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家族は楽しい①

俺はお風呂で、いっぱい、かすみに甘えた。生きる活力が湧いてくる。そして、同時にかすみの心を読み取ることが出来た。かすみの不安がどういうものなのかを理解できた。


今、分かっていること。


かすみは二つの殺人事件の後、自ら失踪し、そして、自ら記憶の操作をして過去を消去していること。


記憶の消去後、苗字を偽り、秦から大沢に変更したこと。


そして、その直後にAGUに所属したこと。


当時、かすみは奈良県に住んでいたということ。


二つの事件ともに、犯人を特定する証拠が見つかっていないこと。


かすみも洋介さんも、数回しか会っていないのに、互いに顔を覚えていたということ。


 ポイントは、二つの事件に何かしらの関係があるか、ないかだ。どう考えても、関連性を否定出来ない。そした、犯人の手口。証拠を残していない。完全にプロの暗殺者の犯行だ。そうなると、犯人を見つけるのは至難の技だ。

 もう一つ気になるのは、かすみの夫の姓である秦。そして、住んでいたのが奈良県。秦氏、奈良県となると、大きな力が働いている可能性もある。畠山事務所を叩いてみるか。何らかの情報を持っていそうだ。

 俺は、かすみに疑問点を伝えた。そして、誘ってみた。

『ママ、一緒に奈良に行ってみない?何か分かる予感がするの。安全を考慮したら、一人で行くべきかもしれないけど、今回はママにも同行してもらいたいと考えたの。ママの力が必要だと思えるから。』

『奈良県か。私なら、地理も詳しいから、役に立つかもしれないわ。ちひろちゃんだけでは、心配だから、私が引率しましょう。』

『ああ、ずるいよ。レイも行く。それとも、レイがいたらお邪魔かしら。お二人さん。』

なんて、おませな4歳児だ。

『そうだ。智仁君も誘っちゃおう。これなら、二対ニだから、文句ないでしょう。』

『あらあ、それなら私も行くわよ。孝を連れてね。荷物持ちになるしね。』

それじゃあ、ただの家族旅行になるだけだ。

『洋介さんも誘ってみる?』

『ママ、それは止めておきます。洋介さんが来たら、19歳にならないといけなくなるので、ママと調査に行けなくなってしまうから。それに、しばらく、ママと洋介さんは会わない方がいいような気がするの。』

『でも、ちひろは会いたいんでしょう。』

『大丈夫よ。調査が優先。』

今度の土曜日に誕生日デートの約束をしているとは、口が裂けても言えない。


夕食後、レイちゃんがとんでもないことを言い始めた。

『ママ、私ね、ちひろちゃんのひみつ知ってるよ。』

えっ、まさかデートの約束がバレたのか。

『あのね。』

レイちゃんがニコニコしている。

『あのね、智彦君から聞いたんだけど、ちひろちゃんは、洋介さんとキスしたんだって。』

レイちゃん、なんてこと言うんだ。

『違う、違う、ほっぺにチュウしただけよ。』

て、俺、何を正直に話しているんだ。

『ああ、やっぱりキスしたのね。ママに黙って悪い子ね。それで、初キスの感想は?』

『感想って、特に何もないけど。』

『嘘だあ。お姉ちゃんは分かるよ。だって、ちひろちゃん、顔まっかだもん。嬉しかったって、顔に書いてあるよ。』

『これは、彩さんにも報告しないとね。』

『ダメえ〜。もう、認めるから秘密にしといて。確かに、ちょっと嬉しかったです。』

何で、告白しないといけないんだらう。そして、何で素直に話しちゃうんだろう。

『へー、私に秘密にしようと思ったのね。残念、さっきから聞いていたわ。』

万事休す。彩先生にもバレてしまった。

『キスしたということは、ラブラブまで、もうすぐね。ちひろ、早く抱かれちゃいなさい。』

『何言ってるの、彩姉ちゃん。もう、やだあ。』

俺は、からかわれ続けた。

 そうだ、土曜日のデート、何を着て行こうかしら。一応、誕生日だから、着飾った方がいいのかなあ。いいこと思いついた。プロのスタイリストさんに、コーディネートしてもらっちゃおう。メイクの仕方も覚えよう。

『なんか、ちひろちゃん、からかわれているのに、機嫌がいい。嬉しそうにしている。』

レイちゃん、やめてくれ。鋭すぎるよ。洞察力に磨きがかかっている。

『ちひろ、何を隠してるの?さあ、白状しなさい。言わないなら、心を読み取るわよ。』

この家族に隠し事は出来ない。俺は誕生日にデートの約束をしていることを話した。みんな、ワイワイと騒いでいる。そいて、喜んでくれた。

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