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天才画家の憂鬱

作者: 南波英人

天才と呼ばれたのは遠い昔のように感じる。


もう、才能は枯渇してしまったのか、私が描く絵画には魅力が感じられない。


それでも、昔の栄光か買い手は途絶えなかった。


正直もう描きたくない。


天才と呼ばれた頃の絵画は何度見ても見飽きることはないが、最近描いた絵画は二度と見たいとは思えなかった。


今回描く絵画で終わりにしよう。


これが完成したら、今までできなかった釣りをやってみよう。


料理も楽しいかも知れない。


旅行をしてもいいな。


今後のことを考えていたらいてもいられなくなった。


早く完成させてしまおう。


最後の絵だと伝えると昔からの親友が欲しいと言ってきた。


絵の出来は気にしない。それより、買うからそのお金で遊ぶといいと言われた。


今までは丁寧だったが少し、激しく塗ってみよう。


いつも使う色はやめて使わない色を使おう。


筆じゃなくて身の回りの物を使おう。




「完成したのかい?」


『あぁ、完成したよ』


「・・・すごいな・・・正直に言ってもいいかい?」


『いいさ、わかってるから』


「『下手くそ』」


「やっぱりそうか。最後だからってやったな」


『うん、できる限り遊んだ。君は昔から僕の考えてることが分かるから、助かるよ』


「あぁ、天才が描いたって言われたら何が描いてあるんだろう何が伝えたいんだろうと考えるけど、天才と言われていても昔からの友が描いたんならすぐ、分かるさ」


『買ってもらって言うのはわがままだけど飾らないでしまっておいて欲しい』


「分かってる。君から買うためのお金は奥さんに秘密だしな。屋根裏に隠して時々見て君を思い出すぐらいさ。


さぁ、また催促が来ないうちにまずは旅行にでも行ってきな。帰ってきたら、この絵画でも見ながら酒を呑みかわそう」


『ありがとう、じゃぁ、行ってくるよ』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・

・・・


「100年前の天才画家が最後に描いた絵画が最近になって民家の屋根裏から見つかりました。


専門家によるとその時代の画法とは異なり、晩年に行ったとされる旅行で世界中の芸術に感化され編み出した画法と考えられるそうです。


今回特別に展覧している国立美術館では連日長蛇の列が出来ており、見た人の中には感動して泣き出す人もいるそうです」

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