鳥になりたい
私は鳥になりたい。なれないのは分かっているが、鳥になりたい。
あの小さい身体に大きな翼を持つ生き物になりたい。軽い身体を支える翼を持つ鳥になりたい。大空を気持ちよく飛びたい、自由に飛んでいたい。
小さい鳥になり、さえずりながら飛んでいたい、上に上に飛んでいたい。人に飼われるのは嫌だが飛びながら見守ってみたい。
大きい鳥になり堂々と飛んでいたい、地を這うように飛び獲物を仕留めたい。人に撃たれるのは嫌だが人の飼っている動物と遊びたい。
渡り鳥になり仲間とともに飛んでいたい、色々な国を回り、海を眺めながら飛んでいたい。船の上で休みたい、飛行機の上で休んでみたい。
私は鳥になりたい、寝るたびに夢に見る。自分が鳥になり空を飛んでいる夢を。空を自由に、ただ自由に飛ぶ。雲一つない空をただ飛ぶ。鳥になった自分が風を切り、翼を動かしどこまでも飛んでいく。どこかに行きたいわけではない。たぶん、ただただ飛んでいたい。なにもない、他にはなにもいらない、鳥になり飛んでいたい。
私は鳥になりたい、私は散歩をするたびに空を見上げる。晴れの日も雨の日も曇りの日も雪の日も両手を広げて上を見上げる。自分の中に空を入れるように、太陽の光を取り入れるように、空を飛んでいるかのように空を見上げる。素晴らしい景色に身を委ねる。そして思う、鳥になりこの景色と永遠に飛んでいたいと。
私は鳥になりたい、全てのしがらみを捨て去るために、何も持たなくて良いように、全てを捨て去りたい。軽くなった身体でどこまでもどこまでも飛んでいきたい。果てなんかいらない終わりなど無くて良い。
私は鳥になれない。地面を歩き続けるしかない。億劫でも面倒でも辛くても地面の上を歩き続けるしかない。上を見て空を見上げて羨みながら歩き続ける。