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衝撃⑤

 お風呂から出て、着替えさせられ、眠ることになったのだが、今夜はレイちゃんの横で、眠ることになった。

『よしよし、ちひろちゃん、ねんねしましょ。』

『お姉ちゃん、さっきの話、教えて。二つの共通点。』

『ちひろちゃん、自分で何回も答え、言ってたわ。』

『あれ?全然気がつかなかったけど。証拠がなさ過ぎて、分からない。無いものから共通点を探すのは難しい、、、みたいなことを言ったと思うけど、これが答えなの?』

『そうだよ。この中に答えがあるよ。』

『全然、分からない。なぞなぞみたいだ。お姉ちゃん、答えを教えて。』

『お姉ちゃん、教えて下さい、って言ったら、教えてあげてもいいよ。』

彩先生に似てきた。もう、女の子って、ワガママだなあ。

『レイ姉ちゃん、答えを教えてください。』

『あはは。ちひろちゃん、可愛い。いじわるして、ごめんね。答えは無いです。』

『えっ、答えがないの?ずる〜い。』

『違うわよ。もう、赤ちゃんなんだから。答えが存在しないではなくて、答えがないなの。』

『言っている意味が分からない。』

『二つの事件の共通点は、どちらも証拠がない。どちらも遺留品がない。「ない」というのが共通点よ。』

俺の思考がフル回転し始めた。犯人が、分かってきたぞ。考えを整理し、仮説を立てよう。そして、伐折羅大将に言われたように、仮説を阿修羅大王にぶつけてみせよう。頭の中のもやもやが、吹っ切れた。スッキリだ。

『レイ姉ちゃん、ありがとう。大好き。』

俺は、あっという間に眠りについた。

『ちひろちゃん、私があなたを守るからね。だって、お姉ちゃんだから。』

レイはちひろの頭を撫でた。

『阿修羅のおじさん、上手くいったよ。』

レイは阿修羅大王にテレパシーを送った。実は、阿修羅大王から、それとなく答えを継げるように言われていたのだ。それは、レイちゃんの勝利に対する褒美であった。


 二つの事件の共通点。それは証拠がない、遺留品がない、目撃者がいない、動機がない。『ない』ことが共通点だ。これでは、警察の捜査はお手上げである。俺も裏の世界で名を馳せたプロである。仕事は素早く、確実に。そして、証拠は残さない。これは、プロによる犯行だと推測できる。しかし、いかにプロであったとしても、100パーセント証拠を残さないなどどだい無理な話だ。プロとて人間だからだ。

そう考えると、一つの仮説が成り立つ。犯人は人間ではない。神、あるいは神と同じ能力の持ち主。例えば、俺だ。俺なら証拠を残さずに仕事をこなせる。だが、俺が犯人でないかとは、俺自身が分かっている。俺と同等の能力を持っているのは、俺の知る限り二人いる。一人は、俺の兄弟子である近藤仁。しかし、当時、奴は北朝鮮にいたことは分かっている。そして、奴の仕事は荒っぽい。証拠を残さないなどあり得ない。どちらにせよ、近藤仁は、すでに亡くなっている。俺が抹殺したからだ。もう一人は我が師匠の彩先生である。これも除外していい。正義感の人一倍強いお方だ。理由もなく、若い女性を殺めるなどあり得ない。ゆえに、結論が導かれる。犯人は人間にあらず。無論、神でもない。ならば、神と同等の能力の持ち主が犯人だ。ずばり、悪魔の仕業だ。犯人はルシファの仲間だ。動機もハッキリしている。

 奴らが恐れているもの、それは救世主の出現。それを防ぐことが動機だ。救世主が生まれなければいいのだ。救世主とは、未来に生まれるレイちゃんの子供だ。レイちゃん、またはその祖先の命を断てば、救世主は生まれない。悪魔は命じた、救世主の母の祖先を殺せ。つまり、レイちゃんの両親の抹殺計画。かすみと、かすみの夫がターゲットにされたのだ。かすみの夫である秦純平は殺された。しかし、かすみは無事である。かすみの妹は、かすみと間違えられて殺されたと考えれば、つじつまが合う。ルシファの誤算は、かすみのお腹の中にすでに、レイちゃんがいたこと。妹をかすみと間違えたこと。この二つである。そして、レイちゃんが生まれた。

 もう一つ、誤算がある。それは俺の出現である。救世主の祖先である、かすみの抹殺に失敗したルシファの次なるターゲットは、救世主の母となるレイちゃんである。容易いと思われたレイちゃん暗殺も、俺が邪魔で手が出せなくなっている。俺が死んだ後に、レイちゃんに襲いかかるつもりだろうが、無駄な考えだ。俺は死なない。

 この仮説を阿修羅大王に伝えよう。大王は、犯人を特定しているだろう。

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