな早く海で遊びたいということか。
「俺も急いで中に――」
入ろうとした。が、開いていたはずの扉は急に閉ざされたのだ。
ぽつんと取り残された俺。グラさんなどの3龍は今頃、海岸でのんびりしているだろう。なにかあったらかけつけると言っていたけど、グラさんはポンコツだしレティアは妊娠中だから無理はさせられない。
直後、背後に感じたのは身を刺すような敵意。
背後を振り返るとそこには5つの首と巨大な胴体を持つ魔物がいた。俗に言うヒュドラというやつに違いない。本来ならば沼に生息すると聞いたことがあるのだが、こいつは海に出現した。さらに水の中というのを感じさせないほどに動きが俊敏である。普通のヒュドラではないというのは一目瞭然だ。
「……俺は中に行かせないってことね」
『その波長――』
ヒュドラが頭の中に直接語りかけてきたと思ったら、その内容は驚くべきものだった。
『お前は異界者……いや、転生者だな?』
◇◇◇
SIDE:ヨミ
バタン!
最後に私が扉をくぐった途端に扉が閉められてしまった。どんなに頑張っても人間の力では開きそうにないほど扉は大きく、重厚だ。みんなも急に閉じた扉に驚いてはいるものの、冷静さを欠く者はいない。伊達に無茶な訓練は積んでいないということか。
帰るときはどこから出ればいいのかと考えていると、あることに気が付いた。
「アウル様がいない……」
まずい。非常にまずい。みんなの心の支えでもあり、実質最強戦力でもあるアウル様がいないのはかなりまずい。それに、私も水属性の回復を使えるとはいえ、あくまでも外傷にしか対応していない。もっと言えば致命傷くらいの外傷には効果が薄い。つまり、このままアウル様が神殿内に入ってこられなければ、無傷で欠片の回収を成功させる必要がある。それも、状態異常にかからないように。
「あれ、ご主人様は?」
「本当ね。アウルはどこにいるの?」
っ!ここでアウル様がいないと気付かれるのはまずい。なんとかしなければ!
「アウル様はここは私たちに任せると言っていたわ。外にとてつもない強敵がいるから、そっちを相手するそうよ。そのために扉を魔法で閉じたみたいね」
「外にそんな強敵が?! 助けなくてよいのですか?!」
「ルナ、落ち着いて。アウルはそんな簡単にやられないわ。さっさと欠片を回収して加勢しにいきましょう?」
「そ、そうですね! イナギにも極力早く回収するように言っておきます!」
流石はミレイだ。アウル様への信頼が振り切れている。それにしても、咄嗟に嘘をついたとはいえかなりそれっぽいことが言えた。メイド部隊の子たちも任されたと聞いてやる気を出しているし、アセナもやる気十分だ。
カミーユ様も怯えることなく神殿内を観察しているし、ひとまず問題ないでしょう。問題なのは、あの人だけですね。
「……アルフレッド様、実は――」
「――ヨミ様、先ほどの機転は流石でございます。今アウル様の近くには確かに強大な何かがおります。それも、私でも倒すのは難しい何かです。先ほどの扉が閉められてからというもの、外の状況がほとんどわからなくなってしまいました。転移も封じられているようですし、なぜだか体に力が入りません。おそらくこれが主様が言っていた結界でしょう。確かに龍族の侵入は無理でしょう。私も召喚魔としてでなければ侵入できなかったでしょうな」
「っ!で、ではアウル様は本当にまずい状況にあるということですか?」
「おそらくは。また、主様の実力を鑑みてもすぐにやられることはないでしょう。海岸には龍帝もおりますしね。問題はこちらです。結界のせいで思うように力が使えない私と皆様。今ここにいる面子だけで封印から欠片を回収する必要があるのですから」
頼みのアルフレッド様も思うように力が振るえず、万能な回復魔法を使えるアウル様もいない。しかもルナは欠片の回収に徹するため助力は望めない。アルフレッド様はルナの護衛についていただいたほうがいいだろう。
今ここにいる私とミレイ、アセナ、ウルリカ、ムムン、ネロ、カミーユの7人で封印の守護者の相手をしなければならないということだ。
「……正直不安しかありませんが、アウル様に頼りっきりじゃなくても私たちはできるんだってところを、今回で証明して見せます」
「その意気です。きっと主様も褒めてくださります。早く終わらせて主様の助太刀に参りましょう」
「はい!」
決意を固めて神殿を進んでいくが、道は1本しかなく迷うようなことは無かった。行けども行けども代り映えのない景色。魔物の一匹も出てこず、かれこれ10分は進んでいる。
「……おかしい」
「おかしいよ!」
私がおかしいと不審に思っていると、ネロも同じことを思ったようだ。何かに気付いた?
「ネロ、何がおかしいのかしら」
「ヨミ姉さま!ここ、さっきネロが傷つけた柱と同じ傷がある!一本道だったはずなのに!」
ネロが指さすところには確かに、鉤爪と同じ形の傷がついている。野生の勘というか、いつの間にこんなことをしたのかは分からないが、今回はこれに助けられたみたいだ。
「アルフレッド様、これはもしかして――」
「ヨミ様が思っている通り、おそらくこれは――」
「「幻術」」
やっぱり……。体験するのはこれが初めてですが、幻術とはかなり厄介なものですね。きっと私たちは知らず知らずのうちに、幻術にかかってしまっていたのだろう。しかし、どうやってこの幻術を突破するかですね……。しかし、アルフレッド様でさえすぐには気づけないほど高度な幻術か。
なんだろう、すごい違和感がある。このままではいけないような……そんな何かが。
「あれっ?! ネロがつけた傷跡が少し小さくなった?!」
「そう? そんなもんじゃなかった?」
傷跡が、小さく……?
もしかして!
「ヨミ!イナギがこの神殿自体から欠片の波動を感じるって!」
「やっぱり!これは守護者がかけた幻術だけど、その守護者っていうのがそもそも神殿自体なんだ!」
そう考えればいろいろと説明がつく。強固な結界に独りでに閉まる扉、高度な幻術と全てに納得できる。しかし、そうなるとどこに欠片の本体があるか、ということになる。
ギィ
「ヨミ、あれはこっちへ来いってことじゃない?」
ルナが指を指している方向を見ると、先ほどまでは無かったはずの扉があった。それも、通路のど真ん中にだ。さっきの音は扉が開く音だったというわけね。近づいてみると、不思議なことに扉の背後には何もなく、ただただ扉だけが存在している。そして、その扉の中は薄暗い空間が広がてっているのだ。
「さっさと欠片回収してアウル様を迎えに行くわよ!」
待っててください、すぐに終わらせます!
細々と更新していきます。
評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。
ヨミは有能ですね……




