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これがホントの長距離移動


「あとどれぐらいで着きますかー!?」

「もう結構来たからあとちょっとー!!」


またか…。このやりとり何回目だろう…。ホーリーさん、あなたの"ちょっと"は1時間程前にも聞きましたよ…。


ボリビアの街にいられなくなった俺たち3人はとにかくボリビアから遠く、住みやすい街を目指し、ドラゴンタクシーなるものに乗車した。馬車の見た目で馬の代わりがドラゴンになっていて荷台を引いている。人生初ドラゴンが人を運ぶための馬代わりというのが俺の中の少年心を無惨に打ち砕いた。ドラゴンをそんなチープなことに使うんじゃないよ、ドラゴンって言ったら願いを叶えてくれるとか主人公一行に立ちはだかるボスとかってもんじゃん…。それだけでなく、明らかに疲弊しているドラゴンに対して哀れみすら感じてしまうほどだった。


ドラゴンタクシーは本来空を飛ぶので早く目的地にいけること、ドラゴンという種族はやはり特別なようで他の生物に襲われる心配もないため、高価だが人気があるらしい。金銭的余裕があるわけでもない我々はこのなぜか飛べないタクシーに道中での相乗りを条件に格安で乗せて貰った。そんな異世界事情を教えてくれ、タクシーの手配もしてくれた大先生のナナセは横になり眠っている。そんなナナセよりも前から隣で寝息をたてている児島とは対照的にバッチリ目が冴えてしまっているので、ドラゴンの乗り手ホーリーに色々聞こうというところだ。


「ホーリーさんはなんで空飛べないんですか?」

「まだライセンスがないんですよー。というかユーマさんでしたっけ?多分、ユーマさんの方が年上なんで敬語じゃなくていいですよー。ちなみに私は15歳です。」

「俺が17だから二つ下か。えっ、その年でもう働いてんの!?」

「うちは代々ドラゴン乗りの家系なんですよ。飛べないとはいえ荷運びはできますからね、14になったときからお客さんを乗せるようになってライセンスを取れれば空路が使えるって感じですかねー。あっ、ちなみにドラゴンには5歳から乗ってます!!」

「一年前から働いてるんだ。凄いな。」


童顔というわけではないが元気そうな雰囲気が幼く見えているであろうホーリーだが、14から働いているというのは素直に驚かされる。俺が14のときなんてフードコートでゲームしてたっていうのに…。


くりんとした大きな黒目にお団子状に後ろでまとめた髪がとてつもなく可愛い、それがタクシーに乗る前ホーリーと挨拶したときに受けた印象だ。はっきり言います。凄いタイプです。嘘じゃないです。今はホーリーが進行方向を向いているからいいものの、これ面と向かって会話したらおっふする自信がある。いや自信しかない。


「ユーマさんたちは3人で旅して各地回ってる感じなんですかー?なに仲間なんです??」

「なに…仲間…?…うーん、俺とトオルは同級生で、ナナセはこの世界の師匠…?ですかね。」

「この世界ってなんですか!?」

「ええっ、えーと、なんていうのかな…。」


やばい、思わず口走ってしまった。これは言ってもいいのか?違う世界から来たことがバレたら消されるとかある?すっとぼけてアホの子演じるか?どうなるんだろ…。


「簡単に言うとね、俺とトオルはここじゃないところから来たんだよ。」

「ちょっと何言ってるかよくわからないです。」


サ○ドイッチマンかよ。しかし、ぶっこんでみたけど全然問題無さそうだ。どういう認識になるのかはわからないが。


「あっ!わかりましたよ!めちゃくちゃ田舎ってことですよね??」

「うーん。まあ、そうね、そんなところかな…。」


諦めた。やはり真に受けてもらえなかった。どうやって説明すればわかってもらえるか凄く伝えにくいし、知りもしない世界の存在を証明するのは不可能だ。悪魔の証明ってやつだ。


「それで、ナナセさんは何の師匠?魔法?」

「いや、まあナナセはあれだ、行き先が一緒ってだけの知り合いって感じだな、うん。」


もう説明するのめんどくさいからテキトーに誤魔化すことにした。でもたしかに次の街に着いたらナナセとはどうなるんだろうか?あいつは学校に行くだろうから会うこともなかなか無くなっていくんだろうか?ナナセの世話になるつもりは無いが恩人であることに変わりはないので恩を返したいという思いがある。しかし、それ以上は考えても仕方のないことだ。いずれどうなるかはわかることなのでそれ以上考えるのをやめた。


「イマイチよくわかんない関係ですねー。それにしてはかなり親密に感じましたけど…。」

「ま、まあ、そんなことは置いておいてさ、ほら俺たち田舎から来たから知らないことだらけなんだ。色々と教えてくれないか?」

「教えるって何が知りたいんですか?私バカなんでわからないことばっかりですよ。」

「今から行く街はどんな街??」

「ミクロスですよねー、どんなって言われてもなあ…。小さな街ってことぐらいですかねー。小さいんですけど、住んでて困る街って感じはないですね。」

「ホーリーは住んでるんだ?」

「ええ、ミクロスは私の担当地区なので。ミクロスから送られる荷物はだいたい私が運んでます。」

「じゃあミクロス内のことには詳しいんじゃないの?」

「結構自信あります。毎日ミクロス中駆け回ってますから。」


これは頼もしい人に出会えたものだ。地元で働き続けているタクシーの運ちゃんほど旅行や観光であてになるものはいない。観光サイトなんかよりはるかに役に立つ。


「それじゃあさ、俺たち働ける場所を探してるんだ。どこがいいところないかな?」

「うーん。それは全然わかんないです。働きたい人ってミクロスを出ていきますから。」


有益な情報は得られなかった。何でも知ってる感じだったのに全然当てにならない。当初の予定通り自分達の足で探すことになるが、トオルならどこでもすぐに働きそうだから大丈夫だろう。とトオルに目をやると、


「たける…みか…お兄ちゃんがついてるから…な…。」


…そうか、そうだよな。いきなりこんな世界に来て、生きるのに精一杯だったけど、俺たちには帰る家がある。親なんて口うるさいだけだったけどいざ離れてみると親の偉大さに気づかされる。学校に行く前にはお弁当を毎日用意してくれていたし、着たものだって洗濯かごに入れておけば畳まれて戻ってきた。全部当たり前じゃなかったんだ。ああ、母さんのハンバーグが食べたい、暖かい布団で寝たい…。


児嶋にはまだ手のかかる弟と妹がいると本人から聞いた。なおさら俺以上に帰りたい思いがあるのだろう。それもここに来てからずっと。それでもこいつは一度もそんな様子は見せないで…。なんて強い男だろうか。それに比べて自分の甘さに反吐が出る。帰れる道を探す、自分だけのためじゃない児嶋のために帰る、そんな決心が固まった。


そうなるとどうすれば帰ることができるのかというところだが、答えのない問いを考えているうちに自分の意識は深いところまで落ちていった。





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