テレビ収録②
彩先生がやってきた。
『おはよう。さあ、出かけるわよ。準備はいいかなあ。って、ちひろ、あなた、やたら本気出してるじゃないの。しかし、セーラームーンのファンだったとは知らなかったわ。』
『別に、ファンとかではないですけど。』
『彩さん、ちひろちゃん、照れてるだけなの。本当は、セーラームーンのこと詳しいのよ。』
『あら、そうだったの。すっかり、女の子になったみたいだわ。そしたら、今度、セーラームーンのグッズをいっぱい買ってあげるわね。』
どうせ、断っても、絶対に買ってくるはず。だったら、断るのは面倒だ。
『彩姉ちゃん、ちょっとにしてね。』
『子供は、遠慮しなくていいのよ。任せなさい。』
思った通りだ。
『まあ、レイちゃんは夏らしくて、爽やかな感じね。とても似合ってるわ。もう、すっかりお姉ちゃんだね。』
『彩姉ちゃん、ありがとうございます。ねえ、早く行こうよ。』
『そうね、渋谷まで混んでるもしれないから、急ぎましょうか。』
俺たちは、彩先生の車に乗り込んだ。
渋谷の街は、平日の午前中なのに、混んでいた。車を近くの駐車場に停め、NHKまで歩いた。やはり、俺の姿は目立つようだ。みんなが振り返って見てくる。恥ずかしいが、もはや仕方ない。腹を決めて、颯爽と歩くことにした。
『ちひろちゃん、ちょっとそこで、ポーズ取って!』
『ここで?ポーズって、どうするの?』
『月に代わって、お仕置きよ!のポーズ。』
渋谷の公園通りで、俺はセリフを決めて、ポーズをとった。
『月に代わって、お仕置きよ!』
めっちゃ、恥ずかしい。
『やっぱり、セーラームーンのこと詳しいのね。教えてないのに、ちゃんとポース出来てるし。』
かすみがからかってきた。もう、凄く恥ずかしい。
『見て見て、この子、超〜可愛い。キャー、リアルセーラームーンだわー。』
俺は女子高生の集団に囲まれた。
『お母さんですよね。お子さんと、写真を撮ってもいいですか?』
無断で撮影することなく、きちんと断りを入れるとは、意外にも、常識のある女子高生たちだ。
『いいわよ。』
かすみは、笑顔で答えた。
『ねえ、こっちの子も、凄いよ。マジ可愛いいよ。』
今度はレイちゃんも囲まれた。
『ていうかさあ、この家族、全員美人なんですけど、、、。マジ奇跡だわ。』
彩先生の機嫌がよくなっている。
『お嬢さんたち、そこのクレープ食べましょう。ご馳走するわ。』
『やったあ、美人のお姉さん、超〜、優しい。』
彩先生の機嫌が超〜良くなった。俺は調子に乗って、もう一度、ポーズをとった。
『月に代わって、お仕置きよ!』
これが、結構受ける。なんだか、楽しくなってきた。俺はルンルン気分で公園通りの坂を登って行った。




