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ミズハ……もう一人の転生者の想い ~その2~

      ■


 付き合い始めて数週間が経過し、レイジ先輩との二度目のデートの帰りのこと。

 私は平常を保っているつもりだが、周囲から見れば明らかに舞い上がっていることが分かるくらいに機嫌が良かった。

 完全に浮ついていた。

 ステップでも踏んでいるかのように足が軽い。

 口元も引き締めようとしているのに、度々緩んでしまう。緩む度に「ふふっ」と小さな笑みが零れた。


「まさか、こんなに好きになるなんて……なれるなんて思わなかったな……」


 回りに聞こえないように呟くと、口元浮かんだ笑みを隠すように俯いた。

 今顔を上げたら周囲の人々に、往来の真ん中で一人ニヤニヤしている変な女に見られたに違いない。

 口元が変に曲がってしまうのを抑えるように口角に指を添える。

 その指が少しスライドして唇に触れた。


「キス……しちゃったんだよね……」


 改めて思うと頬が熱くなる。

 レイジに対する思いがミズハの中で止めどなく膨れ上がるのが分かった。


「信じられない……こんな……普通の女の子みたいに恋愛できるなんて……」


 ――これで、少しは普通の女の子になれたかな?

 そんな風に考えてしまう。

 ちょっと前の自分なら考えもしなかった思考に驚きつつも、フワフワした気持ちが止められない。

 いや、止めたくない。

 何時までも、この不思議な感覚に囚われていたい。


 そう思っていたのに……。


「嫌になっちゃう……折角の良い気分が台無し……」



      ■



 少し離れた車の中から、浮かれているミズハを忌々しげに見つめる者がいた。


「ち……あのクソアマ……只じゃ済まさねぇぞ! 必ず犯してやる!」

「車に連れ込んで刃物チラつかせて押さえつけりゃ好きにヤれんだろ?」

「スタンガンだって用意してんだ。余裕で朝まで輪姦まわせるだろ」


 下卑た笑い声が車内に響く。

 今日の昼間、レイジとミズハに絡んできた男達だった。

 ギラついた瞳は、薄汚い欲望が垂れ流しになったような色に染まっていた。


「なんだお前ら、あんな女にやられたのか」


 運転席にいる男がやや呆れた風に言った。

 三人に比べ、二回りは体格が大きい男だった。

 相当身体を鍛えているのか、胸板が鎧の様に厚い。


「いや、あの女、ああ見えてべらぼうに強いんすよ!」

「お前ら油断しすぎだ。大体、強いって分かってりゃあやりようはあんだろ?」

「次は負けませんって」


 そう口々に言う男達の目が薄昏い欲望の色に染まった。


「んじゃ、そろそろお楽しみの時間と行きますか」


 ミズハが人通りの少ない細い道に入っていったのを確認すると、運転席の男は車をゆっくりと発進させた。

 EV車は殆ど音を立てずにミズハの傍まで近寄る。

 車がミズハに隣接した直後、後部ドアと助手席からそれぞれ手にスタンガンを持った男がミズハを抑え込もうとして――その場で同時に崩れ落ちた。

 二人とも地面に横たわったまま口から泡を零し、股間を押さえてビクビクと震えている。


「気付かないとでも思ったんですか? というか不意を突けば私に勝てると思ってたんですか」


 ミズハが冷たい視線を男達に落とす。

 後部座席にまだ残っていた男は、目の前の光景に震え上がっているのか降りてこようともしない。


「ビビってんじゃねえよ。まあ、なかなかやるのは確かだが所詮は女。急所を狙わなきゃ何も出来やしねぇよ」


 そう言いながら、運転席から大柄な男が降りてくる。

 その言葉に後押しされるように、後部座席に残った男も不承不承ながら降りてきた。


「うん? 何処かで見たと思ったら昼間突っ掛かってきた人達ですか? 負けた腹いせに『お兄ちゃん、助けて~~~』って強そうな人に泣きついたんですか? 物凄く格好悪いですね」


 後部座席から降りてきた痩せぎすの男にミズハが挑発気味に言うが、言われた男は萎縮しているのか冷たい汗を流すだけで反論はない。


「チッ! 本当に根性無ぇな! 言い返す事も出来ねぇのかよ。てか人に頼っておいて手前ぇが何もしねぇってんなら、マジいらねぇんだぞ?」

「ヒッ! す、すいません!」


 大男が苛立ちを吐き捨てる様に言うと、痩せぎすの男は慌てて数歩前に出る。

 大男は他の男達に比べ、明らかに暴力に慣れている。威圧感で他人を従わせることにも。

 そんな大男が舐め回すようにミズハを凝視した。


「へぇ? 結構良い女じゃねぇか? 気の強ぇ女が力に屈服するのがたまんねぇんだよ」

「ああ、無理です。暑苦しいの嫌いなんですよね。生理的に受け付けないタイプなので近寄らないでくれますか?」

「あ? 舐めてんのか?」


 男が肩を揺らし凄味を利かせてミズハを睨み付けるが、当のミズハはどこ吹く風と言った風に、自身に向けられた悪意を受け流す。


「舐められないと思っている時点で考えが足りないんですよ」


 ミズハが静かに構えを取った。


「そんな構えなんかとって、女の力で俺に勝てると思ってんのか?」

「口の減らない脳筋ですね。とっととご自慢の力とやらを示してみたらどうですか?」

「痛い目を見ねぇと分かんねぇのか?」


 大男がミズハに掴みかかった。

 次には骨の折れる乾いた音と短い悲鳴が、明かりの少ない裏道に響いた。


「面白い!」


「続きが気になる!」




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