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テレビ収録①

 木曜日。ついに、収録日になってしまった。朝から、レイちゃんのテンションは高い。理由は簡単。新しい洋服を着ることができるからだ。天才レイちゃんも、こういう時は、普通の女の子と変わらない。では、俺はどうかといえば、服なんて興味はない。なんて言えればかっこいいのだが、女性に変身するようになってからは、やたら気になる。自分の服もそうだが、街で歩いている人たちの服が気になってしょうがない。流行りの色は何なのか。靴はどのようなデザインが可愛いか。上手く着こなせるか。自分に似合うのか。などなど、日常的に考えてしまう。だから、かすみが新しい服を買ってくれると言ったとき、とても嬉しかった。そして、早くどんな服なのかを知リたいという欲求がふつふつと生まれてきた。ワクワクする気持ちだ。

『ちひろちゃん、こっちに来て来て。』

レイちゃんが俺をかすみのところに連れていった。

『おはよう、ちひろちゃん。はい、こっちにおいで、お着替えしましょうね。』

用意されているのは、どんな服なんだろう。目立つような服だと想像出来る。きっとフリフリのスカートにブラウスか、ワンピースだろうと考えていたが、俺の予想は完全に外れた。というか、俺の考えの中にはない服である。ちなみに、レイちゃんは、すでに新しい洋服を着ていた。スポーティな水色の短パンと、ピーズが散りばめられた淡いピンクのTシャツである。よく似合っている。そして、俺に用意されていたのは、アニメキャラクターの服である。セーラームーンだ。短いスカートのセーラー服。完全にコスプレである。俺の予想が当たっていたのは、「目立つ」ということだけであった。

『はい、お着替え完了。思った通り。よく似合うわ。ちひろちゃん、顔がはっきりしているから、アニメキャラに負けてないね。』

『ホントだ。よく似合ってる。超〜可愛いよ。ちひろちゃん、きっと1番可愛いと思うな。レイ、早く、ちひろちゃんがテレビに出てるところを見たいなあ。』

『ママ、お洋服、ありがとう。でも、ちょっと、このスカート短くない?パンツ見えちゃいそうだけど。』

『気にしない、気にしない。3歳児のパンツ見て、喜ぶ人などいないから大丈夫。』

『私、4歳よ。』

『4月1日の年齢で、決めてるようだから、それも大丈夫。』

『だけだ、恥ずかしいなあ。』

『可愛いから大丈夫、大丈夫。』

何を言っても、大丈夫の一言で誤魔化されてる。

『渋谷まで、この洋服で行くの?』

『そうよ。若者の街だから、目立たないから、大丈夫よ。』

『ちひろちゃん、靴もあるのよ。白いブーツ。ちひろちゃん、本物のセーラームーンみたいだね。』

『でも、レイ姉ちゃん、セーラームーンは金髪だから、本物とは違うよ。』

『あら、ちひろちゃん、セーラームーンに詳しいのね。ひょっとして、前から、セーラームーンを見てたのかな?ヒロ君のときから。』

『見てないよ。それくらいは、誰でも知ってるでしょ。有名なんだから。』

かすみの顔つきが変わった。そして、俺の目を見つめて来た。

『ちひろちゃん、お願いがあるの。変身して。金髪に変身して。出来るよね。ちひろちゃんの力なら、それくらい簡単よね。ママのお願い、聞いてくれる?』

『そんなこと言われても、やったことないから、出来るかどうか、分からないわ。』

『あれ?ママの言うこと、聞いてくれないの?ママ、悲しくなっちゃうなあ。』

もう、そんなこと言われたら、断れないじゃないか。仕方ない試してみるか。

『そしたら、変身してみるけど、上手くいくかどうかは、分からないから。はああああああ、はああ!』

俺は気を集中させ、髪の色を変えることを試みた。

『はあ、はあ、はあ、、、。疲れたよ。どうかな、上手くいったかな?』

『やっぱり、ちひろちゃんは凄いね。私の妹は天才だわ。セーラームーンとそっくりな色になってるもん。』

『ちひろちゃん、疲れちゃった?ごめんね。無理なお願いしちゃって。その代わり、髪を綺麗にまとめてあげるからね。』

かすみは、俺の髪をセーラームーンのごとく、三つ編みにまとめてくれた。

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