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どうやら俺は転生のために王都に向かう模様

前回の登場人物


向日島レイジ:本編の主人公。既に幸せな来世が望める保証が無くなった。


アルリアード・セレト・レフォンテリア:通称アリィ。ここに書かないと本名忘れそう。事実、作者は別で作ったキャラクタープロフィールから毎回コピペ。


ミディリス・ナスナ・フィルディリア:通称ミディ。なんかここまでアクが強いキャラでは無かった筈なのに暴走中。巣での他の騎士の影が無い。


レリオード・ナスガ・クルツェンバルク:通称レリオ。謎の関西弁騎士。言葉遣い間違ってたらゴメン。


ラグノート・ナスガ・ブランディオル:唯一のおっさんなのに、おっさんだからか出番が少ない。通称も無いし。


「転生できない……な……何で?」


「分かりません。先ほどレイジが言ったレイジの魂が異世界のものだからという可能性もありますし、転生する前に召喚された事が原因かもしれません。或いはレイジの魔力が強すぎる事も何か原因があるかも知れません」

「最初のが原因だとしたら致命的だなぁ……」

「勿論、あくまで可能性の問題です。実際に何が起きているのかは分かりませんし、今話していることも予想でしかありません」


 アリィの口調が先ほどと比べても明らかに静かで重い。

 その態度から、アリィにも本当に分からないのだと伝わる。

 原因が分かれば対処法も浮かぶかもしれないが、そこが分からない以上は手の打ちようもない。


「勿論予測なのは分かった上で聞くけど、例えば今言ったことが原因とした場合、どうしたら転生出来ると思う?」

「そうですね……レイジの魂が異世界のものが原因だとした場合、私達では何もできないでしょうね」

「ですよねー……」

「ただ、その可能性は低いと思っています。もしレイジが言った転生の話が本当なら、創造神様達が転生出来ない魂を選ぶ理由がありません」


 そうか。もし異世界の魂が転生出来ないとしたら、セレステリア様達が言っていた、『異世界との魂の交換』が成立しなくなる。

 となれば、最初の原因は低い……というより、ほぼ無いと言えた。


「転生する前に召喚された事が原因とすると、その原理を知っているのは……」

「召喚した本人!?」


 アリィが難しそうな顔をして俺の方を様子見した時点で、何を言わんとしたのか理解した俺は、本人が言いにくそうな答えを自ら口にした。


「そうなりますね……ただ……その人物が我々と敵対している国の重要人物なので……安易に理由を聞きには行けないでしょうね……」


 それを肯定したアリィは益々難しそうな顔をした。

 そうだよなぁ……。

 そもそもこの四人はあの熊(仮)と戦っていたんだし……その熊(仮)を従えていた召喚者と仲が良いはずも無い。

 しかも、人を呼び出しておいて失敗扱いにして早々に退却するような人間に、何か問いただしたところで協力してくれる可能性はゼロに等しい。


「最後の一つですが、レイジ……貴方は死霊にしては強大すぎると言って良いほどの魔力を保有しています」

「そうなの? 自分だと良く分からないんだけど?」

「魔力の感じ方が分からないと!?」

「あ、こっちの世界じゃ魔力を感じるのは常識なのか……」


 《剣と魔法の世界》だもんなぁ…………当然か……。


「魔法が身近でない人たちもいるので常識という程でもないのですが……貴方から発せられる魔力は、そう言ったものに疎い一般の方でも感じ取れると思いますね」

「うえ……そんなに?」


 何でそんな事になってんだ?

 チート的な何かかと期待したが、そもそもセレステリア様もオグリオル様も一言もそんなこと言って無かったよな……?


「肉体がある場合、下腹部に魔力の渦を感じるのですが……霊体の場合もどこかにそのような場所を感じませんか?」


 言われて下腹部(?)を意識してみると確かに物凄い勢いで回転する力の渦を感じた。これが魔力か……。

 なんかアレだ。厨二的に言うとチャクラっぽい……何かちょっとワクワクしてきた。


「お腹と言って良いか分からないけど、確かにその辺りにあるね。しかも物凄い勢いで回転してる」


 意識をそこに集中してみると、巨大な大渦がとんでもない速度で回転しているようだった。

 高速で回転する轆轤(ろくろ)の上に、際限なく広がり続ける粘土が乗ってるような感覚が伝わってくる。


「それを小さく抑えるようイメージできますか?」

「やってみよう」


 俺はその粘土の様に広がる魔力を両手で丁寧に整えていくイメージでもって、小さくしようと試みる。

 意外にもその行為はあっさりと成功し、飛び散るだけだった魔力は次第に小さくまとまっていく。同時に回転速度も下げることが出来た。

 そんな俺を見て、アリィ達は目を見開いて驚いていた。


「さっきより多少小さくなったかな?」

「多少どころではありません。見違えるほど魔力が制御されていくのが分かります……レイジ……貴方、大変な才能をお持ちですね」

「いやぁ……どうかな? 魂だけの存在だから、効率的に扱えているようにも思えるし……」


 確証は無いんだけどね。ただ、今俺が認識しているこの身体って、かなりこの魔力と本質が近いように感じた。

 動くときに自分の未来の姿をイメージするのと同じように、粘土をこねるイメージでもって、魔力も扱えそうって直感しただけだったんだけど、どうやら上手く行ったようだ。


「なるほど、『魔力は魂で扱え』なんて事をいった魔術師もいましたし、レイジの感覚は恐らく正しいかと……で、肝心な事なのですが……その魔力を手放す事が出来そうですか?」

「手放す……?」


 意外な言葉に俺は同じ言葉で聞き返す。


「ええ、レイジの大きすぎる魔力が輪廻への障害となっているなら、それを手放せば転生が可能と言うことになるかと」


 その言葉に俺は小さくまとめた魔力を遠くに投げるようイメージしたが、流石にそれは無理だった様だ。魔力の塊は俺の中心部分に位置したまま、動かすことが出来ない。


「ちょっと無理みたいだね……外部から減らす事は出来ないの?」

「先ほど二回、レイジに破邪魔法をかけてますが、魔力の減少が確認できませんでした。外部から減少させには後何十発打ち込めばいいのか……」

「痛みに耐えられなさそうなので遠慮します」


 アレを何十発とか勘弁して欲しい。

 しかしそうなるとどうするべきか。


「消滅するまで破邪魔法を打ち込めば良いのでは?」

「ミディ!?」

「失礼しました」


 このお姉さん、懲りてねぇなぁ……。


「アリィ様、となるとどうなさいますか? このまま彼を放置ともいかないでしょうし」

「そうですね……取り敢えず魔力制御が出来てきたようですが、彼が転生したいというなら、その助けをしたいですし……」


 ラグノートの問いにアリィはそう答えた。

 でも多分、ラグノートのおっさんはそういう意味で聞いたんじゃないと思うよ?

 俺を危険視して、放置できないって言ってるんだと思うよ?

 そう考えていると、アリィは俺の方を向いてウインクした。

 ドキッとした……同時に、アリィはラグノートの懸念を理解した上でそう答えたのだと分かる。


 彼女にとって、俺は危険な存在ではなく、迷える魂の一つに過ぎないのだ。そして彼女はそんな俺を安堵させようと、敢えてラグノートの言葉を正しく捕らえなかった。

 それが、今の俺には無性に嬉しかった。

 他の人間が俺を危険視する中、彼女だけは俺を救うことを目的にしている。

 彼女が《聖女》と呼ばれる所以を俺は大いに理解した。

 となれば俺も状況が分からない、世界の常識が分からない等と言って何もしない訳にはいかない。

 必死に何か無いかと考えた俺の頭に、一つのアイデアがひらめいた。


「場所……」

「え?」

「ここじゃ無い場所……例えば教会とか神殿みたいな、神様に近い場所とかだったら転生できないかな?」

「なるほど……確かにその方が可能性はありそうですね。それに王都の教会なら、明確な神託も受けられますし……」


 俺の意見にアリィはあっさりと賛同する。

 難色を示した訳ではないが、あからさまに嫌な顔をしたのはミディだ。

 もう『コイツ着いてくるの?』って感情がだだ漏れである。

 ラグノートも眉間に皺を寄せ、何事か考えている。

 表情が変わらず、分からないのがレリオだ。

 先ほどから彼はあまり意見を言ってこない。自分の立場を分かっているのかとも思ったが、糸目で笑うその表情から内面が見えないため、少々不気味でもあった。


「皆、ちょっと不必要にレイジはんのこと警戒しすぎなんやない?」

「レリオは黙っていろ」

「あ、はい」


 違った。

 立場が弱いだけだった。

 ミディに睨み付けられ萎縮するレリオを見て、逆に親近感覚えてしまった自分がいる……。


「では、レイジには王都まで同行願いますが、よろしいですか?」

「ああ、よろしく頼むよ」


 俺はそう言って右手を差し出す。

 その行為にアリィ達はまた硬直した。


「あれ? ああ、握手って概念無いのかな?」

「いえ、握手は知っているのですが……」

「あ、幽霊の俺とじゃどっちにせよ出来ないか……」

「いや、それだけでは無くて……あのレイジ……気を悪くして欲しくないのですが、幾つか注意しておきたいことがあります」


 アリィは神妙な面持ちで俺を見て言った。


「レイジは道中、無闇に生物に触れるような真似は避けて下さい。その……死霊に触れられると命を吸い取られる事があるのです」

「えッ!?」

「やはり知らなかったのですね……さらに死霊は時として他の生物に憑依することが出来ますが、憑依された側は精神を侵されるので……」

「分かった、今後注意する」


 俺は素直に頭を下げた。

 元の世界のゲーム的な表現をするならエナジードレインってヤツか。確かにそれとか憑依とか、やられた方は堪ったものじゃないだろう。


「チッ! レリオに憑依したらワイトとして共々討伐してやろうと思ったのに……」

「そんなッ! まず助けてぇなッ!?」


 なんか物騒な声が聞こえてくるが、この場はスルーしよう。

 もっとも、この時初めてレリオに感情らしい感情が見えたのでちょっと驚いた。

 うーん、不気味に思ったのは穿った見方だったかな?


「さて、取り敢えずの方針も決まった事ですし、荷物を回収して麓の村まで戻りましょう」

「「「了解!」」」

「レイジは私達の準備が終わるまでそこでじっとして動かないで下さい」

「出来れば移動する練習はしたいんだけど?」

「ああ、そのくらいなら良いです。ただ、この部屋からは出ないようにして下さいね」

「了解した」


 まあ、いきなりどこかに消えられても困るだろうしな。

 そう言えば昔、飲み会でメンバーの一部がいなくなって慌てた事があったっけ。

 まあ、俺以外の全員がいなくなったんだけど……って思い出さなきゃ良かった……。

 アリィ達は落ち込む俺を余所に、周囲に散らばっている数々の品を拾い集める。

 暗くて何を拾っているのか分からないが戦利品か何かだろうか。

 そう言えば、アリィ達は何でここにいたんだろうか。

 後で聞けば教えてくれるのかな?



      ■



 その後、体感時間にして二〇分程して、戦利品を回収し終えたアリィ達と移動を開始した。

 その頃には俺も大分慣れて、走る位の速度も出せるようになった。

 壁とかも透過出来るんだろうけど、それはまだ試してない。

 下手に試して、アリィ達を警戒させるのも本意じゃなかったからだ。

 昔のゲームにあった迷宮の様な石造りの通路を一行は迷うこと無く進む。アリィの説明に寄れば、ここは古い遺跡との事だった。

 一行が迷うこと無く進むので、良く来るのかと聞いたら少し笑われた。


「道案内がいるんですよ」


 アリィは前方を指さし、そう答えてくれた。

 意識を集中すると、前方に小さな魔力の塊を感じた。俺とは違う魔力……。


「あの、神聖な感じのする魔力がその道案内?」

「ええ、そうです。アレは《聖霊》です。《聖霊》に道案内をして頂いてるので、我々は迷うこと無く進む事が出来るのです」


 ある種のナビゲーターか……便利なものだとか言ったら天罰が下るのかな? 少なくともミディに文句言われるのは確定な気がする。

 それから程なくして俺たちは遺跡の外に出た。

 日が暮れつつもあるが、まだ外はいくらか明るい。


「麓に村がありますので、今日はそこで一晩明かします」


 アリィが眼下を指差して、そう告げた。

 高台から見下ろした視線の先に村……というか、広大な畑の真ん中に家が数軒固まった地域が見えた。

 家が円形状に固まり、その周囲に石造りの壁が見える。

 家の数は十数軒。高さは二階建てが殆どだが、三階建ての建物も幾つか見えた。

 その中央には少し大きな建物……アリィの説明によれば教会が建っている。

 あれ?

 俺こんなに視力良かったかな?

 ってそうか。肉眼で見てるのと違うのか。

 にしてもあの村……何か違和感があるんだよな。

 例えば……。


「もう夕方なのに……明かりが無いな」

「明かりだけでは無い……煙だって無いだろう!?」


 俺の呟きに対し、ミディが苛つき気味にそう言った。

 俺の何がそんなに気に入らないんだよ……って死霊なところか。今更確認することではなかったわ。

 でも煙か……確かに煙突はあるのに煙が出ていない。

 元の世界じゃ煙突なんて縁が無いから想像出来なかったが、確かに薪などを燃やせば必ず煙はでるだろう。まして、夕食が近いだろうこの時間であれば、煙が出ないなんて事は有り得ない。


「レイジのいた世界では煙は出ないんですか?」

「そもそも各家庭で薪を使う事がないからな」

「え? それってどうやって料理とかすんねん?」


 ミディの質問に俺が答えると、レリオが興味津々といった様子で言葉を挟んできた。


「ガスって分かるかな? 気化させた燃料を燃やすんだけど……」

「ゴメン、何言っとるのか全然分からんわ」

「だよな……まあ、煙が出ない燃料を使ってるって思ってくれれば良いよ。だから煙突のある家も無い……空気を入れ換える設備はあるけどね」


 換気扇は必ずと言って良いほどあるけどと言いかけたが、説明が面倒になりそうなのでその発言は控えた。


「だから気が付かなかったのですね……本当ならあの村も、中央広場の釜からは常に煙がでてるはずなんですよ……」


 そう言ったアリィの横顔に、悔しさと悲しさが滲み出ていた。

 いや、アリィだけではない。

 全員、何か思うことがあるのか、その表情は硬かった。

 そしてその理由に、俺は薄々気が付いていたが、それを質問することは出来なかった。


レイジ:「一仕事終わって外に出たらまだ明るかったとか……最近感じた事がない感覚だなぁ……」

アリィ:「レイジが何を言っているのか分からないですが、何か辛いことがあったのはわかります」

レイジ:「ああ、辛かったなぁ……毎日毎日、終わらない仕事の山に囲まれて、明るい内に帰れるなんてことは全くなくて……」

アリィ:「あの、レイジ?」

レイジ:「なのに休むことも倒れることも許されなくて、最低でも真夜中まで仕事して、翌日は朝速く仕事へ……」

アリィ:「レイジの前世は……奴隷だったのでしょうか?」

レイジ:「この世界に照らし合わせると俺は奴隷だった!??」

アリィ:「次回『どうやら異世界転生したはずが死んでる模様』第五話『どうやら俺は死霊としての能力を少し理解する模様』……あとレイジ、奴隷だってそこまで酷い生活送ってませんよ?」

レイジ:「奴隷以下だったッ!?」



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