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のんべんだらりな転生者~貧乏農家を満喫す~  作者: 咲く桜
第4章 帝国お家騒動編
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ep.104 夢世界の激闘②




「ん……ここは……帝都、だよな?」


俺は確か第三皇女の夢世界に来ているんだったな。ここは精神世界と同義らしからこの世界のどこかにリリーとグレシルがいる。それを見つけ出してグレシルを排除すれば任務完了だ。


『主様、聞こえますか?アルフレッドです。無事に精神世界へと入ることが出来たでしょうか?』


お、アルフの声だ。しっかしどうやって連絡してきてるんだろう。エゼルミアさんあたりが調整してくれているのかな?


『聞こえてるよ。第三皇女の精神世界はまんま帝都みたいなんだ。通行人もたくさんいるし、建物も現実のものと全く一緒だ』


1つを除いて、だが。


『……可能性の1つに過ぎませんが、もしかしたらそれらの……ザザッ……情報は、リリネッタ第三皇女様の記憶かもしれません。建物が損壊……ザザッ……したり、人が死ねば……ザザザッ……記憶が失われていく可能性があるので、念のため注意が必要かと』


ふむ、確かに一理ある。というかその可能性は著しく真実に近いのではないか?この通行人一人一人がリリーの何気ない記憶。そして家族や親しい人はリリーにとってかけがえのない記憶なのだろう。……にしてもノイズが酷いな。流石に俺が侵入したことに気づいたかな?


『分かった。念のため注意しておく。時間もあまりないし、早速動くとするよ』


『ご武……運…を…!』



さて、この世界で動こうにも時間は限られている。無闇矢鱈に探しても無駄に時間を浪費するだけだし、ある程度予測を立てる必要がある。


「といっても、皇女様が居る場所って言ったら一箇所しかねぇよなぁ……」


ここは間違いなく帝都を舞台とした精神世界なのは間違いない。そして唯一帝都と違うところというのがあの城だ。


本来なら白を基調とした王道の城なのだが、目の前にあるのは真っ黒な城だ。それも見るからにおどろおどろしい雰囲気をしている。自分からここにいると喧伝しているようなものだ。


依り代が眠って俺が侵入していることは気づいているというのに、たいして俺への攻撃がない。俺のことを嘗めているのか、それとも絶対の自信があるのか。


「……どちらにせよ、ちょっと不快だな」


周囲に損害をだしてはいけないという縛りプレイ。なんで俺が戦闘するときって制約が必ずあるんだろう。創造神様がなにか調整でもしているんかな?!


俺の今いるところから城までおよそ2kmといったところか。幸いにも大通りで道幅は広い。まぁ、もちろん通行人も多いし建物も多いが、俺は自重しないぞ?俺を監視する目もないしな。


「障壁展開! からの~、移動(ムーブ)!」


大通りの中央に展開した障壁を、モーセの奇跡よろしく大通りの道幅いっぱいまで移動させた。これで城までの道は開けた上に周囲への影響は考えなくていい。もちろん障壁は5重に張っているから、強度も十分だ。


ん?この気配は…


「道が出来たのはいいが、それは相手にとっても好都合だったってことね」


見るからに屈強そうな魔物が出てきたな。全長は3m弱で牛頭に人の体、自分の体と同じくらいの巨大斧を持っているか。普通のミノタウロスと言うわけでもないのだろう。明らかに発するオーラがそこいらの魔物と桁違いだからな。


『貴様が侵入者だな?ふはははっ、ただの子供ではないか。こんな子供を警戒するとは主も日和ったものだな!』


まぁ、子供扱いされているのは仕方ないけど、なーんか馬鹿にされているのは腹が立つ。それにあの顔。なんかムカつく。


「気品の欠片もないな…」


『あぁん?!嘗めやがって!さっさと死にさらせ!』


おっと、あの図体からは考えられないほどの素早さだ。それに攻撃速度も半端なく速い。でもな、俺は夢世界童貞じゃない。これがもし初めてだったら苦戦した可能性もあっただろうが、生憎だったな。俺は夢世界の渡り方や力の振るい方を七海に教えてもらってんだよ。


この世界は魔力もそうだが、想いの強さや意志の強さもかなり反映される。


「だから、こんなことだって出来る」


『なっ?!』


自分の3倍以上の大きさがある斧を、指二本で挟んで止めることだって可能だ。無論、それに見合うだけの魔力を消費する必要はあるのだがな。


お、即座に距離を空ける程度に知性はあるのか。だが……


「せっかく出てきてくれたのに悪いな。これは単なる八つ当たりだ」


最近ちょっとストレスが溜まる出来事ばかりだったからな。俺はもっとのんびり生きたいんだから。その鬱憤を晴らさせてもらおう。


《杖術 太刀の型奥義 斬魔ざんま一刀いっとう・壱式》


『?!……な、なんだよ、こけおどしか? びびらせやがっ……ぺ?』


ズルリ という音が聞こえたと錯覚するほど綺麗に断ち切ってやった。おそらく切られたことにも気づいてないだろう。だが、いい小手調べになったな。やっぱりこの世界だとすこぶる調子がいい。体の大きさは子供のままなのに、技のキレがいい。体が追いついていなくて使えていない埃を被った技達も使えるといいな。


斬魔の一刀は神速の一太刀で相手を両断する技だ。この技の性質は相手を物理的に切るだけではなく、相手の概念そのものを切るところにある。要は一度切られたら復活できないということでもある。さらに回復が著しく困難にすることが出来るのだ。


もちろん本来はかなりの集中が必要になる技だが、ことこの世界においてはそれも必要なくなるから使えた秘技だ。奥義なんて修練以外で使うとは思わなかったが、ありがたいことだ。


しかし、そろそろ城へ行かないとな。時間はたいして経っていないとは言え、グレシルとの戦闘にどれだけ時間を要するかは未知数。早くに行って探すのが賢明だ。




『あの無能め。しかし、この先へは行かせられませんよ』


次は……いかにも強そうだな。見た目は角の生えた紳士。右手には書物をもっているみたいだが……。


「和やかに話をするのもいいが、生憎時間がなくてね。通らせてもらうよ!」


身体強化をフル稼働して一瞬で相手の元へと近づき、先ほど同様に技を放……


『神速の一刀、それも私を両断ですね?』


「?!」


『おや、攻撃しないのですか。残念ですねぇ、あともう少し踏み込んで頂けたらお終いでしたのに』


今、完全に心を読まれたよな? それにあと一歩踏み込んでいたらヤバかった。おそらく眼前に不可視のスレッドがあった。あれに顔が触れていたら綺麗に泣き別れるところだったぞ。さっきのやつと違ってかなりの強敵みたいだな。空間把握にギリギリ反応があるかどうかのギリギリのライン。まじで厄介だぞ。


「さっきの脳筋とはちがうってわけね…」


『分かって頂けてなによりです。ではこちらの番です。《顕現せよ、36の悪霊軍団》』


心を読む上に36の悪霊軍団だと?たしかそれって……


「お前、ダンタリオンだな?」


『おや、私も有名になったものですね。こいつらに勝てたら何でも1つだけ教えてあげますよ』


悪魔のオンパレードだな。確か公爵級だったはずだけど、なぜこんなところに?……いや、本物のダンタリオンではなく、夢世界でグレシルが作り出した虚像な可能性も否めない。現に、さっき切り捨てたミノタウロスの体がなくなっているからな。残っているのはあの巨大斧だけだ。……あとで回収しておこう。


「っと、とりあえずは目の前の悪霊どもをぶっ飛ばすか」


悪霊どもは大小様々で、姿形も色々だ。人型から亜竜までと幅広いが、一番目を引くのはあの巨大な獣。俺の知る限りベヒーモスだと思うのだが……。もはやこの世界ではなんでもありだな。だが、悪霊というくくりであるなら、聖魔法に弱いのは明白。


『聖魔法で倒せる、などと思っているようですが甘いですよ。私の軍団は反聖魔法持ちですので』


……心を読まれるってのは思ったより厄介だな。それも、力のある存在がだ。これでも人族としては強い方だと思っていたが、人族というくくりから出るとまだまだだと思うと、ちょっと自信無くすな。


いちいち相手するのも馬鹿馬鹿しいし、城まではまだまだある。ここは一気に倒させてもらうぞ!


「ウインドカッター+ウインドカッター 合成魔法『大切断』!」


右手と左手にそれぞれ別のウインドカッターを用意し、合成して威力を跳ね上げたのが大切断だ。これは闇ギルドのトップが使っていたという技をアルフが教えてくれたのだが、かなり使い勝手がいい。ただ、魔力の消費が激しいのが難点だな。このあとのグレシル戦を考慮すると、ここで使える魔力はあまりないから、もう合成魔法は使えないか。


グギャアァァァァァァ!


『ほう、なかなかやりますねぇ』


大分倒せたけど、やっぱりベヒーモスが残ったか。強度が他の悪霊達とは段違いだな。しっかし、防御が硬い上にあんな馬鹿でかい角で突進されたら自動障壁だけで防げるか……?あんな凶悪な角とか反則だろうが。


だが、あれを素材として回収出来るのなら利は大きい。精神世界で取得した素材って持って帰れるかは不明だがな。


ガアァァァァァァァァ!


「ちっ!」


大きく吠えたベヒーモスへとやや前のめりに懐へと飛び込み、魔力を纏わせた杖を大きな角めがけて振り上げる。


《杖術 太刀の型奥義 斬魔の一刀・弐式》


弐式は下から上へと振り上げながら切る奥義だ。もちろん当たればいくらベヒーモスと言えどタダではすまないはずだ。


しかし、杖が当たるすんでのところでベヒーモスが一歩引いた。杖の切っ先が、ベヒーモスの顎先ぎりぎりの空を切る。切る対象が無くなった俺の技は、そのまま上空の雲を両断した。


俺は空振った勢いそのままに一回転。宙で体勢を整えて一連の流れで次の技へと移行した。


《杖術 薙の型奥義 斬魔ざんま一振ひとふり


太刀の型が上下の技とすれば、薙の型は左右の技だ。ベヒーモスの角めがけて放った技は、その角の振り回しによってインパクトの瞬間をずらされて防がれてしまった。さらにそのままベヒーモスの突進が、宙にいる俺へとクリーンヒットした。


「――っ!!」


思わず顔を歪めた。


本来なら魔導具による自動障壁が展開されると思っていたのだが、精神世界では動作しないらしいのだ。そのせいでモロに突進をくらってしまった。


体中の骨が軋んで悲鳴を上げている。身体強化していたおかげで即死は免れたが、かなりの重症だ。ここまでのダメージは、転生してから数えるほどしか経験がない。


「……エクストラヒール!」


『……ただの子供ではないようですね。まさかベヒーモスといい勝負をするとは思いませんでしたよ。ですが、時間の問題ですね。私のベヒーモスは最強なのです!』



正直甘く見ていた。夢の中で強化されるのは俺だけじゃなく相手もそれが適用される可能性はおおいにある。それを含めた戦闘を考えないといけないんだ。




――よし、リセットだ。


素材の回収はおいといて、こいつを倒さないことには始まらない。ベヒーモスをどうやって倒すかだけど……。まぁ、魔法で牽制しつつ死角から攻撃だな。


「フレイムランス×10!」


巨大な炎の槍を瞬時に10本生成して発射した。迫り行く炎の槍をベヒーモスが爪などで迎撃している瞬間を見計らって、巨体の真下に移動した。気配を消して近づいたし、魔法に夢中で俺に気づいていないはず。


ここなら空に向かって超電磁砲が打てるため、リリーの記憶に影響を与えることもない。いつものルーティンのように磁界を発生させて鉄貨を放とうとしたとき、不意に横から何かが迫ってくるのが見えた。ほぼ反射的に障壁を張ったおかげでダメージは無いが、少しでも遅れていたら危ないところだった。


再度距離を取って様子を見てわかったことだが、俺を薙いだのは尻尾だった。しかし、完全に死角だというのに反応するとは……空間把握のような魔法でももっているのか?


それにしても、ベヒーモス単体で俺が苦戦しているのに攻撃してこないとかダンタリオンは余裕だな。高みの見物というか。


……いや、違うな。


ベヒーモスがいる限りあいつは攻撃が出来ないんだ。そう考えると辻褄があう。それに、あの大事そうに抱えている本はもしかしてベヒーモスを操っている、とかな。もしかしたらベヒーモスのあの超反応はダンタリオンのサポートのおかげなのかもしれない。


可能性がないわけじゃない。最初に悪霊軍団と言っておきながら、このベヒーモスからだけは死臭がしないし、まさに生きている獣って印象だ。まさか、ベヒーモスに関してはブラフか?倒した悪霊の個体数など数えていないし十分にあり得る。


なら狙うのはベヒーモスじゃない、ダンタリオンだ。


『ちっ!勘の良いガキですね!ベヒーモス、さっさとそいつを殺せ!』


心が読まれているってのはなんだか気持ちが悪いが、アタリのようだ。心が読めても避けきれなかったら意味が無いんだぜ。


「意志ある雷霆よ、生ける竜となりて彼の者を殲滅せよ、雷竜(ライトニングドラゴン)


『ベヒーモス!その雷竜を消してやりなさい!』


ま、こいつは囮だがな。


雷霆の矢(レイヴンアロー)×5」(追跡(ホーミング)付与!)


『くそっ!避けられなっ――――ぐあぁぁっ!!』


雷竜がベヒーモスに消されると同時に、俺の魔法がダンタリオンに直撃した。さすがにあれをくらっては生きていないだろう。


「心が読めても、避けきれなかったら意味ないな。お前の敗因は自分を鍛えることを怠ったことだ」


もう聞こえていないだろうがな。


ダンタリオンがうっすらと消えていくのに対し、ベヒーモスが消えない。やはりこいつは別だったようだ。


「お前、操られていたんだな。殺したりしないからどこへなりとも行くといい」


まぁ、ここは精神世界だからどうなるかは不明だけど。


『私を助けてくれてありがとう。私は操られていたんだな。助けてくれた君に恩を返したい。ぜひ私を君の従魔にしてくれないか?』


……は? こいつ今従魔って言ったか? いや、嬉しいけども。さすがにこんな大きさの魔物を配下にするのはなぁ……。


『無論、小さくなることも出来るぞ。こんな風に、な』


ポンッ っと音がなったと思ったら巨大なベヒーモスは消え失せ、その代わりに中型犬くらいの大きさにデフォルメされたベヒーモスが鎮座していた。


「――!!」


え?なにこの可愛い生き物。あんなに凶悪だった角が、丸っこくてめんこい角になってるんだけど?それにもっふもふなんだけど。最高か?いや、最高なのか?


「ぜひ仲間になってほしい!名前はあとで決めるからとりあえず亜空間に入っていてくれ」


『よろしく頼む、我が主!』


むふふふふふ。よし、さっさとグレシル倒してもふりまくろう。もふもふというよりまふまふだな。毛並みもいいし、忠犬って感じだ。最高だ。


新しい仲間も出来たし、さっさと城へ急ぐぞ!

ゆっくりと更新していきます。

評価・ブクマ等して貰えたら嬉しいです。


皆様のおかげで【ネット小説大賞】受賞しました。双葉社様にて書籍化させて頂きます。


お腹痛くなり始めてきたけど、まだ大が出るには時間かかるからゆっくりトイレ向かってたのに、トイレに近づけば近づくほど加速度的に大が出そうになって、結局トイレ着く直前に臨界点を越えそうになるあの現象ってなんて言うんでしょうか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ベヒーモスが従魔(๑>◡<๑) 強すぎる従魔が手に入りましたね! どんな可愛さで描かれるのか、マンガでの登場が待ち遠しいです(´∀`=)(=´∀`)
[一言] 小さいベヒーモスの見た目は、どんな動物? 角がある猫?犬?それとも牛?
[一言] ああ、あるあるパンツを下ろすのがま……
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