共通点③
『なるほど。ちひろ殿の仮説は、ほぼ当たっておる。二つの殺人事件の犯人は魔界の者じゃ。婆娑羅大将が、わしに聞けと申したのは、わしが魔界に詳しいからだ。この世界に暗殺者がおるように、魔界にも存在する。強烈な奴らがおるわ。』
『大王は、犯人がお分かりなのですね。』
『ああ、知っておるわ。カショウキという男じゃ。ちひろ殿もご存知のルシファの手下で、魔界では有名な暗殺者だ。』
『カショウキ。どこに行けば会えるの?』
『魔界じゃよ。会ってどうする?仇でも討とうと思っているのか。』
『その通りよ。罰は受けてもらわないと。』
『ちひろ殿、それはお止めなされ。ちひろ殿、いやヒロ殿の力があれば、カショウキには勝てるでしょう。しかし、勝ったところで、なんの意味があるのじゃ。むしろ、マイナス面の方が大きい。魔界にヒロ殿の存在を明かすことになり、闘うことで、その能力を測られる。さらに、この場所を特定されかねない。レイ姫を守ることが、ヒロ殿の最大の使命なら、動かぬことこそ最善の策。』
『そんな消極的なことを私は望まない。出来れば、魔界そのものを叩き潰したい。』
『それがヒロ殿のダメなところだ。カショウキを倒したくば、待てば良い。いずれ、向こうから戦いを仕掛けてくる。その時に叩けば良い。』
『それでは、かすみや洋介さんの恨みが晴らせないではないか。』
『貴殿の目的は、恨みを晴らすことなのか。頭を冷やせい。己のプライドを捨てされ。』
阿修羅大王の言う通りだ。かすみの為、洋介さんの為、と言っていながら、結局は自分の欲求を満足させることを優先していた。俺は未だに世界最強の暗殺者としてのプライドを捨てていなかった。何のために、ベビーになったり、保育園児になったりしていたのだ。プライドを捨て去る為であったはず。大きな目的のために、捨てきれていないものを捨てる。俺は完全にプライドを捨てよう。
『分かりました、阿修羅大王。自己満足は、俺の悪い弱点です。申し訳ない。』
『レイ姫を守ること、優先するのはそれだけだ。』
『カショウキのことは、いずれ決着をつける。が、今は放っておこう。それで、もう一つの仮説。レイちゃんの未来の旦那様。彼が狙われる可能性が高いと思われるが、彼も守らなければならないはず。』
『それは大丈夫だ。彼は強力な力の元で、守られている。正体は明かせないが、いずれ分かる時がくるはずじゃ。』
強力な力の元。俺よりも強いボディーガードが付いていると言うことか。阿修羅大王が太鼓判を押すのだから、大丈夫であろう。
『阿修羅大王、ありがとうございます。』
『婆娑羅大将からの宿題は、これにて終了だ。ならば、今度はわしから宿題を与えよう。ヒロ殿、己の正体を突き止めなされ。お分かりになったなら、婆娑羅大将にお聞きになされ。では、さらば。』
阿修羅大王は、去って行った。
俺の正体。彩先生、かすみ、レイちゃんは気づいているようだ。手っ取り早いのは、聞いてしまうこと。しかし、それでは、ダメだ。正々堂々としなければ、阿修羅大王は許さないだろう。正義を重んずる神だから。




