たしなみ③
夜になり、洋介さんは帰って行った。俺は晴れ着のまま、マンションの出口まで、見送ることにした。エレベーターの中で、洋介さんは俺を抱きしめた。そして、キスをしてくれた。エレベーターが降りる短い間、洋介さんは唇を離さなかった。
『ちひろん、綺麗だよ。見送りありがとう。素敵な夜を素敵な家族とともに過ごしてね。』
『洋ちゃん、忙しいのに来てくれて、本当にありがとう。優しい洋ちゃんが好きよ。』
洋介さんは、再び抱きしめてくれた。
『それじゃあ、またね。おやすみ。』
『お休みなさい。』
俺は深々とお辞儀をして見送った。
部屋に戻ると、孝は自宅には帰らず、彩先生の命令の元、食事の後片付けを一人でさせられていた。その間、彩先生とかすみ、レイちゃんはリビングで寛いでいる。さっき、日本には男尊女卑の風習が残っているとか言ったが、ここでは正反対。男は女性のために働くのが決まりなのだ。かすみが、手伝おうとすると、彩先生が制止した。
『かすみさん、いいのよ。孝に全部やらせるから。かすみさんは休んでいていいの。ね、孝!それでいいのよね!』
『はい、彩様。彩様の仰せの通りでございます。私が一人で全て片付けします。どうぞ、ごゆっくりなさっていて下さい。』
『でも、お客様に片付けさせるなんて、、、。』
『孝は客でなくてよ。私の婚約者。ならば、私の命令には従わないといけないの。そういうルールなの。ね、孝!そうよね!』
『はい、彩様。私は彩様のこ命令には、必ず従います。それが婚約者の使命であります。』
ほとんど奴隷と変わらない。ただ奴隷と違うのは、そこに愛があることだ。酷使をしているが、彩先生は孝を愛している。口では厳しいが、孝を見つめる目は優しさで包まれている。
『ちひろちゃん、キスしたでしょ。』
レイちゃんが、とんでもないことを口にした。
『レイ姉ちゃん、何言うのよ。』
『ああ、本当だわ。ちひろちゃん、ママに隠れて、いけないことして、ダメでしょ。』
『ちひろ、あんた、どうして馬鹿なの?鏡を見てらっしゃい。』
俺は洗面所の鏡を見た。唇のリップが乱れ、横にはみ出している。さっきのキスが原因だ。
『ちひろちゃん、バレないようにするのは、この家では無理よ。』
『ママ、ごめんなさい。』
『キスをするのは、大人だからいいけど、そのまま外を歩くとかは恥ずかしいから気をつけなさい。キスした後は鏡を見るようにね。女性のたしなみと覚えておくように。』
『はい、以後、気をつけます。』
『それに、キスだけじゃないでしょ?抱きしめられたでしょ?』
『えっ、どうして分かるの?』
着物が乱れてるから。私が着付けしたのよ。乱れたら、すぐ分かるわ。もう、隠れて抱きしめ合うなんて、本当、いけない子。ママの特権でお仕置きしようかしら。』
『ごめんなさい。お仕置きは許して。』
『いい、ちひろちゃん、ママには秘密はダメよ。ちゃんと報告して。』
『はい、ママ。』
俺がかすみに謝っている間に、孝は彩先生と部屋を出て行った。彩先生のマンションで夜を過ごすのだろう。
『レイ、もう寝なさい。』
『はーい。。』
レイちゃんも部屋を出て行った。
『それじゃあ、お仕置き始めましょうか。』
『えっ、お仕置きするの?』
『当たり前でしょ。悪い子にはお仕置きするのが普通よ。』
かすみが、着物の帯を解き始めた。帯を取り、長襦袢姿にさせられた。長襦袢の帯を緩めると、帯を引き始めた。そういうことか。
『あれ〜、お代官様、お許しを〜。』
『ちひろ、手篭めにしてやる。近う来い。』
『お代官様、お許しを。』
『いいだろ?減るもんじゃないんだし。』
かすみが俺の胸を揉んできた。
『あっ、あ〜ん。ママ、やめて。』
『ああ、面白かったあ。もう一回、いい?』
『もう、ママったら、もういやよ。』
『いいじゃないか。減るもんじゃないし。』
再び胸を揉み始めた。
『いやーん、あっ、ダメ。あ〜ん。』
『ちひろ、何、感じてるのよ。でも、なんか楽しいわ。』
『ママ。もう勘弁して。』
『何言ってるのよ、ちひろちゃん。ヒロのとき、散々、私の胸を揉んだでしょ。』
『そうだけど、今は、ちょっと事情が違うから。ダメよ。』
『はい、はい、終わりにします。それじゃあ、順番に脱いでいきましょ。長襦袢から取りましょうか。』
俺は、朝身につけたものを順番に取り外していった。最後に足袋と裾除けを脱いで、裸になった。
『今日は疲れたでしょ。寝んねしましょうね。さあ、赤ちゃんに戻って。』
俺はベビーの姿に変身した。




