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hiro 復活①

 私、本当にモデルになってしまったわ。人を殺める仕事をやっていたとは思えない。今は、人を楽しませる仕事。こっちの方が、楽しいに決まってる。

 俺は洋介さんに、ラインを送った。

『こんばんは。洋介さん、その後、お元気ですか。今日は報告があります。私ね、雑誌に載ることになったの。ヤングマガゾンの6月3日号よ。凄いでしょ。もし、良かったら見てくださいね。 ちひろ。』

すぐに、返信が来た。

『うふふふふ。ちひろ、やっちまいましたね。洋介さんではなくて、私にラインしてますよ。こういうのは、トラブルのもとよ。以後、気をつけなさい。 彩。』

えっ、俺はラインを確認した。やっちまっていた。洋介さんではなく、彩先生に送信していた。一番知られたくない相手に送ってしまった。絶対、みんなに喋りまくる。

 さっそく、反応があった。

『ちょっと、ちひろちゃん、彩さんから聞いたわ。ヤングマガゾンに載るんだってえ。凄いじゃない。もう、完全に女の子ね。ちゃんと洋介さんにも伝えなさい。』

かすみが、喜んでくれた。

『ママ、実は、洋介さんに報告しようと思って、ラインしたら、間違えて彩姉ちゃんに送っちゃったの。失敗しちゃったあ。間違えて、違う人に送って、大失敗。』

『どうせ、遅かれ早かれ、知られるんだから、良かったと思いなさい。ほら、早く、洋介さんに知らせなさい。そうしないと、彩さんから、孝さんへ、そして洋介さんへと伝わっちゃうわよ。』

確かに、そうなる。俺は慌てて、洋介さんに送り直した。

『うふふ。見ちゃった。ちひろちゃん、絵文字使ったね。ハートマーク。可愛いんだから、もう。』

『ママ、恥ずかしいよー。』

すぐに、洋介さんから返信が来た。

『こんばんは、ちひろさん。ヤングマガゾンに載るなんて、凄いね。ビックリです。でも、ちひろさんなら当然かな。6月3日号が楽しみです。そうそう、明後日の土曜日は大丈夫かな?誕生日の乾杯しましょうね。では、お休みなさい。』

かすみにスマホを取られた。

『ママの特権ね。保護者だから仕方なく見てるのよ。へー、2人っきりで乾杯するんだあ。酔って、「ちひろ、帰りたくなーい」とか言うのかな。』

『もう、そんなことないから。ちゃんと帰って来ます。この場所が一番好きだから。』

『いいのよ。遠慮しなくて。デートを楽しんでらっしゃい。でも、たまには私ともデートしてね。ちひろちゃんではなくて、ヒロ君として。』

『ママ、大好き。』

『私も好きよ。ちひろちゃんも、ヒロ君も。』


 昨日のかすみとの会話で、何か引っかかるものがあった。それが何なのかが分からない。だから、余計に気になる。

 Mr.Tから、メールが入った。

『至急、会いたい。』

何だ?メールでは話せないことなのか。いや、怪しい。短い文章だが、Mr.Tが書いたものではない。『ヒロさん』という、宛名がない。異常なくらい几帳面な男だ。忘れたなどあり得ない。間違いなく、別人からのメールだ。

『レイ姉ちゃん、お願いがあるんだけど。』

俺はパソコンを持って、レイちゃんの部屋に入った。

『どうしたの、ちひろちゃん。あれ?パソコンとスマホを持って来たの?また、探し物をしたいのね。』

凄い女の子だ。持ち物だけで、俺の意思を感じ取ってくれた。

『お姉ちゃん、何で分かったの?やっぱりお姉ちゃんは、凄いね。』

『誰だって分かるわよ。はい、貸してごらん。』

カシャカシャカシャ、、、、。

パソコンとスマホを繋いで、キーボードを打ち始めた。

『はーい、おしまい。行方不明のスマホはここよ。』

パソコンの画面に地図が表示してある。この場所は記憶がある。鎌倉。以前、一度だけ侵入した。AGUの北村会長の邸宅だ。北村が総帥だったときに、邸宅に侵入したことがある。かすみの暗殺指令を解かせるために。その件がきっかけとなり、当時の俺が所属していたJUKUとAGUが合併したのだ。その邸宅に、Mr.Tがいる。会長が俺を呼び出しているというのか。まてまて、呼び出すなら、正式なルートを使うはずだ。わざわざ、Mr.Tのスマホを使うのは不自然である。これは、罠だ。俺がMr.Tに調査の依頼をしたのは、かすみの亡くなった夫、秦純平についてである。そのことと関係があるに違いない。もっと言えば、秦純平の死にAGUが関わっている可能性がある。もし、それが本当なら、他にも疑問点が浮かび上がってくる。なぜ、かすみは夫の死後、AGUに所属したのか。榊原洋介の妻もAGUとつながりがあるのか。いずれにせよ。北村会長に聞く必要がある。会長は味方なのか。それとも敵なのか。

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