その4
ア「告白されて、まさかその足で一緒に札幌まで行ったんじゃないよね?」
サ「それは無理だよ。飛行機が出る直前だったし。」
ア「じゃあ次の日に行ったの?」
サ「うん。レインが出発したのが夕方だったから、その日でも行けたら行くつもりだったけど…席が空いてる一番早い便が、次の日の朝イチだったんだ。」
ア「そっか、週末だし混んでるよね。」
サ「だからいったん家に帰って荷物をまとめて、その日は空港のホテルに泊まったの。」
ア「へー、わざわざホテルに?」
サ「だって朝イチの便は家からじゃ間に合わないし。空港に泊まる以外に選択肢がなかったもん。」
ア「コクられた余韻に浸る暇もないね。」
サ「ホントだよー!でも、まあ、レインに会うためのバタバタだから嬉しかったよ。それにホテルでゆっくりしたから。次の日のこと考えて、楽しみすぎてあんまり寝れなかったけど。」
ア「ふはは。」
サ「で、翌朝に飛行機に乗って札幌まで…レイン、引っ越しの片づけがあるからさ。アタシは『勝手に家まで行くから迎えはいらない』って言ったんだけど、新千歳に着いたら来てくれてて。あれは嬉しかったな。」
ア「分かるよ。アタシだって同じことしたもんね。」
サ「そうなの?シン君、遠いところへ行ったことがあるの?」
ア「そう。一年以上、会えなくてね。やっと帰ってくる時、『来るな』って言われてたけどアタシは行ったよ。シン、口では文句言ってたけど、嬉しそうだった。」
サ「へえ。アタシたち、似たような経験してるんだね。」
ア「まあね。で、サニィはレインと感動の再会だったわけだ。」
サ「再会っていっても半日ぶりなんだけどね。でも、レインの顔を見たら泣けてきちゃった。」
ア「そうだろうね。やっとレインの横に、素直な自分で立てるんだもんね。」
サ「思わずレインに駆け寄って、到着ロビーのど真ん中で抱きついちゃった。早朝だし人も少ないから、いいやって思ってさ。」
ア「いいねえ~。そこでキスでもしたら完璧だね。」
サ「それは、さすがに恥ずかしいもん。」
ア「そりゃそうだ。」
サ「だから…ちょっとだけね。」
ア「したんかい!」
山形生まれが生まれて初めて関西ツッコミ。
やれやれと首を振りながら、彼女は二人分のお代わりを注文した。