ep.10 ミュール夫人
レブラントさんが王都へと帰っていった。しっかし、本当に売ってしまってよかったのかと今でも思ってしまう。しかし、過ぎたことは仕方がない。
とりあえず、今後武力的に接触して来る可能性はある。今のうちに使える魔法を整理しておいたほうがいいだろうな。よし、そうと決まれば林へ行かねば。
とりあえず各魔法で使える攻撃魔法を列挙してみよう。
●火魔法
・ファイヤーボール
・ファイヤバレット
・フレイムランス
・レッドレイ
●水魔法
・ウォーターボール
・ウォーターバレット
・アクアランス
・水牢
・ウォーターフォール
●風魔法
・ウィンドボール
・ウィンドバレット
・ウィンドカッター
・カッタートルネード
●土魔法
・ロックボール
・ロックバレット
・アースウォール
・ピットホール
・アースクエイク
・アースピラー
●氷魔法
・アイスボール
・アイスバレット
・アイスシールド
・アイスピラー
●雷魔法
・サンダーレイ
・サンダーランス
・サンダーレイン
・雷轟
・サンダーボルト
・超電磁砲
こんなもんか?まだ何かあったような気がしたが、まぁいいだろう。こう考えると意外と引き出しが多いような気もするが、やはり単体向けの技ばかりだな。擬似隕石を降らせるって言うのは前回考えていだが、地形が変わるだろうから極力やりたくないしなぁ。
だとしても超電磁砲は別として単体属性での威力は限度があるよなぁ。・・・単体でダメなら属性を融合すればいいのか?融合魔法というか複合魔法というか。いくらでもやりようがあるよな。
火魔法と土魔法を使えばマグマの擬似隕石も作れそうだな。擬似隕石の大きさを小さくすれば地形への影響もほぼなくできるか。
あとは火魔法と風魔法でファイヤーストームか。実際に小規模で発生させてみたけど、あれは災害級の規模だろうな。人に対してあれをやってしまえば地獄のような状況ができるだろう。
まっ、こんだけできればもういいか。あとは魔法の練度をあげるだけだな。
こうして、春が来たので新たにテン菜や大豆などをアウル畑に植えたり、魔法の訓練をしているうちにあっという間に時間が過ぎていった。
いつもならレブラントさんはおおよそ2週間~3週間くらいのペースで来ていたのに今回は3週間を過ぎても来ることはなかった。これは何かあったと思ったほうがいいだろう。ということでさらに魔法の訓練をした。具体的には属性魔法ではない。
「もっと、対人特化した魔法があってもいいのかもしれないな」
創造したのは以下の5種類だ。
・魔力重圧
・威圧
・ダウンフォース
・エリアヒール
・空間把握
特筆すべきはダウンフォースだろう。これは本来車などが地面に押さえつけられる向きに発生する力のことだ。イメージとしては敵を地面に縫い付けるための技である。
同時進行でクッキーを作ったり石鹸、化粧水なども作っておいた。あいにく醤油と味噌は大豆が足りなくて作ることができなかった。レブラントさんが来るたびに大豆は買っていたが、ついつい調子に乗って豆腐なんかも作ってみたら一瞬で大豆がなくなっていたのだ。・・・無論、豆腐は完成していないが。
まだ6歳だというのに馬車馬のように働いている気がする。やはり貧乏農家に暇はないのか?
そして前回レブラントさんが来てから1ヶ月半以上が過ぎた頃にレブラントさんがオーネン村に訪れた。それも、いつもの護衛含めた少数精鋭の行商じゃない。仰々しい団体を引き連れているように見える。
遠視!
レブラントさんの顔が明らかに疲れているように見える。・・・ん?なんか喋っている?口パクである程度わかるかな?
アウル訳:『すまない、抑えきれなかった。まだ仕入先はバレていないから適当にごまかしてくれ』かな?
レブラ訳:『すまない、抑えきれなかった。もう仕入先もバレそうだから絶対に出てこないでくれ』アウル君のことだ。きっと何らかの方法でこっちのことを察知してるはずだ。
この時、圧倒的なまでにすれ違っていることに両者ともに気づいていなかった。
「や、やぁアウル君、久しぶり。今回は来るのが遅くなって悪いね。はい、これいつもの大豆。金貨1枚でいいよ」(何でいるんだいアウル君、来るなって言ったのに何してるんだいアホなの死ぬのバカなのかい?)
「お久しぶりですレブラントさん。何かあったのではないかと心配しましたよ。はい、金貨1枚です。それで、今回はなかなか仰々しいみたいですけどどうしたんです?」(任せてくださいレブラントさん、完璧に普通の6歳児っぽく振舞ってみせます!)
「あぁ。これはね、僕が仕入れている商品について知りたいらしいんだが、仕入れているのは謎の多い人なのでわからないと伝えたんだが、それでもついて来るって言ってね。毎回会えるかはわからないって言ったんだけど・・・」(頼むから余計なことは言わないでくれよアウル君、本当に喋らずに帰ってくれ今すぐに。これ以上厄介なことはしないでくれよ)
盛大に心の声がすれ違い続ける2人であった。
「レブラント殿、この子は?」
「ミュール夫人・・・!この子はこの村のラルクという農家の子供です」(まずい・・!!アウル君、早く逃げてくれ!)
「初めましてボク。その大豆何に使うの?」
ミュール夫人というのはこのあたり一帯を治めているランドルフ辺境伯の第一夫人で、控えめに見ても絶世の美女である。ランドルフ辺境伯は民を大事にすることで有名だが、それにあわせて愛妻家でも有名であった。第一夫人のミュール夫人は美容に関しては人が変わるほどだというのも密かに知られるほどだ。
そうとは知らないアウルはものすごい美人が来たくらいにしか思わなかった。まぁ、おそらく高貴な人だろうというのは何となくわかっていたが、まさかそれが辺境伯夫人とは思っていなかった。それ以上に今までにないほどの美人を目の前にして頭の中が真っ白になっていた。
「えっと、これは調味料にして食べます!」
・・・はっ!?!?しまった!美人すぎてついつい本当のこと言ってしまった!?
(調味料?初耳だな。にしてもアウル君、君は本当に面倒ごとが嫌いなのかわからなくなるよ・・・。しかし、まだこの子と化粧水が繋がったわけではない!まだ、間に合う!)
「アウル君、確かそれで豆のペーストを作るんだ「レブラントさん、今は私はこの子と喋っているのです」・・・はい」
(アウル君、僕ではもうどうにもできないようだ、頼むから何とか凌いでくれ!)
「えぇ、これはさっきもレブラントさんが言っていましたが加工してペースト状にしているんですよ」(嘘は言ってないよね?味噌は確かにペースト状にしてるし・・・)
「ふぅん・・・。確かに嘘は言ってないみたいね。まぁ、大豆をそんな風に食べるなんて思いつかなかったけど、面白い子ね。ありがとうボク」
ミュール夫人は美容について人が変わると言われている人物だが、それとは裏腹に魔術師としても超がつくほどの一流魔術師である。そのミュール夫人から見てもこの少年は得体が知れなかった。
魔力は底が見えないほど大きい上に、先ほどからこの子だけに向けて威圧をかけているのに全く動じていないというある意味でこの子は異端児だ。
直感だがレブラントが隠さんとしているのはおそらくこの子なのだろうと思った。・・・が、ここでこれ以上深く聞きすぎるのも悪手だというのを理解していたため、大人しく手を引くことを決めた。影からこの子を監視させるように手配することを心に決めながら。
「じゃあ、またねアウル君」
この後レブラントは何人かの村人と商談をしたのちにオーネン村を去って行った。
こうしてアウルが初めて貴族の目に触れた瞬間だった。そして今後ちょっとずつアウルが注目され始めるきっかけにもなったのである。
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