これがホントの異能継承
「あっ、お待ちしておりました。児島様、伊丹様。私はこの役場の受付を担当しております、ナナセと申します。」
門を開けると、そこは小ホールのような半球体の広場になっていて、入ると同時にナナセと名乗る女性が話しかけてきた。パーマがかかった長めの髪に整った顔立ち、制服のようなものを着ていてまさしく美人受付嬢といった感じだった。年は俺らよりちょい上ぐらいか…。
「俺たちのことを知っているんですか!?だったら、ここはいったいどこなんですか?」
「そうですね...簡単に説明しますとここはあなた方がこれまで生活してきた世界とはまったく違う世界です。私の言っていることが飲み込めなかったり、疑問に思うことがあるとは思いますがまずは私にある程度説明をさせてください。ここはあなた方がいた地球と呼ばれる惑星に非常に近しい環境をしたアークと呼ばれる惑星です。ただし、地球とアークは同一宇宙上に存在しません、つまり宇宙をどれだけ移動しても地球に到着することは決してありません。この世界があなた方の世界と大きく違う点はこの世界には魔法が存在します。そして…」
「待った!ストップ!!魔法!?あるのか?」
門を開ける前、俺の考えていた仮説は当たっていた。そう俺たちはどうやら異世界に来てしまったらしい。近頃、異世界もののラノベが多すぎて異世界に対して耐性ができていたのせいかもしれないがなんとなくそんな気がしていた。そりゃあ、にわかには信じられなかったが、あの女性が俺たちの名前を知っているのもおかしいし異世界ですと言われても信じる以外なかった。だが、魔法の国とは想像もしていなかった。
「何をニヤけている、伊丹よ。俺には何がなんだかまるでわからんぞ。同一宇宙ってどういうことだ、地球じゃないってなんだ?」
「だからそのまんまだよ、俺たちは魔法の国に来ちまったってわけ、それでもう帰れないってこと。アンダスタン…?そういうことでしょ、ナナセさん?」
「はい、伊丹様はご理解がお早いようで驚きです。児島さんのような反応が本来なら正常です。いいですか、児島様、これは夢などではなくまぎれもない現実です。そして、あなた方はこの魔法の国へ来てもとの世界には帰れないということです。」
「な、何を言っている…夢じゃない?帰れない…?」
「左様です。薄情かもしれませんがお二人はもうここで暮らしていくしかないんです。人生は往々にして理不尽なものですよ。」
「ナナセさん、そいつだけでも帰してやれないのか。俺はともかくさ。」
「私ではどうにも出来ないんです。私の役目は向こうから来た人々に説明するだけなので。それに何か勘違いされているかもしれませんがあなた方は向こうの世界の意志によってこちらに来たんですよ?私たちが呼んだとかではないんです。」
「世界の意志…そ、そりゃあ、俺はトラックに轢かれてもいないし、天使とか助けたわけでもなかったけどさ、俺たちは神様の手違いとかで呼ばれたんじゃないのか、意志ってなんだよ。」
「簡単に言うと調整です。向こうの世界はパワーバランスが崩れそうになるとその原因をこちらに送ることでバランスをとっているんです。」
おいおいおいおい、急に話重くなってないか?シリアス入っちゃうの…?そこ簡単に説明されてもわけわかんねーからそこは詳しく説明してくれよ。
そうですね、では詳しく説明させていただきますね。あなたたちは向こうの世界で生活を続けると世界を滅ぼす力を手にしてしまう予定でした。滅ぼすと言うと大げさかもしれませんが要するにあなた方は魔法使いになる因子を持っていたんです、正確には持ってしまった。だから向こうの世界から拒絶されこちらに送られてきたんです。近年、送られてくる人が多くなってこちらも困っているんですよ。と、戸惑い唖然とする俺たちと対照的にナナセは淡々と説明した。何にも言ってねーのに、なんで答えれるんだよ、エスパーか。
エスパーではなく魔法ですと、ナナセ。
「思考読めても答えないで、怖いわ。それにさらっとスケールがでかいこと言わないで。なに、俺らそんなに前の世界だとやべーやつなわけ?地球に収まる器じゃない的な?」
「ふむ、魔法使いとな…。それは血縁的なものは無関係ということか?俺の知る魔法使いは親が優秀なら子も優秀というイメージなのだが。」
「それハリー○ッターだろ、まあ、俺らはハー○イオニー的なポジションなんだろ。」
「そうですね、いわゆる穢れた血というやつですね」
えっ、てかなに児島意外と異世界受け入れ始めちゃってんの。それにナナセさんなに怖いことことぶっこんでんの?それ現代日本じゃコンプライアンス的にアウツだからね、ツッコミづらいわ!ってこれも全部読まれてんのやだな。
「はい、伊丹様の考えは全部全てまるっとお見通しでございますよ。では、そろそろ私の最後の役割を説明させていただきますね。おまちかねのメインイベント!魔法の授与でございます!!」
パチパチパチパチ
「・・・。」
「あら、皆様あまり乗り気じゃないですね。ほらもう難しいこと考えてもどうにもならないんですから切り替えましょう。」
「いやでも、まだ全然聞きたいことあるし、飲み込めないところだらけだし…。」
「じゃあ、もう魔法はいいですね、私も帰りますよ。」
「待って、もう少し待ってください。」
「話にならぬクズ…お前は生まれてから何度そのセリフを吐いた…?私はお前の母親ではない...お前のようなクズの決心をいつまでも待ったりはせん…。」ざわっざわざわ...
そう言ってどこかへ行こうとするナナセにならば、俺が行こうと児島が歩み寄り、よくわかってませんが自分からお願いします、と頭を下げた。児島GJ、ナナセさん急に悪徳金融の中間管理職みてーになったしこの人のキャラつかめねーよ…。だが、児島が先陣を切ったことで俺も後に続くことができた。
「児島様ありがとうございます。うじうじ決断できない方より断然男らしいです。では、早速始めさせていただきます。授与といってもたいしたものじゃなくきっかけを与えてどういうタイプの魔法かを伝えるだけですのでなにも心配はありません。手をこちらに。」
ナナセは児島の手差し出すように言い、いわゆる握手の形をとった。そして、何事もなく手を離し、これで終わりです、ではこちらをお受け取りください、と告げた途端、おえ"え"ええええ!!!と口から真っ白な用紙を吐き出した。きたなっ!もうホントにわけわかんねえよ。覗いてみれど何の変哲もないレポート用紙が児島の手にあるだけで…あっ、でもここにちょっと水滴付いてる。これってナナセさんの…。
「・・・。」
うわっ、やばいちょー睨んでる。やだなあこれ。
「な、なんですか、ナナセさん?別にあなたの唾液なんてなんとも思いませんよ?そんなことより早く俺のやつも出してくださいよ。俺もう早く自分の魔法知りたくて知りたくてたまんないんですから。」
「・・・。」
「おっ、なにやら浮かび上がってきたぞ。」
オホンっと咳払いするとともにナナセさんのゴミ見るモードが終了する。
「そこに書かれているのが児島様の魔法の説明書になります。」
「えー、『不屈の闘志』...なになに、意識した部分にシールドをまとう。ランクB+。以上だ。」
「『不屈の闘志』が魔法名って感じか、ナナセさんこれもう児島は使えるわけ?」
「はい、魔法回路は神経と同じですから念じたり意識すれば使えますよ。ちなみにランクはこの世界での珍しさを示しています。B+はまあ普通ですね、あ、でもランクと魔法の強さは別物で強さは使う人の力量次第ですので日々精進に励んで下さい。」
ナナセがそう言った直後フンッ!という児島の声と同時に児島のこぶしが薄緑の光に包まれた。普通にすごい、マジ魔法。自分の魔法に児島はただただ感心していた。ナナセさん、俺もやりたい!と思い、ナナセのほうを見るとすでに手に紙を待っていた。
「あれ?握手してないっすよ、俺。あとナナセさんもオロオロしてないですよ?」
「ゲスな人が一名いらっしゃいましたのでそれらの機能をカットしました。」
「なんじゃそりゃ、お前は神か。もうなんでもいいや。でもナナセさん、魔法ってもっとこう呪文唱えて魔方陣出したり空飛んだり物を浮かせたりとかじゃな…おっ、出てきた。」
・・・『超感覚』、ランクSS!?
「キッターー!!!やっぱりこういうのにチート能力はテンプレだなあ、おい!!!神様ありがとう!異世界感謝!!」
「SSとな、それはすごいのだろうがどれぐらいすごいんだ?」
「ナナセさん、実はこのランクはAが一番上なんてオチはないよな?」
「はい、そんなことはありません、ランクの最高位はSSSですから、SSは相当希少です。ですが、まずはよく説明をお読みになられては?」
「それもそうっすね、えーと、『超感覚』常人より五感がはるかに優れている…ん?…終わり!?説明たんねーよ!!」
「ならここで使ってみればよいではないか。」
それもそうか、どうやってやるんだろ。児島みたいに力入れてみれども何も起きない。どういうこと!?
「授与のあとであれこれ言うのはよろしくないので、あまり言いたくはないのですが、おそらく伊丹様の魔法は常時使用型だと思われます。そうそうお目にかかれるものじゃないですよ、よかったですね、さすがSS魔法。それと先ほど伊丹様が気にかけていたことですが、魔法は複数使えません。魔法はプラスアルファのスキルにすぎず、基本はお二人のいた世界となんら変わりません。それでは、充実した異世界ライフとなりますよう健闘を祈ります、案内役のナナセでした。」
ドロンッと煙に包まれてナナセはいなくなった。言いたいだけ言っていなくなりやがったあのアマ…。結局俺は今も魔法使ってるってことなんだよな。全然使ってる感じしないんだけど…。もしかしてだけど外れ引いたパターンですか?普通この手のタイプはいきなりぶっ飛んだチート能力もらうか残念ながら無能力ですと思いきや実はチートって相場が決まってるんだが、持ち上げて落とすパターンはどのラノベにもないよ…でもまあ結局はこの魔法もチートでしたパターンなんやろ、知ってる知ってる。ははは…。
「何をぶつぶつ言っている。もうここにいても仕方がないんだ。さっさと行くぞ。」
「無理無理無理!俺の魔法替えてよ、ナナセさん!!聞こえてるんだろ!ナナセさーん!!」
返ってくる言葉があるわけでもなく俺の叫び声だけが天井の高いホールにこだました。
帰りたい。




