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どうやら俺は異世界転生したはずが死んでる模様  作者: 仁 智
第三章:大公爵との出会い
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どうやら俺は以前のフラグを折れていなかった模様

「何が起きた……」


 司祭達ですら現状を把握出来ていない。

 チラリとアリィ達を見るけど、やはり理由が分かっていないようだった。


 単に魔法が失敗したのか?

 【複合術式】は術者同士の連携が重要な強化方法であり、連携が不十分だと魔法が発動しないことがあると、以前アリィに教わった。

 しかし、今の術式は俺が見る限りでは失敗するような要因が見当たらない。

 と、取り敢えずどうしよう?

 このまま固まっているのも間抜け過ぎるし……。



「フッ………………どうした? 何かするんじゃなかったのか?」



 ………………何か台詞のチョイスを間違った気がする。

 いや、間違ってない。

 この尊大な態度を取っている《悪霊》を盛大に倒すってシチュエーションがあれば、後はレリオやリーフ辺りが上手く口裏を合わせてくれるに違いないッ!

 だから俺はこの尊大な態度を崩してはいけないのだッ!

 だから早く俺を攻撃してくれッ!



「何をしているお前達ッ! 何としてでもあの悪霊を倒さんかッ!」



 マオカが発狂じみた声を上げ、仲間を叱責する。

 つうか、この人命令するだけで、自分じゃ何も出来ないのか……。

 人の上に立つには冷静さが足りないんじゃないの?

 周囲の騎士達も、うんざりした視線をマオカに向けているじゃないか。


 マオカに不満の目を向けながらも、司祭達は再度魔法の詠唱に入る。

 今度は最も魔力量の高い司祭が先頭になって詠唱を開始する。

 他の司祭達は後に備え、次々と別の魔法を準備する。

 そして、先頭の司祭の魔法――第六階位の高位魔法が放たれる。



「【邪悪なる者に(ディスペル)神の鉄槌を(・イービル)】!!」


「……………………………………………………………………?」


「………………………………ば、馬鹿な…………何故、何も起きんッ!」


 ええええッ?

 またしても不発?

 流石に一人で唱えた魔法が発動しなかったためか、その司祭は「有り得ない」と口にして狼狽しまくる。


 その後も他の司祭達が続けて【ターニングアンデッド】や【ホーリー・レイ】などと唱えるが、そのいずれも発動する気配が無い。

 まるでこの世界から神聖魔法が消えたかのような現象に、誰もが動揺を隠せずにいた。



「い、一体貴様は何をしたのだ……?」


「何も?」



 マオカの問いに、俺は冷たい視線を浴びせながらそう答えた。

 いや、マジで何もしてないんだし?

 そもそも、この司祭達が勝手に失敗してるだけだし?

 勿論、魔法を使えないような結界など張ってないし?

 というか、俺の予定も狂いまくりなので、正直困ってんだけど?



「ふ、ふはははははははははッ! 当然じゃッ! 貴様らは《神の使い》である天使に牙を剥いているのじゃぞ!? 《神の使い》に魔法を撃つなど、神が許すはずがなかろうッ!?」


「ブフオッ!」



 ちょっと? リーフさん??

 貴女、勢いで何言っちゃってますか!?

 俺、天使設定は拒否したんですけど?

 流石に威厳ある態度も保ちきれず、噴き出しちまったよ?



「その通りです。私がセレステリア様とオグリオル様から賜った《天使》レイジエル様を悪霊呼ばわりしたのですから、創造神様達の反感を買って当然です。神の怒りに触れたのではなどと考えるだけでも恐ろしい」



 ちょっとおおおおおおおおおおッ!

 アリィさんまで?

 あと、《レイジエル》って何ですか!?

 人の名前を勝手に天使っぽく変えるの止めてくれませんか!?

 頭混乱してきて何を言えば良いのか分からなくなってきたよ!?

 アリィの方をチラ見したら、恐ろしさから目を背けるようにし、周囲から顔を見られない様にしていたが、俺の位置からは笑いを必死に堪えて痙攣しているのが丸見えだった。

 って、完全に面白がってんじゃねえかああああああああああッ!



「さあ、《天使》レイジエル様! 今こそ神の力の片鱗をお見せください!」



 ミディまでノリノリだよ!?

 ちょっと、これ、何もせずにいられない状況じゃんよ?

 つうか、無理だこれ。

 もう、黙っているだけではやり過ごせない……いや、天使のフリをするしか選択肢が無い。

 俺は神聖魔法の行使に踏み切る。



「【我が主セレステリアとオグリオルよ、汝がしもべの声を聞き給え】」


「「「な、ああああッ!」」」


「ば、馬鹿な…………そんな馬鹿なッ! 只の死霊が神聖魔法をッ! しかも創造神様二柱の御力を使えるというのか…………ま、まさか……本当に天使なのかッ!」



 数人の司祭が悲鳴に近い声を上げ、愕然とする。

 一番前にいた司祭などは膝から崩れ落ちて何かブツブツと呻いている。

 勢いで詠唱始めちゃったけど、これ天使認定不可避なのでは?

 まあ、今更中断もできないんだが………………。



「【我が右腕に神の御力を、我が拳に神の鉄槌を】」



 紡がれた呪文を聞いて、司祭達の顔が青ざめる。

 唱えているのは神聖魔法でも数少ない攻撃魔法。

 先ほど、司祭のうち一人が俺に使おうとして発動しなかった魔法。



「【主の威光を畏れぬ愚かな者に、神の裁きを与え給え】」



 俺は魔法を唱えながら、リーフに教わった魔力制御を実践する。

 以前みたいな垂れ流しではなく、呪文と構築する魔法円に合わせ、最適な魔力を注ぎ込む。

 そして目標は…………。



「【聖なる一撃(ホーリー・レイ)】!」



 俺は完成した魔法を目の前の地面(・・・・・・)に叩きつけた。

 空気を斬り裂くような鋭い音と共に、膨大な光の束が地面に突き刺さる。

 どうやら魔力制御は上手く行ったようで、直径三メートルくらいの光の柱が地面に突き立つが、それを見ていた司祭やマオカ、騎士達を巻き込むことは無かった。

 ただ、それを見た誰もが俺を見て畏れていた。

 いや、俺の背後というか、上空を見て畏れ、そしてひれ伏している。

 …………うん? もしかして、俺を見て畏れているのでは無い?

 嫌な予感がして俺は恐る恐る後ろを見ると……。


 そこには神々しい光の下、その光を凌駕するほどの輝く笑顔で俺を見つめ、一方の手でお互い手を握り、もう一方の空いた手を伸ばしてくるセレステリア様とオグリオル様がいた。

 って何やってんすか! あんた達はッ!

 オグリオル様は地上に干渉すんの止めたんじゃないんかいッ!

 セレステリア様も止めろよッ!

 二人して仲良く手を繋いでいる場合じゃねぇよッ!

 二柱ふたりしてダンスが終わった時の決めポーズみたいな格好で俺の背後に立つなよ!

 特にオグリオル様のしてやったり感がムカつくッ!

 これで完全に天使認定されたじゃないか……。


 もう俺、一体何なの?

 《全くダメージを負わない死霊》?

 《千年ぶりの聖人》?

 《死霊王の魔力を受け継ぐ者》?

 《霊体でも魔法が使える魔術師》?

 《聖女の隠密》?

 《始まりの竜プリミティブ・ドラゴンを庇護下に置く魔王》?

 《創造神二柱が地上に使わした天使》?


 盛りすぎだろ!


 もう一度言うぞ?


 盛りすぎだろ!


 いくら何でも節操がないわッ!

 もっと統一感取れよ!

 雑多過ぎだろ!

 汚く盛られたランチプレートみたいになってるよ!?

 それとも『またある時は』とでも言えってか?

 その『ある時は』の後に続く言葉が壮大過ぎて逆に恥ずかしくなるわッ!


 改めて俺はマオカ達の方へと向き直ると、丁度、【ホーリー・レイ】の効果が消えた。

 そして、底が判然としない直径三メートルの大穴が空いていた……。

 その大穴を前に、その場にいた全員がひれ伏していた。

 マオカなんか、股間から何か垂れ流してるし……。

 先頭にいた司祭は地面に顔をこすりつけるあまり、段々潜っていってるし……。


 ブッシュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


 そして大穴から、もうもうとした湯煙とともに大量のお湯が噴き出した。


「「「…………………………」」」


「あれ」


「「「やり過ぎだあああああああああああッ!」」」


 …………やれっていったの君たちでしょ?


 ………………これアレだ。

 きっと近いうち、温泉回だろ?



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