どうやら俺は全裸の《人外のじゃロリ》娘にからかわれる模様
前回の登場人物
向日島レイジ:本編の主人公。ドラゴンが成長するまで転生がお預けになりつつあるが……?
アルリアード・セレト・レフォンテリア:通称アリィ。突発的な主人公の行動にだんだん振り回されてきている。
ミディリス・ナスナ・フィルディリア:通称ミディ。アリィに仕える騎士の一人で聖騎士。
レリオード・ナスガ・クルツェンバルク:通称レリオ。アリィに仕える騎士の一人。
ラグノート・ナスガ・ブランディオル:アリィに仕える騎士の一人で隊長格。
リーフェン・スレイウス:死霊術師ヴィルナガンの手によってアンデッド化したドラゴン。レイジに転生させられた上、僅か数時間で孵化までさせられる。
「むにゃ……なんじゃ、騒がしいの……」
そう言って全裸の少女が起き上がる。
年の頃は十代前半。
身体全体の起伏はまだ少なく真っ赤な髪と、それ以上に紅い瞳が白い肌と相まって一層際立っている。
背中には竜の翼があり、鱗の生えた小さな尻尾も見え隠れする。
頭部には小さな竜の角も生えておりって…………。
「レイジ? 何をまじまじと女の子の裸を見てるんですか?」
「ご、誤解だ誤解ッ!」
俺は少女から即座に視線を逸らした。
「何じゃ、レイジならどれだけ見ても良いのじゃぞ?」
「ちょっ……」
止めてッ!
これ以上アリィが怒りだしたら神敵扱いされそうッ!
《聖女》が《無慈悲な神の尖兵》になっちゃうから止めてッ!
っていうか、この少女もしかして……。
「君はもしかして……卵から孵ったドラゴン?」
「うん? なんじゃ、気付いておらんかったのか? 如何にも妾は始まりの竜であり生まれ変わったリーフェン・スレイウス本竜じゃ!」
え………………。
「「えええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」」
俺とアリィの驚愕が、物見台から村全体に響き渡った。
■
「ほ、本当にリーフェン様なのですか?」
「如何にも」
アリィが疑問に思うのも仕方ない。
転生直前に会話していた存在と、あまりに雰囲気が異なる。
というか喋り方まで違う。
「あの……喋り方とかが前と違いすぎると思うのですが……」
あ、やっぱりアリィも気になったか……。
「うん? だってレイジ、好きなんじゃろう? 《人外のじゃロリ》だったかの?」
「……じんがいのじゃろり?」
「うわああああああああああああああッ! ちがッ! 違うッ! それ誤解だからッ!」
たまたま気に入ったキャラ数人がそういうジャンルだっただけだからッ!
別に率先して好きな訳じゃないからッ!
「それともロリ巨乳の方が好みじゃったかの? そっちはもう少し待つが良い。暫くしたら育つ故な」
「……レイジ?」
「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
うええええええええええええええええええええええッ!
なんで俺がロリ属性持ちみたいに言われてるの!?
あと、アリィが胸元を隠して俺を冷たい目で見てるのキツいんだけどッ!?
「レイジの魔力を吸っておる時にな、レイジの記憶の断片も流れてきたので間違い無いとおもうのじゃが……」
「リーフェン様ッ! ちょっとお願いですから止めて下さいッ!」
「そんな堅苦しい言い方は止めんか。お主には『リーフ』と呼び捨てて貰いたいものじゃ。親しげにの?」
「な、なんで……」
「お主にはそう呼んで欲しいのじゃよ。ほれ、呼んでみい」
「え……えと、『リーフ』……」
「そっぽを向いたまま呼ばれてものう……、まずはこっちを見んか?」
「レイジッ! こっちを見たら駄目ですよッ!」
「は、はいッ!」
「なんじゃ、妾なら見られても良いのじゃぞ? そもそも昨日まで全裸で過ごしておったんじゃし、その時に散々見られておるわ」
「その時は人間の姿ではなかったではありませんかッ!」
「人間の姿だと駄目な理由はなんじゃ?」
この竜、絶対分かってて言ってるわ……。
見えてないけど、ニヤニヤしてるのが気配で分かる。
「そ……それは、レイジだって男の人なんですから、リーフェン様に……よ…………」
「よ……なんじゃ?」
「よ……よく……欲情したらどうするおつもりですかッ!」
はい!
今、アリィの中で、俺はロリに欲情する男に位置づけられましたよ!
………………………………死にたい。
………………………………ボケる気力も無いくらいに死にたい。
「此奴は霊体なのじゃから、欲情出来る訳がなかろう?」
「レイジは色々特殊なのですから、欲情できるかもしれないじゃないですかッ!」
酷い言われようだよ、それッ!
もう普通じゃないという領域じゃなくて、異常者扱いされてるよッ!
「まあ、確かに此奴は特殊と言って良いな。まさか妾も僅か半日足らずで幼生期を終える事が出来るとは思わなんだぞ?」
「「え?」」
幼生期が終わった?
アレって数十年かかるんじゃなかったっけ?
「も……もう終わったのですか?」
「うむ、此奴の魔力が膨大だった故な……何せ食っても食っても減らんのじゃから、ついつい食べ続けてしもうたわ。しかも人間に擬態までできるようにもなったわ」
アリィの疑問にリーフはあっさりとそう答えた。
アリィはその答えを飲み込めないのか、目を白黒させている。
「そう言えば、人間に擬態出来るなんて話は初めて聞いたのですが……」
「まあ、確かにの。魔法で姿を変えるならともかく、肉体そのものを擬態出来るとは妾も思っておらなんだ。だが、こっちの方が都合が良かろう?」
「え?」
「妾が竜の姿だから連れ歩けないのであろう? なら人の姿なら問題なく同行できるのではないか?」
「……あ……」
そうだ。
確かにドラゴンを連れ歩くのは数々の問題があったが、人間の姿なら何の問題も無い……って……。
「いや、幼生期が終わったなら無理に連れ歩く必要もないんですが?」
「なんじゃ、冷たいではないかッ! 嫌がる妾に無理矢理抱きついて『仲良くしようぜ』とのたまったのはレイジでは無いか!」
「……………………レ・イ・ジ?」
「言って無いッ! 断じて言って無いからッ!」
「そんなッ! レイジは夕べのことを覚えていないと申すかッ!」
「夕べって卵だったじゃねぇかッ!」
「その前じゃッ!」
「あ…………その前?」
その前って……?
■
『GUGYAGUGYAGAAAAAAAAAAッ!』
『そう嫌がるなよ……折角なんだからアンデッド同士、仲良くやろう……ぜッ!』」
■
「それ、アンデッド同士で戦ってた時でしょうがッ!」
「なんじゃ、あっさり思い出しおって。ツマらんの」
「いや、全力で楽しんでるじゃないですか!?」
質悪いよ、この竜。
「とにかく、妾は無理矢理にでもレイジについて行くぞッ」
「いや、それでもそのような半人半龍の姿では目立つと思うのですが?」
ですよねー。
いくらドラゴンの姿ではないとはいえ、その姿はかなり目立つと思う。
「いや、この姿はレイジが好きそうじゃったので……」
「そういうの、もう良いからッ!」
確かに好きだけど、もうばらさないでッ!
そろそろ俺の心も折れるからッ!
「分かった分かった。流石にからかい過ぎたようじゃな。ちょっと待っておれ。こう……気合いを入れれば完全に人間の姿になれる故な……ふぬぬぬッ」
背後で何をしているのか凄い気になるけど、振り向いたらアリィに《ターニングアンデッド》されそうである。
「よしっと……どうじゃレイジ? 今度こそ完全に人間の姿になったであろう?」
「見ませんからねッ! アリィに確認して貰ってくださいねッ!」
「何じゃ、見ないのか。折角、人間の姿をレイジにじっくり見て貰おうとおもったのじゃが……」
だからもう勘弁してって……。
「あの……リーフェン様……今は人間の姿なのですから、恥じらいはあった方が良いかと……」
「む……確かにそうじゃな。では何か着るものを用意できるか?」
「で……ではこれを羽織って、私に付いてきて頂けますか?」
「うむ」
アリィがマントを外してリーフに手渡す。俺の背後でそれを羽織る音が聞こえた。
「もうこっちを向いてもいいですよ」
アリィに言われ、俺はやっとリーフの方を向いた。
そこにはダボダボのマントを身体に巻き付けたリーフが……。
「チラリズムとかも好きなんじゃったっけか?」
「誰も何も言ってないからね!」
ホント、質悪いよ
リーフ:「ついに『人外のじゃロリBBA』枠である妾の登場じゃ! 皆の者、よろしくな!」
レイジ:「いや、盛りすぎだろう? というか、他のキャラが置いてけぼりになってないか?」
リーフ:「それは他のキャラが悪い! または作者が悪い!」
レイジ:「後から出てくるキャラが濃くなるのはありがちだが……実は予定に無かったらしいぞ?」
リーフ:「なんじゃと? 妾に出番がなかったと申すか? ちょっと作者のところ行って焼き尽くしてくる」
レイジ:「いやいやいや! 今は出番を貰えたので良しとしようよ! という訳で次回『どうやら異世界転生したはずが死んでる模様』第十五話『どうやら俺はやっとこの村を出発する模様』」
リーフ:「これ、展開遅いんじゃなかろうか?」
レイジ:「言ってやるなよ……」