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テレビ放映①

 お母さんといっしょの放映日がやって来た。俺たちは、テレビの前で、放送開始の時間を待ちわびていた。本当に俺は映っているのだろうか。それとも、大幅にカットされているのだろうか。楽しみであり、少し不安でもあった。そして、何より、この放送が魔界の目にとまるのか。俺は偽りの新宿の所在地に、分身仏を配置している。放送後に仕掛けてくるかもしれない。

 放送が始まった。歌のお兄さんとお姉さんが画面に映し出された。カメラが引いて行くと、お兄さんの隣に俺が映っている。

『お名前は?』

『ちひろちゃんです。』

『何歳ですか?』

『4歳です。』

『好きな食べ物は何ですか?』

『プリンです。』

『大きくなったら、何になりたいですか?』

『セーラムーンです。月に代わって、お仕置きよ!』

俺が、ポーズを取っているところが、完全に映っていた。カットは無かった。その後も、俺が走り回ったり、飛び跳ねてるところが、何度も映った。おまけに、レイちゃんまで映る瞬間があった。これは完全に彩先生に対するサービスだ。赤崎彩、俺が思っている以上の権力を持っているようだ。自分たちの首が飛ぶのではと、恐れ慄いている。ビクビクし、己を守るために、過剰な接待が行われるのだ。この映像は、いわば、彩先生に対する接待なのだ。

『ちひろちゃん、いっぱい映ってたね。可愛かったわ。』

かすみが喜んでくれた。

『ママが用意してくれたセーラームーンの衣装のおかげで、いっぱい映してもらえたんだと思うわ。ありがとう。』

『ねえ、ママ。私も少しだけど、映ってたよ。分かったあ?』

『もちろんよ。レイも可愛く映ってたね。この番組は、録画してあるから、いつでも見られるわよ。とても、いい記念になったね。』


 俺はパソコンを立ち上げて、『ちひろ』と打ち込んだ。色々と検索結果が表示されている。モデルのちひろが多く検索されているので、本当はそれも見たいのだが、今回は無視して、4歳児のちひろに関する情報が無いかを調べた。あれだけ、派手に渋谷の街を歩いたのだ。セーラームーンの格好で。

 番組を見た視聴者が多数投稿している。

『おかあさんと一緒に出ていた女の子、渋谷の歩道で見たよ。セーラームーンそっくりだった。』

『私も見た見た。確か名前はちひろちゃん。まじ、、リアルセーラームーンって感じだったよ。まじ、可愛かった。』

『はっきり言って、可愛い。ロリコンにはたまらんよ。さらっちゃおうかなあ。』

『俺は、ちひろちゃんにお仕置きされたい。月に代わって、お仕置きよ!って言われて、鞭で叩かれたい。』

世間は、バカばっかりだ。もっと、他にやることがあるだろう。バカな情報をひたすら無視をし、俺は検索を続けた。

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