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どうやら俺は死んだので異世界転生する模様

 ああ……俺は死ぬんだな……。


 俺は、時間が止まったかのような浮遊感の中、目の前に迫り来る電車の前照灯を見ながら、どこか他人事の様にそう考えていた。


 一瞬が無限にも引き伸ばされた感覚の中、刻一刻と迫る電車の車両。

 引力に引かれ、ゆるりと放物線を描く俺の身体。


 何でこうなったんだっけ?

 そう思っても、一瞬のことで何が起きたのか俺も把握していなかった。

 いや、そうじゃない。

 正しくは『冗談みたいな事故で死に直面した』ため、脳が理解を拒否していた。


 そして……遂に俺は………………。



      ■



 気が付けば白い世界にいた。


 俺以外何も存在しない……静かで真っ白な世界……これが俗に言う、死後の世界だろうか?

 それとも夢? 個人的にはそっちを希望。

 周囲を見渡すと、何もないと思った白い世界に、ポツンと扉がある。

 そこにあるのは扉だけ。壁はない。

 開けたら何処にでも行けそうな気がするが、アレとはデザインが異なり、獅子が輪っかを咥えたドアノッカーがついた豪華な扉だ。


「何と言うか……ありがちだなぁー……」


 不意にそんな言葉が漏れた。

 自身で思っている以上に混乱しているのかもしれない。

 実際、理解を超えたその光景を前に、俺は次の行動を移せずその場に佇んでいた。


 二度三度、深呼吸をしてから周囲をもう一度見回すが、やはり他に何も無い。

 このまま立ち尽くしても時間の無駄。そう判断した俺は、意を決してドアノッカーに手を伸ばし、コンコンと叩く。


「どうぞ」


 扉の向こうから返ってきたのは、涼しげな女性の声。

 清楚さを感じる声に導かれるまま、俺はドアノブをゆっくりと回す。

 少し古びた色合いがする真鍮と思しきドアノブは、抵抗もなくスムーズに回る。僅かに力を込めると、その扉は少しの軋みも上げずにゆっくりと開いた。


「初めまして。ようこそ、我々の神域へ」


 正面からの声に顔を上げると、そこに一組の男女が豪奢なソファーに腰掛けていた。

 息を呑む程の美貌の男女。

 あまりの美貌に俺の目は釘付けとなり、身体は硬直し、喉に強い乾きを憶え次の言葉に詰まる。

 耳朶に残った聞き惚れるほどの美声が、落ち着かないもう一つの理由かも知れない。

 自然と全身に震えがくる。


 そんな俺とは違い、向かいの二人は所作の端々に余裕にも似た雅さを漂わせている。

 声を掛けてきたのは向かって右側の女性だろう。

 透き通る様な白い肌に、緩くウェーブが掛かった長い金髪が強く印象に残った。


 日本人故見慣れていない為か、金髪という存在感に圧倒される。

 全身を白いドレスに包み、豊満な胸がそのドレスを押し上げている。首元のネックレスが開かれた胸元を飾っており、中央の紅玉が白い服と肌の上で一際目立っている。

 瞳はその紅玉と同じ紅。その瞳で見据えられると、心奥まで見透かされた気分になる。

 その為、至上の美と言うに相応しいプロポーションを正面から見ることができず、俺はやや視線を逸らした。


 対して男性はやや浅黒い肌に朱い髪と均整の取れた逞しい肉体が印象的だった。

 上半身は裸の上に前が空いた上着を羽織っており、袖口は上腕の真ん中あたりで金の腕輪で止められている。

 上着から見える逞しい胸元が、圧倒的な生命力を感じさせ、男としては嫉妬すら憶える。

 対する下半身はサルエルパンツを履き、金の刺繍が入った腰巻きでそれを抑えている。


「そんなところで立ったままでは何でしょう。どうぞこちらへお掛けになって下さい」


 女性の方がそう言って対面のソファを勧めてくる。

 確かに黙って立ったままでは話もし難いだろうと思い、二人の前まで歩み出る。


「では、お言葉に甘えて失礼します」


 俺は混乱したまま軽く頭を下げて椅子に座る。


「初めまして、異世界の方。私の名は『セレステリア』。俄には信じられないでしょうが、貴方のいた世界とは別の世界……言うなれば『異世界の神』をしております。そしてこちらが……」

「俺は『オグリオル』。同じく『異世界の神』だ。取り敢えずはそういうものとこの場は認識してくれると助かる」

「俺の名前は『向日島レイジ』と言います……異世界?」

「その辺りについてもこれから説明いたします。ようこそ、我々の作りし世界フォーディアナへ」


 女神セレステリアは、そう言うと目映いほどの微笑みを見せた。



      ■



「まず、もうお気づきとは思われますが、貴方は既に亡くなっております。今の貴方は魂だけの存在となっております」


 ……やっぱり俺は死んだのか。

 ……思えば、幸薄い人生だったな……。


「通常であれば、貴方はそのまま貴方の世界の輪廻に帰るはずだったのですが、我々の希望により、貴方の魂を我々の世界へ転生させることにしました」


 女神セレステリアの発言に、俺は内心そんな事出来るのかと驚いた。

 ただ、今は別の疑問が先に立つ。


「何故、俺の魂が選ばれたのか、理由を伺っても?」

「レイジの魂は、特殊な因果に絡め取られていてね……そのまま輪廻に還しても、元の世界や転生後のレイジに悪い影響を与える可能性が高かったんだ。その為、一度我々の世界に転生させて、絡みついた因果をほどく必要があるんだよ」


 俺の質問に答えたのは男神オグリオルだった。

 しかし、因果と言われても……。

 そんな俺の懸念に気付いたのか、セレステリアが言葉を続けた。


「貴方も自覚しているのではないですか? 自分が生前、普通の人達に比べ、少し特殊な環境というか……人の悪意に晒されながら育ったことに……」

「ぬ………………」


 その言葉を、俺は否定しきれない。

 確かに幾つか思い当たる節がある。

 あまり思い出したくないが、俺と俺の母は、ある人物から迫害され続けていた。


 周囲の人間も、その人物に目を付けられたくないからと、殆ど俺たちに手を貸してはくれなかった。いや、それどころか極力関わろうとしなかった。

 俺たちの味方は、母の両親、つまり俺の母方の祖父母。他には片手で数えられる程度……。

 母はその人を恨むような事は一言も言わなかったが、それでも辛かった筈だ。

 しかも、祖母は後に精神を病み、事あるごとに母と俺、そして顔も覚えていない俺の父親を責めるようになった。

 祖母が亡くなった後、今度は祖父が俺達を責めるようになった。

 祖母が亡くなったのは、俺達のせいだと……。

 中学三年の秋に祖父が亡くなったこともあり、高校進学にあわせて俺たち母子は住み慣れた――同時に忌まわしい街を離れ、遠く離れた地に移住した。

 その頃には一旦嫌がらせは無くなったが、ある事を切欠に執拗な嫌がらせが再開することになった。


 その嫌がらせは、五年前に母が亡くなるまで続いた……正確にはその後も続いたが、絶え間ない嫌がらせは、一応なりを潜めた。

 五年前に母が死んだ時も、そいつは通夜にわざわざ悪態をつきに来た。

 その時、俺は初めて他人に殺意を覚えた。それ程、そいつを許せなかった。

 母が悲しむと思い、実行に移すことはなかったが……。いや、きっとその行動に移す度胸が無かっただけだ。

 母の死後も、断続的に俺に対する嫌がらせはあった。

 そういうことがあり、セレステリアの言葉を否定する事が出来なかった。


「特殊な因果を持つ人間が、唐突に希有な死に方をした場合、魂が世界に順応出来ずある種の拒絶反応を示すことがあります。そのような人間は別の世界に転生させ、魂に絡みつく因果を浄化しないと、その世界に悪い影響を及ぼすのです」


 セレステリアが俺を気遣う様に、慈愛に満ちた目を向けて、そう告げた。


「希有な死に方……?」

「駅のホームで吐瀉物に足を滑らせ、汚物まみれになってハンドスピナーみたいにクルクル回転しながらホームから飛び出すような死に方とかな」


 …………必死に忘れようとしてたんだから思い出させるなクソ男神ッ!


「クソとは失礼な」


 オグリオルの言葉に血の気が引く。魂だけの俺に血があるか甚だ不明だが、それでも感覚的に血の気が引いた気がした。

 まさか……心を読まれるとは……。


「ええ……貴方が先ほどから私達を呼び捨てにしていることも知っています」


 セレステリアが……いや、セレステリア様がそう続ける。

 しまったあぁぁぁぁ……表面上敬意を払ってた手前、ただの嫌なヤツじゃんか……。


「そうですね。そのような不敬者には神罰を与えましょう」

「し、神罰……?」


 その言葉を聞いて、俺の中に形容しがたい黒い塊のような恐怖が生まれる。根源的な恐怖と言えば良いだろうか……かつて感じた事のない感覚だった。

 その黒い塊に塗りつぶされそうになって、俺の身体がガクガクと震える。

 あまりの恐怖に、視界が暗くなる。

 それでも俺は、ただ黙って神罰とやらを待つことしか出来ない。

 そしてオグリオル様は俺に対する神罰を執行した。


「では監視カメラに写った貴方の死に様をここで見せるとしよう」

「止めてぇええええええええッ!」


 自分の死ぬところなんか見たくないわッ!

 死に方が酷かっただけにトラウマになるッ!


「なお、この映像はマスメディアによって公共の電波に乗せられた挙げ句、コメント付きでネットに拡散したものとなります」


 もっと止めてぇええええッ!

 マスコミは売れさえすれば何でもアリかッ!

 俺の悲痛な叫びは当然聞き入れて貰えず、空中に見慣れたホームの映像が浮かぶ。

 そして階段から掛けだしてく一人の男――つまり俺がホームに作られたゲロ溜りに足を取られ転倒する姿が映っていた。


「しかも勢い付きまくって、停車している電車の車体に激突し反射して、そのまま反対側のホームまで回転しながら飛び出すなんて……ネット上ではハンドスピナーとかベーゴマとかビリヤードなんて言われてますしね」


 一々説明しないでッ! そんなコメントが大量に流れてるの見えてるからッ! っていうか目を閉じれないのは何でッ!

 いつもより多く回っておりますとかコメントすんなッ!

 草生やすなッ!

 俺からしたら笑い事じゃないんだよッ!


「しかも凄いのはこの後、電車に轢かれなかったことだ」

「え?」


 てっきりあのまま轢かれたものと……。


「違うな。君は電車の前を通り過ぎ、受け身も取らずに地面に頭を強打したことが直接の死因になる」


 丁度画面にそのシーンが流れる。確かに、俺はギリギリのところで轢かれてはいなかった。

 あと、『精神コマンド《ひらめき》発動www』って書いたヤツ誰だッ!?

 と言うか、俺の死に方、微妙じゃね?

 いや、もしかして……。


「ホント微妙だね。気絶さえしていなければ反射的に受け身も取れただろうに……」

「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


 オグリオル様からの容赦のない一言が突き刺さる。

 頼むからもう止めてくれッ! ライフゼロになるわッ!


「もうとっくにライフゼロですけどね」


 やかましいわッ! あ、すみません。でもやかましいです? いや、こうじゃないな……。


「とにかく、そのような世界に悪影響を及ぼす可能性が高い魂は、元の世界との因果を断ち切らないと、次はもっと大きな悪影響を世界に及ぼします。そうならないために別の世界で転生して、因果を断って貰う必要があるのです」


 俺が苦悩に身をよじる姿を見ても、これと言ったリアクションも返さないセレステリア様が、説明を続ける。

 いや、そうでもないか……心なしか口角が上がってる気が……。


「取り敢えず呼び捨てにされた事に対する溜飲は下がりましたから」


 さいですか……。 


「……悪影響については分かったけど、その場合、そっちの世界に悪影響を与えたりしないのか?」


 俺は必死に話題を変える。これ以上精神を削られる思いはしたくない。


「……否定はしません。ただ、世界を越えた魂は、時にその世界に良い影響をあたえることもあるのです。例えば貴方の世界で『発明王』と呼ばれた人物は、元々は我々の世界の人間でした」

「え? そうなの?」

「はい。これは極端な例ですが、我々の世界や貴方のいた世界は、時折魂の交換を行って活性化させたり進歩させたりするのです」

「じゃあ、俺も来世では歴史に語られるような偉人に……」

「ですが今のままじゃあ悪影響しかないんですが……」

「オイ…………」

「だから世界に悪い影響が出ないよう、俺達二柱(ふたり)が君の魂に祝福を与える必要があるのさ」


 なるほど、神の祝福とやらで、世界に良い影響がでるよう調整しようと……。いや、前世の記憶があれば知識チートなんてことも……。


「いや、転生したら前世の記憶は消去されるけど?」

「チョオォォイッ!」


 え?

 この手の異世界転生には、前世の記憶必須でしょ?

 で、何故か構造もよく知らない銃を作り上げて、挙げ句魔力で無尽蔵に撃てたりして無双するとか……。


「それだ」

「え?」

「その《銃》をうっかり広めて欲しくないんだ」


 オグリオル様は少しだけ声のトーンを落としてそう言った。


「これから君が転生する世界は……君にイメージしやすい言葉で言うと、中世から近世ヨーロッパ位の文明を築いていてね……ただし《銃》は存在しないんだよ」

「《銃》などの武器の代わりに、魔法が発達していますがね」


 おお、これは定番の《剣と魔法の世界》ってヤツですか!?


「そう思ってくれて良い」


 おうふ。

 いきなり心読んで返答されるのは、まだ慣れないからドキッとする……。


「そのような世界で、異世界の文明を流布されるのは都合が悪いのだ……特に《銃》はその特性上、慣熟が容易で、より大勢の人々を戦争に巻き込むことが出来るからな」

「慣熟が容易……?」

「ええ……《銃》は少なくとも、《威力》だけはその構造から担保されますので……」


 オグリオルの説明をセレステリアが補足してくれた。

 普通の剣や弓といった武器は、まず扱うのに筋力が必要になる。相手を倒す為に、まず本人が筋肉を鍛える必要があるが、これは一両日中に身につくものではない。

 対して《銃》は相手を殺すだけの威力を、武器そのものが持っている……うっかりすれば小さな子供だって人を殺せる武器。それが《銃》なのだ。


「それに、連射が出来るような《銃》が作られると、戦争そのものが変化します。その様な変化は我々の望む変化ではありません」


 確かに……俺が銃を広める事で大勢の死者が出ることは、俺自身も望まない。俺は、もう誰かに疎まれる生き方はまっぴらなのだ。


「何より、記憶は新しい肉体が新たに蓄積していくものですし、それこそが健全なる魂を……そして健全なる肉体と精神を構築するのです。前世の記憶を持ったままでは、魂の年齢と肉体や精神の年齢が一致せず、そのバランスを崩し悪影響が出ます」


 確かに記憶を引き継いだまま転生したら、物心つく頃には三十近い年齢と変わらない精神構造を構築するだろう……。

 そうしたら周囲との関係にも悪影響が出そうだ。


「とにかく、記憶を引き継がないことについては納得したよ」

「それは良かったです。それと祝福についてですが、これについても、貴方が期待するような結果は、得られないと思っていて下さい」

「あ……そうですか…………」


 確かに、神の祝福のおかげで能力ゲット! みたいな展開をちょっと期待しましたとも。いきなり希望は打ち砕かれたけど。


「私達はレイジさんの《魂》は祝福しますが、それは《魂》の祝福であって転生後の肉体や精神を祝福したのとは異なりますから……あくまで《悪い影響を出さないようにする》程度のものと思っていて下さい」

「魂への祝福は肉体へ表面化しないってこと?」

「そういうことですね。ほぼ、表面化しません」

「ほぼ……?」

「例えば貴方が神職を選び、信仰心に厚い司祭となった場合にはこの祝福は貴方の大きな力になると思いますが、それ以外だと、ちょっと運が良いとか病気になりにくいとかそのくらいですかね」

「なるほど……」

「さて、他に質問はありますか? とは言え、転生後には忘れてしまうのですが」


 確かに、ここで聞いた話も全て忘れるんだろう。

 ここでの説明も、実は意味ないんじゃないかとも思う。

 だけど説明を受けることで、今の俺の魂は、ほんの少しだけ救われてると……そう思えた。


「他に何か気になる点はありますか?」


 きっとセレステリア様は、俺の心情を酌んでわざわざ説明してくれたのだろう……それならこれも聞いて良いだろうか……。


「あの……俺は……来世で人並みの幸せは手に入れられるのかな?」

「それは……」


 セレステリア様は僅かに言い淀む。


「……ああ、そうですよね。それは俺次第ですよね……」


 こんなことを神に保証して貰おうなんて、何て甘えだ。自身が恥ずかしい。

 でも、セレステリア様は俺の真意を読み取って――実際読み取ったのだろう――その上で俺の不安を取り除くように言葉を紡いだ。


「……はい。でも、貴方に罪がないのに誰かに迫害され続けるような人生にはなりませんよ。その為に私達が祝福するのですから……」


 そうか。

 それを聞いてちょっと安心した。

 生まれを呪われ、自身も生まれを呪うような人生は、もう送りたくないものな……。


「他には……?」

「いや、もう大丈夫です」


 再度確認をしてきたセレステリア様に、俺は軽くかぶりを振って答える。


「そうですか……では祝福を与えましょう」

「はい、お願いします」


 セレステリア様が軽く手招きをし、俺はソファーから立ち上がる。

 同じようにセレステリア様とオグリオル様も立ち上がり、俺に近づいた。


「【片翼の創造神たるセレステリアが汝の魂を祝福する】」

「【片翼の創造神たるオグリオルが汝の魂を祝福する】」


 セレステリア様とオグリオル様が高らかに《力ある言葉》を発する。

 その言葉は何処からともなく光を呼び寄せ、俺の周囲をクルクルと飛び回る。


「「【汝の来世に良き出会いと、良き導きがあらんことを。汝の来世に幸多からんことを】」」

「「【汝の魂よ、我ら創造神の祝福に満たされよ】」」


 周囲の光が俺の身体に纏わり付き、光に包まれる。同時に俺の意識も光の中に溶けていく。

 完全に意識が途絶える前に、俺が思ったのは……。


(え? この二柱(ふたり)……創造神だったんだ……)


「何だと思ったんだ?」


 オグリオル様の声は、意識を失いつつある俺にはほとんど聞き取ることは出来なかった。



       ■



 そして光が消えたのを感じると、別の場所にいることに気付く……って、あれ?


 なんか《向日島レイジ》としての記憶が残ってるんですが?

 まだ転生してないの?

 と言うかここ何処だ?

 なんか暗くて……でも何か現実感がなくて……埃っぽい雰囲気があるのに匂いがしない……。


『【邪悪なる者に(ディスペル)神の鉄槌を(・イービル)】!!』


「何事ッぐぎゃらほぉぉぉぉぉぉああああああああああああああああああああッ!」


 直後、何かが俺の身体に突き刺さり、全身を激痛が駆け抜けた。

 俺はその場で、ビクンビクンと気持ち悪い痙攣を繰り返すことしかできなかった。


オグリオル:「久々に面白い魂に出会ったなぁ……」


セレステリア:「随分気に入ったようね?」


オグリオル:「そうだな……ちょくちょく干渉したいくらいには……」


セレステリア:「貴方、現世に直接関わるのはもう嫌だって言って自身に制限かけたじゃない?」


オグリオル:「そうだった……まあ、神託くらいなら……」


セレステリア:「あら、貴方が神託なんて珍しい。そんなに気に入ったのね?」


オグリオル:「否定はしないけど、その腐らせる気満々で俺のこと見るの止めて貰えるか?」


セレステリア:「えーーーーッ!?」


オグリオル:「えーーーじゃなくて……まあ、良いか……次回『どうやら俺は異世界転生したはずが死んでる模様』第二話。『どうやら俺は異世界転生したはずが死んでる模様』」


セレステリア:「ねえ? なんか今、レイジさんの魂の反応が新しい肉体に宿る前に消失したんですけど?」


オグリオル:「……うん、タイトルからそんな気がした……」


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