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運動会②

 運動会が始まった。クラスごとに行進して、整列する。ライオン組の男の子が代表して、選手宣誓を行なった。俺は、ちらちらと、後ろを見た。ど真ん中の最前列に、みんなが座っている。ただ、洋介さんの顔だけはなかった。

 最初の俺の出番は、30m徒競走。俺が負けるわけがない。当然ながら1位で走った。レイちゃんも、徒競走で、同じくダントツ1位。みんな、大喜びしていた。その後も、玉入れとか、綱引きとか、よくある競技が続き、午前中の競技があっという間に終わった。

 そして、お楽しみの、お昼ご飯となった。どの家族もレジャーシートの上で、お弁当を美味しそうに、楽しそうに食べている。微笑ましい。

 だが、我が家のお弁当は衝撃的だった。おにぎりに、唐揚げ、卵焼き、そういうのを想像していたが、全く違った。ここでも、彩先生マジックが繰り広げられていた。体育教師の孝が使い走りに利用され、買い出しに行かされるとは聞いていたが、とんでもないものを買いに行っていたのだ。浅草今全のすき焼き弁当。新宿高谷フルーツパーラーのフルーツ盛り合わせ。六本木荒塚のチョコレートケーキ、日本橋四越のシャンパンとチーズ、、、などなど、異様な光景だ。素直に感謝するべきなのだろうか。確かに、どれも美味しかった。彩先生と、招待された男どもは、シャンパンを飲んで、いい気分といった感じだ。気になるのは、洋介さんがいないことだ。俺の目線で、かすみが気がついたようだ。耳元で囁いてくれた。

『彼氏さんは、遅れてくるそうよ。心配しなくて大丈夫。』

『ママ、ありがとう。午後も頑張るね。』


 パンダ組のお遊戯が始まった。レイちゃんは、白いスーツを着ている。周りの子は全員、青のスーツ。紙で出来た槍のようなものを持って、同じポーズを取ったり、突く真似をしたりする。観客を敵に見立てて、攻撃しているような構成になっている。昔、ディズニーランドのアトラクションであった『キャプテンEO』を彷彿させる。レイちゃんは、まさにキャプテンを演じているのだ。パンダ組の部下を従えて、悪の大人たちを退治しているのだ。お遊戯はクライマックス。全員の槍の先端が一箇所に集まり、その中から、キャプテンであるレイちゃんが現れて、決めのポーズを取った。そして、決め台詞。

『私たちの勝利!バンザイ!』

完全に決まった。大成功。本当にカッコよかった。准教授が大きな声で叫んだ。

『ブラボー、レイちゃん!』

レイちゃんは、満面の笑みで応えていた。

 そいて、いよいよ、うさぎ組のお遊戯。俺の出番だ。黄色のドレスを着た。準備はオーケーだ。音楽が流れる。

『Beauty and The beast』

ディズニーの映画『美女と野獣』のテーマ曲に合わせて、みんなで華麗なダンスを披露した。俺は主演の美女『ベル』の役である。黄色のドレスをまとい、野獣の姿の王子と華麗にダンスをする。舞踏会の場面を再現しているのだ。特殊能力は封印して、3歳の体と心で、一生懸命、演じ切った。最後のポーズもバッチリだ。そして、拍手の中、あれをやらなければならない。自主練習も行ったあれである。両手でスカートの裾を持ち、膝を軽く曲げて挨拶をするのだ。カーテンコールである。俺は、一人だけ、一歩前に出て、右手側、左手側、そして正面に向かって、挨拶をした。可愛さをアピールした。上手く出来た。大成功だ。俺は思わず涙を流してしまった。あゆみ先生も泣いていた。こんな感動を経験出来て、保育園に通えて、本当によかったと思った。

 体育教師の孝が、真正面からビデオ撮影しているのが分かった。でも、結局、洋介さんは来なかった。

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