運動会③
レイちゃんは、MVPに選ばれ、俺は『頑張りました賞』をもらった。保育士さんの手製の金メダルを首にかけてもらい、レイちゃんも俺も大喜びした。みんなのいるレジャーシートのところに行くと、拍手で迎えられた。レイちゃんはかすみに、俺は彩先生にメダルをかけた。彩先生がテレパシーで、俺に語りかけてきた。
『洋介さん、急用で遅くなったけど、今、向かってるそうよ。後で、19歳のちひろになって会っていいわよ。』
彩先生は、俺の心をお見通しだった。
レイちゃんは、准教授の智仁の膝の上に座って、冷たいお茶を飲んでいる。
『レイちゃん、今日は頑張ったね。レイちゃんは、運動も得意なんだ。凄いなあ。僕は、運動は全くダメなんだよね。』
『智仁君は頭がいいから、運動出来なくても、平気でしょ。』
レイちゃん、准教授を智仁君と呼んでるんだあ。すでに、同レベルということか。
『そしたら、これご褒美。良かったら、やってみてね。』
『やったあ、物理の問題集だ。ありがとう、智仁君。』
俺が、ちらちら見ていたら、レイちゃんが、やってきた。
『智仁君、これが私の妹のちひろよ。可愛いでしょう。』
『こんにちは、ちひろちゃん。美女と野獣のダンス、素敵だったよ。』
『ありがとうございます。』
『あのね、妹のちひろも、頭、いいんだよ。』
准教授の目つきが変わった。
『姉妹で天才なの?これは興味深い。』
『智仁君、浮気しちゃイヤよ。智仁君は、私の彼氏なんだから。』
それを聞いて、かすみと彩先生がニコニコしている。准教授は、タジタジだ。
弁護士の由規は、黙々と片付けをしている。レジャーシートの周りのゴミも集まり、きちんと分別まで行っている。根が真面目だと言うことが、よくわかる。
『へえ、この子がレイちゃんの妹さんなのか。よく見ると、かすみさんに似てるね。妹さんも美人だ。』
『由規さん、今日はわざわざ応援に来て頂いたありがとうございます。』
『いえいえ、今日は楽しかったてますよ。こうやって青空の下で、お弁当を食べるのも悪くないです。お酒まで、頂いちゃって、いい気分です。』
二人とも大人だ。互いに気遣いしている。
さて、もう一人はどこだ。いたいた、こっちに向かって走っている。体育教師の大男、孝が走っている。
『はあ、はあ、はあ、、、彩様、片付け終了致しました。』
男はひざまづいて、報告している。
『孝、ご苦労様。こっちおいで。』
孝が、彩先生の元に近づく。
バシッ!
平手打ちだ。
『手が汚い。洗ってらっしゃい。』
孝は慌てて、走り出した。全速力で洗面台まで走っている。手を抜いたら、怒られることが分かっているのだ。この男、すでに彩先生の性格を学習している。汗だらけで、戻ってきた。
『こっちおいで。』
再び、孝が彩先生に近づいた。
『ご苦労様。チュッ!』
彩先生は、孝の額にキスをした。孝は嬉しそうに、顔を赤くしている。この二人、案外お似合いかもしれない。
『みなさん、うちに集合して、パーティの用意してあるから。孝、荷物を持って。』
運動会は、終了した。




