ep.1 転生
序盤はテンプレ気味です。嫌いな方は要注意でお願いします。
のんべんだらりと生きるのが目標である。しかし現世ではブラックともホワイトともとれないなんとも中途半端な会社で働いている。
北海道の片田舎出身で北海道で就職したはずだったんだが、会社の意向で気付けば東京のど真ん中で働いている。
彼女は一応いたが、北海道に置いて来てしまい、結局現在独り身だ。・・・遠恋というのは俺には無理だったようだ。
灰色の同じような毎日を過ごしているある時、会社が創業50周年を迎えたということで、その記念として5日間の休暇を順次折を見て取得できるということになった。
どうせならと、会社が有給消化の一環に必ず取得させている夏季休暇5日にぶつけて、前後の土日合わせて怒涛の16日間という休暇が取得できることとなった。
まぁ、そんな甘い話があるはずもなく。休む分の仕事を消化させないといけないので、連日終電ギリギリまで働き、土曜日も出勤し日曜日は家で仕事をする羽目になったが・・・。
馬車馬のように働き、なんとか休みまでに仕事を終えることができた。
納品の2週間も前に成果が出来上がったのは社会人になって初めての経験だった。
俺の趣味は多岐に渡る。聞こえはいいが、本音は熱心になれるものがないだけだ。それでもいろいろやってきたためある程度の知識はあると思う。変わり種だと、杖術なんかは割とちゃんとやっていた方だ。
やっとこさ取得した怒涛の16日間は新たな趣味を見つけるべく、ヨーロッパへ旅行することにした。前々から行ってみたいと思っていただけに、この喜びもひとしおだ。
しかし、人生はそうそう上手くいかないらしい。海外旅行1日目のイタリアで大型バスが、石畳の荒れていたカーブを曲がりきれずに転倒。
カーブ付近の歩道で運悪く下敷きになったのが俺というわけだ。
そこで、俺の生涯はあっけなく終わりを迎えた。
・・・はずだった。
・・・・?
ここは、どこだ?
あれ、声が出ない。というか体がない、のか?体がないのになんとなく周囲の状況がわかるという不思議な感覚だ。
俺がいるのはどうやら真っ白い部屋のようだな。
「起きましたか。一時はどうなるかと思いましたよ」
声がする方向に意識をやると、そこには奇麗な女性が立っていた。
奇麗な碧眼と白い髪。透き通るような程透明度の高い肌は、神々しさすら感じさせる。
否、一目見てこの人は神様かそれに類するなにかだろうというのが理解できた。むしろ理解"させられた"のかもしれないが。
そして俺はやはり死んだのだろうということも。
「私は数ある銀河系の中の地球を含む銀河系を観測している者です。今の貴方は精神体のため話すことは出来ないでしょうが、考えるだけで意思は私に伝わるので話を聞いてください」
わかっ…りました。
「ふふふ、敬語ではなくてもいいですよ」
それはありがたい。けど、さすがに初対面なので出来る範囲で丁寧にします。
「はい、それで結構です。細かい前置きはいいでしょう。単刀直入にいきますが貴方には今、選択肢が3つあります。1つはこのまま天国へ行くこと。2つめは地球に輪廻転生すること。3つめは私が創造した世界へと転生すること。以上になります。どれがいいですか?」
すごい急だが、やはり俺は死んでいるのか。
ふむ…。その前に聞かせて欲しいことがあるのだが、いいだろうか?
「はい、なんでもどうぞ?」
このようなことは死んだ人全員にやっているのですか?
「いえ、そんなことはありませんよ?滅多にあることではありません。覚えていないかもしれませんが、貴方がまだ小さかった頃、そう5歳くらいのころです。車に轢かれそうになっている猫を助けたことがありましたね?」
そんなことあったかな・・・。あ、よく覚えてないけど母親にこっぴどく叱られたのはなんとなく覚えている。確かその理由が道路に飛び出したからとかそんな感じだったような気がするな。
「実はあの猫は私の孫なんです。まだあの頃の孫は好奇心旺盛で、たまに猫に変身して下界を散歩するというヤンチャを良くしていました。轢かれても死ぬことはありませんが、神として不適だとされ、追放されることも有り得ました。それを助けていただいたお礼、ということです」
なるほど、情けは人のためならず、というのは本当のようですね。
「ふふふ、確かにその通りですね。他に聞きたいことはありますか?」
女神様が創造したという世界はどんな世界なのでしょうか?
「そうですね・・・。地球で言うところのファンタジーな異世界、というやつでしょうか?ただし、ステータスがみれたりは基本的にはできません。また、レベルと言う概念もほとんど知られていません」
ほとんど知られていない、ということはステータス自体はあるんですね。基本的にと言いましたが、どうやったら見れるのでしょうか。
「『アルトリア』、異世界の名前ですが、世界中には全部で108個の迷宮があります。迷宮では宝箱が出現し、その中に稀にステータスオーブというものがあります。それを使えばステータスを閲覧できるようになります。いわゆる一種のスキルのようなものです」
なるほど・・・。だいたいわかりました。せっかくなので私は女神様が創造されたという世界に転生してみたいと思います。
「…自分で創造しておいてなんですが、魔物もいるし貴族といった輩もいます。はっきり言って危険も大きい世界ですよ?それでもよいのですか?」
はい。新しい趣味を見つけようとしていたところだったので、丁度いいです。それに新しい世界なら違った趣味も見つけられそうですから。
「‥そうですか。では貴方には加護を授けましょう。どんな力が欲しいですか?なんでもいいですよ?」
いえ、過分な力は争いを呼び寄せます。ですので私に特別な加護はいりません。強いて言うなら健康な体が欲しいです。病気は嫌ですから。
「そう・・・ですか。そんなことを言うのは貴方が初めてです。分かりました。あとはこちらで適当に調整しておくので安心してください。ですが転生先は私でも決められません。貴方に幸多からんことを祈っています」
はい、テキトーにですね。ありがとうございました。
そうして俺は転生した。
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