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hiro 復活③

 1時間前。


『それじゃあ、レイ姉ちゃん、鎌倉に行ってくるね。』

『ちょっと待って、ちひろちゃん。もっと、頭を使いましょう。そうすれば、楽に勝てるわよ。私ね、色々な戦略の本を読み漁ったから。一緒に作戦を考えましょう。』

今まで幾度となく助けられた。俺は、レイちゃんの対策案を飲むことにした。

『お姉ちゃんの考えを聞かせて下さい。』

『絶対に罠よ。ちひろちゃんを呼び出したところで、ちひろちゃんをやっつけることが出来ないことくらい分かってると思うの。そしたら、狙いは何だと思う?』

『狙い?私を倒すことじゃないの?』

『やっぱり、ちひろはまだ、赤ちゃんね。今朝もおねしょしたし、しょうがない子だわ。』

俺の羞恥心を煽ることをいつの間にか覚えている。彩先生の影響だ。

『だって、出ちゃうんだもん。』

『お姉ちゃんに任せなさい。この前、ぼんちゃん、家出したでしょ。私も家出したけど、今は、私の話は無しね。ぼんちゃん、大きな男の子で、とても強いよ。でも、私から見たら、やっぱり妹なの。おねしょをする妹なの。つまりね。精神的に幼いの。感情のコントロールが未熟と言ってもいいわ。』

4歳の女の子に、幼いと言われてしまった。恥ずかしいが当たっているかも。侮辱されているはずなのに、レイちゃんだと全く腹が立たない。

『この前のことを言ってるのね。ママに嫌われたと思って、落ち込んだわ。何もやる気が起きなくなって、体は生きているのに、心は死んでしまった状態になったわ。』

『もし、私やママが殺されたら、ちひろちゃん、どうなる?多分、怒りより絶望の方が大きくて、精神が破壊されるはず。敵の狙いはそれよ。』

『私を呼び出して、レイちゃん、ママ、そして彩姉ちゃんを暗殺する。そういうことね。』

『そうだと思うの。だから、私たちの護衛を強化して、お願い。』

なるほど、ちひろの正体がバレていたとしても、分身仏のことまでは知られてはいない。

『分かったわ。警備を万全にする。それじゃあ、行ってきます。』

『待って、ちひろちゃん。あわてん坊なんだから。ホント、幼いんだから。話はまだ途中。』

『えっ、まだ、作戦の続きがあるの?』

ひょっとすると、レイちゃんは、策略家としての才能もあるのかもしれない。話の続きを聞くことにした。

『鎌倉の人って、組織の親分みたいな人でしょ。ちひろちゃんを呼び出して、罠をしかけるんだから。それなりに頭はいいはず。だからこそ、ちひろちゃん、いいえ、ぼんちゃんのことを恐れてるのよ。ぼんちゃんが生きていたと知って、再び恐怖が蘇ったと思うわ。私はぼんちゃんに勝てないとね。だから、罠にはめて、自分の力が如何に大きいかを見せつけたいと思ってるはず。ぼんちゃんを膝まつかせたいんだわ。自己顕示欲が強い男ね。彼にぼんちゃんのような力は無い。だったら、その権力の源は何?』

『AGUを束ねている力の源、、、。世界平和を願う強い心。或いは使命感。』

『ブブー、そんな心は微塵も無い人よ。お金よ。お金が全てだと思っている人よ。人は、お金で動くと考えてるはず。だから、それを断ち切るの。そしたら、誰もついてこなくなるわ。』

『説得力があるわあ。でも、どうやって、その源を断ち切るの?奪い取るには、時間がないし。』

『権力には権力で対応すればいいだけ。私たちのすぐ近くに、彼以上の権力を持つ、世界一の大金持ちを忘れてない?』

『彩姉ちゃん。』

『そう、彩姉ちゃん。彩姉ちゃんに動いてもらうわ。今の彩姉ちゃんを動かすことは簡単よ。「孝さんも狙われてるかも」この一言で、協力してくれるはず。』

完全に策略家として、彩先生を超えている。もはや、俺の参謀だ。

『彩姉ちゃんには、鎌倉の人の口座を凍結してもらいます。彩姉ちゃんの電話一本で、金融相は動くはず。それから、膨大な資金を使ってAGUを買収するの。これで、奴は終わり。もう一つ、海外に資金を蓄えているかもしれないので、CIAやKGBにも協力してもらいましょう。その辺は、伝説の暗殺者ヒロなら簡単でしょ。』

レイちゃんは、ニコリと笑った。素直な子だけに、間違えると恐ろしい人間に育ってしまう。俺に、レイちゃんが必要なように、レイちゃんにも俺は必要だ。

『分かったわ。レイ姉ちゃん、ありがとう。作戦を遂行するわ。まずは、主だった世界の組織を見張らせている分身仏に命令を下します。ヒロ復活を公開するときね。ヒロの出現で、裏世界は慌てて、ヒロの意見に耳を傾けるわ。レイちゃんは、彩先生をコントロールしてね。では、行って来ます。』

俺は分身仏を二体ずつ、レイちゃん、かすみ、彩先生の護衛に当たらせた。万が一のことを考え、洋介さんら男4人にも、護衛をつけた。

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