共通点①
『亜美、正座させちゃって、ごめんね。それで、私の演技はどうだったあ?』
『ちひろ様の演技は、迫力ありましたよ。竹田さんに平手打ちをした時はビックリしましたけど、その後は笑うのを我慢してました。』
『亜美、ちひろ様は演技中だけよ。』
『そうだった。だけど、ちひろ様の方がしっくりくるかも。何人もちひろ様の美しさには敵わないって感じだから。』
『もう、亜美ったら。』
『でも、本当にそうだったと思ったわ。なんかね、オーラが出てるように見えたのよ。』
ほう、亜美はオーラが見えるのか。この子も選ばれし人かもしれない。
『引き受けてしまったけど、CMって何やるのかなあ〜。』
『心配ないです。今日のちひろ様の演技で十分すぎると思いますよ。そうだ、ちひろ様のおかげで、臨時ボーナスが頂けるかも。やったあ。ちひろ様、ありがどうございます。』
『契約金って、いったいいくらなんでしょう?』
『正確には分からないですけど、一般的には、安く見積もって3千万。高く見積もって1億かな。竹田さんは、その3倍出すとと言っていたから、9千万から3億ってことかな。これって、新人としては異例中の異例よ。私って運がいいのかも。ちひろ様のマネージャーになって、良かったあ〜。』
そのうち、俺にはいくら入ってくるのだろう。まあ、別にゼロでも構わない。もともとは、洋介さんの手前、何か仕事についていることにしないと、まずいと思っただけだから。それに、本当は暗殺者よ、とは言えないから。
電話の内線が鳴った。亜美が呼ばれたようだ。
『ちひろ様、部長に呼ばれたので、ちょっと席を外します。こちらで、お待ちになっていて下さい。』
亜美は部屋を出て行った。
明日の夕方は予定がない。阿修羅大王に会いに行くことにしよう。かすみの夫と妹の殺害について、仮説をぶつけてみる。そして、阿修羅大王の意見を聞きたい。当日、何が起きたのか。犯人は誰なのか。真相を知りたい。かすみのために、洋介さんのために。
頭に洋介さんの顔が浮かんだ。そして、左手に輝くリングを見つめた。20歳のバースデー、楽しかったなあ。俺は唇に指を当てた。洋介さんとの初めてのキス。その感触が唇に残っている。会いたい。どこからともなく、会いたいという感情が湧き出して来た。完全に恋する乙女になっている。いいのだ。この姿の時は、それでいい。20歳の乙女を楽しむのだ。
亜美が戻って来た。いいことがあったと顔に書いてある。
『ちひろ様。CMは海外ロケですって。イタリアかフランス辺りを考えてるみたい。私も行けって言われたの。夢のようだわ。』
イタリアか。亜美にローマ法皇を会わせたら、気絶するかも。
『良かったわ。一人じゃ寂しいもん。亜美が一緒だと心強いわ。』
『私、急いでパスポート作らなきゃ。スーツケースも買っちゃおうかなあ。』
パスポート。やばい。大事なことを忘れていた。俺に戸籍はない。ゆえに、パスポートは作れない。どうするか。仕方ない。彩先生に頭を下げて、お願いしよう。
『亜美、今度、二人でどこか旅行しようか。ヨーロッパ旅行の予行練習を兼ねて。』
『この仕事って、自由に休み取れないの。でも、ちひろ様と一緒といえば、部長は首を縦に振るはず。まてまて、部長もついて来ちゃうかも。あははは。』
亜美の笑顔は、俺を明るくしてくれる。タイプは違うが、レイちゃんと共通点があるように思えた。




