これがホントの初勤務①
今、俺は私立アンクレット学園というところにいる。いわゆる、魔法学校というやつでこの辺りじゃ有名な学校らしい。誰のためだよ、というぐらいどでかいアーチ状の門をくぐると貴族様が好みそうなルネサンス期の中庭が広がっている。校舎の方も当然盛大に作られており一言で言うなら城そのものだった。
これ、学校って言われなきゃ絶対わかんねえぞ…。だいたいなんでこの中庭から校舎まで距離ありすぎだろ。教室行くだけで汗かくわ。
素朴であることに趣を感じる日本とは何もかもが違う、そんな学校だった。
「えー、これでざっと業務の説明は終わりなんだけど何か質問はあるかな?」
「いや、大丈夫…です。」
「じゃあ、早速ゴミ集めから始めよう。中庭が終わったら校舎をやってね、ただし教室には入らないこと。あと生徒のお昼休みが12:25からだから終わるとは思うけどそれまでに終わらせて。いいね?」
こちらの返事を待つこともなく"よろしくー"と言いながら去っていった先輩の手には煙草が握られていた。
ああ、そういうことか。と結構割りの良い仕事なのに求人募集がかかっていたことに納得がいく。仕事を押し付けられたことよりも煙草がこの世界でも見知った形でこの学校との世界観のギャップがなんだか笑えてしまった。一人でやる大変さがどれほどなのかイマイチ想像できなかったからか初仕事に対してのモチベーションは低くはなかった。
現在時刻が8:30AMである。生徒たちが教室で授業を受けている間に掃除を終わらせるというのがこの仕事の唯一の厳守事項だ。唯一って…それだけじゃ絶対まともに仕事しないだろう…さっきの先輩といい、テキトーすぎる。しかし、そのことに文句を言ってもらちがあかないので児島が弁当を持って来るという12:30一つの目標と決め、早速取りかかろうと目に見える中で最も近いゴミ箱へ向かった。ある程度の間隔で設置されているゴミ箱のゴミを集める、それがこの仕事の主な内容だ。落ちているゴミは拾わなくてもいい、それは魔法の箒が今もフル稼働で勝手に集めてくれているからだ。なんと便利か魔法の世界。今の日本に掃除の全てをルンバに任せている学校があるだろうか?当然そんな学校はあるはずがなく、魔法の素晴らしさに感動せずにはいられない。ただし、それでも最後に集めるのは人の手のようで完全魔法化というわけではない、まあ、何かしら不都合があるのだろう。
そんなことを考えているうちに中庭全てのゴミを集め終わる。夏の照りつける日光の下での作業というのに背中にじんわり汗をかいた程度で済んでしまった。ん?というか、今夏なのか?てっきり日本の記憶の最後が7月末だったから夏だと思ってたけど正確な季節と日付知らないぞ。そもそも四季があるのかとかも…。こういうときできるやつは何時の太陽の高さが何度でここの緯度から今は何月だ!みたいなことやってどんどん異世界に適応してくんでしょ…。そんな主人公諸君に何個か言わせて欲しい。
ありえないから!!異世界に来てさらっと馴染むやつ!RPG的な世界に行って普通に剣とかよく振れるな!スライムだろうと躊躇なく殺せる神経もどうかと思うしそんな帯刀があまり前のように許された世界、怖すぎてまともに寝ることすらできんわ!まあでもね、彼らはなんでそんなこと思いもせず生きているか分かりますか?それはね結局彼らが主人公だからなんです、フィクションの物語の中だからなんです。そこに突っ込んでしまって"はい、矛盾乙。論破したったwww"などと言っていては話が進みませんのでアンチからのありがたい意見として聞き流しましょうよ。あれ…結局何が言いたかったんだ…。フィクションを否定する俺がフィクションの世界にいる?ん?おん…?日光に当てられて頭がおかしくなってしまったようだ。
そのことについては考えても無駄なので考えるのをやめた。




