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衝撃①

 Mr.Tに依頼したのは、かすみの亡き夫、秦純平についてである。Mr.Tによると、彼は、奈良県の博物館で学芸員として働いていた。ただ、それは表向き。実際は、ある組織の一員として裏の仕事に携わっていたようだ。ある組織とは、『畠山事務所』である。ちひろ、すなわち俺の暗殺命令をAGUに依頼した組織だ。宮内庁や、テンプル教団とも関わっていた。そうなると、やばい話に顔を突っ込んだが為に抹殺された可能性がある。 ただ、それだけでは、かすみの妹が殺された理由は分からない。2人を結びつけるの存在はかすみだけだ。

 北村元会長は、Mr.Tが畠山事務所に再び探りを入れていることを知り、それを妨害した。畠山事務所など、恐れるに足りない組織だ。奴か恐れているのは、畠山事務所ではない。全く別のものだ。そして、俺と畠山事務所を遠ざけようとしている。敵の敵は味方。畠山事務所は、俺にとって味方なのかもしれない。やはり、奈良に行く必要がある。


『レイ姉ちゃん、昨日はありがとう。作戦大成功。レイ姉ちゃんの予想通りの展開になったよ。』

『でしょう〜。頭は使わないとね。』

彩先生が近づいてきた。

『そうよ。頭は使わないとね。ちひろのポンコツな頭でも、使わないとねダメよ。』

『ちひろちゃんの頭、ポンコツなの?』

『そう、どう見てもポンコツでしょ。作ってないから、腐ってるかも。』

レイちゃんは、ケラケラ笑っている。

『はい、ちひろちゃん、これ請求書。』

請求書?何か買ってもらったっけ?

渡された請求書の数字を見て、衝撃を受けた。

『彩姉ちゃん、これって、私が払うの?』

『当たり前でしょ。あなたの依頼なんだから。』

請求書は、AGUの買収にかかった費用である。その額、380億円。

『彩姉ちゃん、私、さすがに払えないよ。』

『じゃあ、優しい私は分割にしてあげるわ。そうね、年利1パーセントでいいわよ。』

レイちゃんが計算している。

『一年間の利子が、3億8千万円ね。』

『勘弁して下さい。』

『そしたら、AGUを売却しないとね。誰に売ろうかしら。』

『私が買う。』

『レイちゃんが買うの?いいわよ、そしたら、特別値引きで、380円にしてあげるわ。』

なんだそれ。

『やったあ。そしたら、私が社長さんね。』

『ちひろ、レイちゃんに感謝しなさい。値引いた分は、働いてもらうわよ。なんて、嘘よ。ちひろちゃんのおかげで、孝も守れたから、許してあげるわ。』

『ただいま。』

かすみが帰ってきた。

『みんな揃ったわね。では、重大発表をします。私こと赤崎彩は、佐々木孝と結婚をします。』

『彩さん、本当に?』

『本当よ。なんかね、一緒にいて楽しいのよ。ウマが合うの。私のワガママを全て受け入れてくれて。嫌な顔を一切しないの。こんな人初めてだわ。』

『彩姉ちゃん、おめでとう。いいなあ、私も結婚したいなあ、智仁君と。』

『レイ姉ちゃん、ちょっと、さすがに早すぎますよ。』

『ちひろちゃんも、結婚しちゃえばいいのに、洋介さんと。』

『ママ、やめてよ。そんなこと絶対にないから。』

『えー、でも、手も握って、キスもしたんでしょう。』

かすみが俺を陥れようとしている。

『えっ、ちひろ、いつの間にキスしたの。やるわね。』

『彩姉ちゃん、違うってば、手を繋いで歩いて、おデコにチュッてしただけよ。それより、彩姉ちゃん、孝さんに、全てを打ち明けたの?』

『いいえ、裏の顔は話してないわ。永遠に秘密にします。ちひろ、喋ったら許さないよ。』

『分かりました。私も、その方がいいと思います。だけど、口裏合わせは必要です。何歳って言えばいい?』

そう言った瞬間に、張り手が飛んできた。

『年齢は、トップシークレット。口にしてはならぬ。ちひろ、今、頭の中で、128歳と考えただろう。後で部屋に来なさい。お仕置きしますから。』

しかし、結婚とは、まさに衝撃的な告白であった。きっと結婚しても、俺に対する行動は、何も変わらない気がする。借金帳消しになったから、まあ、いいか。

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