運動会①
部長は、日曜日までに撮影した俺の写真を持って、ファッション雑誌に売り込む事を約束してくれた。必ず、仕事を取ってくると息が荒かった。しかし、彩先生の後光は効果絶大だ。あとは任せて、俺はお遊戯に専念しよう。
前にも説明したが、うさぎ組のお遊戯の主役は俺である。俺はお姫様なのだ。だから、中央で踊る。いわゆるセンターだ。そして、最後の最後で、スカートの裾を持って、軽く膝を曲げて挨拶するのだが、これが恥ずかしくて仕方ない。俺の見せ場だから、可愛く演じないといけないが、やはり恥ずかしい。おまけに、洋介さんも見にくると言っている。踊っているのは3歳のちひろだから、洋介さんの目など気にする必要はないのだが、なかなか割り切れない。
俺は自宅で、隠れて自主トレをした。鏡の前で、何度も何度も可愛く挨拶した。頭では恥ずかしく感じてしまうのなら、体で覚えさせてしまえと思ったからだ。しかし、この家で隠れるのは難しいのだ。すぐに見つかってしまった.
『ちひろちゃん、ずった見てたわよ。』
かすみだ。
『ママあ。俺は、かすみの体にしがみついた。ちひろ、頑張るからね。』
『ママは、応援してるよ。』
俺は、かすみを本当にママだと錯覚する時がある。何でだろう。この姿だと、違和感なくママと呼べるようになってしまった。俺の中に、別の人格が確実に形成されているのかもしれない。19歳のちひろもしかりだ。
いずれにせよ。保育園児らしく、可愛く踊ろうと思う。
日曜日は朝から晴れた。てるてる坊主の効果かもしれない。みんな、早起きしている。俺も準備完了。今日は体育着での登園だ。女子は紺色のプラマーに首の部分が赤く縁取られたシャツを着る。ブルマーは、初めの頃は恥ずかしかったが、もう慣れた。彩先生によると、すでに体育教師の孝は、席取りのために並んでるらしい。
楽しい一日になると、みんなが思っていた。この時までは、、。




